日本においても新型コロナウィルスの新規陽性者数は
全国的に下がってきましたが、
未だ第3波よりも高い水準にあり、
緊急事態宣言が延長されています。
デルタ株は水疱瘡と同様の感染力があるため
人と人との無症状感染の可能性が示唆されており、
ワクチンの接種率が上がっても
デルタ株が社会から数を顕著に減らすかどうかは懐疑的です。
そのことは、ワクチン接種から時間が経って、
抗体価が下がった時に、ブレークスルー感染する
可能性を示すものです。
従って、経済活動との天秤の中においては
ワクチン接種率の向上と効果的なブースター接種が
社会的に必要になります。
また、その間に軽症の間に、早期に適切な医療を受けられるように
組織、制度、運用、環境を整えることが大切になります。
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一方、コロナ禍において懸念されることは
ストレスや運動不足です。
外出の機会が制限されていることから
運動不足の人が多い可能性が高いです。
特に高齢の方の運動不足が懸念されます。
運動不足によって筋力が衰えた状態で肥満になると
単に肥満になるよりも糖尿病など代謝系の
生活習慣病のリスクが向上することが指摘されています(2)。
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このような代謝系の疾患は
タンパク質やミトコンドリアなどの細胞小器官の分解、排出に
関わるオートファージと関わりがあります。
Munehiro Kitada & Daisuke Koya(敬称略)らは
代謝系疾患、加齢に伴うオートファージーの機能不全などを中心に
オートファジーの基礎的な事を含めて総括しています(1)。
本日はその中で上述したように
運動と骨格筋とオートファジーの関わりについて
焦点を絞って、独自の視点、調査、考察を加えながら
内容の一部を読者の方と情報共有したいと思います。
//骨格筋との関わり//---
骨格筋は骨格を動かすのにかかわる横紋筋であり、
筋収縮に関わるアクチンとミオシンが規則正しく並んでいる
といわれています。
従って、筋収縮のベクトルが揃っていると考えられます。
この事から骨格筋を規則的に動かす運動に適しており、
実際に骨格筋は運動神経系に支配されていると言われています。
従って、加齢や運動不足によって骨格筋が衰える事は
歩行などに基本的な運動も含めて
運動能力が低下することを意味します。
このように骨格筋能力が低下する事をサイコペニアと呼びますが、
このサイコペニアは運動能力だけではなく
代謝系疾患である2型糖尿病のリスクを上げる事が知られています。
特にこの傾向は高齢者で顕著であると考えられています(4,5)。
また細胞レベルでは
サイコペニアに伴ってオートファジーの不全が生じることが
ネズミや人のケースで確認されています(6,7)。
オートファジーはミトコンドリアや脂質の分解、排出にも
関わっているため、それらに不全が生じることで
骨格筋細胞に損傷を受けたミトコンドリアや
過剰な脂質が溜まる事が懸念されます(8,9)。
従って、筋力低下とオートファジー不全によって
互いに負のスパイラルが生じる事が考えられます。
また、オートファジーの不全は
筋線維の再生を遅らせる事が知られています。
筋肉は筋線維の再生を繰り返して機能を維持したり、
または強化したりするので、
これらの能力が衰えることは、
運動による筋力アップの効果を妨げたり、
筋力の機能維持に支障をきたすことが考えられます。
//運動との関わり//---
今述べた様に運動はオートファジーに不全が生じている場合には
その良い効果が打ち消されてしまう懸念があります(10,11)。
しかし、一般的には
定期的な運動は骨格筋だけではなく
脂肪肝などを防ぐなど肝臓への良い効果なども確認されています(12-14)。
細胞レベルでは運動によって誘発されたオートファジーにより
細胞内に数多く存在するミトコンドリアの質を高めたり、
タンパク質の生成、排出の回転率を健全化させたり
することに貢献します。
それによって代謝機能や血管生成も同様に健全化します(1)。
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運動によって誘発される細胞内経路は以下です。
AMP↑⇒AMPK↑⇒mTOR↓⇒ULK↑⇒PI3K↑
AMPKはオートファジー関連、転写因子を活性化し、
PI3Kはオートファジー関連、たんぱく質を活性化させます(2)(Figure3b)。
従って、細胞内の複数の経路を通じて、
オートファジー機能が運動において強化されることが想定されます。
//考察//---
現在のコロナ禍の中で、
特に高齢の方で、運動機会が顕著に低下している人は注意が必要です。
人に関わらずあらゆる生物は
栄養をとって、エネルギーを得て、排出するという循環があります。
それらは胃腸、肝臓、腎臓などの臓器が主に関わっていて
それらのつながりは血液、リンパ液などの循環器系です。
それをコントロールするのが心臓、脳です。
そのような臓器レベルの巨視的な循環がありますが、
細胞レベルで見れば、それらの循環を支えているのが
オートファジーです。
身体は細胞の集まりであり、
細胞も同様にエネルギーを必要とし、不要物を逐次排出しています。
オートファジー機能により
不要な細胞内物質を多様に分解し、排出しています。
ここに不全が出ると細胞に様々な老廃物が溜まってしまいます。
それは巨視的にみれば、上の循環に不全が出て
臓器レベルで老廃物が溜まることを意味します。
人は進化の過程で2足歩行を獲得し、
何千キロ、何万キロという距離を生涯歩いてきました。
歩くというのは基本的な運動ですが、
その機会が失われることは進化的にみても不健全であり、
生理学的に見ても同様に不健全です。
その負のつながりを生理学的に説明する一つの機序は
オートファジー不全です。
ゆっくりでも歩くということは高齢の方も含めて
多くの方ができるはずなので
コロナ禍であってもその機会を失う事は適切ではないと私は考えます。
無理な筋力トレーニングは逆効果になる可能性がありますが、
歩行という人が昔から多くしてきた
基本的な運動は健康な日常において基本であるという
見識を持っています。
(参考文献)
(1)
Munehiro Kitada & Daisuke Koya
Autophagy in metabolic disease and ageing
Nature Reviews Endocrinology (2021)
---
Author information
Affiliations
Department of Diabetology and Endocrinology, Kanazawa Medical University, Uchinada, Ishikawa, Japan
Munehiro Kitada & Daisuke Koya
Division of Anticipatory Molecular Food Science and Technology, Medical Research Institute, Kanazawa Medical University, Uchinada, Ishikawa, Japan
Munehiro Kitada & Daisuke Koya
Department of General Internal Medicine, Kusatsu General Hospital, Kusatsu, Shiga, Japan
Daisuke Koya
(2)
荒木 厚, 周 赫英, 森 聖二郎
6.Sarcopenic Obesity―代謝からみたサルコペニアの意義―
日老医誌 2012;49:210―213
(3)
Diana Zukas Andreotti et al.
Effects of Physical Exercise on Autophagy and Apoptosis in Aged Brain: Human and Animal Studies
Front. Nutr. 7:94. (2020)
(4)
Anagnostis, P. et al.
Type 2 diabetes mellitus is associated with increased risk of sarcopenia: a systematic review and meta- analysis.
Calcif. Tissue Int. 107, 453–463 (2020).
(5)
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Type 2 diabetes mellitus is associated with increased risks of sarcopenia and pre- sarcopenia in Chinese elderly.
Sci. Rep. 6, 38937 (2016).
(6)
Aas, S. N. et al.
The impact of age and frailty on skeletal muscle autophagy markers and specific strength: a cross- sectional comparison.
Exp. Gerontol. 125, 110687 (2019).
(7)
Carnio, S. et al.
Autophagy impairment in muscle induces neuromuscular junction degeneration and precocious aging.
Cell Rep. 8, 1509–1521 (2014)
(8)
Drake, J. C. & Yan, Z.
Mitophagy in maintaining skeletal muscle mitochondrial proteostasis and metabolic health with ageing.
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(9)
Lam, T. et al.
Reversal of intramyocellular lipid accumulation by lipophagy and a p62-mediated pathway.
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(10)
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Exercise- induced BCL2-regulated autophagy is required for muscle glucose homeostasis.
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(11)
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Physical exercise stimulates autophagy in normal skeletal muscles but is detrimental for collagen VI- deficient muscles.
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(12)
Pi, H. et al.
Long- term exercise prevents hepatic steatosis: a novel role of FABP1 in regulation of autophagy- lysosomal machinery.
FASEB J. 33, 11870–11883 (2019).
(13)
Tang, H. et al.
Swimming prevents nonalcoholic fatty liver disease by reducing migration inhibitory factor through Akt suppression and autophagy activation.
Am. J. Transl. Res. 11, 4315–4325 (2019).
(14)
Ghareghani, P. et al.
Aerobic endurance training improves nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD) features via miR-33 dependent autophagy induction in high fat diet fed mice.
Obes. Res. Clin. Pract. 12, 80–89 (2018).
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