2021年9月30日木曜日 0 コメント

脳腫瘍、免疫細胞の相互作用と治療の展望

//背景//---
あらゆる疾患において、病態を正確に分析、把握して
患者さんの診察、問診と合わせて
総合的に治療方針を決める事が重要だと考えられます。
同じ病名がついている疾患でもいくつかのタイプが存在します。
例えば、乳癌では4つのタイプが大きくあると言われています。
今後、細胞レベルの分析技術が上がっていく事によって
さらにこの分類は亜型も含めて細かくなる可能性があります。
--
病状を詳しく分析するためには検査が必要です。
その際、PETなどのように放射線物質を使った分析では
癌において有効ではありますが、
使用できる回数が被ばくのリスクを考えると限られる
というのがあります。それはCTでも指摘されています。
また医療コストの面もありますから
簡便でより有効な分析手法の需要が高いと考えられます。
私の視点としては、血液、唾液、汗、脳脊髄液、(皮膚)組織など
患者さんの身体の生検でよりさらに詳しい分析ができないか?
という視点があります。
取得自体が簡便である事と、
他の患者さんと合わせて一気に
機械内で分析できる可能性があるため、
コストの低減、時間節約にもつながるからです。
そうすると自然と頻度が上がってくるため
常に移り変わる身体の状態を掌握することができるからです。
--
Brian M. Andersen, Camilo Faust Akl, Michael A. Wheeler, E. Antonio Chiocca, David A. Reardon & Francisco J. Quintana
(敬称略)ら医療研究グループは
脳腫瘍のうち、神経膠腫、転移性脳腫瘍について
各免疫細胞の勢力と
それぞれの細胞の腫瘍組織の中での生理について総括しています(1)。
本日はその報告内のFig.1,2の内容を核として
独自の視点、考察を加えながら追記していきます。
--

//筆者の視点//---
例えば、晴れた日に外を歩いている時、
左手の内側に赤い斑点が出てきたとします。
そうした場合、植物、日光(紫外線など)、微生物など
環境のいずれかと身体が反応して、
何らかの免疫異常が皮膚に現れていると考えられます。
自然と収まるケースもありますが、
そうではなければ、ステロイド塗り薬を
患部に塗布するなどの処置を行うことがあります。
それで収まった時は、おそらく過剰に高まった免疫反応が
うまく調整されたと考える事ができます。
しかしながら、主因となっている免疫細胞群に対して
効果がなければ、おそらく改善しないと考えられます。
--
癌でも同じ事が言えます。
癌細胞は細胞の異常であり、身体の恒常性を乱すものです。
従って、普段は数を増やさないように
免疫機能などによって制御されています。
しかし、ある大きさを超えると免疫機能だけでは
組織の成長を止める事ができなくなります。
そうすると身体の反応としては
癌組織周辺で免疫機能にも異常が出る事が考えられます。
どのような免疫細胞がどれくらいの割合で存在するか?
ということを主要組織の中でつかむことは
免疫療法に限らず、抗がん剤による化学療法を進める
にあたっても非常に重要になります。
免疫機能をうまく調整して、癌細胞を攻撃し、
かつ身体の通常組織を傷つけないようにすることができれば、
抗がん剤による治療、外科治療も楽になると考えられます。
副作用や後遺症の状態も変わると考えられます。
Brian M. Andersen氏, Camilo Faust Akl氏らの
免疫細胞の勢力に注目した総括は
上述したような点において意義があると考えられます。

//免疫細胞の勢力関係//---
ーー
(転移性脳腫瘍)
転移性脳腫瘍では単球由来のマクロファージ、
好中球、CD4+、CD8+T細胞の割合が8割程度となっています。
これは、転移性脳腫瘍が原発腫瘍の特徴を残して
脳に血液を通じて流入して、生着、成長したからである
と考えられます。
ここで視点としてあるのが、
通常、脳の血管には血液脳関門があり、
身体の組織の免疫細胞の種類は異なります。
例えば、脳の免疫ではマイクログリアと呼ばれる
グリア細胞が神経系の免疫機能に関わります。
一方、CD4+、CD8+T細胞などのリンパ系の免疫細胞は
それほど多くは分布していません。
血液脳関門を多くの割合で通過する事が出来ないからです。
しかし、転移性の脳腫瘍ではこのリンパ系の免疫細胞が
多く観られることから転移した脳腫瘍につながる
あるいは周辺の血管組織の状態が
通常組織の血液脳関門を備えた状態と大きく異なる可能性があります。
--
このような視点に立つと薬剤で転移性脳腫瘍の治療を
行う際にアクセスについて考える必要があります。
逆にこの異常がある(かもしれない)転移性脳腫瘍につながる
あるいはその周辺の血管を主要に使って
薬剤をアクセスさせる事ができれば、
転移性脳腫瘍特異的に薬剤を届けることができる可能性があります。
一つの考え方としては
通常は血液脳関門を超えない分子構造の大きな薬剤成分にしておいて
その血液を通じてだけしか届かないようにする事で
転移性脳腫瘍だけに薬剤を届けることができるかもしれません。
もう一つの考え方としては
Fig.1aで示されているように転移性脳腫瘍につながる
血液系を何らかの方法で可視化、明らかにできないか?
という視点もあります。
ただ、前提を確かめる必要もあります。
すなわち、転移性脳腫瘍につながる、周辺の血管の
内皮、周皮構造を調べる事です。
ーー
(IDH変異がある神経膠腫)
※IDH変異:マイクログリアの遺伝子不安定性を高める変異
この脳腫瘍ではマイクログリアに変異がみられることから
腫瘍組織環境のマイクログリアの割合が7割程度と
非常に多くなっています。
変異がない場合、転移性の脳腫瘍と大きく異なります。
神経膠腫はグリア細胞由来の癌組織なので
割合として多いマイクログリアの特徴を掴んで
その上で治療する事が必要になります。

//神経膠腫と免疫細胞//---
Fig.2a-dでは免疫細胞から放出されるサイトカインなどを
通じて神経膠腫の恒常性、成長に関わる機序を明らかにしています。
例示されている免疫細胞は
アストロサイト、マイクログリア、T細胞、
単球由来マクロファージです。
ーー
(アストロサイト)
神経膠腫の炎症を防ぎ、成長を促す物質の亢進
IL-10、PDL1、TGFβ
--
(マイクログリア)
神経膠腫の炎症を防ぎ、成長を促す物質の亢進
PDL1、TGFβ
神経膠腫腫瘍組織に侵入する物質
MMP14、STI1、SPP1、EGF
--
(T細胞)
T細胞の癌細胞傷害性を低下させる物質(Exhaustion)
PD1、TIGHT、LAG3、CD39
--
(単球由来マクロファージ)
神経膠腫の炎症を防ぎ、成長を促す物質の亢進
PDL1、TGFβ、IL-10、CD155、ARG1、CD39、IL1RN、CD73
神経膠腫を炎症させ、退行させる物質の亢進
IL-1β、TNF、IL-27
ーー
(筆者の視点)
ここからいくつかの事が考えられます。
先ほどの細胞種勢力図から
例えば、IDH変異型ではマイクログリアが多くなっています。
従って、マイクログリアの癌細胞への作用のうち
成長を促す抗炎症性サイトカインを抑えることができれば
癌細胞の環境を免疫的に変えられる可能性があります。
そうするとPDL1とTGFβを抑える事が重要になります。
一方、IDH変異がない場合には
マクロファージの割合が大きくなっていますから
マクロファージの癌組織に対する炎症>>抗炎症
となるようにサイトカインを調整する事が考えられます。
しかし、関わる物質が多いため、
標的を決める上で難しさがあるかもしれません。
-
もう一方の視点として、
癌への抗炎症性として共通性の高い物質があります。
それがPDL1、PD1です。
これは免疫チェックポイントと呼ばれます。
従って、免疫チェックポイント阻害薬が
脳環境内に届き、うまく働けば、
神経膠腫の退行を免疫多面的に進める事ができる可能性があります。
しかし、PD1-PDL1軸の免疫チェックポイント阻害薬における
神経膠腫の臨床好反応はおおよそ8%の患者さんに
留まると言われています(3)。
その中でタイミングが重要であるとされています(4)。
これらが本当にPD1-PDL1軸の中で
アンタゴニスト(阻害)として働いているかどうか?
という構造的な確認は何らかの方法で必要かもしれません。

//転移性脳腫瘍と免疫細胞//---
Fig.2で示されるように脳組織に転移するためには
血管内皮、周皮を通過する必要があります。
それに関わる免疫細胞が
アストロサイト、マイクログリア、
単球由来マクロファージです。
アストロサイトは
TNF, IL-6, IFNα, CCL2が亢進
マイクログリア
IL-1β, IL-12, TNF, CXCL8, CXCL10が亢進
単球由来マクロファージ
IL-1β, IL-27, TNFが亢進
これらとなっています。
これらは転移性癌細胞に対して炎症性を持ちます。
但し、マイクログリアに関しては
PDL1, CXCL10, VISTAが抗炎症性となっています。
ここでも免疫チェックポイントである
PDL1とVISTAがキーとなっているため、
免疫チェックポイントをどう阻害して、
癌細胞の細胞傷害性を維持するかが重要になります。

//考察//---
免疫機能を維持するということにおいては
PD1(免疫細胞側)-PDL1(癌細胞側)の結合を
如何に防いで免疫機能を維持するかが一つ重要になります。
従って、免疫チェックポイント阻害薬の働きが注目されます。
Ref.(1)Table 2で示されるように
多くの治験が今まで行われていますが、
必ずしも正の奏功に結びついていないとされています。
例えば、子宮頸がんに対して
免疫チェックポイント阻害薬を用いた臨床報告(2)では
PL-D1レベルが高い人ほど効果が大きく現れています。
従って、上述した治療を脳腫瘍に適用する場合に
脳腫瘍のPD-L1レベルに対して
臨床的奏功がどのように相関関係を持っているか?
という分析が重要になります。
PD-L1に相関がなければ、薬剤が狙い通り働いていない
可能性も疑う必要性が出てきます。
脳組織は特に血液脳関門がある事から
薬剤のアクセスが難しい部位です。
その様な事も含めて、より詳細な分析が必要なると考えられます。

//Cell-type-specific delivery system//ーー
薬剤を輸送するときには血液を通じて標的部位に到達する
ことが主になると考えられます。
脳の腫瘍であれば、
脳に直接注射して注入するわけにはいかないからです。
従って、代謝なども含めて薬剤の導線を考える必要性があります。
輸送効率を高めるためには
巨視的、微視的などスケールの異なる中での
「走化性(向性)」を癌組織に対して高める必要性があります。
これは血管中を含めて考えると容易ではありません。
例えば、インテグリンという受容体があります。
このインテグリンはα鎖β鎖という
ヘテロダイマーの構造になっていて
それぞれのドメインにはいくつかの型があります。
その型の組み合わせで多くの亜型を有します。
転移性癌のみに存在するインテグリンもありますが、
これは血液の内皮にも多く存在するため
それを標的にすると血液内で結合して止まってしまう可能性があります。
従って、長い導線を考える中で
特異的な受容体、その結合部位を探すことは容易ではありません。
--
脳の導線に関しては、特に転移性の脳腫瘍の場合には
そこまで導かれた血管に通常とは異なる何らかの変化が
ある可能性もあります。
例えば、転移性の癌細胞、DNA、RNA、関連サイトカインが
血液中を通ることで内皮が影響を受けて
なんらかの特異的受容体を発現するかもしれません。
そうした場合、その受容体を薬剤を封入したナノ粒子が認識して
そこで薬剤を放出するように設計すれば、
脳腫瘍に繋がる血管系で薬剤が特異的に放出されるため
輸送効率が高まる可能性があります。
--
本当は病変部位までナノ粒子を閉じておいて、
病変部位で開放されることが理想的ですが、
準・理想的な考え方として、
そこまでつながる血管系で放出させるということもある
と考えます。

(Reference)
(1)
Brian M. Andersen, Camilo Faust Akl, Michael A. Wheeler, E. Antonio Chiocca, David A. Reardon & Francisco J. Quintana 
Glial and myeloid heterogeneity in the brain tumour microenvironment
Nature Reviews Cancer (2021)
---
Author information
Author notes
These authors contributed equally: Brian M. Andersen, Camilo Faust Akl.
Affiliations
Ann Romney Center for Neurologic Diseases, Brigham and Women’s Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA, USA
Brian M. Andersen, Camilo Faust Akl, Michael A. Wheeler & Francisco J. Quintana
Center for Neuro-Oncology, Dana-Farber Cancer Institute, Harvard Medical School, Boston, MA, USA
Brian M. Andersen & David A. Reardon
Department of Neurosurgery, Brigham and Women’s Hospital, Boston, MA, USA
E. Antonio Chiocca
Broad Institute of MIT and Harvard, Cambridge, MA, USA
Michael A. Wheeler & Francisco J. Quintana
(2)
Nicoletta Colombo, M.D., Ph.D., Coraline Dubot, M.D., Domenica Lorusso, M.D., Ph.D., M. Valeria Caceres, M.D., Ph.D., Kosei Hasegawa, M.D., Ph.D., Ronnie Shapira-Frommer, M.D., Krishnansu S. Tewari, M.D., Pamela Salman, M.D., Edwin Hoyos Usta, M.D., Eduardo Yañez, M.D., Mahmut Gümüş, M.D., Mivael Olivera Hurtado de Mendoza, M.D., Vanessa Samouëlian, M.D., Ph.D., Vincent Castonguay, M.D., Alexander Arkhipov, M.D., Ph.D., Sarper Toker, M.D., M.B.A., Kan Li, Ph.D., Stephen M. Keefe, M.D., and Bradley J. Monk, M.D. for the KEYNOTE-826 Investigators*
Pembrolizumab for Persistent, Recurrent, or Metastatic Cervical Cancer
The New England Journal of Medicine September 18, 2021
---
Author Affiliations
From the University of Milan–Bicocca and European Institute of Oncology IRCCS, Milan (N.C.), and Fondazione Policlinico Universitario A. Gemelli IRCCS and Catholic University of the Sacred Heart, Rome (D.L.) — both in Italy; Institut Curie Saint-Cloud, Group d’Investigateurs Nationaux pour l’Etude des Cancers Ovariens, Saint-Cloud, France (C.D.); Instituto de Oncología Ángel H. Roffo, Buenos Aires (M.V.C.); Saitama Medical University International Medical Center, Hidaka, Japan (K.H.); Ella Lemelbaum Institute for Immuno-Oncology, Sheba Medical Center, Ramat Gan, Israel (R.S.-F.); the University of California, Irvine, Orange (K.S.T.); Oncovida Cancer Center, Providencia (P.S.), and Universidad de la Frontera, Temuco (E.Y.) — both in Chile; IMAT (Instituto Médico de Alta Tecnología) Oncomedica, Monteria, Colombia (E.H.U.); Istanbul Medeniyet University Hospital, Istanbul, Turkey (M.G.); Instituto Nacional de Enfermedades Neoplásicas, Lima, Peru (M.O.H.M.); Centre Hospitalier de l’Université de Montréal, Centre de Recherche de l’Université de Montréal, Université de Montréal, Montreal (V.S.), and Centre Hospitalier Universitaire de Québec, Université Laval, Quebec (V.C.) — both in Quebec, Canada; the Medical Rehabilitation Center of the Ministry of Health of the Russian Federation, Moscow (A.A.); Merck, Kenilworth, NJ (S.T., K.L., S.M.K.); and Arizona Oncology (U.S. Oncology Network), University of Arizona College of Medicine, Creighton University School of Medicine, Phoenix (B.J.M.).
(3)
Reardon, D. A. et al. 
Effect of nivolumab vs bevacizumab in patients with recurrent glioblastoma: the checkmate 143 phase 3 randomized clinical trial. 
JAMA Oncol. 6, 1003 (2020).
(4)
Cloughesy, T. F. et al. 
Neoadjuvant anti-PD-1 immunotherapy promotes a survival benefit with intratumoral and systemic immune responses in recurrent glioblastoma. 
Nat. Med. 25, 477–486 (2019).  

2021年9月29日水曜日 0 コメント

社会的処方という選択

先日、ある認知症の患者さんに焦点を当てた
メディアを拝見している時、
ちょっとした一言に鼓舞されるものがありました。
「認知症を直す、止める薬は世界にないからね。」
という患者さん自身の言葉です。
認知症というのは感情的な部分が比較的残るといわれていて
どんどんできなくなっていく事を自覚できることが
非常に苦しまれる部分だと思います。
そういった背景の中でもし認知症を遅らせる、止める
あるいは治す薬が生まれたら、
配偶者の方など身近な人も含めて、
多くの人の幸福に貢献できるだろうと考えました。
他にも今、不治とされる病はたいさんあり、
その中で良い薬の需要が高いと思われます。
薬のできる事はその点において大きいと思います。
但し、薬には様々なリスクがあります。
副作用、禁忌などもあります。
あるいは研究開発側の経済的な投資のリスクもあります。
治験の段階で高いリスクを負わないといけない方もいます。
このような事を考慮すると
「医療」という大きな括りで考えたときには
薬に必ずしも頼らない医療というのも存在する余地があります。
---
薬を処方しない治療の方法の一つとして
社会的処方(Social prescribing)というのがあります。
この社会的処方というのは
患者さんの健康や持続的幸福(well-being)の向上の為の
地域社会、環境、コミュニティーを整える
サポートをすることを指します(1)。
この社会的処方のコンセプトは
イギリス、アイルランド、オランダで支持されています。
例えば、社会的処方として紹介される活動としては
〇運動(ジム)〇体重管理〇栄養管理
〇芸術活動(音楽♪、絵、工作など)
〇雇用ベースの仕事〇ボランティア活動
〇福祉受給権、経済的運用、家、弁護士サービスの評価サポート
などが挙げられています(2)。
従って、基本的生活、人とのコミュニケーション、趣味
あるいは行政サービスなどが主に含まれます。
---
今、コロナ禍の中で高齢の方だけに限らず
「社会的孤立状態」にある人は多くいると思います。
例えば、大学に通っている学生さんの中には
大学で友人関係を構築する事が出来ず、
孤立感を得ている人もいるかもしれません。
それが健康状態に影響を与えるほどになれば、
家族など身近な人が通院するように促す場合もあるかもしれません。
しかし、病院で薬を処方されたとしても、
おそらく多くの場合は解消しないと考えられます。
大きな原因が取り除かれていないからです。
このような場合は「社会的処方」がより重要になります。
社会的処方の難しさは
医療スタッフ、保健士などがどこまで
個人の生活に入り込めるかというところがあると思います。
しかし、例えば、趣味が野球だとします。
野球は一人でできるスポーツではありませんから、
チームに所属する必要があります。
そういった場合、その地域の野球チームを紹介してくれたり
あるいはもっと違う方法で野球と関わる方法を
強制ではなく選択肢として示してくれると
本人としては孤立を解消するための一つの大切な情報となります。
その時に紹介側がうまく仲介してくれれば、
コミュニティーに加わる時の壁も低くなります。
仮に野球の例を挙げましたが、
コロナ禍においても影響を受けにくい趣味もあります。
そういった場合に「情報と仲介だけでも」
本人にとって役に立つ場合が考えられます。
あるいは、週に1回だけでも定期的に
医療スタッフや保健師の方と会うというだけでも
一定の効果がある可能性があります。
本人の体調の変化も見る事ができます。
高齢の方の場合はこういったことはより顕著に当てはまると思います。
なぜなら高齢の方は組織が老化してくるので
薬のリスクがより高くなるからです。
特に他の薬を併用している場合にはそうです。
従って、薬を処方するよりも
社会的活動の環境を整えて促したり、
栄養、運動、睡眠、入浴、水分管理などの
生活の基本となるところをしっかり管理、アドバイスする
社会的処方をしたほうが適しているケースもあると思います。
---
日本においては、高齢の方の割合が高い上に
新型コロナウィルスで医療費の負担、負債も多く抱えていますから
今後、高齢の方に対する医療をどうしていくのか?
というのはより効果的な対策が必要になります。
社会的処方というのはイングランドの130の活動の調査では
経済的(コスト効率が高い)とされています(2)。
今回、コロナ禍で病院、保健所、行政の関係性が
各地域で築かれてきている部分があると思います。
そういった苦労の元で築いた経験は
今後、より連携が必要な社会的処方において
役に立つ可能性があると考えられます。

(Reference)
(1)
Bickerdike L, Booth A, Wilson PM, Farley K, Wright K (13 December 2016). 
"Social prescribing: less rhetoric and more reality. A systematic review of the evidence". 
BMJ Open. 2017 (7): e013384. 
(2)
Josephine M. Wildman, Research Associate, Suzanne Moffatt, Reader in Social 35 Gerontology
Social Prescribing
BMJ-UK; Article ID: dric047427;


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脂質合成阻害する抗肥満薬(経口投与薬)の新型コロナ抗ウィルス性

新型コロナウィルスのワクチン接種率がどれくらい
高まるか不透明です。
リスクもゼロではありませんし、
リスクとベネフィットの天秤も時期(感染状況)や年齢、
あるいは健康状態によっても変わるので
最終的には個人の判断によって進められています。
但し、社会全体、経済(暮らし)、早期収束の視点で見ると、
ワクチン接種率が上がるのが好ましいのは言うまでもありません。
しかし、ワクチン接種率が80%程度と高い
シンガポールでも現在、感染者数が増えています。
新型コロナウィルスは(なぜか?)波があるので、
第五波の後に、第六波は世界の状況をみると
高い確率で来ると考えられます。
第五波と状況は異なると考えられますが、
一定割合、中等症以上になる人がいる事を考えると
罹患した後、適切なスクリーニングを行い
早期に適切な治療を行うことが求められます。
現在、2種類の抗体治療薬が日本で承認されています。
---
しかしながら、これらは点滴による治療が必要なため
多くの人に実施することはできません。
従って、適応条件が存在します。
逆に言えば、それ以外の人には投与されず、
中等症になる可能性があります。
この事を考慮すると、
インフルエンザのように経口投与できる
錠剤、カプセル(粉末)の治療薬の開発が待たれます。
そうすれば、重症化のリスクに関わらず、
陽性になった人に処方できるようになるため、
新型コロナウィルスの社会的脅威は下がると考えられます。
ゆえに経口投与できる治療薬の開発は重要です。
---
新型コロナウィルスの治療を考える際、
中等症以上の方に投与されるデキサメタゾン、アクテムラ
などの免疫に作用する薬は誰でも簡単に処方する事は
難しいと考えられます。逆効果になる事も考えられるからです。
従って、医師、看護師などの医療スタッフの判断、監視のもとで
適切に処方、投与される必要があります。
従って、インフルエンザなどと同様に
治療薬を考える際には「抗ウィルス薬」となります。
つまりウィルスの増殖を抑える、
あるいはウィルスの数を減らす薬です。
この薬は早期治療が前提です。
なぜなら、ウィルスは感染後、7~10日以内で
ピークを迎え、顕著に減少するからです。
重症化する人はこの間に組織や免疫機能が損傷を受けます。
従って、症状から疑われる場合には
すぐに医療機関を受診出来て、薬が速やかに処方
投与される環境が必要です。
---
抗ウィルス薬の開発のためには
ウィルスのライフサイクルを掴み、
一つ一つの機序が薬剤標的となります。
ウィルスは細胞内で増殖しますから、
細胞内でどのような機序で増殖するかを掌握することによって
それを治療に生かすことができます。
---
Junjun Chu, Changsheng Xing, Yang Du(敬称略)ら
医療研究グループは
新型コロナウィルスの細胞内での代謝機能の利用について
着目しています(1)。
---
新型コロナウィルスは宿主細胞の代謝機能(葉酸、TCAサイクル)
を利用する事が知られています(2,3)。
今回、Junjun Chu氏らが注目したプロセスは
ACC1-FAS脂質合成プロセスです。
この脂質合成プロセスが新型コロナウィルスの感染、増殖において
必要であることが示されました。
この脂質合成を制限する
肥満治療薬オルリスタットとTVB-2640が
新型コロナウィルスのRNAの増殖を防ぐことが
試験管やマウスのケースで示されました(1)。
(※但し、人ではない。)
マウスの肺の組織ではオルリスタットによって
ウィルスRNA量が1桁程度下がったことが示されています。
感染によるマウス生存率も向上しています。
---
このオルリスタットは海外では販売されていますが
日本では承認されていません。
しかし、この薬が良いのはカプセルの経口治療薬です。
従って、上述したように
処方条件を点滴に比べて広げる可能性があります。
日本で承認されている肥満治療薬は
セチリスタット(商品名:オブリーン)です。
これも錠剤になっています。
従って、この薬が抗ウィルス性を持つかどうか?
これについて調べる価値があると思います。
---
これらはリパーポスであり、
すでに承認されている事から副作用、禁忌、安全性などが
明らかになっているものです。
マウスの肺組織のウィルス減少量が1桁であり、
劇的ではない可能性がありますが、
効果を追跡する価値があるのではないかと考えています。

//その他のリパーポス候補薬(参考)//---
〇Aplidin
eEF1Aタンパク質標的(宿主細胞)
ウィルスの活性に関わる(4)
〇Topotecan(TPT)
Topoisomerase 1標的
致死性の炎症を防ぐ(5)

(Reference)
(1)
Junjun Chu, Changsheng Xing, Yang Du, Tianhao Duan, Siyao Liu, Pengfei Zhang, Chumeng Cheng, Jill Henley, Xin Liu, Chen Qian, Bingnan Yin, Helen Yicheng Wang & Rong-Fu Wang 
Pharmacological inhibition of fatty acid synthesis blocks SARS-CoV-2 replication
Nature Metabolism (2021)
---
Author information
Author notes
These authors contributed equally: Junjun Chu, Changsheng Xing, Yang Du.
Affiliations
Department of Medicine, Keck School of Medicine, University of Southern California, Los Angeles, CA, USA
Junjun Chu, Changsheng Xing, Yang Du, Tianhao Duan, Xin Liu, Chen Qian, Bingnan Yin, Helen Yicheng Wang & Rong-Fu Wang
Department of Molecular Microbiology and Immunology, Keck School of Medicine, University of Southern California, Los Angeles, CA, USA
Siyao Liu & Pengfei Zhang
Mork Family Department of Chemical Engineering and Materials Science, University of Southern California, Los Angeles, CA, USA
Chumeng Cheng
The Hastings and Wright Laboratories, Keck School of Medicine, University of Southern California, Los Angeles, CA, USA
Jill Henley
Department of Pediatrics, Children’s Hospital Los Angeles, Keck School of Medicine, University of Southern California, Los Angeles, CA, USA
Helen Yicheng Wang & Rong-Fu Wang
Norris Comprehensive Cancer Center, Keck School of Medicine, University of Southern California, Los Angeles, CA, USA
Rong-Fu Wang
(2)
Mullen, P. J. et al. 
SARS-CoV-2 infection rewires host cell metabolism and is potentially susceptible to mTORC1 inhibition. 
Nat. Commun. 12,  1876 (2021).
(3)
Zhang, Y. et al. 
SARS-CoV-2 hijacks folate and one-carbon metabolism for viral replication. 
Nat. Commun. 12, 1676 (2021).
(4)
White, K. M. et al. 
Plitidepsin has potent preclinical efficacy against SARS-CoV-2 by targeting the host protein eEF1A. 
Science 371,  926–931 (2021).
(5)
Ho, J. S. Y. et al. 
TOP1 inhibition therapy protects against SARS-CoV-2-induced lethal inflammation. 
Cell 184, 2618–2632 (2021).


2021年9月28日火曜日 0 コメント

うつ病と不安障害の分子生物学的な性差

//背景//---
不安障害やうつ病(大うつ病性障害(MDD))は
世界の統計では男性よりも女性が多いとされています(3-5)。
うつ病は生涯有病率が15%で発症率が高く、
特殊な病気ではなく、身近なものです。
うつ病は若いうちに罹患するケースも多く、
生活の質を著しく下げる要因にもなります。
女性の場合は男性よりも不安障害を併発しやすいと言われています(6-8)。
一方、女性の場合は治療において
セロトニン再取り込み抑制剤に対しての反応がよく
三環系抗鬱薬の血漿中の濃度も高くなりやすいと言われています(9-11)。
--
日本では新型コロナウィルスの第二波(2020年7月~10月)の間に
自ら命を絶った人が16%増えたと言われています(2)。
上述した不安障害やうつ病と自殺は
少なくとも一部で関連があると考えられます。
また、後遺症とこれらの疾患の関連性も指摘されていることから
コロナ禍において不安障害やうつ病について考える事は
より重要になります。
--
上述したような疫学上の性差があるにもかかわらず
マウスでの基礎研究も含めて、
調査対象は主に男性であり、
女性を含めた両性の研究は2009年時点で20%に留まっていました(1)。
そのような問題点からアメリカとカナダは
女性を含めた研究を推進するために助成金を出す決定をしました。
その結果、2017年には脳神経学の研究においては
全体の52%まで引き上げる事に成功しています(12)。
--
不安障害やうつ病においての有病率や併存などの疫学的な
違いは見られますが、マウスを含めた基礎研究を中心に
これらの疾患に対する分子生物学的な脳神経機序(回路)において
男性と女性で違いがある事が指摘されています。
--
マウスではこのような分子生物学的な研究に限定されますが、
人のケースにおいては、
自身の心理や他人を含めた社会的な感覚が複雑に絡み合っているため
異なる結果が出る事もあるため注意が必要である
とされています(13,14)。
この点から人の治療の場合はカウンセリング、サポートなどの
心理的、社会的ケアの重要性が分子生物学的機序に基づいて
開発された薬物治療以外に考えられます。
--
Debra A. Bangasser & Amelia Cuarenta(敬称略)からなる
医療研究グループは神経伝達系を中心に
不安障害やうつ病における男性と女性の性差について
総括しています(1)。
本日は独自の視点、考察を加えながら
その内容の一部について読者の方と情報共有したいと思います。

//脳の構造的変化の性差//---
マウスにストレスをかけた実験では
全脳基底部のコリン作動性神経細胞の樹状突起の肥大が生じましたが
この変化に対しては男性と女性で変化があったことが
示されています(15)。
うつ病のケースでは男性では
活性化マイクログリアは低濃度、錐体神経細胞のスパインは高密度
女性ではこの傾向が逆であったことが示されています(16-19)。

//ホルモン反応の性差//---
内側前頭全皮質(mPFC)から放出されるオキシトンに対する
反応は男性と女性で異なります。
男性の場合はオキシトシンレベルが高まることで
不安につながりますが、
女性の場合は向社会的行動につながることが示されています
(Ref.(1) Fig.1dより)。
従って、オキシトシンに関しては
男性と女性で真逆の反応がでることが示されています。

//不安、恐怖の性差//---
トラウマとなる負の体験を記憶から消せずに
何度も思い出すことで不安障害につながることがあります。
これは脳神経回路ないでは
〇2-arachidonoyl glycerol(2-AG)
〇Cannabinoid receptors
これらが関わっている事がしめされていますが、
マウスの行動観察のケースで
これらの活性によって不安の兆候が見られたのは男性で
女性の場合は逆の傾向が見られたことが示されています(20,21)。

//過覚醒の性差//---
過覚醒は強いストレスをうけた時に神経が過剰に高まる
状態で、PTSDの症状として見られます。
これによって注意散漫、反芻(繰り返し考え込む)、
不安(落ち着かない)、睡眠の乱れなどの原因になります(22)。
女性のほうがこのような症状が現れやすいことが
疫学上示されています(23-27)。
--
神経ペプチドの副腎皮質ホルモン(CRF)が過剰に放出
されることによって生じるとされています。
このホルモンは覚醒、注意、情動に関わる青斑核(LC)に
作用すると知られており、
女性の方が副腎皮質ホルモンに対して
この青斑核が感受性が高いとされています(1)。
これににはAMP-PKA信号の高い反応性が関わっている
ことが指摘されています(28)。
この青斑核に関わる信号は
男性:β-arrestin- mediated signalling 
女性:Gs-mediated signalling
ストレスに反応する信号が異なることが知られています(29-31)。
このような違いが疫学上の違いに関係している可能性があります。

//社会的回避の性差//---
うつ病の中で社会的回避の傾向が強くみられるのは
女性であるというデータがあります(32,33)。
--
このような社会的行動の一つの制御因子となるのは
オキシトシンです。前述したように女性の場合は
オキシトシンは向社会的行動を促進すると考えられていますが、
一定の条件下では逆に社会的回避を促すことも
指摘されています(34)。
マウスの基礎的な研究結果では
女性のほうが社会的ストレスをうけた時の
オキシトシン活性の反応が長く続くことが指摘されています(1)。

//学習性無力感の性差//---
うつ病の一つの特徴は無力感(Helplessness)です。
回避できないストレスをうけた時
背部縫線(dorsal raphe(DR))でセロトニンが活性化され、
セロトニンが過剰に放出されます(35)。
--
マウスによる基礎的な研究では
初めにストレスをうけた時に
男性の場合は脳の背部縫線で構造的な可塑性が生まれ
そのストレスになれる(behaviourally immunized) 
ということが起こりますが、
女性の場合はこのような脳の機能変化が起こりにくく
その後、避けられないストレスに発展する事があります(36,37)。

//無快感症の性差//---
うつ病の症状の一つとして、楽しみや嬉しさが
著しく得られにくくなる無快感症があります。
ドーパミン信号を受け取って報償を感じる
側坐核が小さくなり、反応が鈍くなることが
生物学的には一つ考えらえることであるとされています。
このような変化は今のところ人のケースでは
性差は確認されていません(38)。
しかしながら、ストレスに誘発された
側坐核回路の分子的な働きにおいて、
マウスのケースで性差は確認されています(39,40)。

//考察、まとめ//---
うつ病や不安の治療において
男性と女性では異なるガイドラインが求められるのではないか
と考えられます。
上述したように男性と女性のストレスに対する
脳の反応は異なる可能性が高いからです。
実際にセロトニン再取り込み抑制剤は女性の方が
働きやすいという結果が指摘されています。
このように薬剤の効果も性差がある可能性があります。

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Author information
Affiliations
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Debra A. Bangasser & Amelia Cuarenta
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Jo-An Occhipinti , Adam Skinner , P. Murali Doraiswamy , Cameron Fox , Helen Herrman , Shekhar Saxena , Elisha London , Yun Ju Christine Song & Ian B. Hickie
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Nature 597, 633-636 (2021)
---
Affiliation
Jo-An Occhipinti is co-director of the Mental Wealth Initiative and head of systems modelling, simulation and data science at the Brain and Mind Centre, University of Sydney, Australia; and managing director at Computer Simulation & Advanced Research Technologies (CSART), Sydney, Australia.
Adam Skinner is a systems modeller at the Brain and Mind Centre, Faculty of Medicine and Health, University of Sydney, Australia.
P. Murali Doraiswamy is professor of psychiatry and medicine at Duke University School of Medicine, Durham, North Carolina, USA. 
Cameron Fox is health technologies lead at the World Economic Forum, New York City, USA. 
Helen Herrman is professor of psychiatry at Orygen in Parkville, Australia; and at the Centre for Youth Mental Health, the University of Melbourne, Australia. 
Shekhar Saxena is professor of the practice of global mental health in the Department of Global Health and Population, Harvard T. H. Chan School of Public Health, Boston, Massachusetts, USA.
Elisha London is a social entrepreneur leading systems change in mental health, based in London. 
Yun Ju Christine Song is research operations manager at the Brain and Mind Centre, Faculty of Medicine and Health, University of Sydney, Australia. 
Ian B. Hickie is co-director of health and policy at the Brain and Mind Centre, Faculty of Medicine and Health, University of Sydney, Australia.
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2021年9月27日月曜日 0 コメント

固形癌抗がん作用と持続性両立の複数標的のCAR-T療法

T細胞やNK細胞が癌細胞特異的な抗原を認識するように
生体外で細胞膜貫通タンパク質をウィルスベクターなどによって
発現させて、体内に注入する方法があります。
これをChemeric antigen receptor(CAR)免疫療法といいます。
このCAR免疫療法の適用範囲の多くは
血液性の癌であるB細胞の悪性腫瘍に限られていました。
特定の組織、臓器に常在的にある固形の癌に対しては
その特定の場所に長くアクセスする必要があるため
確かな効果を得るためには困難がありました(2)。
今述べた様に癌細胞が発現する癌抗原を特異的に認識して
その結合によって癌細胞傷害性を発揮するような
システムは基本となるものですが、
固形癌の場合は特に長寿命であり、継続的な反応が必要になります。
---
Koichi Hirabayashi, Hongwei Du(敬称略)らは
神経膠芽腫から2種類の抗原を特異的に認識する
別々の受容体をT細胞に施し、
「癌細胞傷害性(CD28)」と「継続的な反応、長寿命(4-1BB)」の
両方の機能を実現しました(1)。
それによって発現されるT細胞の量、
高い免疫反応、代謝適応性による長寿命化、
抗原逃避の防止、継続的な抗がん作用
など複数の機能がマウスのケースで得られています(1)。
その中でT細胞内部にある細胞傷害性を示す
CD3ζはRef.(2)Fig.1に示すように
T細胞の継続性に関わる4-1BBを含む受容体には
含めないことが重要です(1)(Fig.1g/Fig.4n)。
受容体の機能を分ける事に寄って
両者の異なる効果が得られやすいということです。

//考察//---
人に適用するときには移植片対宿主病の対策も必要です。
よりこれが出にくい(と考えられる)NK細胞(4)にも同様に
こういった細胞の生着、数、寿命の基本的な機能と
特定の癌に対する細胞傷害性の機能を
複数の受容体で独立性を持って高める事ができるか?
という視点があります。

//細胞特異的輸送系統の視点//---
細胞特異的輸送系統でも受容体に結合させ
それ自身が何らかの抗がん機能を持たせる事と
そこから同様に抗がん剤を放出させる
2つ以上の機能を持たせる事を視点の一つとしています。
上の結果から類推できる事は
癌細胞はエピジェネティックに進化していき
環境内での適応性が自然に高まっていく(3)ので
それによる逃避を防ぎ、継続的な効果を得るためには
その2つの機能の重複が少なく
より遠い作用機序でアプローチすることの
重要性がこの結果から連想、想起されました。

(Reference)
(1)
Koichi Hirabayashi, Hongwei Du, Yang Xu, Peishun Shou, Xin Zhou, Giovanni Fucá, Elisa Landoni, Chuang Sun, Yuhui Chen, Barbara Savoldo & Gianpietro Dotti 
Dual-targeting CAR-T cells with optimal co-stimulation and metabolic fitness enhance antitumor activity and prevent escape in solid tumors
Nature Cancer volume 2, pages904–918 (2021)
---
Author information
Author notes
These authors contributed equally: Koichi Hirabayashi, Hongwei Du.
Affiliations
Lineberger Comprehensive Cancer Center, University of North Carolina at Chapel Hill, Chapel Hill, NC, USA
Koichi Hirabayashi, Hongwei Du, Yang Xu, Peishun Shou, Xin Zhou, Giovanni Fucá, Elisa Landoni, Chuang Sun, Yuhui Chen, Barbara Savoldo & Gianpietro Dotti
Department of Pediatrics, University of North Carolina at Chapel Hill, Chapel Hill, NC, USA
Barbara Savoldo
Department of Microbiology and Immunology, University of North Carolina at Chapel Hill, Chapel Hill, NC, USA
Gianpietro Dotti
(2)
Tiffany R. King-Peoples & Avery D. Posey Jr. 
Splitting signals drives CARs further
Nature Cancer volume 2, pages873–875 (2021)
---
Author information
Affiliations
Department of Systems Pharmacology and Translational Therapeutics, University of Pennsylvania Perelman School of Medicine, Philadelphia, PA, USA
Tiffany R. King-Peoples & Avery D. Posey Jr.
Corporal Michael J Crescenz VA Medical Center, Philadelphia, PA, USA
Avery D. Posey Jr.
(3)
Toshikazu Ushijima1 * , Susan J. Clark2,3 * , Patrick Tan4,5,6,7 *
Mapping genomic and epigenomic evolution in cancer ecosystems
Science 373 , 1474 – 1479 (2021) 
---
Affiliation
1Division of Epigenomics, National Cancer Center Research Institute, Tokyo 104-0045, Japan.
2Epigenetics Research Laboratory, Genomics and Epigenetics Theme, Garvan Institute of Medical Research, Sydney, NSW 2010, Australia.
3St. Vincent ’ s Clinical School, Faculty of Medicine, Universityof New South Wales Sydney, Sydney, NSW 2010, Australia.
4Cancer and Stem Cell Biology, Duke-NUS Medical School Singapore, Singapore 169857, Singapore.
5Epigenomic and Epitranscriptomic Regulation, Genome Institute of Singapore, Singapore 138672, Singapore.
6Cancer Science Institute ofSingapore, National University of Singapore, Singapore 117599, Singapore.
7Department of Physiology, Yong Loo Lin School of Medicine, National University of Singapore, Singapore 117597, Singapore.
(4)
Enli Liu, M.D., David Marin, M.D., Pinaki Banerjee, Ph.D., Homer A. Macapinlac, M.D., Philip Thompson, M.B., B.S., Rafet Basar, M.D., Lucila Nassif Kerbauy, M.D., Bethany Overman, B.S.N., Peter Thall, Ph.D., Mecit Kaplan, M.S., Vandana Nandivada, M.S., Indresh Kaur, Ph.D., Ana Nunez Cortes, M.D., Kai Cao, M.D., May Daher, M.D., Chitra Hosing, M.D., Evan N. Cohen, Ph.D., Partow Kebriaei, M.D., Rohtesh Mehta, M.D., Sattva Neelapu, M.D., Yago Nieto, M.D., Ph.D., Michael Wang, M.D., William Wierda, M.D., Ph.D., Michael Keating, M.D., Richard Champlin, M.D., Elizabeth J. Shpall, M.D., and Katayoun Rezvani, M.D., Ph.D.
Use of CAR-Transduced Natural Killer Cells in CD19-Positive Lymphoid Tumors
The New England Journal of Medicine 2020; 382:545-553
---
Author Affiliations
From the Departments of Stem Cell Transplantation and Cellular Therapy (E.L., D.M., P.B., R.B., L.N.K., B.O., M. Kaplan, V.N., I.K., A.N.C., M.D., C.H., P.K., R.M., Y.N., R.C., E.J.S., K.R.), Nuclear Medicine (H.A.M.), Leukemia (P. Thompson, W.W., M. Keating), Biostatistics (P. Thall), Laboratory Medicine (K.C.), Hematopathology (E.N.C.), and Lymphoma and Myeloma (S.N., M.W.), University of Texas M.D. Anderson Cancer Center, Houston.

2021年9月26日日曜日 0 コメント

胎盤のステロイドホルモン(ALLO)不足と小脳異常、自閉症の関連

子宮内にある胎盤は臍帯を通して
胎児の成長の為の栄養や酸素を供給します。
一方、子宮の健康のためには
様々な種類のステロイド、ペプチドホルモンが必要です。
子宮の維持に必要なこれらのホルモンが
胎児の成長にどのように関わっているか?
というのは今まであまり焦点が当てられませんでした(2)。
---
Claire-Marie Vacher, Helene Lacaille, Jiaqi J. O’Reilly
(敬称略)ら医療研究グループは
上述したステロイドホルモンの中で
Allopregnanolone(ALLO)が(著しく)不足すると
特に男性において小脳の発達に異常が出る事を示しました(1)。
小脳のミエリン鞘の過剰発現によって
バランスが崩れ、脳の機能障害が出る事が示されています。
脳の大きさ自体は大きく変わりませんでした(1)。
以前から小脳の異常と言葉、実行、感情、認知に関わる
自閉症と関連が指摘されています(3)。
実際にALLOを欠損させて育てたマウスには
歩行、運動、学習、感情、コミュニケーション能力に
異常が出ていることが示されています(1)。
---
同様の小脳のミエリン鞘の過剰発現は
早産の「人の」子供にも見られています。
早産の子供は当然ながら、
一定期間子宮内での発育機会が失われます。
それによってALLOやそれ以外の様々なホルモン供給が
停止します。子宮外で栄養供給は行われますが、
子宮内の環境を再現する事はできません。
そういった中でALLOが不足している可能性があります。
---
このALLOは「マウスのケース」で
補充することで自閉症のリスクを減らすことができると
確認されていますが、補充する場合は適量である
必要があります。最適な量よりも多く投入すると
逆に自閉症のリスクが高まったことが示されています(1)。
---
母体の栄養不足、感染症、遺伝子異常などは
胎盤の機能異常やそれによる早産などと関連があります(1).
栄養、感染症など食生活やワクチンで
避けられる要因は未然に防ぐことが大切です。
一方、今後の早産の新生児に対する栄養供給においては
臍帯から主に供給される栄養素、酸素以外の
ホルモンの影響などを影響を調べる事によって
今後改善される可能性があります。

(Reference)
(1)
Claire-Marie Vacher, Helene Lacaille, Jiaqi J. O’Reilly, Jacquelyn Salzbank, Dana Bakalar, Sonia Sebaoui, Philippe Liere, Cheryl Clarkson-Paredes, Toru Sasaki, Aaron Sathyanesan, Panagiotis Kratimenos, Jacob Ellegood, Jason P. Lerch, Yuka Imamura, Anastas Popratiloff, Kazue Hashimoto-Torii, Vittorio Gallo, Michael Schumacher & Anna A. Penn 
Placental endocrine function shapes cerebellar development and social behavior
Nature Neuroscience (2021)
---
Author information
Affiliations
Department of Pediatrics, Columbia University, New York-Presbyterian Morgan Stanley Children’s Hospital, New York, NY, USA
Claire-Marie Vacher, Helene Lacaille, Jiaqi J. O’Reilly, Jacquelyn Salzbank & Anna A. Penn
National Institutes of Health, Bethesda, MD, USA
Dana Bakalar
Center for Neuroscience Research, Children’s National Health System, Washington, DC, USA
Sonia Sebaoui, Toru Sasaki, Aaron Sathyanesan, Panagiotis Kratimenos, Kazue Hashimoto-Torii & Vittorio Gallo
U1195 INSERM, Paris-Saclay University, Le Kremlin‐Bicêtre Cedex, France
Philippe Liere & Michael Schumacher
The George Washington University, Nanofabrication and Imaging Center, Washington, DC, USA
Cheryl Clarkson-Paredes & Anastas Popratiloff
The George Washington University, SMHS, Anatomy & Cell Biology, Washington, DC, USA
Anastas Popratiloff
Mouse Imaging Centre (MICe), Hospital for Sick Children, Toronto, ON, Canada
Jacob Ellegood & Jason P. Lerch
Wellcome Centre for Integrative Neuroimaging (WIN), Nuffield Department of Clinical Neurosciences, University of Oxford, John Radcliffe Hospital, Oxford, UK
Jason P. Lerch
Department of Biochemistry and Molecular Biology, Pennsylvania State University College of Medicine, Pittsburgh, PA, USA
Yuka Imamura
The George Washington University School of Medicine and Health Sciences, Pediatrics, Washington, DC, USA
Panagiotis Kratimenos, Kazue Hashimoto-Torii & Vittorio Gallo
(2)
Margaret M. McCarthy
Placental signaling influences cerebellum development
Nature Neuroscience (2021)
---
Author information
Affiliations
Department of Pharmacology, University of Maryland School of Medicine, Baltimore, Maryland, USA
Margaret M. McCarthy
Program in Neuroscience, University of Maryland School of Medicine, Baltimore, Maryland, USA
Margaret M. McCarthy
(3)
Esther B E Becker 1, Catherine J Stoodley
Autism spectrum disorder and the cerebellum
Int Rev Neurobiol. 2013;113:1-34. 


2021年9月25日土曜日 0 コメント

原子間力顕微鏡(AFM)による細胞表面の機械的特性の評価

//背景//---
細胞の表面状態がどのようになっているか?というのは
遺伝子的に調べる事もできます。
しかし、遺伝子情報はイメージではなく、
最終的にはどのタンパク質がどれくらい発現されているか
というのが文字、数字としてわかるだけなので、
それがどのように分布しているのか?
というのをイメージとして掴むことはできません。
細胞の受容体はイメージ図が書かれていますが、
本当にその形状が正しいかどうか?
あるいは細胞表面でどのようになっているか?
というのを顕微鏡で観測するのは
細胞表面の生理を理解する上で重要になります。
また、細胞特異的輸送系統でも
細胞表面の受容体にナノ粒子を固定させるので
その状態を詳しく可視化する事は非常に重要になります。
原子間力顕微鏡は結合力を調べる事もできますし
表面状態を調べる事ができます。
その分解能はナノメートルオーダーと高いので
表面状態を詳しく知る手段として重要な測定法となります。
---
Albertus Viljoen, Marion Mathelié-Guinlet(敬称略)ら
医療研究グループは生体の細胞に対して
原子間力顕微鏡の主に力分光法について総括しています(1)。
その内容の一部を独自の視点、考察を加えながら
読者の方と情報共有したいと思います。

//原子間力顕微鏡(AFM)について//---
(概要)
試料の表面と短針の原子間に働く力を検出して画像を得る顕微鏡です。
原子間力はあらゆる物質の間に働くため容易に試料を観察する
ことができます。
今回取り扱う細胞などの生体試料に関しては
タッピングモード、フォースモードで解析が行われ、
フォースモードでは試料に近づけて原子間力を検知する
ナノメートルサイズの先端を持つ探針を
支える軟らかいカンチレバーのしなりを
光学的(レーザー/フォトダイオード)かつ圧電素子で分析して
その力、変位から細胞膜タンパク質の検出や粘弾圧力の測定などを行います。
解像度は高く単一細胞、単一分子レベルで検出が可能です。
機械的性質の測定はカンチレバー、探針を細胞などの試料に近づけたり
遠ざけたりすることで計測が可能です。
Ref.(1) Fig.1bcで示されるように
カンチレバーを試料に近づけて、接触してカンチレバーが湾曲するときに
その力の変化から弾性を計測し、
遠ざけるときに試料が吸着する力によってカンチレバーが逆方向に
湾曲し、吸着力を測ることができます。
---
(制限と最適化)
正しいカンチレバーの校正は非常に重要です。
カンチレバーの硬さは観察する細胞に対して
適切に選ぶ必要があります。
一般的にはバネ定数が小さく、長さが短い
カンチレバーが細胞の検出には
力のノイズが少なく好ましいとされています。
---
(生体分析の適用、応用)
細胞と宿主組織との吸着力、
細胞同士の吸着力を測定することができます。
-
細胞壁、細胞膜、細胞骨格のナノオーダーの機械的性質
に関する情報が得られます。
-
細胞の表面の形状をマッピングすることができます。
それによって細胞表面にある受容体の分布や
種類を同定することができます。
-
受容体とリガンドの結合力や分子弾性力などを
計測する事ができます。

//機械的性質を計測する意義//---
生体の機械的性質(力)は
細胞の吸着、移動、信号(発出、検知)、成長において
重要な役割を果たします。
さらに癌、線維化、感染症などにおいても同様です(1,2)。
また生体はタンパク質、脂質、核酸などの分子の集まりなので
それらは疎水性、静電、分子間、水素結合など
様々な結合力によって支えられています。
そこには様々な機能を支える力が存在します。

//機械的性質と細胞の機能//---
哺乳類細胞の弾性(ヤング率など)は
細胞の形、細胞膜の張力、細胞の区画など
細胞のサイクルによって劇的に変化する要因によって変わります。
従って、AFM-FS測定で細胞の弾性を計測する事は
これらの細胞の機能を確認、理解する事に貢献すると考えられます。
-
一般的にバクテリアなどの細菌の細胞は
哺乳類細胞よりも硬いと言われています(3-5)。
しかしながら、細胞内でも硬さに偏差がある事が
指摘されています。

//細胞の測定について//---
軟らかい細胞が動く事によって測定誤差が生まれるので
測定対象となる細胞を固定する必要があります。
そのため、滑らかな親水性ガラスやマイカが
細胞を配置する適切な基盤とされています(6-10)。
しかしながら、アルデヒド系材料などを使って
化学的な結合によって固定すると
それによって細胞の物理的、科学的な特性が変わってしまうので
避ける必要があります。
細菌の細胞など硬い場合は、基盤との接触面積が小さくなるため
より強い固定が必要になります。

//単一分子の力の測定//---
AFMの探針の先端は単一分子の力を測定するために
適切に設計する必要があります。
測定する受容体の構造がわかっていれば、
その受容体に特異的に結合するリガンドを
事前に結合させたAFM探針の先端を用意する事が求められます(1)。
この特異性が高ければ、
細胞内で多様に存在する受容体の中で
標的とする受容体の場所、分布の識別に貢献すると考えられます。
しかしながら、結合性を保つためには
短針の先端の方向の制御を精密に行う必要があります。

//単一細胞の力の測定//---
細胞は無機材料の測定と比べて、柔らかく壊れやすいため
先のとがった硬い先端を直接接触させて測定させる手法は
好ましくありません。
特に細胞の弾性を測る場合にはこのことが配慮されます。
従って、先端を取り除いて軟らかいカンチレバーそのもので
細胞の弾性を測る手法が選択されます(1)。
また、測定系において流体が使われることがあります。
圧力コントローラーで細胞を吸引する事に寄って
細胞を固定して測定する方法です。

//他因子計測//---
弾性、吸着力、高さなどそのマッピングを
Ref.(1) Fig.3のように計測する場合には
タッピングモードが採用されます。
タッピングモードではある特定の周期で
カンチレバー、探針を振動させます。
その波形によって上述した機械的性質、位置を分析します。
短針は試料に接触する前に止められるため、
試料を傷つけず、走査させながら測定することができます。
原子間力は物質を完全に接触させることなしでも
微弱に働くため、探針を必ずしも試料に接触させる
必要がないからです。

//力変調による計測//---
短針の先端の高さを調整する代わりに、
物質に近づける、遠ざける力を基準にして計測する方法があります。
これをフォースクランプモードといいます。
この方式に適しているのは
タンパク質の配座の変化や
受容体とリガンドの結合の変化(寿命)を計測する
のに優れています(11-15)。

//課題//---
細胞の機械的性質は細胞種、場所によって変わる事
あるいは受容体を見るのであれば、
それによっても変わります。
力を計測するモデルはカンチレバーの湾曲ですから
カンチレバーの硬さの選択が非常に重要になります。
数桁以上変わる機械的性質の検知において
単一材料のカンチレバーでは対応できないとされています。
従って、測定する対象に合わせて
最適なカンチレバーを選択する必要があります。
-
また針を使う場合には
先端の針の径によっても原子間力は変わるため
針のメンテナンス、交換は定期的に行う必要があります。
-
タッピングモードやフォースクランピングモードなど
振動させる周期や近づける力などのパラメータ設計は
適切に行われる必要があります。
-
また細胞の地形を計測する場合には
計測できる地形の距離にも限界があります。
横方向もありますが、高さ方向もあります。
分解能によって異なりますが、
段差が大きいと地形をうまく計測することができません。

//応用//---
リガンドに対する受容体の親和性は対象の一つです。
しかし、生きた状態ではこれらは動的で
平衡状態から外れた活性状態にあります。
環境的な揺らぎによって結合状態も変わります。
しかしながら、AFM-FSによって
意図的に一定の機械的ストレスにさらした場合には
こうした揺らぎを打ち消すことができるため
ある程度の信頼性ある評価ができるとされています(1)。
過去の適用例としては以下です。
〇Cell adhesion proteoglycans(16)
〇P-selectin/ligand complexes(17)
〇Discrete glycoprotein interactions involved in aggregating cells of Dictyostelium discoideum(20), 
〇Integrin–fibronectin(18)
〇Escherichia coli curli–fibronectin(19)
〇Mycobacterial adhesin–ligand systems(21). 
例えば、細胞特異的輸送輸送系統では
インテグリンが標的の一つとして挙げられます。
インテグリンの状態をリガンドも含めて
ある一定の領域で評価できる事は利点があります。
しかしながら、上述したようにカンチレバーの最適化が必要で
インテグリンを測定する場合には
この受容体に合わせたコーティングをしないと
力の測定の感度が得られないとされています
(Ref,(1) Fig.7より)。
これはおそらくカンチレバーの接触によって
最終的に湾曲に影響する力は
インテグリン/リガンドとリガンド/カンチレバー(探針)
の2つの剥離可能な界面があるからです。
従って、リガンド/カンチレバーの界面の影響(ノイズ)を
小さくするためにカンチレバーには適切なコーティングが
必要であるということです。

//まとめ//---
分子がそのまま見えるような結果は得られないですが、
ある一定の面積で表面形状と硬さ、結合力など
機械的特性が数値として得られます。
従って、見た目としては白からオレンジの色彩の
グラデーションで表示されます。
様々な条件によって影響を受けるので
測定器の環境設定が重要になると考えられます。

(Referenece)
(1)
Albertus Viljoen, Marion Mathelié-Guinlet, Ankita Ray, Nico Strohmeyer, Yoo Jin Oh, Peter Hinterdorfer, Daniel J. Müller, David Alsteens & Yves F. Dufrêne 
Force spectroscopy of single cells using atomic force microscopy
Nature Reviews Methods Primers volume 1, Article number: 63 (2021)
---
Author information
Affiliations
Louvain Institute of Biomolecular Science and Technology, Université Catholique de Louvain, Louvain-la-Neuve, Belgium
Albertus Viljoen, Marion Mathelié-Guinlet, Ankita Ray, David Alsteens & Yves F. Dufrêne
Departement of Biosystems Science and Engineering, ETH Zurich, Basel, Switzerland
Nico Strohmeyer & Daniel J. Müller
Institute of Biophysics, Johannes Kepler University, Linz, Austria
Yoo Jin Oh & Peter Hinterdorfer
(2)
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2021年9月24日金曜日 0 コメント

多発性硬化症に対するPET分析の現状、展望、応用

//背景//---
新型コロナウィルスの後遺症で
苦しんでおられる方は世界で多くいます。
そのような症状というのは、
心の状態によっても影響を受けると思います。
社会として支えていくという事が重要ですが、
わからないながらも一歩、一歩進める事によって、
患者さんの希望や安心につながればと考えています。
この情報で病因を取り除くことはできませんが、
心の状態を変える事ができれば、
それは治療に貢献する部分もあると思っています。
そういったことは新型コロナウィルスに限らず、
他の疾患に対してもそうです。
生活というのは続いていくものですから、
日進月歩進んでいるという事を公開する事も
患者さんの勇気に繋がる事もあると考えています。
それが私の駆動力の一つになっています。
---
新型コロナウィルスの後遺症の症状から
多発性硬化症と類似する部分があるとされています。
多発性硬化症は免疫細胞が脳やせき髄などの中枢神経や視神経に
炎症を起こして、神経組織に損傷を与える自己免疫疾患です。
新型コロナウィルスの後遺症では
おそらく免疫機能が深く関係していると考えられるので
病気の分類としては異なっても、
その引き金となるものは類似している可能性があります。
そういった理由から引き起こされる臨床症状にも
一定の類似性を見出せるということかもしれません。
---
新型コロナウィルスの後遺症の
治療のガイドラインを制定するにあたって
「適切なエビデンス、検査」に基づいた治療方法の確立が必要です。
ブレインフォグと呼ばれ、脳に影響があるのであれば、
後遺症の患者さんの脳の異常をまずは検査で見つける必要があります。
上の類似性を勘案すると、
多発性硬化症の検査方法の情報は
新型コロナウィルスの後遺症の診断にも役立つ可能性があります。
---
Benedetta Bodini, Matteo Tonietto, Laura Airas & Bruno Stankoff 
(敬称略)ら医療研究グループは
陽電子放出型断層撮影法(PET)と多発性硬化症について
最新の研究成果を総括しています(1)。
その内容の一部を独自の調査、視点、考察を加えながら
読者の方と情報共有したいと思います。

//PETとは//---
PET検査では、まず陽電子(ポジトロン)を放出する検査薬(おもに
ブドウ糖を結合させた18F-FDG)を静脈から注射します。
身体にある細胞はブドウ糖を代謝の為に取り込みます。
そのブドウ糖を取り込む量は細胞種によって異なり
癌細胞では多く糖を細胞内に取り込むことが知られています。
検査薬ではブドウ糖に陽電子を放出する物質を結合させていますから
細胞が糖を含む検査薬を取り込んだときに、
その位置から陽電子が放出され、陽電子が寿命を迎えて
消滅する際にガンマ線が体外に放出されます。
そのガンマ線を検出する事によって
検査薬を取り込んだ場所の細胞が明らかになります。
脳は糖を多く接種するので黒く見えます。
癌細胞も同様に黒く見えます。
ガンマ線のコントラストによって糖の取り込み量依存的に
異常な細胞種の位置を明らかにします。
糖以外にタンパク質などを使う事も出来ます。
---

//PETの利点(MRI診断と比較)//---
多発性硬化症の検査、診断にはMRIが使われます。
MRIは病変部位の磁力の変化に基づいて検査するものです。
この磁力の変化は細胞内の多数の生理的なプロセスの
間接的な結果として示されるものです(1)。
しかしながら、PETの場合は
特定の代謝プロセス(糖の取り込み)に特異的に感度を持っているため
この代謝プロセスが多発性硬化症による神経系の損傷において
特異的で、バイオマーカーとして優れていれば、
それを診断するための検査方法として適しているという事になります。
ただ、PETとMRIの利点を生かして、
それらを併用する事も検討されています(1)。
---

//PETの課題//---
PETによって異なる生物プロセスを計測するためには
異なる放射線トレーサー(検査薬)が必要ですが、
多発性硬化症に対して適した放射線トレーサーは
一部に限られるとされています(1)。
また神経細胞ネットワークの結合、間に存在する
乏突起膠細胞、免疫細胞(リンパ球)を標的にできる
PETトレーサーは現在では存在しないと言われています。
その理由はこれらの細胞を特異的に識別する
受容体やタンパク質が現在見つかっていないからです(5)。
またトレーサー(検査薬)を開発するための
時間的、人的、経済的リソースは
神経系の細胞を治療する薬と同等の量(負担)が必要であるとされています。
人の脳の変化を捉えるためには多くの評価基準を
クリアする必要があるからです(6)。
このような事を加味すると、
検査薬と薬の機能を両方兼ね備えることはできないか?
という視点が生まれますが、簡単ではないかもしれません。
---
PETはガンマ線の強さの絶対値が何らかの意味を持つのではなく
他の部位との相対値で評価する必要があります。
従って、「参照量、基準」が必要です。
しかし、その基準をどこで設定するかという事に課題があります。
血液も含めて人の身体の中は常に流動しています。
その中でガンマ線の揺らぎ、偏差があります。
そのような値の変化が基準の設定を難しくしています(1)。
そういった中で参照点に準じた領域の設定をすることが挙げられています。
例えば、アルツハイマー病では
小脳が準・参照点として設定されます(7)。
PETトレーサーや対象とする疾患に合わせて、
どこに参照点を設けるかというのを最適化する事が挙げられています(1)。
多発性硬化症では免疫機能の関与が大きく
変化の拡散、流動性が大きいため、
それに罹患していない人の同じ場所の
動きを含めてコンピューターアルゴリズムを使って分析して
参照点設定する事があります(8,9)。
この手法は多発性硬化症における
〇神経炎症(10-12)
〇ミエリン鞘(13-15)
〇アデノシン A2A受容体濃度(16)
これらの異常計測に対して実績がありますが、
エラーに対して脆弱であることが指摘されています。
---
イオンの放射に対する繰り返される暴露は
放射線トレーサーに影響を与えますが、
PET-MRIを組み合わせることで
CTに関連する放射の信号を50-80%程度取り除くことが
できるとされています(17)。
またPETスキャンの為のハードは
ここ10年で顕著に改善したと言われています。
光電子増倍管やfield-of-viewスキャナーの改善により
信号に対する感度が顕著に向上したと言われています(18,19)。
また画像診断は人工知能が得意とする分野です。
機械学習技術によって、
100倍少ない検査薬でも臨床的に有意なイメージ再形成に
成功したと言われています(20)。
---
PETは今まで単一の施設などで小さなサンプル数で
調べられてきました(1)。
従って、PETを使った分析を発展させていくためには
国際的な施設間のデータシェア、協力、治験
それによる科学論文発表などが大切になると考えられます。

//脳の炎症による代謝変化//---
神経変性の疾患になるとグルコースの代謝低下や
ミトコンドリアの機能不全が生じるとされています(3)。
従って、糖と連結させた陽電子放出物質の検査薬を
体内に入れた場合において、
脳の炎症が起こっている場合には
脳は糖の消費が大きいため黒く見えますが、
炎症が生じている部分は信号が小さくなるため、
グレー、白色化すると考えられます。

//多発性硬化症のPETイメージング//---
多発性硬化症に特異的なPETイメージングをするためには
この疾患の病理、生理を理解して、
それに合わせた放射線トレーサーを設計する必要があります。
多発性硬化症は上述したように
脳の免疫機能の異常に関わる疾患ですから
マクロファージやマイクログリアが異常に活性化されます。
そうした場合TSPO(18-kDa translocator protein)が
多く発現されることがわかっています(21,22)。
従って、これと結合性を有する放射線トレーサーが
これまで設計されてきました。
第一世代として
11C-PK11195
第二世代として
11C-PBR28,  18F-PBR111,  18F-PBR06,  11C-DPA713, 
18F-DPA714, 18F-GE180 and 18F-FEDAA1106,
これらがあります(23-25)。
臨床でもいくつかの実績があります(26,27)。
実際の画像はRef.(1), Fig.2に紹介されています。
解像度にはまだ課題があると考えられます。
---
一方で課題もあります。
TSPOタンパク質は多型であるために
そのタイプによって放射線トレーサーの感度が変わることです
従って、ガンマ線の信号強度と
マイクログリアやマクロファージで活性化されている
TSPOの程度の相関関係には誤差があるということです。
こういったことは個人や地域(民族)によっても差があります。
従って、治験を行う際には
感度の低い、高いTSPOがどれくらい発現されているか
という情報が大切になります。
またTSPO自体にも本当に脳の免疫機能の活性化
多発性硬化症との関連について議論の余地があります。
ゆえに信頼性の高い標的受容体の探索は
改善された放射線トレーサーの設計、PET分析のために
必要なものです。
例えば、
〇cannabinoid receptor 2, 
〇purinergic receptors P2X7 and P2Y12, 
〇macrophage colony-stimulating factor 1 receptor (CSF1R), 
〇Mer tyrosine kinase, cyclooxygenase 1 and 2, 
〇the kynurenine metabolic pathway, 
〇reactive oxygen species
これらが報告されています(28-30)。
---
一方、冒頭で述べた糖と同様の代謝機能などにも着目して
複数の放射線トレーサーによるPET分析を行い
「画像を重ね合わせること」で多発性硬化症の診断の為の
信頼性を上げる事もできるかもしれません。
---
また他の細胞として
同じ神経系の間質にあるアストロサイトと
多発性硬化症の関係
それに対する放射線トレーサーの設計が検討されています。
11C-BU99008放射線トレーサにおいて
すでにパーキンソン病では調べられていますが、
多発性硬化症の患者さんには未実施となっています(31)。
---
その他、ミエリン鞘の形成異常なども着目されています。
他の脳神経系の疾患でも同じですが、
病理、生理を理解して、
最適な標的を見つけることが大事です。
前述したように異なる放射線トレーサーを2回に分けて
投与して、それらから得られた画像を重ね合わせるという
方法も考えられます。
また、画像分析においては機械学習、人工知能も使えます。
それらターゲットを見つけるためには
患者さんからの細胞から異常のある脳組織、神経系を
iPS細胞など細胞再生技術で生み出して、
代謝機能やタンパク質発現などを分子レベルで
生体外で調べる事ができれば、
PET分析は著しく飛躍すると考えられます。
こういった分析はPET分析だけではなく、
薬剤の設計や病理の理解にも役立つので、
資源を投資する価値はあると考えられます。
例えば、原子間力顕微鏡などを使った
表面受容体などを含めた細胞レベルの分析方法も
検討されています(4)。
後述する細胞特異的輸送系統
(The cell-type-specific delivery system)でも
細胞種ごとの表面受容体などの分析(種類、統計)は
欠かせないものとなっています。

//新型コロナウィルス後遺症とPET//---
新型コロナウィルスの後遺症が肥満細胞、
あるいはそれに追随したヒスタミン、TNF、IL-6
などと関連があるなら、
その細胞やタンパク質に結合性をもつ
放射線トレーサーを設計することで
これらの細胞が脳のどこに存在するか
あるいはしないのか画像によって確認できる可能性があります。
また、上述した多発性硬化症の
放射線トレーサーをそのまま使える可能性があります。
それで異常が見られた場合には
マイクログリアやマクロファージなど
免疫的な異常が脳内で生じている事の証明にもなります。

//放射線トレーサーの付加的機能//---
放射線トレーサーは適切な結合因子を選べば
PET分析によって場所特定を行う事ができます。
放射線トレーサーに薬剤を複合体として構成できれば、
位置がわかるだけではなく
薬剤の輸送の確認、輸送効率の評価
さらに治療まで同時に行うことができる可能性があります。
また信号強度の変化を見ることで
治療効果を位置特異的に評価する事も出来るかもしれません。
放射線トレーサーの設計は
薬剤の開発と同程度の資源、労力、コストが必要である
とされていますから、同時に薬剤開発を兼ねることで
これらの資源を有効活用できる可能性もあります。

//PETの適用性について(考察)//---
陽電子放出物質18F-FDGに結合させるのは
糖に限らず、薬剤、細胞、他の代謝生成物など適用可能かどうか?
炎症性マイクログリアに多く発現されてるTSPOに結合させる事が
可能なので、原理的には可能であると考えています。
例えば、薬剤であれば、
薬剤がどの場所に輸送されたか陽電子の信号から
分析する事が可能かどうか?
他には細胞への適用も考えられます。
例えば、CAR免疫細胞に陽電子放出物質を付けて
全身のどの部分に生着しているか確認できるかどうか?
糖以外の脂質、微量金属、タンパク質などに
結合させることでその代謝生成物依存的な信号が
糖と同様に得られるかどうか?
このような事が考えられます。

//細胞特異的輸送系統の観点//---
抗体薬物複合体では抗体の発現量が必ずしも抗がん剤の
効き目に影響を与えていなかったという結果があります(2)。
このような細胞特異的に輸送するシステムでは
薬剤が実際に狙い通りの機序によって効率的に輸送されているか?
というのを確認する必要があります。
抗体薬物複合体や細胞特異的輸送系統であるナノ粒子に
陽電子を放出させる物質をいれておいて、
それが放出されたときに陽電子消滅によってガンマ線を
場所特異的に分析するような検査薬を作ることができるか?
という視点があります。
こういった特定の物質を入れて、
そこから出る何らかの信号によって
体外から分析する方法はPETに限らず、
細胞特異的輸送系統(The cell-type-specific delivery system)
を実現するにあたって不可欠であると考えられます。
Benedetta Bodini氏, Matteo Tonietto氏らが指摘されているように
有効な検査薬を作ることは、薬剤を作る事と同等の資源、労力が
必要であるとされています。
従って、上述した薬剤を試薬を兼ねる構想や
薬剤や試薬を作るための手順の技術発展、低コスト化なども
同様に必要になります。

(Reference)
(1)
Benedetta Bodini, Matteo Tonietto, Laura Airas & Bruno Stankoff 
Positron emission tomography in multiple sclerosis — straight to the target
Nature Reviews Neurology (2021)
---
Author information
Affiliations
Sorbonne Université, Paris Brain Institute, ICM, CNRS, Inserm, Paris, France
Benedetta Bodini, Matteo Tonietto & Bruno Stankoff
Neurology Department, St. Antoine Hospital, APHP, Paris, France
Benedetta Bodini & Bruno Stankoff
Université Paris-Saclay, CEA, CNRS, Inserm, BioMaps, Service Hospitalier Frédéric Joliot, Orsay, France
Matteo Tonietto
Turku PET Centre, Division of Clinical Neurosciences, Turku University Hospital and University of Turku, Turku, Finland
Laura Airas
(2)
Bob T. Li, M.D., Ph.D., M.P.H., Egbert F. Smit, M.D., Ph.D., Yasushi Goto, M.D., Ph.D., Kazuhiko Nakagawa, M.D., Hibiki Udagawa, M.D., Julien Mazières, M.D., Misako Nagasaka, M.D., Ph.D., Lyudmila Bazhenova, M.D., Andreas N. Saltos, M.D., Enriqueta Felip, M.D., Ph.D., Jose M. Pacheco, M.D., Maurice Pérol, M.D., Luis Paz-Ares, M.D., Kapil Saxena, M.D., Ryota Shiga, B.Sc., Yingkai Cheng, M.D., Ph.D., Suddhasatta Acharyya, Ph.D., Patrik Vitazka, M.D., Ph.D., Javad Shahidi, M.D., David Planchard, M.D., Ph.D., and Pasi A. Jänne, M.D., Ph.D. for the DESTINY-Lung01 Trial Investigators*
Trastuzumab Deruxtecan in HER2-Mutant Non–Small-Cell Lung Cancer
The New England Journal of Medicine September 18, 2021
---
Author Affiliations
From Memorial Sloan Kettering Cancer Center and Weill Cornell Medicine, New York (B.T.L.); the Netherlands Cancer Institute, Amsterdam (E.F.S); the National Cancer Center Hospital, Tokyo (Y.G.), Kindai University Hospital, Osaka (K.N.), and the National Cancer Center East, Kashiwa (H.U.) — all in Japan; Centre Hospitalier Universitaire, Toulouse (J.M.), Centre Léon Bérard, Lyon (M.P.), and the Department of Medical Oncology, Thoracic Group, Gustave Roussy, Villejuif (D.P.) — all in France; Karmanos Cancer Institute, Detroit (M.N.); the University of California, San Diego, Moores Cancer Center, San Diego (L.B.); Moffitt Cancer Center, Tampa, FL (A.N.S.); Vall d’Hebron University Hospital and Vall d’Hebron Institute of Oncology, Barcelona (E.F.); University of Colorado, Aurora (J.M.P.); Hospital Universitario 12 de Octubre, H12O–Centro Nacional de Investigaciones Oncológicas (CNIO) Lung Cancer Clinical Research Unit, and Complutense University, Madrid (L.P.-A.); Daiichi Sankyo, Basking Ridge, NJ (K.S., R.S., Y.C., S.A., P.V., J.S.); and Dana–Farber Cancer Institute and the Belfer Center for Applied Cancer Science, Boston (P.A.J.).
(3)
Blanca I Aldana
Microglia-Specific Metabolic Changes in Neurodegeneration
J Mol Biol. 2019 Apr 19;431(9):1830-1842
(4)
Albertus Viljoen, Marion Mathelié-Guinlet, Ankita Ray, Nico Strohmeyer, Yoo Jin Oh, Peter Hinterdorfer, Daniel J. Müller, David Alsteens & Yves F. Dufrêne
Force spectroscopy of single cells using atomic force microscopy
Nature Reviews Methods Primers volume 1, Article number: 63 (2021)
---
Author information
Affiliations
Louvain Institute of Biomolecular Science and Technology, Université Catholique de Louvain, Louvain-la-Neuve, Belgium
Albertus Viljoen, Marion Mathelié-Guinlet, Ankita Ray, David Alsteens & Yves F. Dufrêne
Departement of Biosystems Science and Engineering, ETH Zurich, Basel, Switzerland
Nico Strohmeyer & Daniel J. Müller
Institute of Biophysics, Johannes Kepler University, Linz, Austria
Yoo Jin Oh & Peter Hinterdorfer
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Glial biomarkers  in human central nervous system disease. 
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Brain 142, 3116–3128 (2019).

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医療従事者のmRNAワクチンの感染予防効果


新型コロナウィルスの感染のリスクは状況によって変わります。
例えば、医療従事者が新型コロナウィルスに罹患している
患者さんの治療にあたっている場合には、
防護服はつけていますが、感染のリスクは高くなります。
あるいは家族が感染した場合には、
家庭内感染のリスクが高くなります。
このようなリスクの高い状況で
新型コロナウィルスのワクチンはどれくらい感染を予防するか?
というのも指標として大切になります。
---
T. Pilishvili(敬称略)ら医療研究グループは
医療従事者に絞って
感染率の評価、mRNAワクチンの効果の評価を行っています。
本日はその結果の一部を読者の方と情報共有したいと思います。

//条件//---
期間: 2020/12/28~2020/5/19
場所:アメリカ33か所
年齢:37歳(中央値)
女性:82%
※女性が多い
治験デザイン:Test-control
Case:PCR陽性/症状が1つ
Control:PCR陰性/症状に関わらない
Complete vaccination: 2回目接種から7日以上
ワクチン:Pfizer–BioNTech  BNT162b2 vaccine  
/Moderna  mRNA-1273 vaccine

//結果(ワクチンの効果)//---
2回目接種から7日以上
BNT162b2: 88.8% 
m-RNA 1273 96.3%
-
2回目接種から7日以上
発熱を伴うケースの予防効果:94.2%
-
2回目接種から7日以上
患者さんとの接触機会がかなり多い
91.1%
-
患者さんとの接触機会が中程度:
85.5%
-
直接的な接触はほとんどない
92.4%
-
2回目接種からの期間
1-2週: 90-95%
3-4週: 92-98%
5-6週: 85-95%
7-8週: 80-95%
9-10週: 70-90%
11-12週: 70-90%
13-14週: 60-90%

//結果(症状)//---
2回目接種から7日以上たってから
ブレークスルー感染した167人に対して
37.8℃以上の熱が出たのは
おおよそ46人 28% 
息切れは 31人 19%。
しかしながら、無症状でPCR陽性の人は
今回の対象から外れているので
実際に感染した人の割合はもっと多く、
逆に症状がある人はもっと少ない可能性があります。

//考察//---
実際にはPCRテストをした基準が
症状が1つあった場合とされていますが、
定期的に全員テストした場合には
無症状で陽性になる人も多くいると思われます。
従って、ワクチンの実際の効果は
上の数字よりも無症状感染を含めると小さくなる可能性があります。
また、感染力の強いデルタ株に関しては
評価時期からも多くは存在していないと考えられるので
現在の状況にあてはめて考える場合には注意が必要です。
---

(Reference)
(1)
Tamara Pilishvili, Ph.D., M.P.H., Ryan Gierke, M.P.H., Katherine E. Fleming-Dutra, M.D., Jennifer L. Farrar, M.P.H., Nicholas M. Mohr, M.D., David A. Talan, M.D., Anusha Krishnadasan, Ph.D., Karisa K. Harland, Ph.D., Howard A. Smithline, M.D., Peter C. Hou, M.D., Lilly C. Lee, M.D., Stephen C. Lim, M.D., Gregory J. Moran, M.D., Elizabeth Krebs, M.D., Mark T. Steele, M.D., David G. Beiser, M.D., Brett Faine, Pharm.D., John P. Haran, M.D., Ph.D., Utsav Nandi, M.D., M.S.C.I., Walter A. Schrading, M.D., Brian Chinnock, M.D., Daniel J. Henning, M.D., M.P.H., Frank Lovecchio, D.O., M.P.H., Jane Lee, M.P.H., Devra Barter, M.Sc., Monica Brackney, M.S., Scott K. Fridkin, M.D., Kaytlynn Marceaux-Galli, M.P.H., Sarah Lim, M.B., B.Ch., Erin C. Phipps, D.V.M., M.P.H., Ghinwa Dumyati, M.D., Rebecca Pierce, Ph.D., Tiffanie M. Markus, Ph.D., Deverick J. Anderson, M.D., M.P.H., Amanda K. Debes, Ph.D., Michael Y. Lin, M.D., M.P.H., Jeanmarie Mayer, M.D., Jennie H. Kwon, D.O., Nasia Safdar, M.D., Ph.D., Marc Fischer, M.D., Rosalyn Singleton, M.D., Nora Chea, M.D., Shelley S. Magill, M.D., Ph.D., Jennifer R. Verani, M.D., M.P.H., and Stephanie J. Schrag, D.Phil. for the Vaccine Effectiveness among Healthcare Personnel Study Team*
Effectiveness of mRNA Covid-19 Vaccine among U.S. Health Care Personnel
The New England Journal of Medicine September 22, 2021
---
Author Affiliations
From the Covid-19 Response Team, Centers for Disease Control and Prevention (T.P., R.G., K.E.F.-D., J.L.F., M.F., N.C., S.S.M., J.R.V., S.J.S.), and the Georgia Emerging Infections Program and Emory University School of Medicine (S.K.F.) — both in Atlanta; the University of Iowa, Iowa City (N.M.M., D.A.T., K.K.H., B.F.); Olive View and University of California Los Angeles Ronald Reagan Medical Centers, Los Angeles (D.A.T., A.K., G.J.M.), the University of California San Francisco, Fresno (B.C.), and the California Emerging Infections Program, Oakland (J.L.); Baystate Medical Center, Springfield (H.A.S.), Brigham and Women’s Hospital, Boston (P.C.H.), and the University of Massachusetts Medical Center, Worcester (J.P.H.) — all in Massachusetts; Jackson Memorial Hospital, Miami (L.C.L.); University Medical Center, Louisiana State University, New Orleans (S.C.L.); Thomas Jefferson University Hospital, Philadelphia (E.K.); Truman Medical Center, University of Missouri–Kansas City School of Medicine, Kansas City (M.T.S.); the University of Chicago (D.G.B.) and the Department of Medicine, Rush University Medical Center (M.Y.L.) — both in Chicago; the University of Mississippi Medical Center, Jackson (U.N.); the University of Alabama at Birmingham, Birmingham (W.A.S.); the University of Washington, Seattle (D.J.H.); Valleywise Health Medical Center, Arizona State University, Phoenix (F.L.); the Colorado Department of Public Health and Environment, Denver (D.B.); the Connecticut Emerging Infections Program and Yale School of Public Health, New Haven (M.B.); the Maryland Department of Health (K.M.-G.) and Johns Hopkins University School of Medicine (A.K.D.) — both in Baltimore; the Minnesota Emerging Infections Program, Minnesota Department of Health, St. Paul (S.L.); the University of New Mexico, Albuquerque (E.C.P.), and the New Mexico Emerging Infections Program, Santa Fe (E.C.P.); the University of Rochester Medical Center and the New York State–Rochester Emerging Infections Program, Rochester (G.D.); the Public Health Division, Oregon Health Authority, Portland (R.P.); Vanderbilt University Medical Center, Nashville (T.M.M.); the Duke Center for Antimicrobial Stewardship and Infection Prevention, Duke University School of Medicine, Durham, NC (D.J.A.); the University of Utah Veterans Affairs Salt Lake City Health Care System, Salt Lake City (J.M.); Washington University School of Medicine, Division of Infectious Diseases, St. Louis (J.H.K.); the University of Wisconsin–Madison and the William S. Middleton Memorial Veterans Hospital, Madison (N.S.); and the Alaska Native Tribal Health Consortium, Anchorage (R.S.).


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mRNAワクチンの症状の程度別の予防効果

新型コロナウィルス陽性、陰性という概念が使われますが、
実際には感染症に対して、
このように2分化する事は適切ではないと考えられます。
例えば、新型コロナウィルスが1つでも身体にいれば、
それは感染という事になるのか?
その場合、PCRでは検出限界以下になるので陰性になります。
従って、ワクチンの効果を考える場合には
社会全体、個人の体内の新型コロナウィルス量を
如何に減らすことができるか?
ということが重要になります。
なぜ、このような前提を述べるかというと、
無症状感染、軽症、中等症、重症それぞれに対して
ワクチンの予防効果は異なるからです。
もっと言えば、無症状の中でも
PCR検出限界以下で感染している場合とそうではない場合があります。
このように考えると非常に複雑になるので
少なくとも無症状、軽症、重症、死亡の比較をすることは必要です。
---
H.M. El Sahly, L.R. Baden(敬称略)ら医療研究グループが
アメリカで行ったモデルナ製のmRNA-1273ワクチンの
効果の評価の中で上述したような
感染の程度別の予防効果のデータがありました(1)ので
その部分を抜粋してデータ共有いたします。

//結果//---
14,164(偽薬)/14,287(ワクチン)の人数
18歳以上
2回目接種から14日後
ワクチンの効果(%)
有症状感染(全体):55人(vs 744人) 93.2%
重症:2人(vs 106人) 98.2%
無症状感染: 214人(vs 498人) 63.0%
---

//考察//---
この結果から無症状感染の予防効果は
実際に流布しているワクチンの予防効果よりも
かなり低いことがわかります。
また、PCR検出限界以下のウィルス感染については
もっと効果が低い可能性があります。
例えば、リスクがある場合に検査キットを配って
それで多くの人を検査した場合には
想定よりもかなり多くの人が陽性になる可能性があります。
それをカウントして感染者数として報道すると
また社会的混乱の原因となりうります。
従って、評価者は
医療介入が必要な感染者数を追跡する必要があります。
検査数が今よりも顕著に増えた場合には
特にその必要性が高まってきます。
---

(Reference)
(1)
Hana M. El Sahly, M.D., Lindsey R. Baden, M.D., Brandon Essink, M.D., Susanne Doblecki-Lewis, M.D., Judith M. Martin, M.D., Evan J. Anderson, M.D., Thomas B. Campbell, M.D., Jesse Clark, M.D., Lisa A. Jackson, M.D., Carl J. Fichtenbaum, M.D., Marcus Zervos, M.D., Bruce Rankin, D.O., Frank Eder, M.D., Gregory Feldman, M.D., Christina Kennelly, M.D., Laurie Han-Conrad, M.D., Michael Levin, M.D., Kathleen M. Neuzil, M.D., Lawrence Corey, M.D., Peter Gilbert, Ph.D., Holly Janes, Ph.D., Dean Follmann, Ph.D., Mary Marovich, M.D., Laura Polakowski, M.D., John R. Mascola, M.D., Julie E. Ledgerwood, D.O., Barney S. Graham, M.D., Allison August, M.D., Heather Clouting, M.Sc., Weiping Deng, Ph.D., Shu Han, Ph.D., Brett Leav, M.D., Deb Manzo, M.Sc., Rolando Pajon, Ph.D., Florian Schödel, M.D., Ph.D., Joanne E. Tomassini, Ph.D., Honghong Zhou, Ph.D., and Jacqueline Miller, M.D. for the COVE Study Group*
Efficacy of the mRNA-1273 SARS-CoV-2 Vaccine at Completion of Blinded Phase
The New England Journal of Medicine September 22, 2021
---
Author Affiliations
From Baylor College of Medicine, Houston (H.M.E.S.), and Javara, The Woodlands (C.K.) — both in Texas; Brigham and Women’s Hospital, Boston (L.R.B.), and Moderna, Cambridge (A.A., H.C., W.D., S.H., B.L., D.M., R.P., F.S., J.E.T., H.Z., J.M.) — both in Massachusetts; Meridian Clinical Research, Baton Rouge, LA (B.E., F.E.); University of Miami, Miami (S.D.-L.), and DeLand Clinical Research Unit, DeLand (B.R.) — both in Florida; University of Pittsburgh School of Medicine, Pittsburgh (J.M.M.); Emory University School of Medicine, Atlanta (E.J.A.); University of Colorado School of Medicine, Aurora (T.B.C.); University of California, Los Angeles (J.C.), and Wake Research–Medical Center for Clinical Research, San Diego (L.H.-C.) — both in California; Kaiser Permanente Washington Health Research Institute (L.A.J.), and Fred Hutchinson Cancer Research Center (L.C., P.G., H.J.) — both in Seattle; University of Cincinnati, Cincinnati (C.J.F.); Henry Ford Health System, Detroit (M.Z.); Vitalink Research, Greenville, SC (G.F.); Clinical Research Center of Nevada, Wake Research, Las Vegas (M.L.); and the University of Maryland, College Park (K.M.N.), and the Vaccine Research Center (J.R.M., J.E.L., B.S.G.), National Institute of Allergy and Infectious Diseases (D.F., M.M., L.P.), National Institutes of Health, Bethesda — both in Maryland.

2021年9月22日水曜日 0 コメント

子宮頸がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)の効果

身体の中に異常な癌細胞ができたときには、
身体は異物とみなし、免疫系を主体に癌細胞を攻撃する
システムが働くと考えられます。
このような免疫機能は、
腫瘍組織が大きくなって治療が必要になり、
抗がん剤治療を行っている際にも並列して働いています。
従って、化学療法の効果は
免疫機能がどれだけ有効に働いているかで
変わってくると考えられます。
細胞には免疫機能を調整するために
免疫チェックポイントというのが存在しますが、
この免疫チェックポイントは癌細胞も同様に持っています。
癌細胞が免疫チェックポイントで免疫細胞を認識した時には
免疫機能が弱まると考えられています。
従って、免疫的な治療や化学療法を有効にするために
免疫チェックポイントを抑制する事が戦略としてあります。
---
N. Colombo, C. Dubot, D. Lorusso, M.V. Caceres(敬称略)らは
プラチナベースの抗がん剤、
血管内皮細胞増殖因子阻害を持つベバシズマブに加えて
免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブを
加えた時の効果を調べています(1)。
対象となった癌は再発性、転移性のある子宮頸がんです。

//条件//---
-
プラセボはペムブロリズマブがない条件
人数:308/309(プラセボ)
下記、条件はペムブロリズマブ投与群、
プラセボとほぼ同等。
-
年齢:51歳(中央値)
ステージ:1:21.8%, 2:27.8%, 3B:14.9%, 4B,30.5%
-
離れた転移を持つ
持続性or再発性:64.6%
-
離れていない転移をもつ
持続性or再発性:16.6%
-
組織のタイプ
線がん:18.2%
腺扁平上皮がん:4.9%
扁平上皮がん:76.3%
-
PD-L1スコア 
<1: 11.4%
1 to <10: 37.3%
≧10: 51.3%
-
ベバシズマブ使用:63.6%
ベバシズマブ不使用:36.4%

//結果//---
病気の進行、死亡のハザード比は
全体で0.65
2年全生存率:53.0%(vs 41.7%)
-
PD-L1スコア別ハザード比 
<1: 0.94
1 to <10: 0.68
≧10: 0.58
PD-L1のスコアが高いほど効果が表れています。
従って、免疫チェックポイント阻害の効果が
数値からも現れていることが示されています。
-
ベバシズマブ使用:0.61(ハザード比)
ベバシズマブ不使用:0.74(ハザード比)
-
転移あり:0.92(ハザード比)
転移なし:0.58(ハザード比)
転移がないほうが免疫チェックポイント阻害の効果が
顕著に高いことが示されています。
-
ペムブロリズマブ(免疫チェックポイント阻害薬)を
加える事による顕著な副作用の変化はありません。

//結論//---
プラチナベースの抗がん剤、
血管内皮細胞増殖因子阻害を持つベバシズマブに加えて
ペムブロリズマブ(免疫チェックポイント阻害薬)を
加える事による癌進行フリー、生存率は顕著に長くなります。
またPD-L1レベルが高い人ほど、
ペムブロリズマブの相対効果は高くなっています。
ペムブロリズマブを加える事による
副作用の顕著な変化は確認されていません。

(Reference)
(1)
Nicoletta Colombo, M.D., Ph.D., Coraline Dubot, M.D., Domenica Lorusso, M.D., Ph.D., M. Valeria Caceres, M.D., Ph.D., Kosei Hasegawa, M.D., Ph.D., Ronnie Shapira-Frommer, M.D., Krishnansu S. Tewari, M.D., Pamela Salman, M.D., Edwin Hoyos Usta, M.D., Eduardo Yañez, M.D., Mahmut Gümüş, M.D., Mivael Olivera Hurtado de Mendoza, M.D., Vanessa Samouëlian, M.D., Ph.D., Vincent Castonguay, M.D., Alexander Arkhipov, M.D., Ph.D., Sarper Toker, M.D., M.B.A., Kan Li, Ph.D., Stephen M. Keefe, M.D., and Bradley J. Monk, M.D. for the KEYNOTE-826 Investigators*
Pembrolizumab for Persistent, Recurrent, or Metastatic Cervical Cancer
The New England Journal of Medicine September 18, 2021
---
Author Affiliations
From the University of Milan–Bicocca and European Institute of Oncology IRCCS, Milan (N.C.), and Fondazione Policlinico Universitario A. Gemelli IRCCS and Catholic University of the Sacred Heart, Rome (D.L.) — both in Italy; Institut Curie Saint-Cloud, Group d’Investigateurs Nationaux pour l’Etude des Cancers Ovariens, Saint-Cloud, France (C.D.); Instituto de Oncología Ángel H. Roffo, Buenos Aires (M.V.C.); Saitama Medical University International Medical Center, Hidaka, Japan (K.H.); Ella Lemelbaum Institute for Immuno-Oncology, Sheba Medical Center, Ramat Gan, Israel (R.S.-F.); the University of California, Irvine, Orange (K.S.T.); Oncovida Cancer Center, Providencia (P.S.), and Universidad de la Frontera, Temuco (E.Y.) — both in Chile; IMAT (Instituto Médico de Alta Tecnología) Oncomedica, Monteria, Colombia (E.H.U.); Istanbul Medeniyet University Hospital, Istanbul, Turkey (M.G.); Instituto Nacional de Enfermedades Neoplásicas, Lima, Peru (M.O.H.M.); Centre Hospitalier de l’Université de Montréal, Centre de Recherche de l’Université de Montréal, Université de Montréal, Montreal (V.S.), and Centre Hospitalier Universitaire de Québec, Université Laval, Quebec (V.C.) — both in Quebec, Canada; the Medical Rehabilitation Center of the Ministry of Health of the Russian Federation, Moscow (A.A.); Merck, Kenilworth, NJ (S.T., K.L., S.M.K.); and Arizona Oncology (U.S. Oncology Network), University of Arizona College of Medicine, Creighton University School of Medicine, Phoenix (B.J.M.).
Support
Supported by Merck Sharp and Dohme, a subsidiary of Merck.


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HER2変異非小細胞肺癌の抗体薬物複合体(DS-8201)の効果

細胞特異的輸送系統は抗体薬物複合体と
基本的なコンセプトは類似しています。
細胞特異的輸送系統では輸送する物質や
輸送媒体、アンカーする受容体など
抗体薬物複合体のコンセプトをもっと押し広げ、
一般化したものです。
細胞特異的輸送系統は本当に有効かどうかという推測において
抗体薬物複合体の臨床効果の評価は非常に重要になります。
---
乳癌の一つのタイプであるHER2は胃癌でも生じるし
肺癌でも生じることが知られています(1)。
Bob T. Li, Egbert F. Smit(敬称略)ら
医療研究グループは非小細胞肺癌に対して、
HER2受容体を標的とした抗体トラスズマブと
トポイソメラーゼ1阻害剤であるデルクステカン
をへき開可能なテトラペプチドで結合した
抗体薬物複合体の臨床効果について評価しています(1)。
両方とも抗がん作用があり、
デルクステカンは細胞がDNAエラーを感知して取り除く
DNAチェックポイントが癌細胞で働かなくなっていることに
選択的感受性を持つと考えられる薬剤です(2,3)。
 ---
今回、対象とされたのは
化学療法、免疫療法などで効果がなく、癌の進行が見られた
難治性の非小細胞肺癌を持つ患者さんで
その中で上述したようにHER2変異の特徴を持つ人を集めています。

//条件//---
プログラム: DESTINY-Lung01
治験形態:オープンラベル、フェーズ2
場所:北アメリカ、日本、ヨーロッパ、21か所
期間:2018/5/30~2020/7/21
人数:91人
年齢中央値:60歳
女性割合:66%
構成比:アジア25%, 北アメリカ38%, ヨーロッパ36%
-
従来の治療:
〇プラチナベース 95%
〇ドセタキセル 20%
〇免疫チェックポイント阻害 66%
〇HER2 TKI 14%
-
従来の治療中断理由:病状の進行 70%
脳への転移: 36%
肺の切除: 22%

//結果//---
Best response 
完全寛解: 1%
部分奏功: 54%
病状安定: 37%
病状進行: 3%
-
腫瘍細胞の大きさの変化
患者さんによってばらつきが大きく
おおよそ30~40%程度縮小が平均
-
細胞表面のHER2受容体発現量と
腫瘍組織の縮小率には相関は認められません。
-
無増悪生存期間:8.2カ月
全生存率:17.8カ月
-
脳への転移癌に対する評価は実施されていません。
-
(副作用)抜粋
#:グレード1-2
嘔吐:64%, 倦怠感:46%, 脱毛:46% 
#:グレード3
好中球減少: 15%, 嘔吐:9%, 倦怠感: 7%

抗がん剤治療で現れる典型的な副作用がみられる
---
他の治療で進行が見られた難治性の非小細胞肺癌に対して
半数程度は一定の奏功が見られました。

//考察//---
抗体薬物複合体で期待されることは
HER2受容体に特異的に結合する事によって
薬剤を含む複合体の癌組織への輸送効率が高まる事です。
もし、そうであれば、
免疫組織化学分析で評価したHER2発現量に依存して
腫瘍組織の縮小が確認される事が期待されます。
しかし、今回の結果ではその傾向はみられませんでした。
この事はBob T. Li氏らも指摘しています。
これについてどう考えるか?
これが非常に重要になります。
-
一つは両方とも抗がん作用があるので
一緒に結合して運ばれることで「並列的に」癌に作用した
ということが考えられます。
化学療法と免疫療法の組み合わせと違う事は
「一緒に、同時に」運ばれる事です。
それが何らかの正の奏功に関与した可能性が考えられます。
例えば、癌組織の変異、進化により強いかもしれないし、
癌細胞内のエンドサイトーシスに関わるかもしれません。
-
もう一つの可能性としては輸送効率です。
今回癌細胞自身が細胞表面に発現しているHER2受容体量と
癌の奏効率には相関がありませんでしたが、
本当に薬剤の癌組織までの輸送効率が
化学療法や免疫療法単独と比べて変わらなかったか?
という点が気になります。
そうしたことを調べるためには
今回複合体にした抗体と抗がん剤を単独にして
複合体との輸送効率を
HER2変異がある肺癌組織に対して
HER2受容体量に関わらず評価する事が考えられます。
これは人以外のマウスでもいいと思います。

(Reference)
(1)
Bob T. Li, M.D., Ph.D., M.P.H., Egbert F. Smit, M.D., Ph.D., Yasushi Goto, M.D., Ph.D., Kazuhiko Nakagawa, M.D., Hibiki Udagawa, M.D., Julien Mazières, M.D., Misako Nagasaka, M.D., Ph.D., Lyudmila Bazhenova, M.D., Andreas N. Saltos, M.D., Enriqueta Felip, M.D., Ph.D., Jose M. Pacheco, M.D., Maurice Pérol, M.D., Luis Paz-Ares, M.D., Kapil Saxena, M.D., Ryota Shiga, B.Sc., Yingkai Cheng, M.D., Ph.D., Suddhasatta Acharyya, Ph.D., Patrik Vitazka, M.D., Ph.D., Javad Shahidi, M.D., David Planchard, M.D., Ph.D., and Pasi A. Jänne, M.D., Ph.D. for the DESTINY-Lung01 Trial Investigators*
Trastuzumab Deruxtecan in HER2-Mutant Non–Small-Cell Lung Cancer
The New England Journal of Medicine September 18, 2021
---
Author Affiliations
From Memorial Sloan Kettering Cancer Center and Weill Cornell Medicine, New York (B.T.L.); the Netherlands Cancer Institute, Amsterdam (E.F.S); the National Cancer Center Hospital, Tokyo (Y.G.), Kindai University Hospital, Osaka (K.N.), and the National Cancer Center East, Kashiwa (H.U.) — all in Japan; Centre Hospitalier Universitaire, Toulouse (J.M.), Centre Léon Bérard, Lyon (M.P.), and the Department of Medical Oncology, Thoracic Group, Gustave Roussy, Villejuif (D.P.) — all in France; Karmanos Cancer Institute, Detroit (M.N.); the University of California, San Diego, Moores Cancer Center, San Diego (L.B.); Moffitt Cancer Center, Tampa, FL (A.N.S.); Vall d’Hebron University Hospital and Vall d’Hebron Institute of Oncology, Barcelona (E.F.); University of Colorado, Aurora (J.M.P.); Hospital Universitario 12 de Octubre, H12O–Centro Nacional de Investigaciones Oncológicas (CNIO) Lung Cancer Clinical Research Unit, and Complutense University, Madrid (L.P.-A.); Daiichi Sankyo, Basking Ridge, NJ (K.S., R.S., Y.C., S.A., P.V., J.S.); and Dana–Farber Cancer Institute and the Belfer Center for Applied Cancer Science, Boston (P.A.J.).
Suport
Supported by Daiichi Sankyo and AstraZeneca. Dr. Li was also supported by grants from the National Institutes of Health (P30 CA008748 and 1R01CA249666-01A1) to the Memorial Sloan Kettering Cancer Center.
(2)
Pommier, Yves (2009-07-08).. 
"DNA Topoisomerase I Inhibitors: Chemistry, Biology, and Interfacial Inhibition". 
Chemical Reviews. 109 (7): 2894–2902. 
(3)
Pommier, Yves; Leo, Elisabetta; Zhang, Hongliang; Marchand, Christophe (2010-05-28). 
"DNA Topoisomerases and Their Poisoning by Anticancer and Antibacterial Drugs". 
Chemistry & Biology. 17 (5): 421–433.

2021年9月21日火曜日 0 コメント

胚中心におけるB細胞の動的制御因子

T細胞はリンパ系免疫細胞ですが、祖先は骨髄の造血幹細胞に由来し
心臓の上部にある胸腺でT細胞の特徴を持つように分化していきます。
このT細胞は胸腺内を皮質から髄質まで移動する段階で、
獲得免疫系固有の能力を有するように進化していきます。
その際、細胞周期の移行で存在するように
分化の過程の中で有用な細胞だけを残すようなチェックポイントがあります。
このチェックポイントを正の選択(Positive selection)と呼びます(2)。
こういった免疫細胞の正の選択は抗体を生み出すB細胞にも存在します。
B細胞は2次リンパ節の中にある胚中心で
抗原、樹状細胞、濾胞性ヘルパーT細胞などと相互作用する中で
免疫グロブリン遺伝子の体細胞超変異を繰り返し経験し
免疫グロブリンのクラススイッチが起こり
IgM抗体からIgG抗体が生み出され、
上述した抗原に対して親和性の高いB細胞が残るような
正の選択が起こり、それが増殖し、数を増やす(1,10)、
ということです。
上で述べた抗原に当たるのが、
新型コロナウィルスの場合はワクチンによって生み出された
Sタンパク質であったり、ウィルスそのものです。
---
Arun Cumpelik, David Heja, Yuan Hu(敬称略)らは
今まで理解が不十分だったB細胞の正の選択について
その生理プロセスを明らかにしています(1)。
それによると
分解促進因子(CD55)、相補的なC3転換酵素を抑制
C5b-9 inhibitor CD59を増加させることによって
C3へき開活性依存的に
正の選択に必要なC3a-、C5a受容体信号を活性化させる事を
確認しています(1)。
この受容体の活性化によって
従来から関連性が指摘されていたmTOR、MYCを
活性化させることが示されています(10-13)。
従って、今回、従来から考えられていた生理プロセスの
より上流側が明らかになったということです。
---
一方で、重要なのが体細胞超変異によって抗体が多様化する事です。
これは、抗原(例えば新型コロナウィルス)を認識するために
B細胞の表面にある受容体が
この変異によって多様になり、
より多くの形のタンパク質を認識できるようになるからです。
それを認識する事に寄って抗体が生まれるので
結果として、抗体の多様性が高まるということです。
この事は、変異を繰り替えている新型コロナウィルスにおいて
よりユニバーサルに中和抗体価を持つ抗体群の分泌に
関連していると考えられます(3-5)
---
このような親和性成熟は長い期間起こっている可能性があります。
新型コロナウィルス感染から1,3か月後と12カ月後を比較すると
12カ月経過後には変異に対する中和抗体価の偏差が小さくなり、
より多くの変異に対して高い値を示すようになります(6)(Fig.4g)。
従って、新型コロナウィルスで数か月以上間隔を空けて
3回目の接種をしたときに生み出された抗体が
同様に、ベータ株やデルタ株などの変異に対する
中和抗体価が高かった(3-5)事に対して
Zijun Wang氏らの結果(6)と合理性を見出すことができます。
---
親和性成熟は大きな正の側面はありますが、
少なくとも私も含め科学者、医療関係者の中で
継続的に注意しておかないといけないのが
体細胞超変異のミス標的が起こる
可能性があるかもしれない(7-9)ということです。
これに関しては、過去のワクチン接種の実績から
そのリスクについて推測することもできます。
例えば、インフルエンザウィルスのワクチンにおいて
そういった事例は過去あったか?
ということは参考になると思います。
B細胞を使った同じ液性免疫の機序だからです。
新型コロナウィルスワクチンの場合は
世界的に接種する人の数が非常に多い事、
あるいはその回数が今後増える可能性があります。
そうした中で、そうしたことが生じないかどうか?
ということは頭の片隅に置いておく必要があります。
ごく稀に生じるミスターゲット(7)とは何か?
ということを構造的に明らかにする事、
あるいはミスターゲットが起こったとしても
それが他の細胞を押しのけて主要に胚中心で増殖するか?
ということは視点として存在しうるものです。
今後開発されるワクチンも含めて
その様なリスクは考慮に値するものかどうか?
という判断の一つの材料になると考えられます。

(Reference)
(1)
Arun Cumpelik, David Heja, Yuan Hu, Gabriele Varano, Farideh Ordikhani, Mark P. Roberto, Zhengxiang He, Dirk Homann, Sergio A. Lira, David Dominguez-Sola & Peter S. Heeger 
Dynamic regulation of B cell complement signaling is integral to germinal center responses
Nature Immunology volume 22, pages757–768 (2021)
---
Author information
Author notes
David Heja
Present address: eGenesis Inc., Cambridge, MA, USA
Gabriele Varano
Present address: Department of Translational Medicine, Laboratory for Advanced Therapy Technologies, University of Ferrara, Ferrara, Italy
These authors jointly supervised this work: D. Dominguez-Sola and P. S. Heeger.
Affiliations
Renal Division, Department of Medicine, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USA
Arun Cumpelik, David Heja, Yuan Hu, Farideh Ordikhani & Peter S. Heeger
Translational Transplant Research Center, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USA
Arun Cumpelik, David Heja, Yuan Hu, Farideh Ordikhani & Peter S. Heeger
Department of Oncological Sciences, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USA
Gabriele Varano, Mark P. Roberto & David Dominguez-Sola
Tisch Cancer Institute, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USA
Farideh Ordikhani & David Dominguez-Sola
Graduate School of Biomedical Sciences, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USA
Mark P. Roberto
Precision Immunology Institute, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USA
Zhengxiang He, Dirk Homann, Sergio A. Lira, David Dominguez-Sola & Peter S. Heeger
Department of Pathology, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USA
David Dominguez-Sola
(2)
T細胞分化におけるチェックポイント(高田健介&高浜洋介;先端医学社「炎症と免疫」 2014年
(3)
Ann R. Falsey, M.D., Robert W. Frenck, Jr., M.D., Edward E. Walsh, M.D., Nicholas Kitchin, M.D., Judith Absalon, M.D. Alejandra Gurtman, M.D., Stephen Lockhart, D.M. Ruth Bailey, B.Sc, Kena A. Swanson, Ph.D., Xia Xu, Ph.D., Kenneth Koury, Ph.D. Warren Kalina, Ph.D. David Cooper, Ph.D., Jing Zou, Ph.D. Xuping Xie, Ph.D. Hongjie Xia, Ph.D., Özlem Türeci, M.D. Eleni Lagkadinou, M.D., Ph.D., Kristin R. Tompkins, B.Sc., Pei-Yong Shi, Ph.D., Kathrin U. Jansen, Ph.D., Uğur Şahin, M.D., Philip R. Dormitzer, M.D., Ph.D. William C. Gruber, M.D.
SARS-CoV-2 Neutralization with BNT162b2 Vaccine Dose 3
The New England Journal of Medicine September 15, 2021
(4)
Angela Choi, Matthew Koch, Kai Wu, Laurence Chu, LingZhi Ma, Anna Hill, Naveen Nunna, Wenmei Huang, Judy Oestreicher, Tonya Colpitts, Hamilton Bennett, Holly Legault, Yamuna Paila, Biliana Nestorova, Baoyu Ding, David Montefiori, Rolando Pajon, Jacqueline M. Miller, Brett Leav, Andrea Carfi, Roderick McPhee & Darin K. Edwards 
Safety and immunogenicity of SARS-CoV-2 variant mRNA vaccine boosters in healthy adults: an interim analysis
Nature Medicine (2021)
(5)
Yinon M. Bar-On, M.Sc., Yair Goldberg, Ph.D., Micha Mandel, Ph.D., Omri Bodenheimer, M.Sc., Laurence Freedman, Ph.D., Nir Kalkstein, B.Sc., Barak Mizrahi, M.Sc., Sharon Alroy-Preis, M.D., Nachman Ash, M.D., Ron Milo, Ph.D., and Amit Huppert, Ph.D.
Protection of BNT162b2 Vaccine Booster against Covid-19 in Israel
The New England Journal of Medicine September 15, 2021
(6)
Zijun Wang, Frauke Muecksch, Dennis Schaefer-Babajew, Shlomo Finkin, Charlotte Viant, Christian Gaebler, Hans- Heinrich Hoffmann, Christopher O. Barnes, Melissa Cipolla, Victor Ramos, Thiago Y. Oliveira, Alice Cho, Fabian Schmidt, Justin Da Silva, Eva Bednarski, Lauren Aguado, Jim Yee, Mridushi Daga, Martina Turroja, Katrina G. Millard, Mila Jankovic, Anna Gazumyan, Zhen Zhao, Charles M. Rice, Paul D. Bieniasz, Marina Caskey, Theodora Hatziioannou & Michel C. Nussenzweig 
Naturally enhanced neutralizing breadth against SARS-CoV-2 one year after infection
Nature volume 595, pages426–431 (2021)
---
Author information
Author notes
These authors contributed equally: Zijun Wang, Frauke Muecksch, Dennis Schaefer-Babajew, Shlomo Finkin, Charlotte Viant, Christian Gaebler
Affiliations
Laboratory of Molecular Immunology, The Rockefeller University, New York, NY, USA
Zijun Wang, Dennis Schaefer-Babajew, Shlomo Finkin, Charlotte Viant, Christian Gaebler, Melissa Cipolla, Victor Ramos, Thiago Y. Oliveira, Alice Cho, Mridushi Daga, Martina Turroja, Katrina G. Millard, Mila Jankovic, Anna Gazumyan, Marina Caskey & Michel C. Nussenzweig
Laboratory of Retrovirology, The Rockefeller University, New York, NY, USA
Frauke Muecksch, Fabian Schmidt, Justin Da Silva, Eva Bednarski, Paul D. Bieniasz & Theodora Hatziioannou
Laboratory of Virology and Infectious Disease, The Rockefeller University, New York, NY, USA
Hans- Heinrich Hoffmann, Lauren Aguado & Charles M. Rice
Division of Biology and Biological Engineering, California Institute of Technology, Pasadena, CA, USA
Christopher O. Barnes
Department of Pathology and Laboratory Medicine, Weill Cornell Medicine, New York, NY, USA
Jim Yee & Zhen Zhao
Howard Hughes Medical Institute, New York, NY, USA
Anna Gazumyan, Paul D. Bieniasz & Michel C. Nussenzweig
(7)
Valerie H. Odegard & David G. Schatz
Targeting of somatic hypermutation
Nature Reviews Immunology volume 6, pages573–583 (2006)
---
Author information
Affiliations
VaxInnate Corporation, 300 George Street, Suite 311, New Haven, 06511, Connecticut, USA
Valerie H. Odegard
Yale Medical School, Section of Immunobiology, 300 Cedar Street, Box 208011, New Haven, 06520-8011, Connecticut, USA
David G. Schatz
(8)
Steele, E.J.; Lindley, R.A. (2010). 
"Somatic mutation patterns in non-lymphoid cancers resemble the strand biased somatic hypermutation spectra of antibody genes" (PDF). 
DNA Repair. 9 (6): 600–603. 
(9)
Lindley, R.A.; Steele, E.J. (2013). 
"Critical analysis of strand-biased somatic mutation signatures in TP53 versus Ig genes, in genome -wide data and the etiology of cancer". 
ISRN Genomics. 2013 Article ID 921418: 18 pages.
(10)
Shlomchik, M. J., Luo, W. & Weisel, F. 
Linking signaling and selection in the germinal center. 
Immunol. Rev. 288, 49–63 (2019).
(11)
Ersching, J. et al. 
Germinal center selection and affinity maturation require dynamic regulation of mTORC1 kinase. 
Immunity 46, 1045–1058 (2017).
(12)
Srinivasan, L. et al. 
PI3 kinase signals BCR-dependent mature B cell survival. 
Cell 139, 573–586 (2009).
(13)
Dominguez-Sola, D. et al. 
The proto-oncogene MYC is required for selection in the germinal center and cyclic reentry. 
Nat. Immunol. 13, 1083–1091 (2012).


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新型コロナウィルス変異に対する抗体形成の最適化とワクチン戦略

インフルエンザのワクチンは年に一回
定期的にモデルチェンジされると言われています。
毎年、接種されている方もいると思います。
中には10年以上、欠かさず受けている方もいると思います。
そのように毎年、繰り返し受けている人は
ここ数年でインフルエンザに罹患したことはあるでしょうか?
インフルエンザのワクチンは
新型コロナウィルスのmRNAワクチンほど効果は高くありませんが、
繰り返し受けることで予防効果が高くなる可能性も考えられます。
モデルチェンジしている事も重要です。
一方、
インフルエンザワクチンを毎年受けている人は
新型コロナウィルスの罹患状況はどうでしょうか?
罹らなかったでしょうか?
軽症で済んだでしょうか?
罹患した人は、後遺症はどうでしょうか?
新型コロナウィルスワクチンをうけた時の
副反応の程度はどうでしょうか?
抗体価には変化があるでしょうか?
、、、
様々な疑問があります。
---
インフルエンザと新型コロナウィルスは
ウィルス種としての類似性は遠いですが、
それらの干渉についてはワクチン学、免疫学において
議論する価値があると思います。
---
先日、モデルナ社のmRNAワクチンの3回目接種における
興味深いデータがありました(2)。
モデルナ社はベータ株に合わせたm-RNA-1273.351
という新たなワクチンを設計、製造しています。
さらに今接種を進めている従来型m-RNA-1273と
m-RNA-1273.351を1:1で混ぜた
m-RNA-1273.211というワクチンを製造しています。
これは複数のタンパク質を持つということで
「多価(multi-valent)」といわれます。
このワクチンを3回目に接種した時の
抗体価は一番高く、デルタ株などの変異株においても
中和抗体価が高くなっています(ref.(2) Fig.4)。
---
これは今後のワクチン戦略を考えていく上で重要な示唆です。
Fabian Schmidt, Yiska Weisblum(敬称略)ら医療研究グループは、
新型コロナウィスルのタンパク質を別のウィルス粒子に装飾させて
それによって同時発生を含めた様々なたんぱく質変異を
生み出すことに成功しています(1)。
この報告で、興味深いのは
一度、新型コロナウィルスに自然感染して、
その回復後にワクチン接種を受けた人の抗体群は
こうした変異を作り出した擬ウィルス、タンパク質に対して
全体的に高い中和抗体価を持っていることです(Ref.(1) Fig.4a)。
mRNAワクチンで生み出されるコロナSタンパク質と
自然に存在する新型コロナウィルスのSタンパク質が
異なることが関与していると考えられます。
Fabian Schmidt氏らは
その中でポリクローナルな、多様な抗体を生み出すように
免疫機能を築いていく事が将来の新型コロナウィルスの変異の
脅威に備えるために重要であると指摘しています(1)。
---
従って、モデルナ社の多価のワクチンm-RNA-1273.211が
安全性が確認されたうえで承認される事は大切になります。
あるいはモデルの異なるワクチン、交差接種の検討も重要です。
さらには冒頭で述べた様に
インフルエンザのワクチンとの関係性を明らかにしてくことです。
インフルエンザも同様に呼吸器系の感染症ですが、
両方のワクチンを接種する事による
抗体の親和性成熟の影響はどうか?ということです。

(Reference)
(1)
Fabian Schmidt, Yiska Weisblum, Magdalena Rutkowska, Daniel Poston, Justin Da Silva, Fengwen Zhang, Eva Bednarski, Alice Cho, Dennis J. Schaefer-Babajew, Christian Gaebler, Marina Caskey, Michel C. Nussenzweig, Theodora Hatziioannou & Paul D. Bieniasz 
High genetic barrier to SARS-CoV-2 polyclonal neutralizing antibody escape
Nature (2021)
---
Author information
Author notes
These authors contributed equally: Fabian Schmidt, Yiska Weisblum
Affiliations
Laboratory of Retrovirology, The Rockefeller University, New York, NY, USA
Fabian Schmidt, Yiska Weisblum, Daniel Poston, Justin Da Silva, Fengwen Zhang, Eva Bednarski, Theodora Hatziioannou & Paul D. Bieniasz
Laboratory of Molecular Immunology, The Rockefeller University, New York, NY, USA
Alice Cho, Dennis J. Schaefer-Babajew, Christian Gaebler, Marina Caskey & Michel C. Nussenzweig
Howard Hughes Medical Institute, The Rockefeller University, New York, NY, USA
Magdalena Rutkowska, Michel C. Nussenzweig & Paul D. Bieniasz
(2)
Angela Choi, Matthew Koch, Kai Wu, Laurence Chu, LingZhi Ma, Anna Hill, Naveen Nunna, Wenmei Huang, Judy Oestreicher, Tonya Colpitts, Hamilton Bennett, Holly Legault, Yamuna Paila, Biliana Nestorova, Baoyu Ding, David Montefiori, Rolando Pajon, Jacqueline M. Miller, Brett Leav, Andrea Carfi, Roderick McPhee & Darin K. Edwards 
Safety and immunogenicity of SARS-CoV-2 variant mRNA vaccine boosters in healthy adults: an interim analysis
Nature Medicine (2021)
---
Author information
Author notes
These authors contributed equally: Angela Choi, Matthew Koch, Kai Wu.
Affiliations
Moderna Inc., Cambridge, MA, USA
Angela Choi, Matthew Koch, Kai Wu, LingZhi Ma, Anna Hill, Naveen Nunna, Wenmei Huang, Judy Oestreicher, Tonya Colpitts, Hamilton Bennett, Holly Legault, Yamuna Paila, Biliana Nestorova, Baoyu Ding, Rolando Pajon, Jacqueline M. Miller, Brett Leav, Andrea Carfi, Roderick McPhee & Darin K. Edwards
Benchmark Research, Austin, TX, USA
Laurence Chu
Immune Assay Team at Duke University Medical Center, Duke University, Durham, NC, USA
David Montefiori

 
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