2024年7月4日木曜日

冗長性抗体-細胞外小胞複合体(Redundant antibody-extracellular vesicle conjugate)

クラウディンに関してはすでにクラウディン18.2という標的が
特に胃がんで新手の治療として注目を集めています。
国立がん研究センター東病院の中山厳馬先生が
Nature reviews clinical oncologyで筆頭著者として書かれた
総括論文のFig.4に示すように(1)
クラウディン18.2は
〇抗体 〇補体 〇抗体薬物複合体
これらの3つのアプローチで結合させることができます。
抗体薬物複合体はまだフェーズ1の段階ですが、
抗体に関しては興味深い結果があります。
アストラス製薬が取り扱うZolbetuximab(ゾルベツキシマブ)は
胃がんの日本人に対して非常に高い効果を発揮するかもしれません。
数は数十人と他の地域に比べて少ないので
統計的な信頼性はあまり高くないですが、
Manish A. Shah(敬称略)らがFig.3に示す国別のデータを見ると(2)
日本は他の地域に比べて、
この抗体製剤において胃がんのケースで
非常に高い治療効果を持つかもしれません
この薬は
2024年3月26日に、日本においてビロイ®点滴静注用100mg(一般名:ゾルベツキシマブ(遺伝子組換え))は、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌を効能・効果として、製造販売承認を取得しまし
このようにされています。従って、日本でも承認されました。
この薬理はよく考える必要があります。
抗体はFcドメインでとりわけNK細胞など自然免疫系を引き付ける効果があるので
こうした免疫細胞が胃がんの細胞に引き付けられることで、
癌組織が退縮するという事があると思いますが、
一方で、Fcドメインは抗癌作用のある補体C1qやエフルチビモドと結合性があります。
これらが並列的に作用していて、
また、上述したようにクラウディンは
細胞内へのエンドサイトーシス機序に関わっているため、
こうした抗体が癌細胞内へ送達されることがあると思います。
従って、抗体に薬物を複合体化させる抗体薬物複合体は
ひょっとするともっと劇的な効果があるかもしれません。
従って、現時点においても細胞接着分子は
いくつかのケースにおいて臨床で効果的であるという事が示されています。
これはCAMomeを実際に実施する価値を高める結果です。
--
このクラウディンという分子は
もともと1998年に京都大学の
M M Furuse先生, H Sasaki先生, 
K Fujimoto先生, S Tsukita先生からなるグループが
世界初として発見されたものです(3)。
これはカドヘリンを発見された
理化学研究所の竹市雅俊先生の発見に
私の解釈では匹敵する発見です。
このクラウディンに関して
上述したように東アジア人で死亡例が多い
胃がんに対して18.2という型が標的として
有望であるという可能性が示されています。
胃は消化器ですから粘膜があります。
このクラウディンはタイトジャンクションと言われる
細胞をつなぐ働きがあり、
通常上皮細胞の側面に特異的に発現されています。
上皮細胞が向きを揃えて整列することを
「極性をもつ」といいます。
その整列に関与しているのがタイトジャンクションで
その中の細胞接着分子としてクラウディンがあります。
一方で、癌細胞は細胞の協力性を失い
無秩序に組織形成しますから
この極性を失い、発現の異所性が失われます。
つまり、クラウディン18.2の露出性が高まるという事です
その薬物において特異的に結合する
モノクローナル抗体を開発し、
それと一般的な化学療法を組み合わせることで
特に日本人の胃癌患者において顕著な効果がありました。
日本の胃がん治療の重要性は高いです。
胃がんで亡くなる人が多いからです。
その理由ははっきりとはわかっていません。
複数の酵素などが関わっている可能性がありますが、
日本と西洋の民族の違いにおいて
具体的にどのような酵素が関わっているか?
それについてはわかっていません。
ただ、
東京大学の畠山昌則先生がピロリ菌が産生する
アミノ酸のアジア型の構造が
西洋型と比べて発がん性が高いという報告されています。
これは極めて重要な報告です。
日本人はピロリ菌の影響を受けやすく
それが胃がんの罹患確率を高めている可能性があります。
日本が世界最高の臨床医学雑誌である
アメリカ(ボストン)マサチューセッツの
The New England Journal of Medicineの報告に
オーストラリアと共著ですが
全日本で報告しているものがあります。
これはピロリ菌感染が有無において
各年齢でどれくらい胃がんのリスクがあるか?
人に対して大規模に縦断調査したものです。
それによると確かにピロリ菌感染と
生殖細胞系列のリスク遺伝子の変異は
特に高齢時において胃がんの発症リスクを高めます(4)。
このクラウディン18.2は日本人の胃がん治療に期待がもて
それがアステラス製薬のゾルベツキシマブとして承認されました。
実はこの抗体は抗体単体です。
この抗体に対して細胞毒性が強い化学治療薬を連結させる
抗体薬物複合体の効果はまだわかりません。
しかし、もしこの抗体が胃がんの細胞に対して
特異的送達に貢献しているなら、
それに結合した毒性の強い化学治療薬は
従来なら副作用が強く利用できなかったものを選択できます。
そうした場合、抗体が結合した時の
癌細胞に対する細胞毒性が
抗体単体の時よりも顕著に高くなることが期待できますから
胃がんに対する効果は
ゾルベツキシマブよりも高くなる可能性があります。
しかし、それは蓋をあけてみないとわかりません。
アメリカで治験が始まりつつあります。
中国ではすでに2023年11月に
フェーズ1の治験結果が報告されています。
個人的には少し遅れてでもいいので
日本も参加していただきたいと思っています。
この薬理、作用機序に関しては
補体、エフルチビモドなどの結合、
あるいはエンドサイトーシス機序なども含めて
より深く詰めていく必要はあると思っています。
クラウディン18.2は
ある程度胃がんの細胞種特異的に発現されている
細胞表面のタンパク質です。
他には肺がん、膵臓がんなどと関与もあり、
同じように効果を発揮するか?
がんができる場所、がんの種類、
粘膜など組織的な関係などを整理すると
胃がんに対しての相対的な効果の合理性を評価できるかもしれません。
クラウディン18.2の
抗体薬物複合体の臨床試験はまだ始まったばかりですが、
日本人においてどうなるか?
それに対して高い関心があります。
今回、細胞種特異的薬物送達システムの実現にむけて
技術を前進させるにあたり、
重要な発見が二つありました。
1つは胃がんや大腸がんなど消化器のがんにおいては
疫学的には90%を超える割合で
分泌腺を含んだ形で組織化する線がんであり、
癌細胞は粘膜によって覆われていますが、
通常、ほとんど露出しない細胞の側面に異所的に発現される
タイトジャンクションの少なくとも一部が
癌組織形成時に極性が失われることで露出するようになります。
これによって薬剤のアクセス性が高まる可能性があるという事です。
もう1つは、
がんによって18.1と18.2というのように
特異的にタンパク質が構造を変えるケースがあるということです。
通常細胞と癌細胞は共通する部分が多く
癌細胞だけに特異的に発現している
表面タンパク質を見出すことは難しいですが
変異による細かい構造において
通常細胞と差異がでるケースがあるという事は
様々な表面タンパク質を
通常細胞、癌細胞それぞれの構造を比較する事に科学的意義を与えます。
次世代の医療を担う学生に対しての教育の視点
述べられることがあります。
このようなクラウディン18.2という情報が
世界的に権威ある総括論文に日本人の価値ある情報として
採用された背景は
1998年に京都大学のS Tsukita先生らグループが
初めてクラウディンを発見されたことが始点であると言えます。
東京大学を初め、様々な研究が
20年以上日本国内で経時的に関わっているということです。
今の優秀な若い医学部、薬学部の学生さんが
立派な医師、産業人になって
日本の難しい病気の患者さんに対して
将来的に画期的な治療を行う背景として
その10年、20年前に
同じ国である日本の研究、発見が大切になります。
今、科研費の増額請求に対してのニュースが日本であります(5)。
現在の基礎研究は10年、20年後の医療に関わります。
なぜなら、クラウディン18.2が
もし、日本人に多い胃がんの画期的な治療薬の標的になるとしたら、
今から26年前の1998年の京都大学のクラウディンの発見が
その発端であるからです。
これが日本で発見されたのは大きいと思います。
私の細胞種特異的薬物送達システムに関する
この4年間リスクを取って発信してきた
様々な技術、情報は決して、日本だけで独占はしませんが、
日本人である私が初めに提案したものです。
京都大学のS Tsukita先生らがクラウディンを発見されて
その20年以上後に国民病である胃がんの画期的な
薬物に発展してきた事と同様の可能性があります。
山中先生のiPS細胞を使った研究は
クラウディンと同じように
未来の様々な疾患に対する画期的な治療につながる
可能性は大きくあります。
その源泉はiPS細胞が日本発の技術だからです。
だから、その成果は日本人の患者さんに届きます。
具体例を述べるにあたり本当は多くの言葉を必要としますが、
私が科学技術に関わるにあたり、
そうした日本の歴史的な技術のつながりがある
ということを理解することは非常に重要なことですし
それは後生の学生に伝えていく必要があります。
--
このクラウディンは閉鎖結合を形成する細胞接着分子であり、
いくつかの癌の効果的な標的になる可能性がありますが、
今、提案されているのは抗体そのものか、
補体か、あるいは抗体薬物複合体です。
ここで私が新たに提案するのが、
抗体細胞外小胞複合体(Antibody-Extracellular vesicles conjugate)です。
これはいくつかの方法、プロトコルで実現できる可能性がありますが、
ここで一つのバイオテクノロジーを提案したいと思います。
今のモノクローナル抗体の生成は
ハイブリドーマ技術
抗原の準備と免疫化:
抗原の準備: 対象となる特定の抗原を精製し、適切なキャリアタンパク質に結合させることがよくあります。
免疫化: 実験動物(通常マウス)に抗原を注射します。注射は皮下、筋肉内、腹腔内などの経路で行われ、複数回にわたって繰り返されることが多いです。これにより、動物の免疫系が刺激され、抗原特異的なB細胞が活性化されます。
B細胞の収集:
脾臓の取り出し: 免疫化されたマウスを犠牲にし、その脾臓からB細胞を収集します。脾臓は、抗原特異的なB細胞が豊富に存在する部位です。
ハイブリドーマ細胞の作成:
B細胞とミエローマ細胞の融合: 収集したB細胞を骨髄腫(ミエローマ)細胞と融合させます。ミエローマ細胞は無限に増殖可能ですが抗体を産生しないため、融合により得られるハイブリドーマ細胞は抗体産生能と増殖能を兼ね備えています。
PEG(ポリエチレングリコール)の使用: 融合の際にPEGなどの化学物質を使用して、細胞膜を一時的に融合させます。
ハイブリドーマ細胞の選択とクローニング:
選択培地(HAT培地): 融合後の細胞をHAT培地に培養します。HAT培地は、融合に成功したハイブリドーマ細胞のみが生存する条件を提供します。
クローンの選択: 生存したハイブリドーマ細胞を個別にプレートし、クローン化します。それぞれのクローンが一種類のモノクローナル抗体を産生することになります。
モノクローナル抗体のスクリーンと特性評価:
ELISAやフローサイトメトリー: 各クローンの上清から産生された抗体をELISA(酵素免疫測定法)やフローサイトメトリーでスクリーニングし、抗原特異性と結合能力を評価します。
特性評価: 選択されたクローンの抗体をさらに評価し、必要に応じて精製します。これには、抗体のアイソタイプ、親和性、結合特異性の確認が含まれます。
その他の技術
ファージディスプレイ:
抗体の可変領域をコードする遺伝子断片をバクテリオファージに組み込み、ファージライブラリーを作成します。抗原に対して選択的に結合するファージをスクリーニングし、対応する抗体遺伝子を得ます。
B細胞クローニング:
抗原特異的なB細胞を単離し、これらのB細胞から直接抗体遺伝子をクローニングしてモノクローナル抗体を生成します。
こうしたことが挙げられています(Open AIより)。
従って、
抗原特異的なB細胞生成のためにマウスに抗原を導入します。
このB細胞は増殖能の高い細胞と融合し、増殖させる事で
抗体の量産化が可能になります。
そのB細胞から放出される細胞外小胞に着目します。
このB細胞から放出される細胞外小胞には抗体が複合体化されている事があります。
しかし、それは装飾としては十分ではないかもしれません。
ここで、その装飾を促進させるバイオテクノロジーを考えます。
この抗体の装飾の為に
細胞外小胞の表面に細胞質内で向性、走化性を示すと考えられる
テトラスパニンと抗体を生成する免疫グロブリンの遺伝子を
バイオテクノロジーによって直列接合し、
リボソームで生み出される段階で複合体化されることで
テトラスパニンの細胞外小胞表面の誘導機序を利用して、
細胞外小胞のプラズマ膜表面にテトラスパニンと絡み合う形で
抗原特異的な抗体を装飾させるというコンセプトを提案します。
こうした技術により
B細胞から出る細胞外小胞は抗原特異的な抗体を多く装飾できる可能性があります。
例えば、上述したクラウディン18.2の抗体でも可能です。
では、抗体薬物複合体に対してどういうメリットがあるか?
その一つは「冗長性」に収束します。
細胞外小胞は、複数の機能を同時に組み込むことができます。
例えば、治療が難しい肺がん、膵臓がんに関して考えます。
これから実施する臓器別のCAMomeで
肺や膵臓がどのような細胞接着分子を発現している傾向にあるか
というのがそれぞれの臓器の細胞種別にわかるようになります。
当然、クラウディンだけではないですから、
他の臓器の細胞接着分子群と比較しながら、
よりこれらの臓器に走化性、向性を示すような
複数の細胞接着分子の選択が可能になります。
その中で抗体を装飾する意義は、抗体が冒頭で述べた様に
Fcドメイン依存的にNK細胞などの免疫細胞を誘導する事にあります。
従って、細胞外小胞に抗体を複合体化させる事は
同時に免疫的効果も惹起することができます。
B細胞から出るという事は他の免疫的な効果もあるかもしれません。
例えば、B細胞は3次リンパ様組織の形成において重要な役割を果たしますが、
B細胞から放出される細胞外小胞は
そうした免疫組織の形成に関与するかもしれません。
3次リンパ様組織は多く場合、癌の治療において
良好な予後を示すとされています(6)。
従って、B細胞から放出される細胞外小胞と3次リンパ様組織の関連を
調べる事は可能性がある限り、かなり重要です。


(参考文献)
(1)
Izuma Nakayama, Changsong Qi, Yang Chen, Yoshiaki Nakamura, Lin Shen & Kohei Shitara 
Claudin 18.2 as a novel therapeutic target
Nature Reviews Clinical Oncology volume 21, pages354–369 (2024)
(2)
Manish A. Shah, Kohei Shitara, Jaffer A. Ajani, Yung-Jue Bang, Peter Enzinger, David Ilson, Florian Lordick, Eric Van Cutsem, Javier Gallego Plazas, Jing Huang, Lin Shen, Sang Cheul Oh, Patrapim Sunpaweravong, Hwoei Fen Soo Hoo, Haci Mehmet Turk, Mok Oh, Jung Wook Park, Diarmuid Moran, Pranob Bhattacharya, Ahsan Arozullah & Rui-Hua Xu 
Zolbetuximab plus CAPOX in CLDN18.2-positive gastric or gastroesophageal junction adenocarcinoma: the randomized, phase 3 GLOW trial
Nature Medicine volume 29, pages2133–2141 (2023)
(3)
M Furuse 1, H Sasaki, K Fujimoto, S Tsukita
A single gene product, claudin-1 or -2, reconstitutes tight junction strands and recruits occludin in fibroblasts
J Cell Biol. 1998 Oct 19;143(2):391-401. doi: 10.1083/jcb.143.2.391.
(4)
Yoshiaki Usui, M.D., Ph.D. , Yukari Taniyama, Ph.D., Mikiko Endo, B.Sc., Yuriko N. Koyanagi, M.D., Ph.D., Yumiko Kasugai, M.M.Sc., Isao Oze, M.D., Ph.D., Hidemi Ito, M.D., Ph.D., M.P.H. , Issei Imoto, M.D., Ph.D., Tsutomu Tanaka, M.D., Ph.D., Masahiro Tajika, M.D., Ph.D., Yasumasa Niwa, M.D., Ph.D., Yusuke Iwasaki, M.E., Tomomi Aoi, B.Sc., Nozomi Hakozaki, Sadaaki Takata, B.Sc., Kunihiko Suzuki, Chikashi Terao, M.D., Ph.D.  Masanori Hatakeyama, M.D., Ph.D., Makoto Hirata, M.D., Ph.D., Kokichi Sugano, M.D., Ph.D., Teruhiko Yoshida, M.D., Ph.D., Yoichiro Kamatani, M.D., Ph.D., Hidewaki Nakagawa, M.D., Ph.D., Koichi Matsuda, M.D., Ph.D., Yoshinori Murakami, M.D., Ph.D., Amanda B. Spurdle, Ph.D., Keitaro Matsuo, M.D., Ph.D. , and Yukihide Momozawa, D.V.M., Ph.D
Helicobacter pylori, Homologous-Recombination Genes, and Gastric Cancer
The New England Journal of Medicine 2023;388:1181-1190
(5)
Anna Ikarashi
Japan’s scientists demand more money for basic science
Nature NEWS 04 July 2024
(6)
Wolf H. Fridman, Maxime Meylan, Florent Petitprez, Cheng-Ming Sun, Antoine Italiano & Catherine Sautès-Fridman 
B cells and tertiary lymphoid structures as determinants of tumour immune contexture and clinical outcome
Nature Reviews Clinical Oncology volume 19, pages441–457 (2022)

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