2024年7月25日木曜日

膜貫通型セマフォリンの構造と機能

人を含めた脊柱動物に発現されているセマフォリンのうち
分泌型、つまり細胞に固定されていないタイプ(Class3,7)であり、
細胞膜貫通タンパク質として
細胞同士の連結に関連するのは(Class4.5.6)です。
従って、ここではクラス4,5,6に限定して取り扱います。
下述するようにセマフォリンは神経細胞に多くのタイプが発現されています。
その中で軸索ガイダンスや神経系の発達に関与しています。
しかし、神経系の軸索ガイダンスに主に寄与しているのは、
セマフォリンクラス3の分泌型のものに依ります。
下記のように膜貫通型のセマフォリンは神経細胞にも発現が見られる可能性がありますが、
神経系におけるこのタイプのセマフォリンの機能についてはよくわかっていません。
セマフォリンは形態形成にも関わっていますが、
その研究においても分泌型のクラス3の研究はありますが、
膜貫通型のセマフォリンがどのように組織の形態形成に関わるか?
それについてもまだ研究が不足しています。
膜貫通型のセマフォリンの研究は、免疫系でやや進んでいます(1)。
免疫細胞同士の多様な相互作用によって制御性に関わっている可能性があります。
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脊柱動物のセマフォリンのクラス、サブタイプは以下です。
Class4:4B,4C,4D,4F,4G
Class5:5A,5B
Class6:6A,6B,6C,6D
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セマフォリンの構造は
Class4(Nターミナル:先端から)
〇Sema domain
〇A plexin-semaphorin-integrin domain (PSI domain)
〇Immunogloulin-like (Ig) domain 
Class5(Nターミナル:先端から)
〇Sema domain
〇A plexin-semaphorin-integrin domain (PSI domain)
〇Thrombospodin repeat domain 
Class    6(Nターミナル:先端から)
〇Sema domain
〇A plexin-semaphorin-integrin domain (PSI domain)
(参考文献(2) FIGURE 1)
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それぞれのセマフォリンサブタイプがどの細胞種に発現されているか?
Class 4 Semaphorins
Sema4B:神経細胞 免疫細胞(T細胞)
Sema4C:神経細胞 骨髄由来細胞 筋細胞
Sema4D:免疫細胞(B細胞、T細胞)骨髄由来細胞 神経細胞
Sema4F:神経細胞
Sema4G:神経細胞
Class 5 Semaphorins
Sema5A:神経細胞 血管内皮細胞
Sema5B:神経細胞
Class 6 Semaphorins
Sema6A:神経細胞 免疫細胞
Sema6B:神経細胞 免疫細胞
Sema6C:神経細胞
Sema6D:神経細胞 心筋細胞
従って、神経細胞、免疫細胞に広く発現が見られます。
神経細胞では
セマフォリンクラス4:主に前シナプス
セマフォリンクラス5:主に後シナプス
セマフォリンクラス6:前シナプス、後シナプス両方
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それぞれのセマフォリンサブタイプの受容体はどれか?
Class 4 Semaphorins
Sema4B:
受容体:Plexin B1, Plexin B2, Plexin B3
Sema4C:
受容体:Plexin B2
Sema4D:
受容体:Plexin B1, Plexin B2, CD72, Plexin B3
Sema4F:
受容体:Plexin B1, Plexin B2, Plexin B3
Sema4G:
受容体:Plexin B2
Class 5 Semaphorins
Sema5A:
受容体:Plexin B3
Sema5B:
受容体:Plexin B3
Class 6 Semaphorins
Sema6A:
受容体:Plexin A2, Plexin A4
Sema6B:
受容体:Plexin A2, Plexin A4
Sema6C:
受容体:Plexin A4
Sema6D:
受容体:Plexin A1, Plexin A2, Plexin A4
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それぞれプレキシンを中心とした受容体はどの細胞種に発現されているか?
Plexin Bファミリー
Plexin B1:神経細胞 免疫細胞(T細胞、B細胞)骨髄由来細胞 内皮細胞 骨細胞 肝細胞
Plexin B2:神経細胞 免疫細胞(T細胞、B細胞) 骨髄由来細胞 内皮細胞 前立腺細胞
Plexin B3:神経細胞 免疫細胞(T細胞、B細胞)
CD72:B細胞
Plexin Aファミリー
Plexin A1:神経細胞 免疫細胞(T細胞、B細胞)骨髄由来細胞 内皮細胞
Plexin A2:神経細胞 免疫細胞(T細胞、B細胞)骨髄由来細胞 内皮細胞
Plexin A4:神経細胞 免疫細胞(T細胞、B細胞)骨髄由来細胞 内皮細胞
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セマフォリンのアダプタータンパク質は
GAP-43 (Growth Associated Protein 43):
 神経成長に関与し、セマフォリンによる神経突起の制御に関与します。
CRMP-2 (Collapsin Response Mediator Protein 2):
 セマフォリンシグナルによって調節される神経突起の成長とリモデリングに関与します。
RhoGTPases (Rho, Rac, Cdc42):
 細胞骨格の再構築に関与し、セマフォリンシグナルによって調節される細胞移動や突起伸長に関与します。

セマフォリンは獲得免疫系のT細胞とB細胞の連携に関わっています。
上述したようにB細胞受容体であるCD72に結合できるのは
セマフォリン4Dでこれが発現されている免疫細胞はT細胞とB細胞です。
セマフォリン4DはB細胞では発現が低く抑えられていますが、
細菌によるリポ多糖や免疫刺激(CD40)を受けると
セマフォリン4Dの発現が高まる事が確認されています(3)。
従って、T細胞とB細胞、B細胞同士の結合を誘導します。
セマフォリン4D-CD72の結合では
CD72に対して順方向の細胞内経路が誘導されます。
具体的には
SHP-1(Src homology 2 domain-containing phosphatase-1)
Grb2(Growth factor receptor-bound protein 2)
これらのアダプタータンパク質に働きかけ、
SHP-1経路ではB細胞の機能が抑制されます。
これはB細胞の機能が過剰に高まる事を防ぎます(4)。
この抑制系シグナルにはCD22とKIRsが関与します(1)。
Grb2経路はMAPK経路やPI3K/Akt経路を誘導し、
B細胞の成長、分化、生存が調整されます。
トランスフェクトによるセマフォリン4Dの発現をB細胞で上げると
B細胞の凝集や生存が高まったとされています。
従って、セマフォリン4Dは3次リンパ様組織の形成とも関連するかもしれません。
B細胞同士のセマフォリン4D-CD72結合は
B細胞の活性が上がりますが、
それが上がりすぎないような制御システムが同時に働いているという事です。
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セマフォリン4DはT細胞に多く発現されています。
ヘルパーT細胞にも発現されています。
2次リンパ節で抗原特異的な親和性成熟がB細胞で起こる過程で
ヘルパーT細胞とB細胞は免疫シナプスとも言える
複数の受容体連結が生じます。
(参考文献(5) Figure 2)
この時に、その連結の一つとして
セマフォリン4D(T細胞)とCD72(B細胞)の連結が挙げられます。
但し、一般的にセマフォリン4DとCD72の結合親和性は低いとされています(2)。
こういった液性免疫においては
抗原をリンパ節まで運搬する樹状細胞と
リンパ節に存在するB細胞、T細胞の連結にも関わる可能性があります。
この時にはセマフォリン4Dとプレキシンの結合に依ります。
実際に樹状細胞のプレキシンA1の発現は抗原特異的なT細胞の生成日
必要であると報告されていmす(1)。
これは当然、B細胞の抗原提示にも関わる事です。
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セマフォリンはプレキシンがその受容体で
共に免疫細胞の発現されていますから、
原理的に免疫細胞同士の結合、制御性に関わります。
またプレキシンは内皮細胞にも発現が見られるので、
例えば、自然免疫系の単球、マクロファージと
内皮細胞の結合、トラップに関与します(2)。
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免疫細胞に発現されるセマフォリン4Dに
同じく免疫細胞に発現されるプレキシンB1が結合した時に
プレキシンB1側の細胞内経路としてErk1/2経路を誘導します。
この経路の機能として
細胞増殖や分化の誘導、遺伝子発現の調節、細胞の生存促進、
細胞の炎症反応への影響、 細胞の運動性への影響があります(7)。
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セマフォリン4Aは活性化されたT細胞に発現されているTim-2と
相互作用する事も知られています(8)。
このセマフォリン4AとTim-2を介したT細胞では、
ヘルパーT細胞の活性を制御する働きが指摘されています(1)
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膜貫通型のセマフォリンクラス5(9)、クラス6(10)がありますが、
一部の研究は進められていますが、
細胞接着分子としての機能的な役割については
より詳細な研究が待たれます。


(参考文献)
(1)
Kazuhiro Suzuki, Atsushi Kumanogoh & Hitoshi Kikutani
Semaphorins and their receptors in immune cell interactions
Nature Immunology volume 9, pages17–23 (2008)
(2)
Shuhong Hu1,2,* and Li Zhu
Semaphorins and Their Receptors: From Axonal Guidance to Atherosclerosis
Front Physiol. 2018; 9: 1236.
(3)
A Kumanogoh 1, C Watanabe, I Lee, X Wang, W Shi, H Araki, H Hirata, K Iwahori, J Uchida, T Yasui, M Matsumoto, K Yoshida, H Yakura, C Pan, J R Parnes, H Kikutani
Identification of CD72 as a lymphocyte receptor for the class IV semaphorin CD100: a novel mechanism for regulating B cell signaling
Immunity. 2000 Nov;13(5):621-31
(4)
Andrew Getahun,1,2 Nicole A. Beavers,1,2 Sandy R. Larson,1,2 Mark J. Shlomchik,3 and John C. Cambiercorresponding author
Continuous inhibitory signaling by both SHP-1 and SHIP-1 pathways is required to maintain unresponsiveness of anergic B cells
J Exp Med. 2016 May 2; 213(5): 751–769.
(5)
Susan L. Swain, K. Kai McKinstry & Tara M. Strutt 
Expanding roles for CD4+ T cells in immunity to viruses
Nature Reviews Immunology volume 12, pages136–148 (2012)
(6)
Eric Koncina, Lise Roth, Bertand Gonthier, and Dominique Bagnard.
Role of Semaphorins during Axon Growth and Guidance
Madame Curie Bioscience Database [Internet].
(7)
Richard M. Lucas,corresponding author Lin Luo, and Jennifer L. Stow
ERK1/2 in immune signalling
Biochem Soc Trans. 2022 Oct 31; 50(5): 1341–1352.
(8)
Atsushi Kumanogoh, Satoko Marukawa, Kazuhiro Suzuki, Noriko Takegahara, Chie Watanabe, EweSeng Ch'ng, Isao Ishida, Harutoshi Fujimura, Saburo Sakoda, Kanji Yoshida & Hitoshi Kikutani 
Class IV semaphorin Sema4A enhances T-cell activation and interacts with Tim-2
Nature volume 419, pages629–633 (2002)
(9)
Gergely N. Nagy, Xiao-Feng Zhao, Richard Karlsson, Karen Wang, Ramona Duman, Karl Harlos, Kamel El Omari, Armin Wagner, Henrik Clausen, Rebecca L. Miller, Roman J. Giger & E. Yvonne Jones
Structure and function of Semaphorin-5A glycosaminoglycan interactions
Nature Communications volume 15, Article number: 2723 (2024) 
(10)
Olivier Mauti,1 Elena Domanitskaya,1 Irwin Andermatt,1 Rejina Sadhu,1,2 and Esther T Stoecklicorresponding author
Semaphorin6A acts as a gate keeper between the central and the peripheral nervous system
Neural Develop. 2007; 2: 28.

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