2024年7月10日水曜日

アロステリック効果利用のインテグリン装飾細胞外小胞による細胞種特異的薬物送達システムの概念的方法

薬物輸送キャリアを細胞外小胞として、
装飾因子をインテグリンとして
細胞種特異的薬物送達システムを実現する事は
多くの困難があることは確実です。
しかし、
インテグリンの構造、物理の根本を理解すると
いくつかのソリューションが見えてきます。
生物工学が関与できる技術要素は多くあり、
原理的に不可能ではないかもしれません。
--
インテグリンはα鎖とβ鎖という異なる構造ユニットがあって
それらが先端で結合しています。これが構造単位です。
こうした構造はカドヘリンやセレクチンでは見られません。
こうした異種構造をとるからこそ、
インテグリンは非常にダイナミックに3次元構造を変えます。
2つの独立した棒の位置関係を変えれば、
先端が結合していれば、それに連動して
全体の構造が変化することを想像する事は容易です。
α鎖とβ鎖が非常にタイトな構造になっている時には
結合活性が下がってる状態なので、
これを「スタートの状態」にしたいというのがあります。
すなわち、
細胞外小胞に特定の型のインテグリンを装飾するときに、
細胞から分泌される細胞外小胞を精製する段階で
装飾されているインテグリンをタイトな3次元構造にしておき、
結合活性を下げた状態にしておくということです。
これにより、インテグリン依存的な結合を
病変部位の途中で抑制することが可能になります。
つまり、スイッチが「オフ」の状態です。
このインテグリンがタイトな状態になるためには
細胞骨格との相互作用をできるだけ減らしたいため、
細胞外小胞の分泌元となる細胞の細胞骨格の分泌を
人為的な介入によって抑制させておくことが考えられます。
具体的には
〇タロン、フィリン、プロフィリンの転写活性の抑制
〇Rhoキナーゼ(ROCK)抑制
〇細胞骨格タンパク質ユビキチン酵素の活性化
例えば、これらが考えられます。
また、一方で、インテグリンンの構造をタイトにするためには
Michael Bachmann(敬称略)らがFIGURE 3Eで示すように(1)、
Fiamin(2), SHARPIN(3), LCP1, KRIT1-ICAP1 complex(4)などの
アクセサリタンパク質、抑制系タンパク質(Inhibitory proteins)の
発現を強化することが有効です。
これらの抑制、増強の組み合わせによって
人為的に細胞外小胞の分泌元となる細胞から発現される
インテグリンの活性を全体的に低下させる事を試みます。
また、インテグリンのスイッチ役となる
テトラスパニンは細胞外小胞への誘導役ともなるため、
インテグリンを細胞外小胞に有効に移動させ、
多く装飾させるために
インテグリン遺伝子とテトラスパニン遺伝子を直列接合させ、
細胞内に形質導入することで
これらの複合体化を促し、
テトラスパニン依存的に細胞外小胞のプラズマ膜に誘導します。
さらにテトラスパニンは多くの結合サイトを持つ事から
インテグリン近くに多くのアクセサリタンパク質を誘導します。
腫瘍組織や炎症部位などでは
多くの分泌物質があり、走化性を発揮するケモカインもあります。
このケモカインが
細胞外小胞においてインテグリンの活性を促すか?
ここが非常に重要なポイントです。
なぜなら、細胞外小胞は細胞のように細胞骨格がないからです。
細胞骨格は確実にインテグリンの活性を高めますが、
そうした機序を細胞外小胞の場合は利用できないため、
こうしたケモカインが「単独で」
インテグリンの構造変化を促すことができるか?
それがこの技術を成立させる上での肝となる部分です。
原理的には
ケモカインが細胞骨格を持たない細胞外小胞上の
インテグリン-テトラスパニン複合体に結合した時に、
インテグリンのα鎖とβ鎖の
相対的な位置関係を有意に動かすことができれば、
アロステリック効果によって
インテグリンの結合活性を高める事を可能にします。
これが成立するかはわかりません。
しかし、もしこれが成立すれば、
ケモカインは炎暑部位や腫瘍組織に多く分泌されているため
ケモカインという化学的合図に応答して
スイッチを「オフからオン」にすることができます。
このとき、最大で数千倍の結合親和性を高めることができますから、
それによってインテグリンは病変組織特異的に
強く誘導され、結合する事になります。


(参考文献)
(1)
Michael Bachmann 1, Sampo Kukkurainen 1, Vesa P Hytönen 1, Bernhard Wehrle-Haller 1
Cell Adhesion by Integrins
Physiol Rev. 2019 Oct 1;99(4):1655-1699
(2)
Jianmin Liu, Mitali Das, Jun Yang, Sujay Subbayya Ithychanda, Valentin P Yakubenko, Edward F Plow & Jun Qin
Structural mechanism of integrin inactivation by filamin
Nature Structural & Molecular Biology volume 22, pages383–389 (2015)
(3)
Juha K. Rantala, Jeroen Pouwels, Teijo Pellinen, Stefan Veltel, Petra Laasola, Elina Mattila, Christopher S. Potter, Ted Duffy, John P. Sundberg, Olli Kallioniemi, Janet A. Askari, Martin J. Humphries, Maddy Parsons, Marko Salmi & Johanna Ivaska
SHARPIN is an endogenous inhibitor of β1-integrin activation
Nature Cell Biology volume 13, pages1315–1324 (2011)
(4)
Weizhi Liu 1, Kyle M Draheim, Rong Zhang, David A Calderwood, Titus J Boggon
Mechanism for KRIT1 release of ICAP1-mediated suppression of integrin activation
Mol Cell. 2013 Feb 21;49(4):719-29. 
 

0 コメント:

コメントを投稿

 
;