2024年7月12日金曜日

細胞外小胞、脂質ラフトの性質を利用した薬効増幅性を持つ概念的薬物システム

例えば、細胞の異常である癌細胞は
特に悪性度の強いものは有効な薬物を投与したとしても
個体内(一人の患者さんの体内)で進化し、
薬剤抵抗性を獲得することは一般的に知られています。
それに対する一つのアプローチとして、
冗長性を持つ治療方針があります。
つまり、一つの抗癌機序だけではなく、
免疫機能なども含めて複数の機序で癌を治療する事によって
その様な抗癌機能から逃避する確率を低下させ、
薬剤抵抗性が生じにくいようにするということです。
これは細胞外小胞をキャリアとする細胞種特異的薬物送達システムによる
癌に対する治療における一つの重要なコンセプトです。
考えられるもう一つの概念的治療として
薬物を投与すればするほど、薬物の効果が上がるようにするという事です。
私が提唱する細胞種特異的薬物送達システムの要素は
〇細胞外小胞
〇CAMome
〇細胞接着分子
〇細胞種特異的薬物送達システム
これらからなり、癌が生じている所に
これらの要素技術を集約して薬物を効率的に送達させる事です。
このコンセプトの中には癌細胞表面に発現される
対となる細胞接着分子があります。
この癌細胞表面にある対となる細胞接着分子の発現量は
上述した複数の要素技術を含む薬物治療の効果に影響を及ぼします。
発現量が多ければ、送達効率が上がり、
また、細胞接着分子に結合する事自体に薬効があれば、
薬効を高める事になります。
こうした標的タンパク質の発現量は治療の間で一定ではおそらくなく、
増加したり、減少したりします。
そうした点を考慮した時、
「人為的に増加させる事はできないか?」
このような視点が生まれます。
具体的に言い換えれば、
細胞外小胞が病変部位に到達されればされるほど、
標的細胞の細胞接着分子の発現が高まるようなシステムを組み込むという事です。
これは、プラズマ膜の性質を利用すると可能かもしれません。
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細胞外小胞のプラズマ膜と細胞の細胞膜は融合し、
細胞外小胞のプラズマ膜の成分が、細胞の細胞膜に取り込まれる機序が
一部として存在します。
Erdinc Sezgin(敬称略)らがFigure 1に示すように(1)
細胞膜表面の物質構成には揺らぎがあり、
コレステロールなど脂質が集まっている領域があります。
これを「脂質ラフト」と呼びます。
この領域は層ではない領域に比べて、
細胞膜に様々なたんぱく質などの物質を引き付ける性質があります。
細胞接着分子、その集合体である結合様式は
こうした細胞膜周辺のタンパク質に構造的に支えられて形成するので
脂質ラフトは細胞接着分子の形成、構造安定性に関わります。
この性質と細胞外小胞の融合の性質を利用して
細胞外小胞が標的細胞に取り込まれ、膜融合すると
細胞膜の脂質量が増え、脂質ラフトが増加し、
それによって標的となる細胞接着分子が増え、安定化する。
こうしたシステムを薬物システムに組み込むということです。
より具体的には
細胞外小胞のプラズマ膜のコレステロールを含む脂質量を
顕著に上げておくという事です。
この脂質の一部が細胞膜に組み込まれ、
結果として、標的となる細胞接着分子が増える事になります。
こうした概念的治療方針は
脂質ラフトそのものが癌を促進する可能性もあるので
必ずしも治癒効果が高まる方向に動くかわかりませんが、
検討の余地、価値があることです。
では、細胞外小胞に脂質を多く含ませるためにはどうしたらいいでしょうか?
これをOpen AIに聞いてみます。

細胞外小胞(Extracellular Vesicles, EVs)のプラズマ膜中の脂質量を顕著に増加させるためには、いくつかのアプローチがあります。以下に主な方法を紹介します:

①脂質供給の増加:
1-1:コレステロール添加: 培養媒体にコレステロールを添加することで、細胞の膜に取り込まれるコレステロール量を増やし、その結果、放出されるEVsのプラズマ膜中のコレステロール量を増加させることができます。
1-2:脂肪酸添加: 特定の脂肪酸(例えば、オレイン酸やパルミチン酸など)を培養媒体に添加することで、細胞膜の脂質組成を変更し、EVsの膜中の脂質量を増加させることができます。

②脂質代謝経路の調節:
2-1:酵素の過剰発現: コレステロール合成や脂肪酸合成に関与する酵素(例:HMG-CoAレダクターゼ、スクアレンシンターゼなど)を過剰発現させることで、細胞内の脂質量を増加させ、EVsの脂質量を増やすことができます。
2-2:脂質輸送タンパク質の調節: 脂質輸送に関与するタンパク質(例:ABCA1、NPC1など)を調節することで、細胞内の脂質分布を変更し、EVsの膜中の脂質量を増加させることができます。

③培養条件の最適化:
3-1:栄養添加: 培養媒体に脂質前駆体(例:レシチン、ホスファチジルコリンなど)を添加することで、細胞内の脂質合成を促進し、EVsの膜中の脂質量を増やすことができます。
3-2:酸素濃度やpHの調整: 細胞の代謝活性に影響を与える培養条件(例:酸素濃度、pH)を最適化することで、脂質合成や分泌が促進される場合があります。

④遺伝子編集技術の利用:
CRISPR/Cas9などの遺伝子編集技術を用いて、脂質合成や輸送に関与する遺伝子をターゲットにし、その発現を増強または抑制することで、EVsの脂質量を調整することができます。

⑤ドラッグトリートメント:
薬剤の利用: 脂質代謝を促進する薬剤(例:スタチン類、脂肪酸合成阻害剤など)を細胞に投与することで、EVsの脂質量を調整することができます。

これらの方法が提案されました。
細胞外小胞のプラズマ膜の脂質量を増やすことは
標的細胞の脂質量に影響を与えられる可能性があり、
それによって細胞膜とタンパク質の相互作用を高め、
そのたんぱく質によって標的となる細胞接着分子の密度と安定性を
薬物を導入しながら高めるということです。
これが上手く作用すれば、
薬物を投与すればするほど、薬効が上がるというシステムを組むことができます。
これは薬物抵抗性に対して顕著な抑制因子となり得る概念的治療方針です。

実は、細胞外小胞のプラズマ膜の飽和脂肪量を
挙げておくことは、もう一つ薬物送達における機会をもたらします。
細胞膜の脂質量が上がるとインテグリンがクラスター化するので、
インテグリンの結合活性が上がるという事もあるのですが、
それに加えて、clathrin adaptor disabled homologue 
2  (Dab2)  と呼ばれるエンドサイトーシスを誘導する
タンパク質を細胞膜に誘導する機序も働く可能性があります。
エンドサイトーシスされやすくなることは、
インテグリンと細胞外小胞が結合した時に
細胞外小胞に含ませた薬剤を細胞内に取り込ませやすくすることになるので、
細胞内への薬剤送達効率が高まる可能性があります。
一方で、このシステムの弊害は、
細胞外小胞のプラズマ膜の飽和脂質量が多いという事は
病変部位までに送達するまでの間に、
循環器などにおいて多くの物質を引き付ける可能性があることです。
それによってあらかじめ設計した機能が
失わえれる可能性があるという事です。
むしろ、そのようなコロナを減らすためには
逆に細胞外小胞の飽和脂質量を極端に減らすという事も考えられます。
どっちがいいか?
それとも使い分ける事ができるか?
現時点で想定できませんが、
細胞外小胞を設計するときに細胞膜のコレステロール量を
人為的にダイナミックに変える事は特性に大きく影響を与える可能性があります。


(参考文献)
(1)
Erdinc Sezgin, Ilya Levental, Satyajit Mayor & Christian Eggeling
The mystery of membrane organization: composition, regulation and roles of lipid rafts
Nature Reviews Molecular Cell Biology volume 18, pages361–374 (2017)
(2)
Daniel Lambert, Catherine A. O'Neill, and Philip J. Padfield
Depletion of Caco-2 cell cholesterol disrupts barrier function by altering the detergent solubility and distribution of specific tight-junction proteins
Biochem J. 2005 Apr 15; 387(Pt 2): 553–560.

 

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