サルコグリカンは細胞接着分子と分類されるか?
細胞接着分子と分類されない可能性は高いですが、
骨格筋細胞と細胞外マトリックスとの結合に関わる
複合体構造の一部です。
インテグリンと同様に細胞と細胞外マトリックスとの結合に関わり
細胞接着分子と分類しているので、
一応、サルコグリカンについて詳細を述べる事にします。
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Hakan Tarakci(敬称略)らがFigure 1で示すように(1)
筋線維細胞の細胞膜の膜貫通タンパク質複合体の一部で、
α、β、γ、σのサルコグリカンサブタイプがSSPNを挟むように
複合体として結合しています。
これが筋線維細胞の機械的特性に関わるアクチンと
細胞外マトリックス間の連携に関わっています。
その連携にはDAGやLam2など複数のタンパク質が関わっています。
重要なのはこれらの運動に関わっている
基本的な分子がカルシウムイオンであることです。
筋肉に力を与えるために必要なのは
筋肉を「収縮」させるエネルギーです。
弛緩はある程度、収縮した時の内部エネルギーで
自然発生的に生じると考えられるからです。
その収縮の源泉となるのがトロポニンというタンパク質で
このタンパク質がカルシウムイオンを必要とします。
カルシウムイオンを収縮の為に
筋線維細胞は細胞外、あるいは細胞内生成によって濃度を上げて
収縮の後、弛緩させるときにそのカルシウム濃度を下げます。
これらの筋線維細胞の運動は
細胞骨格、それにつながる
膜貫通タンパク質であるサルコグリカンなどの関与によって
筋線維細胞を取り囲む細胞外マトリックスに力を与え、
筋線維全体として巨視的、マクロな力となり、
それが腱に伝わり、骨格を動かし、運動を可能にしていると考えられます。
このサルコグリカンは筋線維細胞膜である
サルコレマ(sarcolemma)を「安定化」させる働きがあります。
この「安定化」とは細胞膜の組織、機能的な安定化であり、
細胞内外の物質の交換が安定して行われる事を確保するものです。
当然、筋線維細胞の収縮、弛緩に関わる
カルシウムイオンの取り込み、生成、排出にも関わります。
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上述した細胞接着分子に分類されるサルコグリカンは
筋線維細胞膜に貫通して存在し、
ジストロフィン複合体タンパク質の構成要素の一つです。
筋ジストロフィーという筋肉の疾患があり、
筋線維が劣化して、線維化する病態を示します。
この一つの病理として
上述したサルコグリカンを含むジストロフィン複合体の産生に関わる
ジストロフィン遺伝子に異常が出る事が明らかになっています。
このサルコグリカンに関わる遺伝子に異常が出る事で
肩、腕、大腿部といった肢帯の筋肉に異常が出る事が
複数の研究によって明らかになっています(2-6)。
従って、この筋ジストロフィーを治療するためには
この遺伝子を正常化することが第一の選択肢になると思いますが、
一方で、
ジストロフィン複合体の機能を理解する事で
それよりも下流側のアプローチで医療介入できる可能性もあります。
その一翼を担う構造体がサルコグリカン複合体です。
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ここで、ジルトロフィン関連の糖たんぱく質構造について確認します。
(参考文献(1) Figure 1)
細胞外マトリックスと直接結合部位を持つのがLam2(ラミニン2)です。
これは細胞外マトリックスの基底膜を構成する巨大なたんぱく質で
α鎖に対してβ鎖、α鎖が螺旋状に巻き付き、
全体として十字構造を取ります。
それに結合するDAG1, DAG2とはジストログリカンの事です。
ジストログリカンは違う記事で詳細を述べるのでここでは割愛します。
ジストロフィン (dystrophin:DMD) は棒状の細胞質タンパク質で
ジストログリカンの細胞内ドメインに連結しています。
一酸化窒素合成酵素(nitric-oxide synthase;NOS)は
ジストログリカンに結合しています。
この酵素はその名の通り一酸化窒素合成に関わっています。
骨格筋が収縮、伸張するエネルギーの源になります。
F-ACT:Fアクチンは細胞骨格でジストロフィンに連結しています。
SNT:シントロフィン(syntrophin)は一般的に
他のタンパク質と複合体を形成し、機能的な働きをするので
「コンパニオン(Companion)」と呼ばれています。
α、β、γ型がありますが、
ジストロフィン複合体ではα、βが連結し、
一酸化窒素合成酵素とジストロフィンの間に連結して存在します。
DTN:ジストロブレビン(dystrobrevin)
サルコグリカンとβシントロフィンの間の連結して存在します。
FLN2:フィラミン2(filamin2)はアクチンを固定するタンパク質であり、
サルコグリカンとも結合し、アクチンを構造的に支持しています。
サルコグリカンはサルコスパン(SSPN)と複合体を形成します。
これらの複合体構造はジストログリカンを安定化させる機能があります。
サルコグリカンはα、β、δ、γ型を持ち、
これらをすべてサブユニットとして含む複合体構造を取ります。
β-δ型がコア構造で、δに対してγ型が結合し、
このγ型にα型が結合して複合体が完成します。
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αサルコグリカンはATPase活性を高め、
これが筋線維細胞の分化を促進するとされています。
αサルコグリカンはカドヘリン様ドメインとカルシウムイオン結合ポケットを持ちます(7)。
この事はαサルコグリカンがカドヘリンと結合できることを示すものかもしれません。
しかし、そうした証拠はありません。
このカルシウム結合ポケットによってカルシウムイオン依存的に
ジストログリカン複合体と結合できます、
このサルコグリカンを含むジストログリカン複合体は
脳、腎臓、肺、脊髄に発現されている事が確認されています。
ジストログリカンは骨格筋だけではなく
上皮細胞、神経細胞に発現が見られ、
上皮組織の基底(つまり、半接着斑が形成される部分)、
上皮組織そのものの組織発展、シナプス形成に関わっています(8)。
基底ではインテグリンが細胞と細胞外マトリックスの連結に関わっています。
このインテグリンとジストログリカンは相互作用します(9)。
これらの複合体は細胞骨格と細胞外マトリックスの節として働きますから、
その機能はインテグリンとオーバーラップ(重複)します。
ジストログリカンは複合体として節を構成しており、
物質としての相違性が高いことから、
アロステリック因子を駆動し、構造変換し、信号伝達する事に適していません。
インテグリンはα鎖、β鎖の位置関係を調整する事で
構造変化を誘導し、細胞内でのアダプタータンパク質を調整し、
双方向に活発にシグナル伝達を行います。
ジストログリカン複合体は組織としての補強という役割が強いとされています。
このジストログリカン複合体はインテグリンなどの他の細胞接着分子と同様に
コレステロールを含む脂質ラフトの細胞膜構成に誘導されて形成されると考えられます。
具体的にはカベオリン-3と連結しながら、
細胞膜の飽和脂質が集まっている部分に形成されます。
(参考文献(10) Figure 8)
(参考文献)
(1)
Hakan Tarakci, Joachim Berger
The sarcoglycan complex in skeletal muscle
Frontiers in Bioscience, Landmark, 21, 744-756, January 1, 2016
(2)
S. L. Roberds, F. Leturcq, V. Allamand, F. Piccolo, M. Jeanpierre, R. D. Anderson, L. E. Lim, J. C. Lee, F. M. Tome, N. B. Romero and et al.:
Missense mutations in the adhalin gene linked to autosomal recessive muscular dystrophy.
Cell, 78(4), 625-33 (1994)
(3)
C. G. Bönnemann, R. Modi, S. Noguchi, Y. Mizuno, M. Yoshida, E. Gussoni, E. M. McNally, D. J. Duggan, C. Angelini and E. P. Hoffman:
β-sarcoglycan (A3b) mutations cause autosomal recessive muscular dystrophy with loss of the sarcoglycan complex.
Nature Genet, 11(3), 266-73 (1995)
(4)
L. E. Lim, F. Duclos, O. Broux, N. Bourg, Y. Sunada, V. Allamand, J. Meyer, I. Richard, C. Moomaw, C. Slaughter and et al.:
β-sarcoglycan: characterization and role in limb-girdle muscular dystrophy linked to 4q12.
Nature Genet, 11(3), 257-65 (1995)
(5)
S. Noguchi, E. M. McNally, K. Ben Othmane, Y. Hagiwara, Y. Mizuno, M. Yoshida, H. Yamamoto, C. G. Bonnemann, E. Gussoni, P. H. Denton, T. Kyriakides, L. Middleton, F. Hentati, M. Ben Hamida, I. Nonaka, J. M. Vance, L. M. Kunkel and E. Ozawa:
Mutations in the Dystrophin-Associated Protein γ-Sarcoglycan in Chromosome 13 Muscular Dystrophy.
Science, 270(5237), 819-22 (1995)
(6)
V. Nigro, E. de Sa Moreira, G. Piluso, M. Vainzof, A. Belsito, L. Politano, A. A. Puca, M. R. Passos-Bueno and M. Zatz:
Autosomal recessive limb-girdle muscular dystrophy, LGMD2F, is caused by a mutation in the delta-sarcoglycan gene.
Nature Genet, 14(2), 195-8 (1996)
(7)
Nicholas J Dickens, Scott Beatson, Chris P Ponting
Cadherin-like domains in alpha-dystroglycan, alpha/epsilon-sarcoglycan and yeast and bacterial proteins
Curr Biol. 2002 Mar 19;12(6):R197-9.
(8)
M Durbeej 1, K P Campbell
Biochemical characterization of the epithelial dystroglycan complex
J Biol Chem. 1999 Sep 10;274(37):26609-16
(9)
Adel Driss, Laetitia Charrier, Yutao Yan, Vivienne Nduati, Shanthi Sitaraman, and Didier Merlin
Dystroglycan receptor is involved in integrin activation in intestinal epithelia
Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2006 Jun; 290(6): G1228–G1242.
(10)
Haixia Huang 1, Chilman Bae, Frederick Sachs, Thomas M Suchyna
Caveolae regulation of mechanosensitive channel function in myotubes
PLoS One. 2013 Aug 30;8(8):e72894.
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