2024年7月17日水曜日

免疫細胞様移動形質を獲得した細胞外小胞による薬物送達システム


セレクチンは免疫細胞の移動性に最も貢献する細胞接着分子です。
セレクチンは糖鎖と結合性を持ち、
免疫細胞同士、血管内皮と結合性を持ち、
免疫細胞同士の位置の調整や血管内皮上の移動、固着にも関わります。
こうしたセレクチンは炎症反応に応じて発現が高まるため、
免疫細胞が集まるメカニズムは
こうしたセレクチン依存的に生じている部分も多くあります。
こうした免疫細胞の移動のメカニズムを利用し
病変部位に免疫細胞に誘導される形で薬物キャリアを送達させる事は可能です。
すでにWenyi Zheng(敬称略)らは
細胞外小胞において糖の複合体構造であるグリコカリックスを
ドナー細胞の遺伝子導入によってエンジニアリングし、
分泌される細胞外小胞のグリコカリックスを制御する事で
細胞種特異的な送達を提案してます(1)。
多くの疾患では組織的な炎症が生じ、
その修復のために免疫細胞が集まる性質があります。
それはセレクチン依存的な移動も含まれるため、
グリコカリックスに含まれる
◎Sialylated sLe^x
◎Tetrasaccharide sLe^x
これらをセレクチンリガンドを細胞外小胞に豊富に装飾する事で、
免疫細胞依存的に、あるいは免疫細胞の移動性の特性を持たさせて
細胞外小胞を病変部位まで運ぶことができる概念を構築できます。
このセレクチンは炎症性サイトカインの放出を促すことがあるので、
セレクチン結合を惹起する細胞外小胞を入れる事は
一定の免疫的な副作用は生じる可能性がありますが、
セレクチンは食作用を誘導しないので、
細胞外小胞が免疫細胞によって分解されることはありません。
従って、細胞外小胞にセレクチンとグリコカリックスを含めた糖鎖を
豊富に装飾させる事は
「免疫細胞が持つ移動性形質を獲得した」細胞外小胞が生まれます。
免疫細胞は病変部位に集まる形質があるので、
細胞外小胞は免疫細胞のように動くことが想定されます。

但し、セレクチンは免疫の移動性の鍵を握るので、
その移動性を利用することは細心の注意が必要です。
例えば、セレクチンが過剰に活性化されると
〇呼吸器疾患(2)
〇アトピー性皮膚炎、乾癬(3)
〇動脈血栓(4)
〇全身性リウマチ疾患(5)
これらの疾患と関連があります。
従って、セレクチンを使って、免疫細胞が持つ移動性を利用しながら
ドラックデリバリーを試みる場合には、
送達キャリアがセレクチンを通して免疫細胞に与える影響を
常に意識しながら進める必要があります。


(参考文献)
(1)
Wenyi Zheng,corresponding author 1 , 2 Rui He, 2 , 3 Xiuming Liang, 1 , 2 Samantha Roudi, 1 , 2 Jeremy Bost, 1 , 2 Pierre‐Michael Coly, 4 , 5 Guillaume van Niel, 4 , 5 and Samir E. L. Andaloussi
Cell‐specific targeting of extracellular vesicles through engineering the glycocalyx
J Extracell Vesicles. 2022 Dec; 11(12): e12290.
(2)
S C Donnelly 1, C Haslett, I Dransfield, C E Robertson, D C Carter, J A Ross, I S Grant, T F Tedder
Role of selectins in development of adult respiratory distress syndrome
Lancet. 1994 Jul 23;344(8917):215-9. 
(3)
W Czech 1, E Schöpf, A Kapp
Soluble E-selectin in sera of patients with atopic dermatitis and psoriasis--correlation with disease activity
Br J Dermatol1996 Jan;134(1):17-21.
(4)
M Merten 1, P Thiagarajan
P-selectin in arterial thrombosis
Z Kardiol. 2004 Nov;93(11):855-63.
(5)
P P Sfikakis 1, M Mavrikakis
Adhesion and lymphocyte costimulatory molecules in systemic rheumatic diseases
Clin Rheumatol. 1999;18(4):317-27

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