ジストログリカンはサルコグリカンと同様に
ジストロフィン複合体の一部です。
このジストロフィン複合体は
細胞内の細胞骨格と細胞外マトリックスの間の関節のような働きをするため
その機能はインテグリンと重複する部分があります。
ジストロフィン複合体は
複合体構造であるのでそれぞれのドメインの構造としての独立性が高く、
アロステリック因子依存的な構造改変に伴う
双方向のシグナル伝達に適していませんが、
細胞骨格と細胞外マトリックスを連結させ、
細胞を機械的に強く支持する大切な役割があります。
骨格筋だけではなく、血管の平滑筋や上皮組織、神経細胞においても
このような細胞骨格と間質に存在する細胞外マトリックスを関節としてつなぐ
機械的に支持する上で重要です。
従って、細胞接着分子として分類する場合には
ジストロフィン複合体として考える事が重要で、
この記事で述べる
ジストログリカンに加えて、サルコグリカン-サルコスパン複合体
これら3つの構造体をセットにして調べる必要があります。
これら3つのタンパク質は
ジストログリカンα、βが連結し、
サルコグリカンα、β、δ、γ複合体と連結している
サルコスパンがジストログリカンとこれらサルコグリカン複合体を架橋しています。
(参考文献(1) Figure 1)
ジストロフィン複合体の細胞質内の長鎖のタンパク質
ジストロフィンは約427kDaで長さにすると約1.16μmです。
(参考文献(3) Fig.1)
インテグリンの細胞質ドメイン、Cターミナルの長さはわずか0.03-0.06μmなので
ジストロフィン複合体はインテグリンに対して
かなり長い触手を細胞質側で伸ばすことができます。
この事は原理的に多くの細胞骨格と結合できる事を示します。
この事から、ジストロフィン複合体は
細胞骨格と細胞外マトリックスを繋ぐ関節として、
高い機械的強度を持って機能している可能性があります。
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ジストログリカンは他の細胞接着分子と同様に糖化します。
この糖化の機能は細胞外マトリックスとの結合状態を改変するなど
機能的な影響を与えます(2)。
例えば、O-mannosyl tetrasaccharide(糖鎖)は
αジストログリカンがラミニンと高い親和性を持って結合する
重要な糖鎖です(7)。
この事はCAMs-glyomeの重要性を明示します。
この細胞接着分子の糖化を促す酵素が糖転移酵素(Glycosyltransferases)です。
この機能に不全が出ると、ジストロフィン複合体関連疾患だけではなく
様々な細胞接着分子の機能不全を引き起こし、
それにより多様な疾患と関連します(8)。
この糖転移酵素はタンパク質なので遺伝子コードされています。
DNAは糖は生み出しませんが、糖転移酵素依存的に
間接的に細胞接着分子の糖装飾に関わっているという事です。
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αジストログリカンは細胞骨格の基底ラミニンと結合するので
βジストログリカンよりもNターミナル側、先端にあります。
それぞれが連結して、複合体構造を取っています。
αジストログリカンは3つのターミナルドメイン(N,M,C)をとります。
トータルで70-186kDa(0.19-0.51μm)くらいの大きさになります。
一方で、βジストログリカンはドメイン構造を取らず、
αジストログリカンよりも構造的に小さく、41-43kDa(0.11μm)程度です。
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βジストログリカンのCターミナル、細胞質側構造に結合できる
アダプタータンパク質として代表的なのがGrb2です(2)。
Grb2は細胞骨格をリモデリングする事ができるエフリンのアダプタータンパク質でもあります、
このGrb2はShcやSosと結合し、Ras経路を活性化します。
従って、βジストログリカンは細胞骨格のリモデリングをGrb2依存的に
誘導する事ができる可能性があります。
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αジストログリカンのラミニンとの結合性を低下すると
腫瘍形成などを引き起こす原因となると言われてています(2)。
なぜでしょうか?
例えば、上皮組織の基底に着目すると
その下には層状のラミニンが整列していることがわかります。
(参考文献(4) Figure 1)
αジストログリカンは上皮細胞が機械的に支持される鍵を握るタンパク質なので
これと細胞外マトリックスの基底であるラミニンとの結合性が失われると
上皮細胞の基底と細胞外マトリックスの基底の境界が不安定になります。
そうすると良性、悪性(6)に関わらず、腫瘍形成しやすくなると考えられます。
(参考文献(5) Figure 5)
(参考文献)
(1)
Quan Gao1 and Elizabeth M McNally2
The Dystrophin Complex: structure, function and implications for therapy
Compr Physiol. 2015 Jul 1; 5(3): 1223–1239.
(2)
Rita Barresi and Kevin P. Campbell
Dystroglycan: from biosynthesis to pathogenesis of human disease
Journal of Cell Science 119, 199-207 Published by The Company of Biologists 2006
(3)
Darren Graham Samuel Wilson, Andrew Tinker & Thomas Iskratsch
The role of the dystrophin glycoprotein complex in muscle cell mechanotransduction
Communications Biology volume 5, Article number: 1022 (2022)
(4)
Aleksandra N Kozyrina 1 2, Teodora Piskova 1 2, Jacopo Di Russo 1
Mechanobiology of Epithelia From the Perspective of Extracellular Matrix Heterogeneity
Front Bioeng Biotechnol. 2020 Nov 20:8:596599.
(5)
Guangyong Chen,1 Rui Xu,1 Bing Yue,1 Xue Mei,1 Peng Li,2 Xiaoge Zhou,1 Shoufang Huang,1 Liping Gong,3 and Shutian Zhang2
The expression of podoplanin protein is a diagnostic marker to distinguish the early infiltration of esophageal squamous cell carcinoma
Oncotarget. 2017 Mar 21; 8(12): 19013–19020.
(6)
Jarnail Singh 1, Yoko Itahana, Selena Knight-Krajewski, Motoi Kanagawa, Kevin P Campbell, Mina J Bissell, John Muschler
Proteolytic enzymes and altered glycosylation modulate dystroglycan function in carcinoma cells
Cancer Res. 2004 Sep 1;64(17):6152-9.
(7)
Rita Barresi, Daniel E Michele, Motoi Kanagawa, Hollie A Harper, Sherri A Dovico, Jakob S Satz, Steven A Moore, Wenli Zhang, Harry Schachter, Jan P Dumanski, Ronald D Cohn, Ichizo Nishino & Kevin P Campbell
LARGE can functionally bypass α-dystroglycan glycosylation defects in distinct congenital muscular dystrophies
Nature Medicine volume 10, pages696–703 (2004)
(8)
Colin Reily, Tyler J. Stewart, Matthew B. Renfrow & Jan Novak
Glycosylation in health and disease
Nature Reviews Nephrology volume 15, pages346–366 (2019)

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