(要約)
身体の組織の中には主に液体などの物質の流動を調整、
流体を閉じ込めるための区画があります。
循環器には主には血液やリンパ液などを閉じ込める為
血管の内壁には内皮細胞からなる組織があります。
様々な臓器には臓器の実質の表面に形成される上皮組織があります。
こうした組織は流体だけではなく、
内分泌物を含めた固体から成る物質の浸透を調整するような
バリア機能を有しています。
こうした上皮、内皮組織は一つの細胞からなるわけではなく、
複数の細胞が「極性を持って」、つまり向きを揃えて
秩序を保って整列し、組織のバリア機能を維持しています。
そうとはいうものの、細胞間には厳密に言えば、
わずかな間隙(かんげき:すきま)があります。
その間隙には接着斑を含めて、様々な細胞接着分子が機能的に結合し、
物質の浸透を調整しています。
この記事で説明する密着接合(Tight junctions)もこのような
細胞間の隙間での物質の浸透を調整する役割があります(1)。
密着接合はカドヘリンなどで構成される接着接合や接着斑と同様に
内皮組織や上皮組織の側壁に広範に形成されますが、
その一部はこれらの組織の頂端部と側面の間の角にも形成されます。
このようなポイントを「Kissing point」と呼びます。
(参考文献(1) Figure 1d)
密着接合は他の結合様式、細胞質内の細胞骨格と相互作用し、
細胞骨格依存的に遺伝情報がある細胞核にも作用し、
細胞の機能を決定する信号伝達にも寄与します。
この密着接合は閉鎖接合に分類されます。
この閉鎖結合は「閉鎖」という名前が選択されているように
物質の流動を関止める働きがありますが、
その特徴して「小さな分子でさえも」通過を許さない機能を持ちます。
密着接合の間隙はわずか10nmであります(2)。
こうした距離よりも有意に小さいイオンなどの選択的浸透性にも関わります。
従って、空間的な制約に加えて、静電気力など物質的な制約によっても
イオンなどの低分子量の物質においてバリア機能を有していると言えます。
(内容)
上皮細胞や内皮細胞は体の区画を維持する上でとても大切な役割を果たします。
例えば、脳血管から脳の実質へ浸入する物質は
他の組織に比べても非常に厳密の制御する必要があるため、
脳の血管内皮の組織の内皮細胞の間の細胞接着分子によるバリア機能は
より重要になります。
こうした機能が逆に人為的な薬剤のアクセスを難しくしています。
この頭蓋内の循環器の高いバリア機能を血液脳関門と呼びます。
血液脳関門の電気的抵抗は普通の循環器に比べて
10~100倍程度高いとされています(Open AIの評価)。
(文献の比較--通常:1.85Ω/cm^2 vs 脳:310-1128Ω/cm^2)(3,4)
電気的抵抗が高いと電気的な力によって
物質を動かす能力が低下するため、
正負の電荷をもつ様々な生体内物質の
静電気的な移動能力を低下させます
それと同時に密着接合、接着接合を形成する
細胞接着分子の密度も血液脳関門では通常の内皮組織に比べて
有意に高い可能性があります。
--
内皮細胞や上皮細胞は特殊な形をしており、
物質が隙間から浸入、あるいは滲出しにくいように
空間的に制限している事も一つとして貢献しています。
ただ、こうした空間的な制限はイオンなどの低分子量の物質を含むと
十分ではなく、物質的な制限も必要になります。
そうした物質的な制限は細胞膜上に無数に配置される
主に細胞接着分子によってかけれらます。
特に細胞接着分子の中でこうしたバリア機能に関連する結合様式は
この記事で取り上げる密着接合(Tight junction)の他に、
接着接合(Adherens junction)とデスモソーム(Desmosome)があります。
とりわけ、密着接合と接着接合は関連性が深く、
その一部は頂端部に集中して形成されます(1)。
--
上述したように血液脳関門は非常にタイトに守られていますが、
その細胞接着分子を逆に利用して
細胞感染や脳の実質内への侵入(が疑われる)するウィルスがあります。
代表的なウィルスがC型肝炎ウィルス(Hepatitis C virus)です。
このウィルスは脳に対し、炎症性を示し(5)、Brain fogや
いくつかの臨床症状(物忘れ、集中力低下、混乱、疲労、不安、易刺激性、鬱など)を呈します。
この浸入機序はトランスサイトーシスを含めると
おそらくよくわかっていないと想定されますが、
複数の内皮細胞上に発現される表面タンパク質が関わっていて、
密着接合に分類される細胞接着分子である
クラウディン、オクルーディンなどが
このC型肝炎ウィルスの細胞内エントリーに関与しています。
これらの密着接合に関わる細胞接着分子は
細胞の側面だけではなく、血管内壁の表面にも発現されています。
(参考文献(6) Figure 1)
実は、私は細胞種特異的薬物送達システム実現にあたり、
ウィルス学を非常に重要視しています。
それはなぜでしょうか?
その理由は、ウィルスは一般的に細胞内ですか増殖できず、
ウィルスには細胞内に入る機序が様々な様式で存在するからです。
そのメカニズムを理解する事は
人為的に細胞外小胞を各細胞種の細胞内にエントリーさせる上で
一つの重要な参考情報になるからです。
上の情報によれば、
C型肝炎ウィルスは脳の実質内への侵入も疑われますから、
そうした浸入機序を逆用して、細胞外小胞に人為的に装飾させることです。
例えば、クラウディン、オクルーディンに結合できる
対となる表面タンパク質を遺伝子的操作によって
細胞外小胞の表面に細胞内で装飾させ、精製するということが考えられます。
クラウディンに関してはすでにクラウディン18.2という標的が
特に胃がんで新手の治療として注目を集めています。
Izuma Nakayama(敬称略)らがFig.4に示すように(14)
クラウディン18.2は
〇抗体 〇補体 〇抗体薬物複合体
これらの3つのアプローチで結合させることができます。
抗体薬物複合体はまだフェーズ1の段階ですが、
抗体に関しては興味深い結果があります。
アストラス製薬が取り扱うZolbetuximab(ゾルベツキシマブ)は
胃がんの日本人に対して非常に高い効果を発揮するかもしれません。
数は数十人と他の地域に比べて少ないので
統計的な信頼性はあまり高くないですが、
Manish A. Shah(敬称略)らがFig.3に示す国別のデータを見ると(15)
日本は他の地域に比べて、
この抗体製剤において胃がんのケースで
非常に高い治療効果を持つかもしれません
この薬は
2024年3月26日に、日本においてビロイ®点滴静注用100mg(一般名:ゾルベツキシマブ(遺伝子組換え))は、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌を効能・効果として、製造販売承認を取得しまし
このようにされています。従って、日本でも承認されました。
この薬理はよく考える必要があります。
抗体はFcドメインでとりわけNK細胞など自然免疫系を引き付ける効果があるので
こうした免疫細胞が胃がんの細胞に引き付けられることで、
癌組織が退縮するという事があると思いますが、
一方で、Fcドメインは抗癌作用のある補体C1qやエフルチビモドと結合性があります。
これらが並列的に作用していて、
また、上述したようにクラウディンは
細胞内へのエンドサイトーシス機序に関わっているため、
こうした抗体が癌細胞内へ送達されることがあると思います。
従って、抗体に薬物を複合体化させる抗体薬物複合体は
ひょっとするともっと劇的な効果があるかもしれません。
従って、現時点においても細胞接着分子は
いくつかのケースにおいて臨床で効果的であるという事が示されています。
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例えば、川崎病の病因となるウィルスが特定され
心臓、冠動脈に向性、走化性を示すのであれば、
それを逆用し、心臓、冠動脈に細胞外小胞を届ける事も出来ます。
このような観点から、
人工知能やスーパーコンピューターが利用するデータベースに
全てのウィルスデータと浸入機序を入れ込み、
送達させたい組織、臓器に対して
どのウィルスのどういった浸入機序を利用できるか?
それを瞬時に出力できるシステムの構築が頭の中にあります。
ウィルスだけではなく、細菌を含めることももちろん考えられます。
これも「ネイチャーテクノロジー(Nature technology)」、
もっと言えば
「ネイチャーバイオテクノロジー(Nature biotechnology)」です。
なぜなら、自然に存在する、進化の過程で獲得してきた
ウィルスの生存戦略を人為的に目的に沿うように利用するからです。
こうしたデータベース化、アルゴリズムを具体的に考えているため、
ここではCeniz Zihni(敬称略)らがBox.1に示す(1)
様々なウィルスの密着接合依存的な浸入機序がありますが、
C型肝炎ウィルスのみの紹介に留めます。
臓器を含めた組織別のCAMome、
病気との比較を含めたCAMomeなどのデータベースと
ウィルスや細菌などが持つ各組織の細胞種への
走化性、向性と細胞内浸入機序を照らし合わせます。
最終的にどういった細胞接着分子の組み合わせが
標的とする細胞種に薬物を細胞外小胞を通じて
有効に送達し、また、細胞内へ送達させる上で好ましいか?
それらの情報から総合的に考えます。
従って、上述した全ウィルスや細菌の
細胞内浸入機序はCAMomeデータベースと並んで
重要なデータベースとなります。
ここまで重要な概念的な情報を公開しているわけですから、
今の状況が続くと、どんどん情報が世界に流出するという事もありますし、
情報を受け取った日本以外の世界の方は、
ある程度は日本にメリットがあるように動いていただきたい
ということがあります。
公開している背景は、私も世界から重要な情報を受け取っているからです。
しかし、顕著な付加価値を付けている事は事実なので、
その膨大な価値に対しての返報として私の意向を尊重してほしいです。
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上述したように頂端部と基底部(Kissing point)で隣り合う細胞同士を
ジッパーのように閉鎖する事は直感的に考えても、
物質の通過を制限する上で重要です。
例えば、その閉鎖位置が細胞側壁の中央部であるとすると、
環境中に含まれる細胞外の分泌物質が組織の中に入り込み、
閉じ込められることによって、
何度もバリア部にアクセスできるため、
確率的にバリア機能は低下すると考えられます。
従って、密着接合や接着接合の「位置」は重要です。
組織の入口と出口に門(ゲート)として存在します。
この密着接合と接着接合の位置関係は
無脊柱動物と脊柱動物(人などを含む)では異なります。
この位置関係は進化的、遺伝子的に高く保持されています。
具体的には無脊柱動物では接着接合の方が組織の外側にあり、
脊柱動物では密着接合の方が組織の外側にあります。
こうした位置調整は
PAR3と呼ばれるたんぱく質が細胞の頂端部や基底部に局在し、
それが足場(Scaffold)となる事で
密着接合と接着接合の頂端部、基底部での密集構造を確立させます。
aPKCはタンパク質の構造を変える化学反応の促進に関わる
キナーゼ(酵素)であり、その化学反応エネルギーを支えるのは
ミトコンドリアで精製されたエネルギー源であるATPです。
このエネルギーによってPAR3のような物質がリン酸基を通じて構造変化して、
細胞頂端部に局在できるような動的メカニズムを手に入れます。
(参考文献(1) Box.2)
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密着接合はクラウディンなどの細胞接着分子の細胞内ドメインと
細胞骨格の間に接着斑のような電子密度の高い、
言い換えれば、分子密度の高いタンパク質などからなる
多くの複合体構造を持ちます。
これはPlaque(斑)と呼ばれます。
Ceniz Zihni(敬称略)らがFigure 1bに示すように(1)
こうした斑の構造は
ZO1,ZO2,ZO3,MAGl,Cigulin,RHOGEFsなど多くの物質が含まれ、
その中には上述したPAR3、aPKCなどの
頂端部への向性を示すタンパク質も含まれます。
上述したように電子密度の高い、分子密度の高い
層状の構造が細胞接着分子と細胞骨格の間に存在する事は
接着斑でも同様にあります。
なぜ、このような構造を取るのか?
言い換えれば、どのような重要な機能がこの密集体にあるのか?
はっきりとしたことはわかりませんが、
物理的観点でいくつか言えることがあります。
高校の教科書でも習う事も含まれます。
分子の周りにはs,p,d軌道ががあり、その中に存在が許される電子数があります。
その電子密度が高いとはタンパク質の場合には
タンパク質の複雑な折り畳み構造によって分子数が単位体積当たり多くなっている
という事を示します。それぞれの軌道の電子は、タンパク質の場合は絶縁体なので、
自由電子はほとんどなく、軌道内に束縛されている電子ですが、
これらが空間的に近い位置に密集する事で電子相関が高くなります。
一般的に電子密度が高くなると電子が自由に移動する事が難しくなるため
電気伝導性は低くなります。
一方で、電子の回転であるスピンや格子振動であるフォノンの相互作用は
一般的には電子相関が高くなるので、
あるいは分子密度が高くなるので、それぞれ高くなります。
従って、熱伝導率は高くなる傾向にあります。
なぜなら、熱は格子の振動であり、その相互作用が高くなるという事は
そうした振動の伝搬効率が高くなるからです。
これは分子の密度が高い事から直感的に想定される事です。
また、分子の密度が高くなると、分子の位置が固定されやすくなるため
融点が上がる傾向にあります。こうした点から、
任意温度での物質の構造的な安定性は高まる傾向にありますが、
一方で、タンパク質の折り畳み構造は
アロステリック因子なども作用し、動的です。
従って、環境との相互作用を考える必要も当然あり、
こうした安定性は電子密度という指標だけで一概にいえるものではありません。
構造的に電子密度が高い状態が
ある程度共通的にどういった細胞内の機能に対して
物理的に作用するかというのは上述したようにわかりませんが、
推定されている機能としては
この斑となる構造は細胞核にも局在化しており、
遺伝子発現の制御に関わる転写因子として作用します(11)。
--
Ceniz Zihni(敬称略)らがFig.1bに示すように(1)、
密着接合は大きく分けて4つの種類の細胞膜貫通タンパク質から構成されます。
〇Protein crumbs homologue 3 (CRB3)
これは頂端部の被膜形態形成(極性維持)や密着接合の制御において
重要な役割を果たします。
〇MARVEL domain proteins such as occludin, tricelluin
これらは冗長的な機能を有し、
オクルーディン(occludin)は密着接合の安定化、
バリア機能の最適な調整に関わります(8)。
トリセルリン(tricelluin)は3細胞の頂端部の密着接合に関わります。
その中で細胞骨格であるアクトミヨシンの組織化を制御します(9)。
〇Blood vessel epicardial substance (BVES)
いくつかの分子経路(cAMP, WNT)に関与し、
癌遺伝子を抑制する働きがあります(7)。
〇Junctional adhesion molecules (JAMs)
PDZドメインを含む足場タンパク質(Scaffolding proteins)と相互作用し
細胞間の接触における成熟化、密着接合の形成に関わります(10)。
密着接合の形成初期に関わるため
この接合に関わるMARVELドメインタンパク質などを
接合部に誘導する働きがあります。
細胞内で頂端部への向性を示すPAR3、aPKCと結合する事が
初期の形成に関わっている事と関連すると考えられます。
これらです。
これらは同時に形成されることもあれば、そうではないこともあります。
--
Ceniz Zihni(敬称略)らがFig.2dに示すように(1)、
密着接合は内皮組織や上皮組織において物質の透過を制限する機能がありますが、
完全に遮断するわけではなく、選択的に、あるいは量を制御しながら
物質を透過させる機能があります。
こうした拡散モデルを支える一つの機能が
密着接合中に形成されるイオンチャンネルです。
Hiroshi Suzuki(敬称略)らがFig.3に示すように(12)
クラウディンの構造中にイオンを選択的に通過させるイオンチャネルが存在します。
これは「Paraellular pores」と呼ばれます。
(あるいは参考文献(1) Figure 3)
このクラウディンの詳細な構造は割愛します。
個別のクラウディンの記事を立ち上げるので、
そこで詳しく紹介する事になります。
ただ、密着接合の記事で述べるべきことは
このMARVELドメインタンパク質の一つであるクラウディンは
実際には複数の膜貫通タンパク質が密に絡み合う構造を取っていると思いますが、
概念としてはCeniz Zihni(敬称略)らがFigure 3cに示すような
シート状の構造を取り、物質の浸透率の調整、通過できる物質の選択を行っています。
このクラウディンは血液脳関門にも発現しているため、
血液脳関門のバリア機能を通常の血管内皮と比較的に考える際に重要になります。
Emily G. Knox(敬称略)らがFig.1,2に示すように(13)、
血液脳関門と通常の血管の内皮細胞は構造的に2つのポイントで異なる可能性があります。
1つは、細胞間の距離が大きく異なる可能性です。
その距離はそれぞれBBB:1-2nm, Normal:20-40nmと出力されました(Open AIより)。
また、血液脳関門の細胞間は垂直ではなく、斜めに切るように形成されるため、
通過する距離もその角度に応じて長くなる可能性があります。
従って、空間的な制約で物質の透過が厳しく制限されていると言えます。
クラウディンのサブタイプは血液脳関門と通常の血管の内皮組織で
共有化されているため、構造的な差異はあまりないという見解もあります(Open AIより)。
--
クラウディンなどの密着接合を形成する細胞接着分子は
上述したように高い電子密度(分子密度)を持つ斑(Plaque)を
細胞接着分子と細胞骨格の間の細胞質領域に形成します。
言い換えれば、多くの種類、量のタンパク質を
接合領域に誘導する必要があります。
このタンパク質誘導機序には、
その領域に存在する細胞膜の物質構成が大きく影響を与えます。
細胞膜にはコレステロールなど脂質を多く含む
脂質ラフトと呼ばれる領域があります。
この脂質ラフトは脂質がない領域に比べて
多くのタンパク質を引き付ける性質があります。
(参考文献(16) Figure 1)
こうした脂質ラフトはクラウディンなどの密着接合を形成する
細胞接着分子の構造安定性に関わっている事が示唆されています(17)。
従って、この脂質ラフトがどこに形成するかは
細胞接着分子がどこに多く存在するかということと
密接に関係性を持つ可能性があります。
--
密着接合のバリア機能に関わる拡散モデルは
大きく分けて3種類があります。
上述したように密着接合に関わるクラウディンなどの細胞接着分子は
構造内に小さな穴を持ちます。
この穴の径は数Åです(18)。
従って、空間的な制約でこれ以上小さなイオンや水分子などしか
この穴を通じて通過できません。
この構造はイオンチャンネルのように動的でこの穴を閉じる事もできます。
しかし、こうした穴の開閉のメカニズムは詳しく分析されていません(1)。
他方で、イオンなどの通過分子を仕分けする物理的機序として
電荷の制御などが行われます(1)。
一方で、Ceniz Zihni(敬称略)らがFigure 2dに示すように(1)
クラウディンなどの細胞接着分子の立体構造が変化し、
細胞間の結合状態が変化することで
イオンなどよりも大きな分子が通過することができます。
これは「速度が小さい拡散モデル」です(1)。
この通路は「Leakey pathway」とも呼ばれます。
(参考文献(18) Figure 3)
こうした構造変化の駆動因子はRhoなどによる
アクトミヨシンなどの細胞骨格の再構築によって制御されます(19)。
このRhoはTony J. C. Harris(敬称略)らがFigure 4aに示すように(20)
細胞骨格が細胞質内で整列し、平行で狭い細胞間隙が形成され、
細胞接着分子が隙間なく結合することに貢献すると考えられます。
これはバリア機能を高める効果がおそらくあります。
従って、このRhoの発現状態は、
細胞骨格の構築を通じて、それに接合する
クラウディンなどの結合状態に影響を与え、
このRhoの作用が弱まった時に間隙が生じ、
結果、Leakey pathwayが生まれると考えられます。
言い換えれば、細胞膜が動くことで
細胞間隙が変わり、それに追随してクラウディンの結合状態が変わり、
構造が開いたり、閉じたりするということです。
こうした構造変化はマクロ分子の拡散に関わります。
3つ目の機能は
Ceniz Zihni(敬称略)らがFigure 2bに示すように(1)、
脂質2重層の外側の膜が隣接する細胞の同じく外側の膜と接触し、
それによって空間的な制限を与え、
細胞間の物質の浸透を妨げる働きを示します。
この領域では脂質の拡散が抑制されているので(1)
脂質ラフトと同様に物質の相互作用が高まり、
細胞膜の接着を可能にしていると考えられます。
実際にErdinc Sezgin(敬称略)らがFigure 5に示すように(16)
飽和脂肪、コレステロールを脂質2重層を多く含む脂質ラフトの部分は
糖鎖を引き付けながら、膜を突出させる機序があります。
こういった膜の可塑性は
細胞間のバリア機能にも影響を与えると考えれられます。
こうした脂質ラフトの部分は同時に
クラウディンなどの細胞接着分子を引き付けると考えられるため、
Ceniz Zihni(敬称略)らがFigure 2bで示しているように
こうした膜接合部に形成されると想定されます。
--
密着接合はどのような順序で形成されるか?
この形成過程は独立ではなく、接着接合形成と密接に連携します。
密着接合や接着接合では図中では
対となる2つの細胞接着分子の結合して記述されますが、
実際は異なり、断面ではなく、平面で見たときには
密着接合、接着接合に関わる多くの細胞接着分子が密集して分布している
と考えられます。
そうであるとすると、これらの接合は頂端部に形成されることがあり、
その頂端部に細胞接着分子を誘導する必要があります。
こうした誘導機序は、上述したように
細胞膜の構成、すなわち脂質2重膜の飽和脂肪の量によっても促されますが、
もう一つの主要な誘導機序としては、
細胞接着分子と細胞骨格の間の接合因子(リンカー)である
電子密度の高いタンパク質複合体が挙げられます。
例えば、β-カテニンはカドヘリンなどの
接着接合の細胞接着分子と結合します。
一方で、ZO1はクラウディンなどの密着接合の細胞接着分子に関与します。
このβ-カテニン、ZO1はそれぞれ接着接合、密着接合の
形成初期に関与しています(1)。
また、これらのタンパク質が相互作用する事によって
接着接合と密着接合が近接されます。
こうした初期の過程から完全体になるまでの成熟の間には
いくつかの細胞内シグナルの活性化が必要です。
〇Protein kinase C (PKC),
接合タンパク質のリン酸化を介して接合の安定化と強化を助けます。
〇PKA(プロテインキナーゼA)
カドヘリン-カテニン複合体の安定性を調整し、細胞間接着の強度を制御します。
〇AMP-activated protein kinase (AMPK)
エネルギー消費を調整し、接合形成に必要なエネルギー資源を確保します。
これによりカルシウムイオンに誘導された密着接合形成に関与します(21)。
〇Protein phosphatases
プロテインホスファターゼはリン酸基を除去する酵素であり
この接合タンパク質の脱リン酸化は接合の組み立てと解体の調整に不可欠です。
従って、構造が微調整されながら成熟していくと考えられます。
PKCによるリン酸化と、この脱リン酸化によって
接合タンパク質のリン酸基の状態が調整されると想定されます。
〇Small GTPases
これはRho、Rac、Cdc42が挙げられます。
これは細胞骨格を再編成して、細胞接着の様式を変えます。
例えば、Rhoは細胞間隙を一定にして、広範に密集して接合する事を可能にします。
一方で、Racは局所的な結合を促します。
どれくらいの範囲で複合体として結合させるかの
一つの決定因子になると考えられます。
〇Heterotrimeric GTPases(ヘテロ三量体GTPase)
例えばGi、Gs、Gqが挙げられます。
細胞間コミュニケーションと協調を促進します。
-
また、密着接合形成時にはカルシウムイオンも重要な役割を果たします(1)。
このカルシウムイオンは細胞外からカルシウムチャンネルを通じて、
あるいは小胞体、ミトコンドリアから直接的に供給されます。
カルシウムはカドヘリン、オクルーディン、クラウディンなど
細胞接着分子の接合に関わり、細胞外での接合の安定性に寄与します。
また、上述した接合タンパク質のリン酸化にかかわる
プロテインキナーゼCを活性化させます。
さらに、カルシウムイオンは細胞骨格の形成や機械的特性を調整します。
--
上皮細胞や内皮細胞は頂端側と基底側では機能や形が異なるため、
細胞が連結される初期の段階で、向きを揃える必要があります。
そのためには目印となる接合因子が必要で、
JAMsは頂端部と側面の境界に位置し、
細胞極性の獲得、つなわち向きを揃えて形成する事を助けます。
このJAMsはPar-3/Par-6/aPKC複合体による伝達経路を利用します。
このような細胞の向きを揃える事は大切です。
もう一つ密着接合の大切な機能は、
組織の形態形成に関わるという事です。
まだ、仮説の段階です。
(ただ、Open AIはこの仮説は正しいと判断しました。)
例えば、人の身体には様々な臓器があります。
肺、心臓、肝臓、腸、胃、膵臓、脾臓、腎臓など。
また、子どもと大人ではこうした臓器の大きさも異なります。
それをミクロに見ると、細胞が繋がっていて、
その形と大きさが異なるとは、
それぞれの細胞の形や組織を形成するための細胞の必要数が異なるという事です。
こうした臓器の曲率を決める細胞の形や
臓器の大きさを決める必要細胞数はどうやって決定されるか?
それについて疑問を抱いたことがある人はいるでしょうか?
少し観点を変えて言い換えると、
なぜ、ほとんどの人は体の中にうまく収まるように
それぞれの臓器の大きさが緻密に調整されるのでしょうか?
十分な大きさになったときに、
「細胞の増殖。ここで止まれ!」という信号が働くのでしょうか?
臓器が閉空間であるという事を考慮すると、
一つの重要なパラメータは「曲率」です。
これは数学的に考えて合理性があります。
すなわち細胞の曲率が小さければ、臓器は大きくなるという事です。
これを決めるのは
〇RhoファミリーのGTPase(Rho、Rac、Cdc42など)
〇細胞接着分子(例えば、インテグリンやセレクチンなど)
〇アクチンフィラメント
これらが挙げられます。
この曲率に基づいて組織が形作られ、
両サイドから延びてきた組織が合体した時に、
細胞の分化、増殖がストップするということです。
でも、これだけではなく、
おそらく、増殖のスピードも関連すると思います。
言い換えれば、ほぼ100%目的の大きさになるようなときには
ほとんど増殖が起こらない状態になっているというモデルです。
言い換えれば、
いきなり、急激にストップするわけではないということです。
そうした増殖と抑制の天秤に関わる
重要な機能の一つを担うのが密着接合の
オクルーディンやクラウディンです。
これらの接合は細胞の分化、増殖に関わりますが、
結合した時にHippo経路を誘導し、細胞の増殖を止める働きがあります(1)。
こうした細胞の増殖の駆動因子と抑制因子は同時に働いていて、
抑制因子と増殖因子の相対的な力によって
増殖のスピードが決まると考えます。
わかりやすくするために数字で例えます。
密着接合の接合一つが1ポイントであり、
ある臓器では増殖因子の総計が500ポイントあるとします。
密着接合による抑制因子のポイントが500を超えた時に
細胞の成長が止まるとします。
初めは、500のスピードで増殖しますが、
細胞接着分子が結合することによって
その数字が徐々に小さくなっていき
500を超えた時にそれがストップするということです。
こうした数字は常に動いている可能性があります。
ただ、組織が大きくなり、細胞接着分子の結合数が大きくなってくると
おそらく増殖のスピードは初期に比べて遅くなります。
こうしたモデルで考えると、
当然、子どもの臓器や人の臓器の中で小さなものは
隣り合う細胞の接着における密着接合によるポイントが高いと考えて自然です。
言い換えると、より少ない細胞同士の接着で
細胞の増殖が止まるようなポイントに達するということです。
これは、細胞当たりのクラウディンやオクルーディンの密度、
あるいはHippo経路を誘導するタンパク質の密度などがおそらく関連します。
例えば、ZO-1も関連します。
すなわち、小さな臓器、子どもの臓器は
より多くの密着接合が細胞数当たり存在する可能性があるという事です。
あるいは増殖に関わる因子が弱いかもしれません。
従って、人工臓器、オルガノイドを設計するときには
1つの細胞当たりの密着接合を含めた細胞接着に関わるたんぱく質の密度を
正確に調整する必要が恐らくあります。
すなわち、心臓を形成するとしたら、
子どもの心臓であれば、目的とする大きさの生体内の心臓の組織の
細胞接着に関わるたんぱく質の密度を正確に測定し、
それに合わせた密度で形成しないと
同じ大きさの臓器が形成されにくいかもしれないということです。
なぜなら、曲率に関しても同じ細胞接着分子である
インテグリンやセレクチンが関わっているとされているからです。
こういう観点でも、細胞接着分子のプロテオーム解析(CAMome)は重要です。
細胞接着分子に絞った定量的プロテオーム解析をすれば、
細胞数当たりの細胞接着分子それぞれの絶対量を推定できます。
将来、iPS細胞技術などでオルガノイドを形成し、
臓器移植などに適用する事を考えた時、
あらゆる細胞接着分子の単一細胞あたりの数を
それぞれの細胞種でできるだけ正確に合わせる事は、
その臓器の大きさを正確に合わせる際に必要条件の一つかもしれない
ということです。その可能性はあります。
従って、定量CAMomeは
単一細胞当たりの細胞接着分子の密度を調べたいときの
世界共通のデータベースになり、
それはあらゆる組織を人工的に形成したい場合に
将来的に大きく貢献する可能性があります。
これは非常に重要なことです。
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