ニューロリギンはニューレキシンと結合します。
ニューロリギンは後シナプス、ニューレキシンは前シナプスに発現され、
これらの細胞接着分子の結合はシナプス形成に欠かせません。
また、ニューロリギンは星状膠細胞や乏突起膠細胞にも多く発現されます(1)。
これらの細胞に発現されたニューロリギンは
前シナプスのニューレキシンと結合し、
星状膠細胞と乏突起膠細胞と神経細胞の連結に関わっています。
星状膠細胞は神経細胞の興奮性を抑える働きがある事、
乳酸を供給して神経細胞の活動エネルギーを支持する事、
神経栄養因子を分泌し、神経細胞の生存、成長、シナプス形成を支えます。
従って、星状膠細胞が適切な位置で神経細胞と連結する事は重要です。
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ニューロリギンのサブタイプは以下です。
NLGN1,2,3,4,4Y(human)
これらはどのタイプのニューレキシン(1,2,3)とも結合する事ができます。
NLGN1:グルタミン作動性の興奮性シナプス
NLGN2:GABA作動性の抑制性シナプス
NLGN3:興奮性 or 抑制性シナプス
NLGN4X:よくわかっていない
NLGN4Y:よくわかっていない
(参考文献(1))
-
ニューロリギンは細胞膜貫通タンパク質で4つのドメインからなります
〇細胞外ドメイン(先端から)
AChE CH
(AChE構造:参考文献(6) Figure 2)
AChEは同種結合をし、多量体を形成に主に関わるドメイン
(参考文献(8) Fig.1)
〇細胞膜貫通ドメイン
TM
〇細胞質ドメイン
PDZ
-
細胞質ドメインであるPDZは以下のアダプタータンパク質と結合性を持ちます。
それぞれのアダプタータンパク質の機能(概略)を明示します
PSD-95 (Post Synaptic Density protein 95)
PSD-95は、ニューロリギンの主要な相互作用パートナーの一つで、シナプスの構造と機能を維持する役割を果たします。PDZ1およびPDZ2ドメインを介してニューロリギンと結合します。
Gephyrin
Gephyrinは抑制系シナプスのScaffold proteinです。3つのニューロリギンサブタイプと結合できます。
Collybistin
Gephyrinと相互作用します。GABA受容体のクラスタリングに関わっています。
S-SCAM(Synaptic scaffolding molecule )
S-SCAMは、シナプス後部の足場を形成するタンパク質で、シナプスの構造的安定性を維持します。これにより、シナプスの物理的な配置と強度が確保されます。
SAP102 (Synapse-associated protein 102)
SAP102もニューロリギンのPDZドメインと相互作用し、シナプスの形成と維持に関与します。
SAP97 (Synapse-associated protein 97)
SAP97は、シナプスの発達とプラスティシティに関与し、ニューロリギンのPDZドメインと結合します。
Chapsyn-110
Chapsyn-110もニューロリギンと相互作用し、シナプスの構造を安定させる役割を持っています。
S-SCAM (Synaptic scaffolding molecule)
S-SCAMは、ニューロリギンと結合する多機能アダプタータンパク質で、シナプスのシグナル伝達複合体の形成に関与します。
MINT1 (Munc-18-interacting protein 1)
MINT1は、シナプス小胞のエキソサイトシスに関与し、ニューロリギンのPDZドメインと結合します。
LIN-7
LIN-7は、細胞接着分子やイオンチャネルと相互作用し、シナプスの安定化に寄与します。
-
PSD-95はニューロリギンの代表的なアダプタータンパク質で
多量体化したニューロリギンに対して
同じく細胞膜貫通タンパク質である
NMDAR:N-methyl-d-as-partate receptor
AMPAR:alpha-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazole propionic acid receptor
これらと集合体を作る時の架橋タンパク質として機能します(2)。
NMDAR、AMDARともに興奮性シナプスと関連が深く、
NMDARはグルタミン酸によって活性化し、
それによって後シナプスのカルシウム通過性を向上させ、
神経伝達物質の伝達を活性化させます。
両者はシナプスの機能と可塑性を協働的に調整します。
では、ニューロリギンはこれらの受容体にどのように影響を与えているか?
ニューロリギンは細胞接着分子なのでニューレキシンと結合し、
前シナプスと後シナプスの距離を近づける働きがあります。
具体的には約20~30nmです。
NMDAR、AMPARは細胞質側でアダプタータンパク質PSD-95の貢献を受けて
ニューロリギンの近くに安定して位置することができます。
NMDAR、AMPARの機能を作動させるのはグルタミン酸です。
このグルタミン酸は前シナプスから放出されるので
ニューロリギンのニューレキシンの結合によって
適切な距離に調整されたシナプス間隙によって
その近くに位置しますから、有効にグルタミン酸を受け取ることができます。
それによって上述した受容体の機能を適切に調整する事が可能になります。
これらは神経伝達に関わるので
構造的に不全が出ると神経伝達性の疾患である
精神疾患、例えば、統合失調症、うつ(4)などと関連があります。
自閉症との関連も指摘されています。
ニューロリギン不全との関連はこの自閉症が特に指摘されています(5)。
このPSD-95は非神経細胞である星状膠細胞や乏突起膠細胞には発現されていません(1)。
その理由は、PSD-95はグルタミン作動性のNMDAR、AMPARを誘導しますが、
星状膠細胞や乏突起膠細胞は神経伝達しないので、
神経伝達に関わるこれらの機能を必要としないからです。
非神経細胞のPSD-95は神経細胞の活動を指示できるように
近接場の適正な位置に固定する事にあります。
ニューロリギンの発現を制御する転写因子は細胞種特異的で
星状膠細胞や棒突起細胞のニューロリギン転写因子の効率は高く、
神経細胞よりも多く発現されている可能性があります(1)。
一方で
GephyrinとCollybistinは相互作用し、Collybistinは抑制系シナプスにおいて
重要な役割を果たすGABA受容体クラスタリングに関わります。
従って、これらのアダプタータンパク質の複合体は
ニューロリギン2においてGABA受容体との集合体形成、
GABA受容体のGABAシグナルの受容効率に関わっている可能性があります。
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上述したようにニューレキシンとニューロリギンのペアのサブタイプは
数種類と神経細胞の細胞種の多様性と比べると顕著に少ないです。
これはこのペアによる結合が、
神経伝達などの機能に特化している事が挙げられます。
従って、これらの結合によって最適なシナプス間隙(20-30nm)に調整されます。
しかし、それよりも前段階で、
神経細胞のシナプス連結は適切な細胞種(必ずしもシス、同種とは限らない)と
選択性を持って連結する必要があります。
この選択性を持つ細胞接着分子の代表がプロトカドヘリンです。
このプロトカドヘリンのサブタイプは70種類あるからです。
細胞外ドメインがシナプス間隙20-30nmよりも2倍程度長い50-60nmあるので
先に少し遠い位置で適切な連結の為の細胞種の選択をした後、
次の段階として適切な神経伝達の機能を空間的にも物質的にも果たすために
ニューレキシンとニューロリギンが結合し、
最終的なシナプスの配置が決定されるというモデルが一応成り立ちます。
一方で
ニューレキシンはサブタイプは少ないですが、
言い換えればDNAコーディングゾーンの異種性は少ないですが、
転写因子は領域(野)、細胞種、感覚特異的な様式で変わります(7)。
(Region-, Cell type- and Sensory system-specific TFs)
この事はつまり、領域ごと、細胞種ごと、機能ごとに
ニューレキシンの発現量、細胞膜上にある密度が異なる可能性があるし、
特定の転写因子の機能が変異によって顕著に低下する可能性も示唆します。
例えば、海馬の特定の細胞種だけ
転写因子の機能が変異よって顕著に低下する事により、
ニューレキシンの密度が顕著に低下し、
それに追随してシナプスの機能が低下する可能性もあるという事です。
逆に言うと転写因子を多様にする事によって
脳全体の機能がニューロリギン依存的に一気に低下しないように、
あるいはごく一部に問題が出ても補償できるようにしているとも言えます。
他方で、治療の機会としては
転写因子が高度に細胞種特異的ですから、
それぞれの転写因子が明らかになれば、
細胞種特異的な転写因子を該当する細胞種に送達できれば、
細胞種特異的にニュロリギンの発現を制御できる可能性があります。
しかし、遺伝子の転写に影響を与えるのは
プロモーター、エンハンサー、クロマチン装飾、
mRNA、non-cording RNAなど様々で多元的であるため
結果として、転写効率が細胞種特異的であっても
その原因を一つ一つ紐解くことは難しいかもしれれません。
--
Thomas C. Südhof(敬称略)がFigure 2に示すように
ニューロリギンは前シナプスに発現されるニューレキシンに結合する
数多くの受容体の一つでしかありません。
一般的に前シナプスはSynaptic vescleから
多様な神経伝達物質、調節因子、イオンなどが放出されると
それらを区別して受け取る特異的な受容体を
後シナプスで用意する必要があります。
従って、必然的に後シナプスは前シナプスよりも
受容体の数、種類は多くなります。
このことは後シナプスの受容体下のアダプタータンパク質のplaque(塊)の
形成を促進する事と、前シナプスに対して細胞骨格による網目構造が
後シナプスで密に形成されているかもしれない。
(参考文献(9) Figure 3)
このことと関連するかもしれません。
PSD-95、Gephyrinなどは足場となるタンパク質で
グルタミン作動性のNMDAR、AMPARを誘導しますが、
これらの受容体の形成が必ずしもこれらの足場タンパク質の有無に
依存しない事も指摘されています(1)。
前シナプスの影響によってNMDAR、AMPARの受容体が
後シナプスで安定化されるというモデルです。
これは、前シナプスでのニューレキシンの結合によって
ニューレキシンが多量体化し、前シナプスで
結果としてアクチンなどの網目構造を密に形成することで
この骨格がグルタミン酸などの分泌物質を収納できる
Synaptic vesiclesの足場となり、
それによってグルタミン酸が活発に放出されることで
NMDAR、AMPARの活性が高まり、この信号依存的に
足場となる細胞骨格が形成されるかもしれないからです。
こうした現象はPSD-95がないグリア細胞などでも見られます。
(参考文献)
(1)
Xing Liu, Fuzhou Hua, Danying Yang, Yue Lin, Lieliang Zhang, Jun Ying, Hongguang Sheng & Xifeng Wang
Roles of neuroligins in central nervous system development: focus on glial neuroligins and neuron neuroligins
Journal of Translational Medicine volume 20, Article number: 418 (2022)
(2)
Camin Dean Thomas Dresbach
Neuroligins and neurexins: linking cell adhesion, synapse formation and cognitive function
Trends in Neuroscience Volume 29, Issue 1, January 2006, Pages 21-29
(3)
Chicheng Sun 1, Min-Chih Cheng, Rosie Qin, Ding-Lieh Liao, Tzu-Ting Chen, Farn-Jong Koong, Gong Chen, Chia-Hsiang Chen
Identification and functional characterization of rare mutations of the neuroligin-2 gene (NLGN2) associated with schizophrenia
Hum Mol Genet. 2011 Aug 1;20(15):3042-51.
(4)
Mitra Heshmati 1 2, Hossein Aleyasin 1 2, Caroline Menard 1 2, Daniel J Christoffel 3, Meghan E Flanigan 1 2, Madeline L Pfau 1 2, Georgia E Hodes 1 2, Ashley E Lepack 1 2, Lucy K Bicks 1 2, Aki Takahashi 1 2 4, Ramesh Chandra 5, Gustavo Turecki 6, Mary Kay Lobo 5, Ian Maze 1 2, Sam A Golden 7, Scott J Russo 8 2
Cell-type-specific role for nucleus accumbens neuroligin-2 in depression and stress susceptibility
Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Jan 30;115(5):1111-1116.
(5)
Laura Trobiani 1, Maria Meringolo 2, Tamara Diamanti 1, Yves Bourne 3, Pascale Marchot 3, Giuseppina Martella 2, Luciana Dini 1, Antonio Pisani 2, Antonella De Jaco 4, Paola Bonsi 5
The neuroligins and the synaptic pathway in Autism Spectrum Disorder
Neurosci Biobehav Rev. 2020 Dec:119:37-51.
(6)
Demet Araç 1, Antony A Boucard, Engin Ozkan, Pavel Strop, Evan Newell, Thomas C Südhof, Axel T Brunger
Structures of neuroligin-1 and the neuroligin-1/neurexin-1 beta complex reveal specific protein-protein and protein-Ca2+ interactions
Neuron. 2007 Dec 20;56(6):992-1003.
(7)
Motokazu Uchigashima,1,2,*† Amy Cheung,*,1 Julie Suh,1 Masahiko Watanabe,2 and Kensuke Futai1,
Differential Expression of Neurexin Genes in the Mouse Brain
J Comp Neurol. 2019 Aug 15; 527(12): 1940–1965.
(8)
Jesko Koehnke,* Xiangshu Jin,* Elaine C. Budreck,†‡ Shoshana Posy,*§¶ Peter Scheiffele,†‡ Barry Honig,*§¶‖ and Lawrence Shapiro*
Crystal structure of the extracellular cholinesterase-like domain from neuroligin-2
Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Feb 12; 105(6): 1873–1878.
(9)
Kim Guven, 1 Peter Gunning, 1 and Thomas Fath
TPM3 and TPM4 gene products segregate to the postsynaptic region of central nervous system synapses
Bioarchitecture. 2011 Nov 1; 1(6): 284–289.
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