新型コロナウィルスの一つの世界的な脅威は
これだけ世界で感染が広がってしまうと
ワクチン接種を進めたとしても
低所得の国も含めれば、完全には流行を抑えられないかもしれない
ということです。
そうすると何が脅威かといえば、
そこでウィルスが増殖し続けますから、
ランダムに繰り返される変異の中で
感染力、細胞毒性の強い系統が生まれる可能性がある事と
すでに高所得の国で進められている
ワクチンの効力が落ちてしまう懸念です。
ー
このような状況の中で求められるのは
長年、インフルエンザのワクチンでも言われていることですが
ユニバーサル(統一的な)ワクチンです。
つまり、ある程度、変異が起こったとしても
効力が低下しない共通性を持ったワクチンです。
変異の為にタイプを変えないといけない
いわば「いたちごっこ」を防ぐためには
根本的に解決するようなユニバーサルな戦略が求められます。
ー
このような「共通化された」戦略を
Alexander H. Pearlman, Michael S. Hwang, Maximilian F. Konig, Emily Han-Chung Hsiue, Jacqueline Douglass, Sarah R. DiNapoli, Brian J. Mog, Chetan Bettegowda, Drew M. Pardoll, Sandra B. Gabelli, Nicholas Papadopoulos, Kenneth W. Kinzler, Bert Vogelstein & Shibin Zhou
(敬称略)からなるアメリカ合衆国の医療研究グループが
癌の免役療法において総括されています(1)。
ー
身体には異物が入ったら全身の監視役である免疫細胞が
攻撃して、身体の恒常性を保つ機序があります。
骨髄性免疫細胞であれば、
パターン認識によって攻撃性を判断しますし、
リンパ性免疫細胞であれば、
MHC受容体などによって特異的な攻撃性を実現します。
ー
癌細胞も体内の異常の蓄積によって生じると考えられますが、
いわば「身体の中の異物」です。
このような癌細胞は組織を作る中で
間質や血中に特異的なたんぱく質を放出します。
そのたんぱく質を免疫細胞が認識して
癌細胞を退行させるように攻撃を始めます。
このような癌細胞が特異的に持つ「新抗原(Neoantigen)」を
体外で設計して入れたり、
あるいは、その抗原に特異的に反応する受容体を持つ
リンパ系T細胞を入れるようなことは
癌細胞の免疫治療を促進する事に貢献します。
ー
しかし、新型コロナウィルスのように
癌細胞は多くの細胞を作り、増殖し、進化します。
その過程ではウィルスよりももっと複雑な遺伝子が
度重なる変異を繰り返します。
そうした中で放出されるたんぱく質(抗原)の構造も
微細な所を含めれば異なってきます。
ワクチンの効力が変異によって落ちるように
このようなリンパ球を利用した免疫療法も
効果を持続させたり、
多くの患者さんに共通に効力を発揮させる事において
課題があります。
ー
Alexander H. Pearlman, Michael S. Hwang, Maximilian F. Konig(敬称略)らは
このような課題を鑑み、
ユニバーサルな新抗原を標的とすることを
目的として、総括されています(1)。
ー
そのためにはAlexander H. Pearlman氏らが述べているように
免疫細胞のHLAのパターンを質量分析で
包括的に調べていくことが求められます。
ー
他の観点としては、
癌細胞から生み出される抗原となり得るタンパク質と
関連がある遺伝子の変異の機序について知る必要があります。
その変異がなぜ、どのように起こるのか?
このことがわかれば、
変異が起こりにくい遺伝子の特定と論理的根拠を把握できるため
公共の、ユニバーサルな新抗原の理解、特定に
貢献すると考えられます。
遺伝子の変異の頻度というのは
時間に対して少なくとも2桁くらいばらつきがあるからです。
ただし、Ref.(1)のFig.3のように
発見的問題解決(ヒューリスティック)のアプローチで
統一的な新抗原を見つけるほうが
時間、コストの面で優れている可能性があります。
(Reference)
(1)
Alexander H. Pearlman, Michael S. Hwang, Maximilian F. Konig, Emily Han-Chung Hsiue, Jacqueline Douglass, Sarah R. DiNapoli, Brian J. Mog, Chetan Bettegowda, Drew M. Pardoll, Sandra B. Gabelli, Nicholas Papadopoulos, Kenneth W. Kinzler, Bert Vogelstein & Shibin Zhou
Targeting public neoantigens for cancer immunotherapy
Nature Cancer (2021)
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Author information
Author notes
Michael S. Hwang
Present address: Genentech, Inc., South San Francisco, CA, USA
Affiliations
Ludwig Center, Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center, The Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA
Alexander H. Pearlman, Michael S. Hwang, Maximilian F. Konig, Emily Han-Chung Hsiue, Jacqueline Douglass, Sarah R. DiNapoli, Brian J. Mog, Chetan Bettegowda, Nicholas Papadopoulos, Kenneth W. Kinzler, Bert Vogelstein & Shibin Zhou
Lustgarten Pancreatic Cancer Research Laboratory, Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center, The Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA
Alexander H. Pearlman, Michael S. Hwang, Maximilian F. Konig, Emily Han-Chung Hsiue, Jacqueline Douglass, Sarah R. DiNapoli, Brian J. Mog, Chetan Bettegowda, Nicholas Papadopoulos, Kenneth W. Kinzler, Bert Vogelstein & Shibin Zhou
Howard Hughes Medical Institute, Chevy Chase, MD, USA
Alexander H. Pearlman, Michael S. Hwang, Maximilian F. Konig, Emily Han-Chung Hsiue, Jacqueline Douglass, Sarah R. DiNapoli, Brian J. Mog & Bert Vogelstein
Division of Rheumatology, Department of Medicine, The Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA
Maximilian F. Konig
Department of Biomedical Engineering, Johns Hopkins University, Baltimore, MD, USA
Brian J. Mog
Department of Neurosurgery, The Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA
Chetan Bettegowda
Department of Oncology, The Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA
Chetan Bettegowda, Drew M. Pardoll, Sandra B. Gabelli, Kenneth W. Kinzler, Bert Vogelstein & Shibin Zhou
Bloomberg~Kimmel Institute for Cancer Immunotherapy, Sidney Kimmel Comprehensive Cancer Center, Baltimore, MD, USA
Drew M. Pardoll, Nicholas Papadopoulos, Kenneth W. Kinzler, Bert Vogelstein & Shibin Zhou
Department of Biophysics and Biophysical Chemistry, The Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA
Sandra B. Gabelli
Department of Medicine, The Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA
Sandra B. Gabelli
Department of Pathology, The Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA
Nicholas Papadopoulos & Bert Vogelstein
Sol Goldman Pancreatic Cancer Research Center, The Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA
Nicholas Papadopoulos, Kenneth W. Kinzler & Bert Vogelstein
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