リポタンパク質やLDLコレステロールの蓄積の後の
炎症反応として炎症性サイトカインIL-1βが関連しています。
そのような小胞に加えて、
免疫細胞や内膜にある内皮細胞、筋細胞も関わっています(1)。
//平滑筋細胞(Smooth muscle cells)//ーーー
平滑筋細胞は細胞の周りに網目状にフィラメントが
張り巡らされています。その中間径フィラメントの
結合状態が変わる事によって平滑筋細胞からなる組織は
収縮する事が可能になります。
血管は運動によって破損して血液が漏れ出すと
生理的に大きな問題になりますから
このような筋組織が発達していると考えられます。
従って、このフィラメントの機能が損なわれると
血管の弾力性の一部が失われることになります。
ー
この平滑筋細胞は線維性被膜(Fibrous cap)に変性したり
細胞外マトリックスを生成する能力があります。
アテローム(粉瘤)が血管に蓄積した時に
内膜の状態が変わり、膨張しますが、
その時に生じる間質に埋められるタンパク質は
この平滑筋細胞によって生み出されると考えられます。
ー
この平滑筋細胞によって生み出された
細胞外マトリックスとプロテオグリカン側鎖は
負に帯電しています。
一方、血中に存在する脂質性成分であるアポリポタンパク質は
正に帯電しているため
お互いに静電引力が働き、引き付けられます(2)。
ー
この経路を通じて血中に存在する脂質、
あるいはそれによって生じた炎症性サイトカインと
平滑筋細胞の相互作用が強まり
CCL2、CCL5のケモカインを放出します。
それによって単球が引き付けられます(3)。
ー
炎症性によって組織が変性し、病変部位となると
引き付けられたマクロファージや
内膜に存在する平滑筋細胞は細胞死します。
そして粉瘤となる壊死性コアを作ります。
(See Ref.(1)Fig.1b)
この粉瘤を回復しようとして
前述した線維性被膜(fibrous cap)が形成され
細胞外マトリックス、α平滑筋アクチン(αSMA)も
同様に産生されます。
これらはバイオマーカーとなります。
ー
この平滑筋細胞は
炎症性反応を通じて表現型変性が起こります。
細胞の多くはマクロファージマーカーを持つようになります(4,5)。
また組織が損傷すると繊維芽細胞様の細胞と変化します(6)。
ー
//細胞特異的輸送系統//ーーー
このような平滑筋細胞の病変部位の特異的な表現型の変化は
キャリアのアンカーとして利用することができます。
例えば、平滑筋細胞で見られる特徴的な
マクロファージマーカーを標的として
それに特異的親和性を持つたんぱく質を表面装飾したナノキャリアを使い
IL-1βを抑制する薬Canakinumab(カナキヌマブ)などを
搭載する事によって輸送効率を高める事ができる可能性があります。
また、炎症を受けた組織側は負に帯電しているので
ナノキャリアを血中のリポタンパク質と同じように
あるいはそれよりも強く正に帯電させることで
より走化性を高められる可能性があります。
ーーー
//考察(バイオマーカー的観点)//ーーー
神経系、免疫系、癌の疾患も含めて、
バイオマーカーというのは診断の上で非常に重要です。
細胞外マトリックス、α平滑筋アクチンが
そのバイオマーカーとなると言われています。
平滑筋細胞には上述したように
中間径フィラメントがあります。
これが収縮性の機能の一翼を担っています。
その中間径フィラメントはタイプが6つあり、
細胞特異性があるとされています。
平滑筋の中間径フィラメントは
タイプⅢでビメンチン、デスミンです(7)。
おそらく平滑筋細胞が炎症性によってダメージを受けることによって
中間径フィラメントや
命令系の神経伝達物質、あるいは内分泌系神経細胞
電子密度が高いDense bodyなども崩壊します。
従って、これらの特異的構成要素、物質も
血中に流れ出し、バイオマーカーになる可能性があります。
ーーー
//考察(治療的観点)//ーーー
血管の内膜にある平滑筋細胞が炎症性反応と相互作用する
ことによって骨髄性免疫細胞を引き付ける
ケモカインを放出します。
そうした場合、このケモカインを抑えれば
免疫細胞との相互作用を減らすことができますが、
これは身体の自然な反応の部分もあります。
IL-1βにしても少なくとも一部は
身体の自然な反応によって生じている可能性があります。
ー
治療の観点としては
血中のLDLコレステロールや脂質性タンパク質を減らすことが
根本的には有効であると考えられます。
ゆえに従来と同様に生活スタイルを見直すという事が
骨子となると考えられます。
ー
もう一つの観点としては、
血中に存在するこれらの炎症の元になる物質と
血管の内膜の相互作用を減らし、排出させることができるか?
という観点です。
Oliver Soehnlein & Peter Libby(敬称略)らの総括によれば
静電気的な引力によって血管壁に引き付けられるとあります。
従って、これらの電気的引力を
薬剤によって弱める事ができれば、
脂質タンパク質とLDLコレステロールに対する
血管の組織的な相互作用における
感受性を減らすことができるかもしれません。
この観点は炎症性サイトカインを抑えるよりも
上流側の考え方になります。
ーーー
(Reference)
(1)
Oliver Soehnlein & Peter Libby
Targeting inflammation in atherosclerosis — from experimental insights to the clinic
Nature Reviews Drug Discovery (2021)
ー
Author information
Affiliations
Institute for Experimental Pathology, Center for Molecular Biology of Inflammation, Westfälische Wilhelms-Universität, Münster, Germany
Oliver Soehnlein
Institute for Cardiovascular Prevention, Klinikum der Ludwig-Maximilians-Universität, Munich, Germany
Oliver Soehnlein
Department of Physiology and Pharmacology, Karolinska Institute, Stockholm, Sweden
Oliver Soehnlein
Brigham and Women’s Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA, USA
Peter Libby
ー
(2)
Skålén, K. et al.
Subendothelial retention of atherogenic lipoproteins in early atherosclerosis.
Nature 417, 750–754 (2002).
(3)
Soehnlein, O. et al.
Distinct functions of chemokine receptor axes in the atherogenic mobilization and recruitment of classical monocytes.
EMBO Mol. Med. 5, 471–481 (2013).
(4)
Shankman, L. S. et al.
KLF4-dependent phenotypic modulation of smooth muscle cells has a key role in atherosclerotic plaque pathogenesis.
Nat. Med. 21, 628–637 (2015).
(5)
Chappell, J. et al.
Extensive proliferation of a subset of differentiated, yet plastic, medial vascular smooth muscle cells contributes to neointimal formation in mouse injury and atherosclerosis models.
Circ. Res. 119, 1313–1323 (2016).
(6)
Cordes, K. R. et al.
miR-145 and miR-143 regulate smooth muscle cell fate and plasticity.
Nature 460, 705–710 (2009).
(7)
Dale D. Tang
INTERMEDIATE FILAMENTS IN SMOOTH MUSCLE
Am J Physiol Cell Physiol. 2008 Apr; 294(4): C869–C878.
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