2021年4月7日水曜日

アドジュバントの生理機序ーSARS事例

現在接種進行中の新型コロナウィルスのmRNAワクチンは
フルサイズの新型コロナウィルス株のSタンパク質、
スパイクを生体内で作製するための設計図(mRNA)からなります。
このmRNAは筋肉注射された後に、
骨髄系自然免疫細胞である樹状細胞の中に入って
そこでその遺伝子の設計図に合わせたタンパク質が作られます。
そのたんぱく質が抗原となって、
樹状細胞、マクロファージ、T細胞、B細胞などに働きかける事によって
そのたんぱく質に特異的親和性を持つ抗体がつくられます。
私自身まだ不明瞭な点があります。
少なくともノババックス製のNVX-CoV2373については
抗体産生においてMatrix-M1アドジュバントの働きが
非常に重要であることが示されています(2)。
しかし、同じナノ粒子ワクチンである
ファイザー/ビオンテック社、もしくはモデルナ社
の製品についてはアドジュバントが働いているかどうか?
その物質が存在するのかどうかが明らかではありません。
ナノ粒子自身にアドジュバントの機能を備えさせている
可能性がありますが、それも不明です。
ただ、ナノ粒子自身が装飾因子があって
アドジュバントして働く際の生理機序である
Toll様受容体(TLR)などパターン認識受容体に作用すれば、
mRNA以外に補強剤を入れる必要はない可能性があります。

今述べたTLRにはいくつかのサブタイプがあります。
Ref.(1)の図1(a)に示されるように
細胞膜表面に突出している受容体(TLR1,2,4,5,6)
エンドソームの中に形成される受容体(TLR3,7,8,9)
これらがあります。
インフルエンザで使われるワクチンのアドジュバントは
エンドソーム内にあるTLR7に働くとされています(3)。
一方、黄熱病のワクチンのように
複数のTLR(4,7,8)に働くアドジュバントを追加している
ものもあります(4)。

自然免疫系は免疫機能の門番のような働きで
初動を担うと言われています。
例えば、リンパ系自然免疫細胞のNK細胞がそうです。
T細胞やB細胞のように抗原認識して
特異性を持って働く機序とは異なり、
外敵を幅広く認識するために寛容性の高い
パターン認識受容体(PRRs)というのがあります。
このPRRsは前述したTLRだけではありません。
わかっているもの。
-RNA sensors-
Retinoic acid-inducible gene I (RIG-I) (5)
other RNA sensors(5)
-
-DNA sensors- 
Stimulator of interferon genes (STING) protein(6)
-
C-type lectins(7)
Nucleotide-binding oligomerization domain (NOD)-like receptors (NLRs) 
Cytosolic receptors (such as NLRP3)
これらがあります。
これらは獲得免疫系統に影響を与え、
TLRs以外のアドジュバントの標的受容体となる事ができる受容体です(8)。

このような受容体は結合部位と反対側に
MyD88のようなタンパク質が結合していて、
アドジュバントが結合するとその結合が解放され
それらの物質が細胞核まで運ばれ
そこで遺伝子に働きかける事が考えられます。
それぞれのTLRのサブタイプは
免疫細胞の種類によって異なるので
それに応じて働きかける免疫細胞種が存在します。
(Ref.(1) Fig.1a)
他の受容体でも大枠としてのモデルは同様です。
それぞれ細胞内外などの場所や
受容体に結合しているタンパク質、
細胞核内で作用する遺伝子、その装飾因子がそれぞれ異なります。
(Ref.(1) Fig.1より)

感染症ごとに病理が異なりますから
分子生物学的なアプローチも含めて
どのような免疫細胞で、どの組織に働きかけるのが
効果的かというのをよく考えて
働きかけるパターン認識受容体、
それに応じたアドジュバントを選択する必要があります。

(Reference)
(1)
Bali Pulendran, Prabhu S. Arunachalam & Derek T. O’Hagan 
Emerging concepts in the science of vaccine adjuvants
Nature Reviews Drug Discovery (2021)

Author information
Affiliations
Institute for Immunity, Transplantation and Infection, Stanford University School of Medicine, Stanford University, Stanford, CA, USA
Bali Pulendran & Prabhu S. Arunachalam
Department of Pathology, Stanford University School of Medicine, Stanford University, Stanford, CA, USA
Bali Pulendran
Department of Microbiology & Immunology, Stanford University School of Medicine, Stanford University, Stanford, CA, USA
Bali Pulendran
Chemistry, Engineering & Medicine for Human Health, Stanford University School of Medicine, Stanford University, Stanford, CA, USA
Bali Pulendran
GSK Vaccines, Rockville, MD, USA
Derek T. O’Hagan

(2)
C. Keech, G. Albert, I. Cho, A. Robertson, P. Reed, S. Neal, J.S. Plested, M. Zhu, S. Cloney‑Clark, H. Zhou, G. Smith, N. Patel, M.B. Frieman, R.E. Haupt, J. Logue, M. McGrath, S. Weston, P.A. Piedra, C. Desai, K. Callahan, M. Lewis, P. Price‑Abbott, N. Formica, V. Shinde, L. Fries, J.D. Lickliter, P. Griffin, B. Wilkinson, and G.M. Glenn 
Phase 1–2 Trial of a SARS-CoV-2 Recombinant Spike Protein Nanoparticle Vaccine 
The New England Journal of Medicine 2020;383:2320-32.

Author Affiliations
From Novavax, Gaithersburg, MD (C.K., G.A., I.C., A.R., P.R., S.N., J.S.P., M.Z., S.C.-C., H.Z., G.S., N.P., C.D., K.C., M.L., P.P.-A., N.F., V.S., L.F., B.W., G.M.G.), and the University of Maryland School of Medicine, Baltimore (M.B.F., R.E.H., J.L., M.M.G., S.W.); Baylor College of Medicine, Houston (P.A.P.); and Nucleus Network, Melbourne, VIC (J.D.L.), and Q-Pharm, Herston, QLD (P.G.) — both in Australia.

(3)
Koyama, S. et al. 
Differential role of TLR- and RLR-signaling in the immune responses to influenza  A virus infection and vaccination. 
J. Immunol. 179, 4711–4720 (2007).
(4)
Querec, T. et al. 
Yellow fever vaccine YF-17D activates multiple dendritic cell subsets via TLR2, 7, 8, and 9  to stimulate polyvalent immunity. 
J. Exp. Med. 203, 413–424 (2006).
(5)
Chow, K. T., Gale, M. Jr. & Loo, Y. M. 
RIG-I and other RNA sensors in antiviral immunity. 
Annu. Rev. Immunol. 36, 667–694 (2018).
(6)
Hu, M. M. & Shu, H. B. 
Innate immune response  to cytoplasmic DNA: mechanisms and diseases.  
Annu. Rev. Immunol. 38, 79–98 (2020).
(7)
Brown, G. D., Willment, J. A. & Whitehead, L. 
C-type lectins in immunity and homeostasis. 
Nat. Rev. Immunol. 18, 374–389 (2018).
(8)
Kwissa, M., Kasturi, S. P. & Pulendran, B. 
The science of adjuvants. 
Expert Rev. Vaccines 6, 673–684 (2007).


0 コメント:

コメントを投稿

 
;