現在接種進行中の新型コロナウィルスのmRNAワクチンは
フルサイズの新型コロナウィルス株のSタンパク質、
スパイクを生体内で作製するための設計図(mRNA)からなります。
このmRNAは筋肉注射された後に、
骨髄系自然免疫細胞である樹状細胞の中に入って
そこでその遺伝子の設計図に合わせたタンパク質が作られます。
そのたんぱく質が抗原となって、
樹状細胞、マクロファージ、T細胞、B細胞などに働きかける事によって
そのたんぱく質に特異的親和性を持つ抗体がつくられます。
私自身まだ不明瞭な点があります。
少なくともノババックス製のNVX-CoV2373については
抗体産生においてMatrix-M1アドジュバントの働きが
非常に重要であることが示されています(2)。
しかし、同じナノ粒子ワクチンである
ファイザー/ビオンテック社、もしくはモデルナ社
の製品についてはアドジュバントが働いているかどうか?
その物質が存在するのかどうかが明らかではありません。
ナノ粒子自身にアドジュバントの機能を備えさせている
可能性がありますが、それも不明です。
ただ、ナノ粒子自身が装飾因子があって
アドジュバントして働く際の生理機序である
Toll様受容体(TLR)などパターン認識受容体に作用すれば、
mRNA以外に補強剤を入れる必要はない可能性があります。
ー
今述べたTLRにはいくつかのサブタイプがあります。
Ref.(1)の図1(a)に示されるように
細胞膜表面に突出している受容体(TLR1,2,4,5,6)
エンドソームの中に形成される受容体(TLR3,7,8,9)
これらがあります。
インフルエンザで使われるワクチンのアドジュバントは
エンドソーム内にあるTLR7に働くとされています(3)。
一方、黄熱病のワクチンのように
複数のTLR(4,7,8)に働くアドジュバントを追加している
ものもあります(4)。
ー
自然免疫系は免疫機能の門番のような働きで
初動を担うと言われています。
例えば、リンパ系自然免疫細胞のNK細胞がそうです。
T細胞やB細胞のように抗原認識して
特異性を持って働く機序とは異なり、
外敵を幅広く認識するために寛容性の高い
パターン認識受容体(PRRs)というのがあります。
このPRRsは前述したTLRだけではありません。
わかっているもの。
-RNA sensors-
Retinoic acid-inducible gene I (RIG-I) (5)
other RNA sensors(5)
-
-DNA sensors-
Stimulator of interferon genes (STING) protein(6)
-
C-type lectins(7)
Nucleotide-binding oligomerization domain (NOD)-like receptors (NLRs)
Cytosolic receptors (such as NLRP3)
これらがあります。
これらは獲得免疫系統に影響を与え、
TLRs以外のアドジュバントの標的受容体となる事ができる受容体です(8)。
ー
このような受容体は結合部位と反対側に
MyD88のようなタンパク質が結合していて、
アドジュバントが結合するとその結合が解放され
それらの物質が細胞核まで運ばれ
そこで遺伝子に働きかける事が考えられます。
それぞれのTLRのサブタイプは
免疫細胞の種類によって異なるので
それに応じて働きかける免疫細胞種が存在します。
(Ref.(1) Fig.1a)
他の受容体でも大枠としてのモデルは同様です。
それぞれ細胞内外などの場所や
受容体に結合しているタンパク質、
細胞核内で作用する遺伝子、その装飾因子がそれぞれ異なります。
(Ref.(1) Fig.1より)
ー
感染症ごとに病理が異なりますから
分子生物学的なアプローチも含めて
どのような免疫細胞で、どの組織に働きかけるのが
効果的かというのをよく考えて
働きかけるパターン認識受容体、
それに応じたアドジュバントを選択する必要があります。
(Reference)
(1)
Bali Pulendran, Prabhu S. Arunachalam & Derek T. O’Hagan
Emerging concepts in the science of vaccine adjuvants
Nature Reviews Drug Discovery (2021)
ー
Author information
Affiliations
Institute for Immunity, Transplantation and Infection, Stanford University School of Medicine, Stanford University, Stanford, CA, USA
Bali Pulendran & Prabhu S. Arunachalam
Department of Pathology, Stanford University School of Medicine, Stanford University, Stanford, CA, USA
Bali Pulendran
Department of Microbiology & Immunology, Stanford University School of Medicine, Stanford University, Stanford, CA, USA
Bali Pulendran
Chemistry, Engineering & Medicine for Human Health, Stanford University School of Medicine, Stanford University, Stanford, CA, USA
Bali Pulendran
GSK Vaccines, Rockville, MD, USA
Derek T. O’Hagan
ー
(2)
C. Keech, G. Albert, I. Cho, A. Robertson, P. Reed, S. Neal, J.S. Plested, M. Zhu, S. Cloney‑Clark, H. Zhou, G. Smith, N. Patel, M.B. Frieman, R.E. Haupt, J. Logue, M. McGrath, S. Weston, P.A. Piedra, C. Desai, K. Callahan, M. Lewis, P. Price‑Abbott, N. Formica, V. Shinde, L. Fries, J.D. Lickliter, P. Griffin, B. Wilkinson, and G.M. Glenn
Phase 1–2 Trial of a SARS-CoV-2 Recombinant Spike Protein Nanoparticle Vaccine
The New England Journal of Medicine 2020;383:2320-32.
ー
Author Affiliations
From Novavax, Gaithersburg, MD (C.K., G.A., I.C., A.R., P.R., S.N., J.S.P., M.Z., S.C.-C., H.Z., G.S., N.P., C.D., K.C., M.L., P.P.-A., N.F., V.S., L.F., B.W., G.M.G.), and the University of Maryland School of Medicine, Baltimore (M.B.F., R.E.H., J.L., M.M.G., S.W.); Baylor College of Medicine, Houston (P.A.P.); and Nucleus Network, Melbourne, VIC (J.D.L.), and Q-Pharm, Herston, QLD (P.G.) — both in Australia.
ー
(3)
Koyama, S. et al.
Differential role of TLR- and RLR-signaling in the immune responses to influenza A virus infection and vaccination.
J. Immunol. 179, 4711–4720 (2007).
(4)
Querec, T. et al.
Yellow fever vaccine YF-17D activates multiple dendritic cell subsets via TLR2, 7, 8, and 9 to stimulate polyvalent immunity.
J. Exp. Med. 203, 413–424 (2006).
(5)
Chow, K. T., Gale, M. Jr. & Loo, Y. M.
RIG-I and other RNA sensors in antiviral immunity.
Annu. Rev. Immunol. 36, 667–694 (2018).
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Hu, M. M. & Shu, H. B.
Innate immune response to cytoplasmic DNA: mechanisms and diseases.
Annu. Rev. Immunol. 38, 79–98 (2020).
(7)
Brown, G. D., Willment, J. A. & Whitehead, L.
C-type lectins in immunity and homeostasis.
Nat. Rev. Immunol. 18, 374–389 (2018).
(8)
Kwissa, M., Kasturi, S. P. & Pulendran, B.
The science of adjuvants.
Expert Rev. Vaccines 6, 673–684 (2007).
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