神経細胞の恒常性維持などに貢献する
非常に可塑性に富んだグリア細胞の中に星状膠細胞があります。
この星状膠細胞の未分化の状態、つまり幹細胞様の状態で
癌化して、悪性が強く非常に癌組織の発展が速い傾向をしめす
「膠芽腫」があります。
発展が速いので1年以内で亡くなる人が半数を超えます(2,3)。
疫学では45~79歳くらいが多く、男性がやや多いとされています。
原発性脳腫瘍の9%を占めると言われています。
成長が速いわけですから、細胞としての表現型の変化も早く
化学療法、放射線療法の感受性(効果、抵抗性)の変化も早いとされています。
このように成長が速い癌ですから、
化学療法や放射線療法をどのようなタイミングで行うか?
この最適化は非常に重要になります。
Amanda Randles, Hans-Georg Wirsching, Jamie A. Dean(敬称略)ら
アメリカとスイスの医療研究グループは
血管周辺の物質の動きの中でのシミュレーションによって
放射線療法と化学療法の最適なタイミングを計っています(1)。
このモデルは確率的なモデルのアプローチをとっています。
従って、細胞分裂サイクルの時間、休止率や
放射線療法、化学療法に対する感受性
内皮組織の浸透率、細胞の寿命などが
計算パラメータとして重要になります。
それによると放射線療法の1時間前に
最適な量の化学療法を行うことが好ましいことが
「マウスのケース」で示されました(1)。
ー
血管周辺の物質の動きに注目したのは
膠芽腫が血管を巡り、その血管周辺に微小環境を作って
癌組織を成長させる傾向にあるからです(4)。
ー
実際には各パラメータが臨床でどのような数値を示すか?
これを測ることは困難です。
共変性の中において複雑に組織の成長が起こります。
また免疫系の作用もあると思います。
しかし、
Amanda Randles, Hans-Georg Wirsching, Jamie A. Dean(敬称略)ら
の研究で非常に重要な示唆は、
放射線療法の後、短い時間で化学療法を行ったほうが良い
という計算結果です。
細胞分裂は指数に基づいて行われます。
介入しない時間が長くなればなるほど
単位時間あたりの細胞増加数は増えるわけですから、
細胞を減らす機会は多くした方がいいということです。
しかし、患者さんの身体の負担もありますから
頻繁に介入するわけにはいきません。
放射性療法と化学療法は異なるアプローチですから
身体の負担も分散される部分があります。
その中で短いインターバルで行う事の臨床的意義が見えてきます。
特に膠芽腫は成長が速いので
このような医療介入するタイミングは冒頭で述べたように重要です。
例えば、これに加えて
免疫的な介入、栄養的な介入を行うことができるのであれば
副作用、副反応に配慮しながら、
集中的に治療する事が客観的奏効率のつながる可能性があります。
ー
Amanda Randles氏らが示すように最適時間は
それ以上短くても効果は小さいという時間であり
連続的な治療は副作用を高める可能性があるので
臨床的なマッチングがあるのであれば、
このようなシミュレーションに大きな意義が生まれます。
ー
(筆者の別の視点)
Amanda Randles氏らの報告(1)とは内容的に離れますが、
治療としては脳血液関門の健全性を
血管の状態をよくすることによって上げて、
悪性リンパ腫瘍のように血液の流動性の中で
膠芽腫の数を減らすというアプローチもあるかもしれません。
実際に膠芽腫特異的な癌抗原を認識する
CAR-T療法などが考案されています(5)。
(Reference)
(1)
Amanda Randles, Hans-Georg Wirsching, Jamie
A. Dean, Yu-Kang Cheng, Samuel Emerson, Siobhan S. Pattwell, Eric C. Holland
& Franziska Michor
Computational modelling of
perivascular-niche dynamics for the optimization of treatment schedules for
glioblastoma
Nature Biomedical Engineering volume 5,
pages346–359(2021)
ー
Author information
Affiliations
Department of Biomedical Engineering, Duke
University, Durham, NC, USA
Amanda Randles
Division of Human Biology, Fred Hutchinson
Cancer Research Center, Seattle, WA, USA
Hans-Georg Wirsching, Siobhan S. Pattwell
& Eric C. Holland
Department of Neurology, University
Hospital and University of Zurich, Zurich, Switzerland
Hans-Georg Wirsching
Department of Data Science, Dana-Farber
Cancer Institute, Boston, MA, USA
Jamie A. Dean, Yu-Kang Cheng &
Franziska Michor
Department of Biostatistics, Harvard T. H.
Chan School of Public Health, Boston, MA, USA
Jamie A. Dean & Franziska Michor
Department of Stem Cell and Regenerative
Biology, Harvard University, Cambridge, MA, USA
Jamie A. Dean & Franziska Michor
Department of Neurological Surgery,
University of Washington, Seattle, WA, USA
Samuel Emerson
Center for Cancer Evolution, Dana-Farber
Cancer Institute, Boston, MA, USA
Franziska Michor
The Broad Institute of MIT and Harvard,
Cambridge, MA, USA
Franziska Michor
The Ludwig Center, Harvard University,
Boston, MA, USA
Franziska Michor
ー
(2)
Gramatzki, D.
Glioblastoma in the Canton of Zurich,
Switzerland revisited: 2005 to 2009.
Cancer 122, 3740–3741 (2016).
(3)
Ostrom, Q. T. et al.
CBTRUS Statistical Report: primary brain
and other central nervous system tumors diagnosed in the United States in
2013–2017.
Neuro Oncol. 22, iv1–iv96 (2020).
(4)
Calabrese, C. et al.
A perivascular niche for brain tumour stem
cells.
Cancer Cell 11, 69–82 (2007).
(5)
Craig A. Land, Phillip R. Musich, Dalia
Haydar, Giedre Krenciute & Qian Xie
Chimeric antigen receptor T-cell therapy in
glioblastoma: charging the T cells to fight
Journal of Translational Medicine volume
18, Article number: 428 (2020)

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