先天性の疾患である
ダウン症候群、デュセンニュ型筋ジストロフィーは
幼児期に罹る遺伝子性の難病です。
基本的には子供は細胞の年齢が若く
あらゆる組織の状態が大人に比べて良いと考えられるので
これから医療が発展した時に最も貢献できる領域の一つである
という事には間違いありません。
例えば、80歳を超える患者さんに
数千万円も費用が掛かる最先端の医療を施したとしても
体力の問題からそれをしないほうが良い
という事も考えられます。
その後の人生を全うするために経過観察、対症療法を
選択したほうが良いという事も十分考えられます。
そうであるとするならば、
そのような最先端医療の向かう先は
真っ先に難病を抱える子供であり、
そこから若い人、中年の人生の時間が多く残された人に対してであります。
子供がかかる病気は遺伝子性の異常が多いので
Crispr-Cas9などによって遺伝子編集する事が
根治を実現する一つの大きな医療戦略であると考えられます。
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実際にはいくつかの方式が考えられます。
Ref.(1)Fig.1に示されるように
DNA,RNA分子に直接結合する方式と、
体細胞に働きかけて遺伝子編集する方式Tがあります。
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遺伝子編集の技術は
Crispr Cas(3)、
ZFN、meganucleases, TALENs(4)
RNAの異常部位に結合するAntisense technology(2)
Non-homologous end joining (NHEJ)
Homology-directed repair(HDR)(5)
これらがあります。
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遺伝子編集の方式としては
逆転写酵素によって正常なDNAを形成する方式や
メチル化、アセチル化、ユビキチン化などの
装飾因子によって遺伝子発現のスイッチをオフ、オンにする方式
エクソンやスプライス接合部位を部分的に取り除くなど
DNA、RNAのヌクレオチドの構造を破壊する方式(6-9)
オフターゲットを編集する方式(10)
これらがあると考えられます。
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さらにこれらと
iPS細胞などの細胞初期化技術を組み合わせる事も可能です。
異常な細胞を正常細胞に変える場合には
患者さんの体細胞を取りだして、
その細胞の異常を遺伝子編集により取り除いて
それを培養して体内にいれる再生医療が考えられます。
この時、組織を作ってから体内にいれる場合と
細胞単位で入れる場合が考えられます。
組織を作る場合は血液や免疫機能がない不完全な状態で
作ることになるので組織の形成がうまくいくかどうか
ということにおいて課題があります。
一方、細胞を入れる場合には
その細胞がうまく体内で発展して異常細胞よりも
顕著に高い勢力で組織を修繕、あるいは再生してくれるか?
それを人の体内ですることの難易度の高さがあります。
そもそも肝臓、筋肉、皮膚、骨などを除いて
再生能力があまり高くない組織もありますから
良い組織をうまく全体に作用するように発展させていく事は
身体の自然な機能を歪めて行うことになるため
様々な副作用、副反応を伴う可能性があります。
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ダウン症候群の場合は身体の(ほぼ)全ての細胞に
特定遺伝子の異倍数性がありますから
全ての細胞を人為的に遺伝子編集で改変する事は現実的ではありません。
従って、問題の出た組織から部分的に行うか?
あるいは遺伝子の正常な倍数性が担保された組織が
上手く勢力を増して発展していくような機序を利用するか?
後者が実現すれば、根治の可能性も見えてきます。
ダウン症に対する遺伝子治療に関しては
3倍数性を2倍数性にどうやって変えるか?
という根本的な課題もあります。
そう考えると患者さん自身の
免疫寛容のある正常な細胞をどうやって
組織の中で時間指数関数的に成長させる事ができるか?
それを考えるほうが筋がいい可能性があります。
ー
遺伝子治療の一つの課題はオフターゲット効果です。
基本的に遺伝子編集技術は細胞内の核やミトコンドリアなど
細胞の活動において鍵を握る領域、小器官の遺伝子を
改変する事にあります。
もちろん、血流に存在する遺伝子を改変することが
思わぬ大発見を生む可能性も否定はできません。
例えば、癌の転移は通常は癌細胞の血流循環によって起こる
と考えられますが、癌情報を持った循環するDNAやRNAが
転移サイトに運ばれ、そこで細胞に働きかけて
微小組織上の細胞を癌化させる可能性も考えられるからです。
そうした場合には循環するDNA、RNAを改変する価値も出てきます。
しかし、通常は細胞内に働きかける事を想定します。
細胞内の実像を可視化するのは
生きた状態では非常に困難であるため
どのように効率的に編集因子を輸送するか?
という点において
少なくとも空間認知的な課題があると考えられます。
ミトコンドリアの数の多さや多くの膜がある事によって
薬理を考える上での複雑性があります。
従って、輸送方式を考えることは大きな意味があります。
ー
私が考案した細胞特異的輸送系統の大きな利点は
「一般性」にあります。
従来から重なる構想はすでに考えられています。
例えば、抗体薬物複合体、CAR技術がそれです。
それをより「一般化した」事に価値があります。
つまり、細胞などのナノキャリアに
任意の装飾因子を高精度に作製する技術が確立され
かつ、それが本当に人の身体の任意の組織に運ばれている事が
明確な解析によって確認され、
その情報の元に臨床症状が評価されるという
トランスレーショナル医療の筋道が一つでも示されれば、
その対象がどの疾患であれ、
この遺伝子編集技術の編集物質の輸送方式に貢献します。
すでにナノキャリアとして細胞ではなく
新型コロナウィルスワクチンで使われるような
アデノウィルスやレンチウィルス株などが候補としてあります(1)。
但し、大きな領域での循環器系の中での向性、走化性を考える事や
免疫監視をどう制御するか(11)など
様々なスケールで課題がある事は頭に置いておく必要があります。
一方、iPS細胞の細胞初期化の技術を使えば
理想的には患者さん自身の細胞で任意の細胞種を作り出すことができます。
それによってキャリアとなる細胞種を選ぶことができます。
例えば、網膜細胞(12)や神経細胞(13)などが検討されています。
また、放射線、光、超音波などを輸送系統の
「アドジュバント」として使う事もできます。
ーー
一方で、遺伝子編集技術も
冒頭で述べた遺伝子変異性が強い疾患だけではなく、
癌、自己免疫疾患などの疾患の治療にも大きく役立つものです。
従って、遺伝子治療も同様に一般性が強いということになります。
ゆえに遺伝子治療と細胞特異的輸送系統が共に確立されたときには
様々な疾患に対する適用範囲はかなり広いことを意味します。
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今、アメリカ合衆国では遺伝子編集に関して
非常に大きな組織、プロジェクトが精緻に組まれています
SCGEコンソーシアムで38の研究機関、医療機関などが
45種類のプロジェクトを進めています。
6年間で1億9000万ドルの予算が組まれています(1)。
この大規模なプロジェクトに対して
私も専門家として引き続き発表される科学論文を評価し、
着眼点や考察を本記事を含めて継続的に世界に提供していきます。
投資した予算を大きく超える価値は
トランスレーショナル総合医療が実現されたときには
必ず実現されるものです。
生命科学の分野で突出して世界のトップを走るアメリカ合衆国の
この素晴らしい取り組みを現時点で国籍の異なる
私が違う立場で支援する事を通して
これから生み出される付加価値の一翼を担うことができれば
これ以上、幸いなことはありません。
SCCEを核とした活動は今後臨床応用が必ず実現されますが、
そのデータはより無料での誰でもアクセスが可能になるように
努力されるということです。
この活動に関して全面的な賛同を示し
引き続き、私の知的資産を中心に投資して支援していきます。
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