2021年4月25日日曜日

臨床治療と後遺症疫学調査と対策

新型コロナウィルスは呼吸器系の感染症ですから
基本的には鼻腔、口腔から入り
その組織も含めて気道、肺胞でウィルスが増殖します。
中にはウィルス自体が細胞傷害性を示すものもありますが、
私の知る限りにおいてはそのような報告は
少なくともまだ一般化はされていません(2)。
ただ、その可能性は無視はできないし、
変異の入り方によっては正常細胞死を促す信号を生みやすい
系統が生じる可能性も否定はできません。
基本的には、ウィルスが数日で一気に上昇して
それを体の免疫機能が抗原認識して
過剰に高められた免疫細胞が逆に正常細胞に損傷を与えている
可能性が考えられます。

肺の解剖図をみればわかりますが、
気管支が枝状に伸びて肺胞がブロッコリーのように
気管支の先に形成されています。
肺胞の直径は300μmで3億個存在するといわれています。
その小さな肺胞の周りには毛細血管が張り巡らされていて
呼吸によって取り込んだ酸素、窒素を中心とする空気を
血液に送り込んで、二酸化炭素濃度の高い空気を口から外にはき出します。

ウィルス量がどこで増えるか?
主には鼻腔、肺胞などで増えるとされています。
極端な話、肺胞で1億個の新型コロナウィルスがいた時に
それによって生じる肺胞での免疫機能と
そことは離れた足の指先で生じる免疫機能では
大きく異なる事は自明です。
免疫細胞自体は血液を通じて全身を回っていますが、
そのように急激にある特定の箇所で高密度で抗原認識した時には
場所依存的に免疫機能が高まると考えるのが自然です。
そうした場合、肺胞の組織が炎症を起こすことは
CT画像で硬化が見られるケースが多い臨床結果から考えても
ほぼ間違いないと言えます。

Ziyad Al-Aly, Yan Xie, Benjamin Bowe(敬称略)らは
アメリカ合衆国で大規模で行っているオンライン調査で
感染者、非感染者の両グループを比較することで
感染ケースに対して6か月時点での
後遺症について疫学的に分析されています(1)。
その結果を見ると
6か月後で最も多くの頻度で現れる症状は
呼吸器系の異常です。せき、息切れなどです。
おおよそ2.8%くらいです。
従って1万人の感染者がでれば、
280人くらいは6か月後もせきや息切れがあるということです。
このような後遺症の症状は
新型コロナウィルスに罹患した時に
症状が重ければ重いほど、リスクが高くなります。
特に血栓閉栓症(Thromboembolism)のリスクは高いです。
場所として一番リスクが高いのは
肺胞の周りの血管だと思われます。
従って、酸素を取り込めなくなり酸素濃度が下がる人もいます。
一旦、組織が硬化すると
そこから回復するのに長期間かかる場合もあるし
医療介入なしの自然治癒は見込めない場合もあるかもしれません。

心臓、皮膚、内分泌、胃腸、腎臓、心、関節、骨、神経、肺
すべての後遺症について言える事ですが、
罹患した時の症状が重いほどリスクが高くなります。
その差は顕著です。
重症から回復したとしても、
ウィルスの残存や免疫機能が暴走した状態、
組織の損傷を経験するわけですから
その後に症状が残る事はごく自然なことです。
従って、当たり前の事ですが、
ワクチン接種や
社会的な要素(マスク、人との距離、接触回数、消毒など)
によって罹患するリスクを減らす、
罹患しても入院、重症まで発展しないようにする
ということが大切になります。
一方、治療においては理想的には中等症、重症に発展するまでに
薬物(抗ウィルス、免疫調整)、酸素、血流管理によって
患者を回復させる。
中等症、重症の患者においても
できるだけ早く回復するように上述した治療を総動員させる
ということが求められます。

後遺症の治療においては
非常に多岐にわたるので一つ一つ確立していくしかありません。
ベースにあるのは
残存しているウィルスを撲滅させる、
液体生検などから自己抗体も含めて
異常な免疫機能を見出して、それを正常に戻す
ということがあります。
あとは、すぐに治るものではないですから
治療の間の患者さんに対する心理的なケアも大切になります。
一部でワクチンを接種することで
後遺症が軽くなったという患者さんもいます。
それが何に起因するか生理学、医学的な観点も
これから調べていく必要があります。

もう一つ追記すると
基本的に変異によって感染力が高まれば、
細胞を通じた増殖能力が高いことが考えられますので、
体内にそのウィルスが入ると
ウィルス量が感染力が低い系統よりも多くなる可能性が考えられます。
ウィルス量の最大値が増えれば、
それだけ身体の免疫機能は強く反応することになりますから
肺などの障害が生じて重症化するリスクも高まります。
そうするとその後の後遺症のリスクも高まります。
ウィルスの毒性というのは
そのウィルス自身が正常の細胞に損傷を与えるか?
あるいは免疫機能を歪ませる能力が高いか?
こういったことが考えられますが、
もう一つは今述べた様に増殖力があります。

(Reference)
(1)
Ziyad Al-Aly, Yan Xie & Benjamin Bowe 
High-dimensional characterization of post-acute sequalae of COVID-19
Nature (2021)

Author information
Affiliations
Clinical Epidemiology Center, Research and Development Service, VA Saint Louis Health Care System, Saint Louis, MO, USA
Ziyad Al-Aly, Yan Xie & Benjamin Bowe
Veterans Research and Education Foundation of Saint Louis, Saint Louis, MO, USA
Ziyad Al-Aly, Yan Xie & Benjamin Bowe
Nephrology Section, Medicine Service, VA Saint Louis Health Care System, Saint Louis, MO, USA
Ziyad Al-Aly
Department of Medicine, Washington University School of Medicine, Saint Louis, MO, USA
Ziyad Al-Aly
Institute for Public Health, Washington University in Saint Louis, Saint Louis, MO, USA
Ziyad Al-Aly
Department of Epidemiology and Biostatistics, College for Public Health and Social Justice, Saint Louis University, Saint Louis, MO, USA
Yan Xie & Benjamin Bowe

(2)
Denisa Bojkova et al.
SARS-CoV-2 infects and induces cytotoxic effects in human cardiomyocytes
bioRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.06.01.127605; 
(3)
Jerald Sadoff, M.D., Glenda Gray, M.B., B.Ch., An Vandebosch, Ph.D., Vicky Cárdenas, Ph.D., Georgi Shukarev, M.D., Beatriz Grinsztejn, M.D., Paul A. Goepfert, M.D., Carla Truyers, Ph.D., Hein Fennema, Ph.D., Bart Spiessens, Ph.D., Kim Offergeld, M.Sc., Gert Scheper, Ph.D., Kimberly L. Taylor, Ph.D., Merlin L. Robb, M.D., John Treanor, M.D., Dan H. Barouch, M.D., Jeffrey Stoddard, M.D., Martin F. Ryser, M.D., Mary A. Marovich, M.D., Kathleen M. Neuzil, M.D., Lawrence Corey, M.D., Nancy Cauwenberghs, Ph.D., Tamzin Tanner, Ph.D., Karin Hardt, Ph.D., Javier Ruiz-Guiñazú, M.D., Mathieu Le Gars, Ph.D., Hanneke Schuitemaker, Ph.D., Johan Van Hoof, M.D., Frank Struyf, M.D., and Macaya Douoguih, M.D. for the ENSEMBLE Study Group*
Safety and Efficacy of Single-Dose Ad26.COV2.S Vaccine against Covid-19
The New England Journal of Medicine April 21, 2021

Author Affiliations
From Janssen Vaccines and Prevention, Leiden, the Netherlands (J. Sadoff, G. Shukarev, G. Scheper, M.L.G., H.S., J.V.H., M.D.); South African Research Council, Cape Town, South Africa (G.G.); Janssen Research and Development, Beerse, Belgium (A.V., C.T., H.F., B.S., K.O., M.F.R., N.C., T.T., K.H., J.R.G., F.S.); Janssen Research and Development, Spring House, PA (V.C.); Evandro Chagas National Institute of Infectious Diseases–Fiocruz, Rio de Janeiro (B.G.); the University of Alabama at Birmingham, Birmingham (P.A.G.); the National Institute of Allergy and Infectious Diseases, Rockville (K.L.T., M.A.M.), Walter Reed Army Institute of Research, Silver Spring (M.L.R.), and the Center for Vaccine Development and Global Health, University of Maryland School of Medicine, Baltimore (K.M.N.) — all in Maryland; Biomedical Advanced Research and Development Authority, Washington, DC (J.T.); the Center for Virology and Vaccine Research, Beth Israel Deaconess Medical Center, Boston (D.H.B.); Janssen Research and Development, Raritan, NJ (J. Stoddard); and Vaccine and Infectious Disease Division, Fred Hutchinson Cancer Research Center, Seattle (L.C.).


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