神経細胞は通常の細胞よりも形状が複雑で
枝のように四方八方に伸びた形をしています。
その先端にはシナプスと呼ばれる接続部位があり、
軸索とつながります。
その軸索は他方の末端でシナプスの連結により
神経細胞とつながります。
従って、2つのシナプス、軸索を通じて
神経細胞の連結、その集合のネットワークが形成されます。
このシナプスの連結部ではカドヘリンと呼ばれる
細胞をつなぐタンパク質が信号伝達や
細胞の位置の固定に貢献していると考えられます。
PCDH19と呼ばれる女性の乳幼児が主に罹患する難病があります。
このPCDH19ではカドヘリンのミスマッチにより
連結がうまくいかなくなり神経の伝達に支障が生じます。
実際にシナプスでの神経伝達物質の放出の確率が下がる
ことが示唆されています(1)。
それにより臨床症状ではてんかん発作である
全身の痙攣や失神が起こることにつながります。
また認知機能の障害が起こることもあります。
実際に知能障害は70%の患者さんで生じるといわれています(2,3)。
PCDH19は海馬に多く、生後間もなく上昇するといわれています(4)。
海馬は新しい記憶の貯蔵に関係する部位で
その機能不全が知能障害に関係している可能性が考えられます。
実際に長期記憶増強がPCDH19に異常が出ることで
失われることが確認されています(1)。
成長につれて寛解するケースもありますが、
発達期に脳に障害がでることで、
臨床症状としては完治しても、認知機能の障害などは
その後の生活に影響を及ぼす可能性があります。
ー
構造としてはカドヘリンの装飾因子として
PCDH19と呼ばれるたんぱく質が結合して
それらが正常に結合、形成される事に寄って
シナプスでの連結が可能になります。
しかし、X染色体に関連するPCDH19に変異が入ると
PCDH19とNカドヘリンの結合親和性が落ちる
もしくはPCDH19の分泌量そのものが下がって
結合している端末とそうではない端末のミスマッチが生じ
PCDH19を介した結合に障害がでることが示されています(1)。
ー
おそらくこの疾患が女性に特有な原因は
Ref.(1)Fig.4に示されているように
分子的な親和性が落ちるか、
不完全な量で分泌するためであると考えられます。
男性の場合は遺伝子のオンとオフが混在することがないため
不完全な形でPCDH19が結合することがないため
PCDH19不全に起因する神経系の疾患が起こりにくい
ということがあると考えています。
ー
私が着目したのはMossy-fiberと表現される
海馬特有の苔のような神経系です。
それは空間的に言えば、
密なところと疎であるところが比較的分離されいていて
密度分布にバラツキがあるという事だと思います。
実際にRef.(1) Fig.4をみればわかります。
それに付随した形でPCDH19も偏在していますが、
PCDH19に異常が生じた場合には
その空間分布の凝集、ばらつきが小さくなっているようにみえまうs。
Ref.(1) Fig.4B
実際には脳脊髄液、間質液の溶液の中での
タンパク質の振る舞いを見ていると思います。
言い換えれば、液体中の固体(タンパク質)の分布です。
その凝集が溶けているということは
物質の化学的性質が遺伝子変異によって変わっていることを
示しているのではないか?と考えています。
高分子の中で凝集に影響を与えるような構造、残基があるならば
構造的な違いを低温電子顕微鏡などで調べた時に
その違いが凝集に関わるような物理的性質とリンクするか?
という点に関心があります。
ー
治療の戦略としては
もちろん遺伝子に直接働きかける方法もあります。
一方カドヘリンにPCDH19が結合しない事が
正常な神経伝達に貢献することが男性の例で考えられるので
それらの結合をアンタゴナイズするような薬剤が
もう一つの治療戦略として考えられます。
(Reference)
(1)
Naosuke Hoshina, Erin M. Johnson-Venkatesh, Miyuki Hoshina, Hisashi Umemori
Female-specific synaptic dysfunction and cognitive impairment in a mouse model of PCDH19 disorder
Science 16 Apr 2021:Vol. 372, Issue 6539, eaaz3893
ー
Department of Neurology, F. M. Kirby Neurobiology Center, Boston Children’s Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA 02115, USA.
ー
(2)
L. M. Dibbens et al.,
X-linked protocadherin 19 mutationscause female-limited epilepsy and cognitive impairment.
Nat. Genet. 40, 776 – 781 (2008).
doi: 10.1038/ng.149;pmid: 18469813
(3)
K. L. Kolc et al.,
A systematic review and meta-analysis of 271 PCDH19-variant individuals identifies psychiatric comorbidities, and association of seizure onset and disease severity.
Mol. Psychiatry 24, 241 – 251 (2019).
doi: 10.1038/s41380-018-0066-9; pmid: 29892053
(4)
A. Terauchi et al.,
Distinct FGFs promote differentiation ofexcitatory and inhibitory synapses.
Nature 465, 783 – 787(2010).
doi: 10.1038/nature09041; pmid: 20505669
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