2020年7月4日土曜日

COVID-19:RNAウィルスの細胞内抗体とワクチンの可能性について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

今世界で最も開発が進んでいるワクチンは
オックスフォード大学が進めているイギリスのもので
早ければ9月に供給可能ということです。
10億本の生産能力があって、
9億本はすでに各国で確保されていますから
日本に十分な数、早い段階で回ってくるかというのは
不透明です。政府の方が交渉はされているようです。
しかし、第三段階の数百人の治験の中で
成功する確率は半分くらいと言われています。
もともとワクチンの開発は、
健常者の前もって予防のために打つので
副作用を抑える必要があるので
開発を慎重にする必要があり、
長ければ10年くらいかかると言われています。
それを1年以内でしようとしているわけですから
当然うまくいかないことも想定しないといけません。
今、少なくとも100以上のワクチン開発が世界で進んでいますから、
その中で有効なものが生まれることが期待されます。

そのワクチン開発においては、
私が把握している限り、ほとんどのものは、
液性免疫の機序によって
B細胞から中和抗体が出て
それがウィルスのエンベロープ(膜)の
周りに複数存在する突起であるSタンパク質(スパイク)の
ドメインについて極性を弱めて(中和して)
ACE2エントリー受容体への結合活性を弱めるものです。
そして、細胞の飲食作用(?)で膜がウィルスを包み込んで、
細胞内にウィルスが浸入することを防ぎます。
その抗体が体内に存在する、
あるいはメモリーB細胞が迅速に抗体を出すことにより
実際に新型コロナウィルスが体内に入った時の
増殖を弱めることができるというものです。
(と今は理解しています。)
従って、ACE2エントリー受容体に作用するものですが、
もし違う機序の免疫機構があって
それにたいして「免疫をつける」ことができれば、
2本同時に打つことによって、
さらに効果を高められる可能性があります。
そもそも
身体がウィルスから守る機序は、
ACE2エントリー受容体に対する中和効果だけではなく
感染細胞を破壊するものであったり、
中での増殖を防ぐものもあります。
おそらく他にもいろいろあると思います。
その「複数」の機序の中で
1つの防御機能を高められたとしても、
高い効果が得られるかどうかはわかりません。
つまり
複数の防御機構に作用することができれば、
うまくいけばその確率を高めることができると推測します。

新型コロナウィルスで確認されたわけではないですが、
SARS-CoV-2が属するRNAウィルス(ex.アデノウィルス)において、
細胞内抗体というのが確認されています。
通常、抗体は細胞の外の空間を巡回して
細胞外で結合して細胞内に感染しにくくしますが、
細胞内部にも免疫系があって、
その免疫系を活性化することで
RNAの複製、つまりウィルスの増殖を防ぐことができる
可能性が示唆されています。
RNAウィルスにはそれを覆う膜の外側にスパイクがあって
そこに抗体が付きますが、
仮に抗体がついても露出されたスパイクが残っていれば
そのドメインとエントリー受容体が結合する可能性は残ります。
それによって飲食作用(?)により膜が
ウィルスを包み込むように細胞内に取り込みます。
そのウィルスには抗体がいくつかついていますが、
働かなかった抗体にTRIM21という細胞質の抗体受容体が
細胞内でくっついて、免疫機能が働き
ウィルスの増殖を防ぐ作用が細胞内にある可能性がある
と報告されています。
この免疫機序は詳細には
K-63リンクユビキチン化といわれています。
ユビキチンとはタンパク質の装飾ということですから
初めにスパイクに就いた抗体(タンパク質)に結合して
機能的な変化をもらたすと考えられます。
その機能的な変化の中で
炎症性サイトカインを放出して、
ウィルスのRNAの分解などに貢献すると理解しています。
また細胞そのものを破壊するNK細胞、炎症性T細胞の活性も
間接的に高めると言わています。

このTRIM21という酵素はほとんどの細胞で発現され
骨髄性細胞、樹状細胞、マクロファージで多いと言われています。

このような細胞内部の免疫機序をワクチンとして利用するのは、
少し頭をひねらせる必要はあります。
というのは、
仮にワクチンによって細胞内抗体を誘発させても
それが残るか?
それによって感染後の発現が高められるか迅速になるか?
がわからないからです。
あるいは事前にワクチンによって
疑似的なウィルスを細胞内に入れる必要があるならば
通常のワクチンよりもリスクを伴う可能性があります。

しかし、一つ考えられることは
通常のワクチンによって抗体が
ウィルスのスパイクにつきやすいようになれば
仮に残りのスパイクによって細胞内に入ったとしても
その細胞外抗体の活性度が上がることによって
細胞内の抗体が働きやすくなる
ということが考えられます。
ついている抗体が多くなれば、
細胞内抗体がそれを装飾してくれるからです。
従って、通常のワクチン開発において、
数あるスパイクにできるだけ多く抗体が付くような
ワクチンであって
それを中和活性など何らかの指標でモニターすることは
必要かもしれません。
なぜなら、
単に細胞内に感染しないだけではなく、
細胞内の免疫機序を誘発させて、別の機序で
ウィルスを除去することにおいても有効である
可能性があるからです。

以上です。

(参考文献)
Teunis B H Geijtenbeek & Sonja I Gringhuis
An inside job for antibodies: tagging pathogens for intracellular sensing
Nature immunology vol.14 pp.309-311 (2013)
doi.org/10.1038/ni.2574


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