いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
医師の方は
「有事であってもワクチンの承認プロセスを
簡略化するべきではない。」
といわれています。
つまり、こういう世界的流行の時だからこそ
段階的な治験を経て安全性、有効性を確認させたうえで
世の中に出すことが求められるということです。
ワクチン開発というのは
12カ月から18カ月は最低かかるといわれており、
途中で頓挫すると時間的、資金的なロスは大きいです。
従って研究段階で顕著な結果
かつ論理的根拠が得られることが
最初の段階で求められます。
人の免疫機能というのは、
勉強すればするほどその複雑性を知ります。
基本的に世間の方がイメージする抗体は
Y字型の物体が単独で
ウィルスに近づいていく感じだと思います。
このようなY字型の物体は
B細胞が抗原を認識して、
その情報に応じた抗体を放出する
「液性免疫」です。
基本的にワクチンで想定されている抗体は
この液性免疫に基づく免疫機能を
生かそうというものだと理解してます。
ただ前述したように
免疫には自然免役と獲得免疫というのがあって
今述べた抗原を認識して抗体を出すようになるのは
ウィルスが入ってきて獲得する免疫だから
獲得免疫です。
一方で
ウィルスが入ってきた時に
身体で本来備わっているT細胞などによる
攻撃は自然免疫です。
ただ複雑なのは、
このT細胞は、
すでに同種のコロナウィルスへの過去の暴露によって
「訓練されている」可能性があるので、
その場合は獲得免疫の要素も入ります。
あるいは
一般的に癌の免疫治療のモデルとして考えられるのが
細胞性免疫です。
新型コロナウィルスにおいても
細胞性免疫が働いている可能性はある
と思っています。
上述したような液性免疫、細胞性免疫は
何らかの体の異常に対して調整が入ったことによって
生まれた免疫機能なので
獲得免疫といえると考えます。
これは大きな分類であって
様々な細胞の表面にある多数の受容体や
多種にわたるサイトカインなどの機能なども含めると
免疫機能は非常に複雑です。
その中でワクチンを接種した時に
「抗体がどれくらい出来た。」
あるいは「抗体がどれくらい続いた。」
という議論になるわけですが
それ以外にも着目すべき点が多くある事は
間違いないと思っています。
例えば、
ワクチンによって、
T細胞、B細胞は影響を受けることはないか?
そういうことも評価していく必要がある
と私は考えています。
またその液性免疫によって生まれた抗体も
1種類ではないといわれています。
おそらく「抗体は1つに決まっている」
という認識があった方はいると思いますが、
実はそうではないです。
参考文献によれば
PCR検査で新型コロナウィルスに感染した
患者さんの血液から
少なくとも61種類の中和抗体が見つかっています。
61種類の抗体は
それぞれ大きな性能のばらつきがあって、
「優秀な」抗体がその中にはあります。
どれくらい優秀か?を測定する一つの手法として
------
血液の中にどれくらいの量があれば、
中和抗体によって
ウィルスのSタンパク質とエントリー受容体(ACE2)
の結合の割合が半分になるか?
------
というのがああります。
つまり少ない量で結合の割合が小さくなれば
結合がウィルスの細胞内の浸入を決める
一つの要素と考えられているので、
より少ない量でウィルス感染を防ぐことができます。
薬剤は少なくて効くほうがいいわけですから、
その抗体は優れていると考えられます。
その結合を半分にする量が
0.7~9ng/mL
と非常に少ない抗体が9種類見つかっています。
(Fig.2(b))
このグラフ横にある数字(記号)は
その抗体が結合した
Sタンパク質の受容体結合面(RBD)
および窒素終端面(NTD)の位置を示しています。
その抗体を分析する上で
Sタンパク質にどのように結合して
Sタンパク質の極性を弱めて、
エントリー受容体との静電引力を弱めて
中和機能を示すか(中和抗体)、
ということを可視化することは大事です。
その可視化は一般的には
低温電子顕微鏡が使われます。
それによって精彩に3次元的に構造を
可視化することができます。
その構造分析によって
4つの部位から成るエピトープ(抗体結合部分)が
明らかになりました。
受容体結合部位(RBD)、窒素終端面(NTD)それぞれの
中和活性の強い部分とそうではない部分の
マッピングが数字で色分した形で
Fig3に掲載されています。
これをみると
高い中和活性を示した部位は
散在しているのではなく
ある程度の範囲に固まって存在していることがわかります。
さらに、
このSタンパク質の構造において
計算における極性のマッピングもほしいと感じます。
中和活性の高い位置が
極性が強い傾向にあるかどうか確認したいからです。
受容体結合部位(RBD)、窒素終端面(NTD)
の中和的定量が異なりますが
それぞれの部位に結合する中和抗体が
どういう役割をしているのか?
というのはまだちゃんとわかっていないようです。
しかし、両方の結合部位を考慮した
中和抗体のためのワクチン開発は
必要であると考えられています。
新型コロナウィルスに対する
症状の違いが何に起因するか
はっきりはわかっていません。
例えば
過去にコモンコールドなコロナウィルスに罹っていて、
B細胞やT細胞が記憶していて
迅速に抗体を放出したからかもしれません。
ただ、今回の結果で考えられるのは、
抗体は60種類以上あるので、
その人がどの種類の抗体を
どれくらいの量、どれくらいの割合持っているかで
抗体全体の中和能力が変わってくる可能性がある
ということです。
現在でもすでに罹患した人の血液から
抗体を取り出して
それを治療に使うといった試みもされている
といわれます。
もし、今回の結果で示されたような
優秀な抗体を簡便に分析でき、
それを多く含む人の血液を集めることができたら
より有効な治療につなげられる
可能性が考えられます。
またワクチン開発においても
そのワクチンにおいて
どの種類の抗体が産生され、
Sタンパク質のRBD、NTDのどの部位に結合したか?
という構造的な評価は
その安全性を確認する上で欠かせないと考えます。
基本的には複数の抗体が
同時に作用することが
新型コロナウィルスの獲得免疫では
考えられることですが、
人工的に産生させたワクチンによる抗体と
罹患した時に生まれる抗体の多種性が異なるか?
という点が気になります。
例えば
ワクチンによる抗体のほうが単一性が強ければ、
それが中和活性に影響を与える可能性がある
と考えています。
以上です。
(参考文献)
Lihong Liu, Pengfei Wang, Manoj S. Nair, Jian Yu, Micah Rapp, Qian Wang, Yang Luo, Jasper F-W. Chan, Vincent Sahi, Amir Figueroa, Xinzheng V. Guo, Gabriele Cerutti, Jude Bimela, Jason Gorman, Tongqing Zhou, Zhiwei Chen, Kwok-Yung Yuen, Peter D. Kwong, Joseph G. Sodroski, Michael T. Yin, Zizhang Sheng, Yaoxing Huang, Lawrence Shapiro & David D. Ho
Potent neutralizing antibodies directed to multiple epitopes on SARS-CoV-2 spike
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2571-7
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