2020年7月31日金曜日 0 コメント

COVID-19:リンパ球とサイトカインによる自然免疫の影響

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

ワクチンの開発が世界で鋭意進められています。
今最終治験段階にあるのは
アメリカ、中国、イギリスの3つであります。
そのワクチンで期待されるのは、
ワクチンによって抗体が産生され、
それが新型コロナウィルスのSタンパク質を中和させて、
エントリー受容体との結合を防いで
細胞内への浸入、つまり感染を防ぐというものです。
これは
体の生理でいう獲得免疫を利用するものです。
もしうまくいけば、
新型コロナウィルスを根絶することは難しくても
インフルエンザのように共存しながら
症状の程度を無症状、軽症に制御することができることです。
それが「ウィズコロナ」に貢献すると思います。
しかし、
これを実現するためには獲得免疫だけではなく
人の体に本来備わっている自然免疫の生理を
理解することが大事です。
今の時点で、自然免疫と獲得免疫の境界が
私の理解では曖昧ですが、
新型コロナウィルスや
他の風邪の原因となる(コモンコールドな)コロナウィルスへの
暴露によって鍛えられた、あるいは影響を受けた
リンパ球(T細胞、B細胞,NK細胞など)も自然免疫だとします。
その中で自然免疫は
思っている以上に複雑に症状の程度と関わっている
かもしれないと考えられます。

中国やアメリカの今までの報告で
新型コロナウィルスで重症になった患者さんの傾向として
CD4+、CD8+というT細胞が少ない傾向にある
と言われていました。
実は、もっと広範なリンパ球全体に対して
その絶対数が一時的に下がることがある
と言われています。
例えば、
インフルエンザに罹患すると
数日はリンパ球が下がるケースがあるようです。
でも、それは回復すると言われています。
しかし、新型コロナウィルスの場合は
インフルエンザなどに比べて
リンパ球の減少が長く続くと言われています。
また、高齢、あるいは男性は
少ない傾向にあると報告されています。
従って、高齢や男性が重症化する傾向に強いことは、
リンパ球減少と紐づけられる部分があると考えられます。

一方で、新型コロナウィルスは
Ⅰ型インターフェロンというサイトカインが
少ないケースがあり、
このサイトカインは抗ウィルス性を示すため
それとの重症化の関連も指摘されています。
その他さまざまなサイトカインのバランスがあります。
免疫を助けるものもあれば、阻害するものもあります。
それらのサイトカインが
直接、上皮、内皮細胞などに影響を与えて
組織の炎症に関連することもあると思いますが、
このサイトカインは
リンパ球の分化にも影響を与えているかもしれない
ということが考えられています。
例えば、
無症状、軽症で済んだ人は、
T細胞の分化において
抗ウィルス性のためにより有効に働くような
細胞に多く分化する仮説が立てられています。
これは、B細胞、NK細胞でも当てはまるかもしれません。

つまり
T細胞、B細胞、NK細胞といった
リンパ球の絶対数とともに
それらの免疫細胞の「質」が
症状の程度に影響を与えているかもしれない
ということです。
これらは抗体がどのように
ウィルスの細胞の感染を防ぐかという獲得免疫の
背景として効果を発揮してくる可能性があります。
言い方を変えれば、
ワクチンを接種しても
その効力は人によって変わるかもしれない
ということです。

治療の戦略としては
ステロイドのように免疫抑制剤のように
サイトカインに働きかける薬剤、
(tocilizumab、ruxolitinib、dexamethasoneなど)
あるいは
リンパ球の量を適正に制御する薬剤、
あるいは
それらと関係する食事や生活習慣など
が考えられると思います。
今、ステロイドが病院で使われているという話ですが、
炎症を抑えるだけではなく、
参考文献の仮説が当てはまるとすれば
リンパ球の分化にも影響を与えている
可能性が考えられます。

以上です。

(参考文献)
Zeyu Chen & E. John Wherry 
T cell responses in patients with COVID-19
Nature Reviews Immunology (2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-0402-6


2020年7月30日木曜日 0 コメント

COVID-19:肺線維症~良好な肺機能予後に向けて

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

先日、ある日本の医師の方は
肺に一旦、重度の炎症が起きると
組織がそれを修復する段階で、
線維状の細胞組織になる(?)というようなことをいわれていました。
その時には、治ることがないといわれていました。
なんとか後遺症に悩む方に対する貢献がしたいと
思って調査しているところです。
その治療のヒントになるかもしれない
疾患に突発性肺線維症というのがあります。
肺の高度な線維化を主体とし、拘束性換気障害をきたす肺疾患
といわれており
病理的なな類似性を見出すことができます。
症状としては
乾性咳嗽(乾いたせき)や労作時息切れが発生する
といわれています。
ただし治療は非常に難しいと言われています。

さらに難しいのは、この病気は進行性で
新型コロナウィルスの予後に見られるような症状と
時間経過的病理が一致するかはわからないところです。
つまり
後遺症の場合は、繊維化は起こっているけど
症状の進行がない状態かもしれません。
ただ突発性肺線維症の場合は
早ければ早いほど治療の効果は得られやすいとも言われています。
今候補として挙げられている治療法を
箇条書きにしたいと思います。

①酸素吸入
 酸素レベルの低い人には勧められました。
 運動能力の向上がいくつかの報告で確認されました。
②肺リハビリテーション
 段階的な運動、栄養指導、作業療法、教育、カウンセリングなど
③薬物療法
 Pirfenidone、
   「※突発性肺線維症」に対して30%の病気の進行の抑制。
 N-acetylcysteine and triple therapy
  抗酸化物質であるグルタチオンの先駆物質。
  ただし肺機能向上に顕著な効果得られなかったという報告もあります。
 Nintedanib
  線維芽細胞成長因子、血漿由来成長因子、血管内皮成長因子
  の制御に関与するとされています。
  肺機能の低下を抑制したという報告もあります。
  2014年FDAで承認。

※特発性肺線維症の治療が新型コロナウィルスの
 肺の後遺症の治療に役に立つかというのは未知ですが、
 可能性はゼロではないので、
 空いた時間に少しずつ情報を更新していきたいと思います。

(参考文献)
Wikipedia:Idiopathic pulmonary fibrosis

Fernando J. Martinez, Harold R. Collard, Annie Pardo, Ganesh Raghu, Luca Richeldi, Moises Selman, Jeffrey J. Swigris, Hiroyuki Taniguchi & Athol U. Wells 
Idiopathic pulmonary fibrosis
Nature Reviews Disease Primers volume 3, Article number: 17074 (2017) 
doi.org/10.1038/nrdp.2017.74


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COVID-19:好中球、活性酸素増加による影響

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

血管、肺に代表される臓器などに
ダメージを受けた患者さんの血液を分析すると
多くの場合、炎症性サイトカインや
炎症と関連がある好中球が増加しています。
この好中球は少なすぎても、多すぎてもよくなく
適度な量に制御されている必要がある
と理解していますが、
新型コロナウィルスで症状を示した人は
それが通常よりも多くなっていうケースがある
と報告されています。
好中球は自然免疫に関わる白血球の一種なので
それが異常に増えている事は、
免疫機能の乱れを少なくとも一部は意味していると思います。
同じようによく聞かれる
サイトカインストームという現象も
免疫機能の不全を意味すると理解しています。
医療の現場の方は治療として、
ステロイドを使うといっていましたが、
このステロイドは免疫機能を調整する役割がある
と理解しているので、
このような好中球や炎症性サイトカインの量が
調整されることが期待できます。

この好中球が多くなると付随的に(?)
体内の活性酸素の量の増加が引き起こされ、
その活性酸素が異常に増える事で
組織のダメージ、血栓、赤血球の不全を起こす
といわれています。
特に活性酸素は
赤血球の不全と関連性が高いと言われています。

組織のダメージは
肺をはじめ臓器の炎症などに関わり、
血栓ができると血液が体の隅々まで
循環せずに壊死を起こす原因なると理解しています。
赤血球は肺で取り込んだ酸素を
体全体にいきわたらせる役割をするので
それが不全を起こすと
各組織の酸欠を引き起こす可能性が考えられます。
実際に肺の解剖結果では、
好中球が肺組織の中に入っていることが
確認されています。
体には元々活性酸素を取り除く抗酸化作用が備わっていますが、
新型コロナウィルスはその機能を抑制する
働きを持っていると考えられています。
従って、
好中球が活性酸素を誘発することと
それを防ぐ役割をウィルスが抑制することが
2重に活性酸素亢進に影響を与えている可能性を考えました。
例えば、抗酸化作用を示すと考えられている
NRF2、SOD3が減少していることが
患者さんで確認されています。
例えば、NRF2、SOD3に作用する薬剤があれば、
治療の候補として検討できる可能性があります。

例えば、子どもが重症化しにくいといわれています。
その理由は明らかではないですが、
それを紐解くヒントがあります。
子供の好中球は反応性、付随性が低いので
酸化還元バランスが崩れにくいと言われています。
従って、好中球の増減にたいする
活性酸素の感受性が低いことを意味します。
それが重症化しにくい原因の一つではないか
と推測されています。

従って、
もちろん上流側で免疫機能をコントロールすることは
大事ですが、
その下流のプロセスで起こっているかもしれない
活性酸素のバランスを保つことも、
治療の戦略として考えられます。

OS-APtest(血液検査)という活性酸素量を測る
ものがあります。
横浜市立大学の山中竹春教授が
回復者専用抗体検査PROJECTを立ち上げて
日本で大規模な調査を行いますが、
血液を採取した際に抗体以外に、
赤血球、白血球もそうですが、
活性酸素の量も測る事ができるので
評価する指標の一つとして
検討していただけたらと考えます。

新型コロナウィルスは
全身の倦怠感、臓器の不全、関節痛など
の症状を引き起こすといわれています。
関連する理由の一つとして
赤血球や白血球など
血液に作用する要素が強いからかもしれません。
血液は毛細血管も含めると体中を循環しており、
その成分に不全が起きると
その影響は全身に及びます。
後遺症に悩まされるケースもありますが、
発症後も含めて治療としてできることは
まずは血液採取をして
そのデータを分析することにあるのではないか
と思います。
そのデータから適切な治療につながる
可能性を考えました。

(参考文献)
Mireille Laforge, Carole Elbim, Corinne Frère, Miryana Hémadi, Charbel Massaad, Philippe Nuss, Jean-Jacques Benoliel & Chrystel Becker 
Tissue damage from neutrophil-induced oxidative stress in COVID-19
Nature Reviews Immunology (2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-0407-1

2020年7月29日水曜日 0 コメント

COVID-19:T細胞と症状の程度

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

理化学研究所の橋本浩介先生のチームが
110歳以上の超長寿な人は
CD4+キラーT細胞を多く持っている傾向にある
という事を明らかにしました(1)。

このCD4は一般的にはヘルパーT細胞と呼ばれ、
その中のTh2と呼ばれる分類では、
B細胞や抗原呈示細胞と協力して抗体生産を行う
と考えられています。
B細胞は液性免疫にかかわる細胞ですから
新型コロナウィルスが体内に入ってきた時に
細胞感染を防ぐ抗体を放出する際の機能補助と
行う可能性が考えられます。

冒頭で述べた
CD4+は「キラー」T細胞なので
積極的に細胞障害性を示す細胞だと考えられます。
人で見つかることは非常に珍しいそうです。

昨日のアメリカの報告でも
このCD4+というT細胞の減少が重症の患者さんでは
顕著であると言われていて、
これは参考文献(2)の中国の報告でも同じように言われています。
またこれらの2国の報告でもう一つ重なっていることは
CD8+というT細胞の減少も見られることです。
参考文献(2)ではCD3+も重症の患者さんで減っています。

またもう一つ共通することがあって
発症初期の段階からその数が少ないことです。
参考文献(2)では
「Host factor」と呼んでいますが、
ひょっとすると年齢などによって
元々T細胞が少ない人がそうなりやすいかもしれない
という可能性が示唆されます。

従って、新型コロナウィルスに罹患する前に
もし血液検査などでT細胞の量などを測ることができたら
少ない人はリスクが高いので、
より警戒を強めるということはできるかもしれません。
ただ、それを知ることに対しては
一定の懐疑性は残ります。
例えば、
T細胞が多ければ安心してしまう。
あるいは、そうではなければ余計に不安になる。
そういった懸念も一方ではあります。
もちろん、これだけでは決まらない部分もあると思います。

以上です。

(参考文献)
(1)
110歳以上の超長寿者が持つ特殊なT細胞
-スーパーセンチナリアンの免疫細胞を1細胞レベルで解析-
https://www.riken.jp/press/2019/20191113_1/index.html
(2)
Xiaonan Zhang, Yun Tan, Yun Ling, Gang Lu, Feng Liu, Zhigang Yi, Xiaofang Jia, Min Wu, Bisheng Shi, Shuibao Xu, Jun Chen, Wei Wang, Bing Chen, Lu Jiang, Shuting Yu, Jing Lu, Jinzeng Wang, Mingzhu Xu, Zhenghong Yuan, Qin Zhang, Xinxin Zhang, Guoping Zhao, Shengyue Wang, Saijuan Chen & Hongzhou Lu 
Viral and host factors related to the clinical outcome of COVID-19
Nature volume 583, pages437–440(2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2355-0

2020年7月28日火曜日 0 コメント

COVID-19:患者さんの血漿中の免疫機能のデータ

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスの患者さんの数が増える中で
今、医療崩壊を防げているのは、
重症の患者さんが少なく、
軽症で済んでいる人が多いからです。
しかし、
日本の医療関係の方は、
軽症でもいつ重症化するかわからないから
それを考えるとリスクは決して小さくない
と言われています。
NHK総合テレビ(さん)のNHKスペシャル
「新型コロナ いま“第2波”への備えは?~医療現場からの警告~」
に出演されていた
国立国際医療研究センター病院・国際感染症センター長
大曲貴夫先生の情報によれば、
医療現場では、
レムデシビルとステロイドによって
ある程度症状がコントロールできるようになってきた
と言われています。
しかしながら、
数時間で急速に悪化するのがこの病気の特徴なので
その悪化の前の何らかのサインを掴むことが
非常に重要になると思います。

参考文献によれば、
アメリカの113人の新型コロナウィルスの患者さんの
血液の情報を時間経過を含めて
詳しく調べています。
その中で
中程度、あるいは集中治療が必要な重症の患者さんは
罹患していない人に対して、
罹患初期からサイトカイン、成長因子の分泌が多く、
一方でCD4、CD8といったT細胞が少ないことが
特徴としてあります。
サイトカインに関しては炎症性を示すものにおいては
症状の程度と相関があり、
集中治療が必要な重症の患者さんの量は
中程度に比べて多くなっています。
T細胞に関しては
罹患初期から1か月間の間
その数に大きな変化はありません。
(Extended Data Fig. 5 )
サイトカインについては
詳しいデータはExtended Data Fig. 4
に示されています。
非常に多岐にわたる種類の時間依存性のデータがあります。

このようにサイトカインなど
免疫異常を起こす引き金となるのはウィルスですが、
そもそもウィルスが増えると
なぜそれを自然免疫あるいは獲得免疫の機序で
攻撃するのに関与するT細胞が減少するのか?
という生理が疑問点としてあります。
ただ
「体を守る」「体を攻撃する」という
免疫の天秤があるとしたら
このデータからは間違いなく
中程度以上の症状を持つ患者さんにおいては、
「体を攻撃する」というほうが
比重が高くなっている可能性が極めて高いです。
その治療に当たる際には
この天秤を如何に体を守る側にシフトさせるか?
というのがポイントだと思います。
一つは炎症を抑えるステロイドということになりますが、
もう一つの視点として
例えば、体を守るとされている
減っているT細胞の働きを
活発にさせるような薬剤があれば、
それが一定の奏功を示す可能性が考えられます。

また血液(血漿)を分析することは、
病気の状態を診断できる指標になる可能性があります。
強い症状が出る前の状態で
免疫細胞やサイトカインの信号の変化をキャッチできれば、
早めの治療に貢献する可能性があると考えます。
ただ即時的な分析が重要なので
簡便な方法で見る要素も絞る必要はあると思います。

以上です。

(参考文献)
Carolina Lucas, Patrick Wong, Jon Klein, Tiago B. R. Castro, Julio Silva, Maria Sundaram, Mallory K. Ellingson, Tianyang Mao, Ji Eun Oh, Benjamin Israelow, Takehiro Takahashi, Maria Tokuyama, Peiwen Lu, Arvind Venkataraman, Annsea Park, Subhasis Mohanty, Haowei Wang, Anne L. Wyllie, Chantal B. F. Vogels, Rebecca Earnest, Sarah Lapidus, Isabel M. Ott, Adam J. Moore, M. Catherine Muenker, John B. Fournier, Melissa Campbell, Camila D. Odio, Arnau Casanovas-Massana, Yale IMPACT Team, Roy Herbst, Albert C. Shaw, Ruslan Medzhitov, Wade L. Schulz, Nathan D. Grubaugh, Charles Dela Cruz, Shelli Farhadian, Albert I. Ko, Saad B. Omer & Akiko Iwasaki 
Longitudinal analyses reveal immunological misfiring in severe COVID-19
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2588-y


2020年7月27日月曜日 0 コメント

COVID-19:多種類ある抗体の中和特性と結合部位

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

医師の方は
「有事であってもワクチンの承認プロセスを
簡略化するべきではない。」
といわれています。
つまり、こういう世界的流行の時だからこそ
段階的な治験を経て安全性、有効性を確認させたうえで
世の中に出すことが求められるということです。
ワクチン開発というのは
12カ月から18カ月は最低かかるといわれており、
途中で頓挫すると時間的、資金的なロスは大きいです。
従って研究段階で顕著な結果
かつ論理的根拠が得られることが
最初の段階で求められます。

人の免疫機能というのは、
勉強すればするほどその複雑性を知ります。
基本的に世間の方がイメージする抗体は
Y字型の物体が単独で
ウィルスに近づいていく感じだと思います。
このようなY字型の物体は
B細胞が抗原を認識して、
その情報に応じた抗体を放出する
「液性免疫」です。
基本的にワクチンで想定されている抗体は
この液性免疫に基づく免疫機能を
生かそうというものだと理解してます。

ただ前述したように
免疫には自然免役と獲得免疫というのがあって
今述べた抗原を認識して抗体を出すようになるのは
ウィルスが入ってきて獲得する免疫だから
獲得免疫です。
一方で
ウィルスが入ってきた時に
身体で本来備わっているT細胞などによる
攻撃は自然免疫です。
ただ複雑なのは、
このT細胞は、
すでに同種のコロナウィルスへの過去の暴露によって
「訓練されている」可能性があるので、
その場合は獲得免疫の要素も入ります。
あるいは
一般的に癌の免疫治療のモデルとして考えられるのが
細胞性免疫です。
新型コロナウィルスにおいても
細胞性免疫が働いている可能性はある
と思っています。

上述したような液性免疫、細胞性免疫は
何らかの体の異常に対して調整が入ったことによって
生まれた免疫機能なので
獲得免疫といえると考えます。

これは大きな分類であって
様々な細胞の表面にある多数の受容体や
多種にわたるサイトカインなどの機能なども含めると
免疫機能は非常に複雑です。

その中でワクチンを接種した時に
「抗体がどれくらい出来た。」
あるいは「抗体がどれくらい続いた。」
という議論になるわけですが
それ以外にも着目すべき点が多くある事は
間違いないと思っています。
例えば、
ワクチンによって、
T細胞、B細胞は影響を受けることはないか?
そういうことも評価していく必要がある
と私は考えています。

またその液性免疫によって生まれた抗体も
1種類ではないといわれています。
おそらく「抗体は1つに決まっている」
という認識があった方はいると思いますが、
実はそうではないです。
参考文献によれば
PCR検査で新型コロナウィルスに感染した
患者さんの血液から
少なくとも61種類の中和抗体が見つかっています。

61種類の抗体は
それぞれ大きな性能のばらつきがあって、
「優秀な」抗体がその中にはあります。
どれくらい優秀か?を測定する一つの手法として
------
血液の中にどれくらいの量があれば、
中和抗体によって
ウィルスのSタンパク質とエントリー受容体(ACE2)
の結合の割合が半分になるか?
------
というのがああります。
つまり少ない量で結合の割合が小さくなれば
結合がウィルスの細胞内の浸入を決める
一つの要素と考えられているので、
より少ない量でウィルス感染を防ぐことができます。
薬剤は少なくて効くほうがいいわけですから、
その抗体は優れていると考えられます。
その結合を半分にする量が
0.7~9ng/mL
と非常に少ない抗体が9種類見つかっています。
(Fig.2(b))
このグラフ横にある数字(記号)は
その抗体が結合した
Sタンパク質の受容体結合面(RBD)
および窒素終端面(NTD)の位置を示しています。

その抗体を分析する上で
Sタンパク質にどのように結合して
Sタンパク質の極性を弱めて、
エントリー受容体との静電引力を弱めて
中和機能を示すか(中和抗体)、
ということを可視化することは大事です。
その可視化は一般的には
低温電子顕微鏡が使われます。
それによって精彩に3次元的に構造を
可視化することができます。

その構造分析によって
4つの部位から成るエピトープ(抗体結合部分)が
明らかになりました。
受容体結合部位(RBD)、窒素終端面(NTD)それぞれの
中和活性の強い部分とそうではない部分の
マッピングが数字で色分した形で
Fig3に掲載されています。
これをみると
高い中和活性を示した部位は
散在しているのではなく
ある程度の範囲に固まって存在していることがわかります。
さらに、
このSタンパク質の構造において
計算における極性のマッピングもほしいと感じます。
中和活性の高い位置が
極性が強い傾向にあるかどうか確認したいからです。

受容体結合部位(RBD)、窒素終端面(NTD)
の中和的定量が異なりますが
それぞれの部位に結合する中和抗体が
どういう役割をしているのか?
というのはまだちゃんとわかっていないようです。
しかし、両方の結合部位を考慮した
中和抗体のためのワクチン開発は
必要であると考えられています。

新型コロナウィルスに対する
症状の違いが何に起因するか
はっきりはわかっていません。
例えば
過去にコモンコールドなコロナウィルスに罹っていて、
B細胞やT細胞が記憶していて
迅速に抗体を放出したからかもしれません。
ただ、今回の結果で考えられるのは、
抗体は60種類以上あるので、
その人がどの種類の抗体を
どれくらいの量、どれくらいの割合持っているかで
抗体全体の中和能力が変わってくる可能性がある
ということです。

現在でもすでに罹患した人の血液から
抗体を取り出して
それを治療に使うといった試みもされている
といわれます。
もし、今回の結果で示されたような
優秀な抗体を簡便に分析でき、
それを多く含む人の血液を集めることができたら
より有効な治療につなげられる
可能性が考えられます。

またワクチン開発においても
そのワクチンにおいて
どの種類の抗体が産生され、
Sタンパク質のRBD、NTDのどの部位に結合したか?
という構造的な評価は
その安全性を確認する上で欠かせないと考えます。
基本的には複数の抗体が
同時に作用することが
新型コロナウィルスの獲得免疫では
考えられることですが、
人工的に産生させたワクチンによる抗体と
罹患した時に生まれる抗体の多種性が異なるか?
という点が気になります。
例えば
ワクチンによる抗体のほうが単一性が強ければ、
それが中和活性に影響を与える可能性がある
と考えています。

以上です。

(参考文献)
Lihong Liu, Pengfei Wang, Manoj S. Nair, Jian Yu, Micah Rapp, Qian Wang, Yang Luo, Jasper F-W. Chan, Vincent Sahi, Amir Figueroa, Xinzheng V. Guo, Gabriele Cerutti, Jude Bimela, Jason Gorman, Tongqing Zhou, Zhiwei Chen, Kwok-Yung Yuen, Peter D. Kwong, Joseph G. Sodroski, Michael T. Yin, Zizhang Sheng, Yaoxing Huang, Lawrence Shapiro & David D. Ho 
Potent neutralizing antibodies directed to multiple epitopes on SARS-CoV-2 spike
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2571-7

2020年7月26日日曜日 0 コメント

COVID-19:他の疾患のために開発された薬の適用可能性

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスの感染者数が日本で増えています。
気になるが7月くらいからオーストラリアでも
急激に増えている事です。
オーストラリアは今、冬を迎えているので
季節性の要素があり、
寒くなってくると感染力が上がる可能性がないか?
懸念しています。
そのような先行きが不安な中で
安心材料となるのがワクチン、薬剤の開発ですが、
ワクチンの開発は
少なくとも12カ月から18カ月かかるといわれています。
つまり、今年の3月から開発したとして
円滑に進んでも来年の春くらいになるだろう
ということです。
また、世界にいきわたるまで量産されるのは
さらに時間を要すると思われます。
薬も同じようにいろんなプロセスを経て承認されます。
そういったなかで「Repurposing」という
「今まで別の疾患の治療で使われていた薬を使う。」
という方法があります。
人に使われた実績があるので、
承認プロセスも簡略化できるという利点があります。
実際にアビガンやレムデシビルはそうです。

今FDA(アメリカ食品医薬品局)で承認されている
臨床段階にある薬は12000種類になります。
これらの薬は何らかの生態機序に対して
亢進や抑制の役割を持ちますが、
ウィルス(新型コロナウィルス?RNAウィルス?)に関して、
複製を防ぐだろうと考えられている分子、物質は
100種類に上るといわれており、
これらの分子に対して働きかける薬は
21種類あるといわれています。
ウィルスのライフサイクルには様々な段階があり、
それらに対して多くの分子が関わっている
と考えられています(Extended Data Fig.5)。

このうちPIKfyveキナーゼを抑制する
アピリモドという薬は
培養するために取り出した人の肺において
抗ウィルス作用を示したといわれています。
PIKfyveキナーゼは、エンドソームと呼ばれる
細胞質にウィルスが入り込む過程に
関連する酵素なので
この酵素の働きを抑制すれば。
ウィルスの細胞への感染を防ぐことが期待されます。
このアピリモドは炎症に関連するサイトカインを
抑制する働きがあり、
自己免疫疾患のために開発されましたが、
臨床結果は思わしくなく、
継続的な使用は断念されていました。
しかし、
抗ウィルス作用を示す可能性が示唆され、
エボラ出血熱や新型コロナウィルスへの適用が
検討されています。

そのほかMDL-28170,ONO 5334も
人口多能性幹細胞における肺の細胞において
ウィルスの複製に拮抗作用を示した
と言われています。
ただし参考文献によれば
現在承認されているレムデシビルの方が
高い抗ウィルス性を示す結果となっています。
一方、アピリモドは
人口多能性幹細胞における肺の細胞において
ウィルスの複製に強い拮抗作用を示し、
生体外での肺組織の評価では
ウィルス滴定量はレムデシビルよりも
小さな値になっています。(Fig.5(c-g))

日本、アメリカで規制当局の承認が得られている
6つの薬にについて
新型コロナウィルスの複製を抑制する可能性が
示唆されています。
例えば、抗マラリア薬であるクロロキン、
抗ヒスタミン剤のアステミゾール
抗乾癬のアシトレチン
が含まれます。
しかしクロロキンに関しては
別の報告で薬効に対する懐疑性が提示されています。
またアシトレチンに関しては副作用が懸念されています。

さらに
世界保健機関の必須医薬品リストに掲載されている
最も効果的で安全な医療制度で必要とされる医薬品
としてクロファジミンがあり、
ハンセン病の治療に用いられます。
抗マイコバクテリアや抗炎症作用が確認されており、
新型コロナウィルスに対しても効果があったという報告もあり、
今後さらなる検証が必要だと言われています。

すでにレムデシビルのように
一定の奏功を示している薬もありますが、
他の感染症の現在の治療戦略のように
複数の薬剤投与を検討する場合や
効果を示さなかった場合の代替の薬として
いくつかの有効な候補の既承認薬を
用意しておく必要があると考えます。

以上です。

(参考文献)
Laura Riva, Shuofeng Yuan, Xin Yin, Laura Martin-Sancho, Naoko Matsunaga, Lars Pache, Sebastian Burgstaller-Muehlbacher, Paul D. De Jesus, Peter Teriete, Mitchell V. Hull, Max W. Chang, Jasper Fuk-Woo Chan, Jianli Cao, Vincent Kwok-Man Poon, Kristina M. Herbert, Kuoyuan Cheng, Tu-Trinh H. Nguyen, Andrey Rubanov, Yuan Pu, Courtney Nguyen, Angela Choi, Raveen Rathnasinghe, Michael Schotsaert, Lisa Miorin, Marion Dejosez, Thomas P. Zwaka, Ko-Yung Sit, Luis Martinez-Sobrido, Wen-Chun Liu, Kris M. White, Mackenzie E. Chapman, Emma K. Lendy, Richard J. Glynne, Randy Albrecht, Eytan Ruppin, Andrew D. Mesecar, Jeffrey R. Johnson, Christopher Benner, Ren Sun, Peter G. Schultz, Andrew I. Su, Adolfo García-Sastre, Arnab K. Chatterjee, Kwok-Yung Yuen & Sumit K. Chanda 
Discovery of SARS-CoV-2 antiviral drugs through large-scale compound repurposing
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2577-1

2020年7月25日土曜日 0 コメント

COVID-19:ウィルスの細胞内浸入を防ぐタンパク質

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

インフルエンザはなぜ
新型コロナウィルスのように脅威にならないか?
というのは、
いくつかの理由がありますが、
1つは予防接種(ワクチン)ができること。
もう一つは、薬がある事です。
ワクチンを接種しても罹患する人がいるし
一定割合の人は予防接種を受けないから
高熱が出る人もいます。
その時にしっかり効く薬があります。
そのようにワクチンもあり、特効薬もあるから
社会の中でウィルスとうまく付き合っていくことができます。
それは、新型コロナウィルスでも同じです。
今世界のワクチン開発において
少なくとも数百くらいのプロジェクトは
同時進行していると思われます。
有効なワクチンが開発されれば、
予防したり、軽症化できることが期待できます。
しかし、一方で特効薬の開発も必須です。
ワクチンを打っても
罹患することが考えられるので
その時に有効に効く薬がある事が求められます。

ウィルスというのは
体内に入っていろんな複雑なプロセスを経て
増殖します。
例えば、新型コロナウィルスでは
・ウィルスのタンパク質がエントリー受容体に結合する
・エンドサイトーシスによって細胞内に包み込まれるように
 浸入する。
・ウィルスのエンベロープが外れてRNAがむき出しになる
・細胞内にあるたんぱく質と相互作用する(?)
・作用した後、RNAは増殖する
・それぞれのRNAは細胞内小器官によって作られた
 脂質など(?)のエンベロープによって包まれる
・細胞の外に放出される
、、、、、
これがもちろん全てではないですが、
私が理解している(仮定を含む)過程を列挙しました。
それぞれのプロセスにはその要因となる
遺伝子、酵素などの働きがあると考えられます。
つまり
それぞれのプロセスに薬剤が関与する機会が
与えられています。
どういうことかというと
例えば、ワクチンなどによる中和抗体は
ウィルスのタンパク質が
エントリー受容体に結合するのを防ぎます。
レムデシビルで期待される効果は、
細胞ないのでRNAが増殖するのを防ぐことです。
従って、
それぞれの過程の生理機序を理解して、
その過程を抑制するように薬剤で働きかけることができたら
ウィルスの増殖を防ぐことができ
特効性を示すことが期待できます。

参考文献では
2003年に流行したSARS-CoV
あるいはMARS-CoV、
今回のSARS-CoV-2など
いずれのコロナウィルスに対しても
LY6Eという遺伝子でコード化された
LY6Eタンパク質が
ウィルスが細胞内に入る過程に関与していて
それを防ぐ役割がある可能性が示唆されるとされています。
具体的には、ウィルスと細胞の被膜の融合を防ぐ
といわれています。
このことからエンドサイトーシスの過程に関わっている
可能性を推測しました。
コロナウィルスのタンパク質に対しては効果があり
他の糖たんぱく質Gに対しては効果が見られませんでした。
このLY6Eは全てのタイプの細胞に広く発現されますが、
特に粘液を放出する上皮にある杯細胞に多く存在する
といわれています。

ただしこれは人の体内の結果ではなく
試験管による結果です。
ネズミ科のコロナである肝炎ウィルスでは
LY6Eは免疫系細胞である
B細胞、NK細胞、樹状細胞、マクロファージ、好中球など
を保護したというマウス生体内の結果が出ています。

しかし注意が必要なのは
LY6EはインフルエンザAウィルスなどの
細胞感染を促進すると以前から考えられています。
ウィルスによって効果が違うかもしれない
というのは考慮しておく必要があります。

従って、
人の新型コロナウィルス疫学調査で、
このLY6Eという遺伝子の差が症状とどう関わっているか?
というのは評価指標の一つとなり得るかもしれません。
もちろん色んな要因が関わっているので
その共変性の中で効果が隠れる可能性はありますが、
感染プロセスに関わっているかもしれない
遺伝子なので一考の余地がある結果だと思います。

以上です。

(参考文献)
Stephanie Pfaender, Katrina B. Mar, Eleftherios Michailidis, Annika Kratzel, Ian N. Boys, Philip V’kovski, Wenchun Fan, Jenna N. Kelly, Dagny Hirt, Nadine Ebert, Hanspeter Stalder, Hannah Kleine-Weber, Markus Hoffmann, H. Heinrich Hoffmann, Mohsan Saeed, Ronald Dijkman, Eike Steinmann, Mary Wight-Carter, Matthew B. McDougal, Natasha W. Hanners, Stefan Pöhlmann, Tom Gallagher, Daniel Todt, Gert Zimmer, Charles M. Rice, John W. Schoggins & Volker Thiel 
LY6E impairs coronavirus fusion and confers immune control of viral disease
Nature Microbiology (2020)
doi.org/10.1038/s41564-020-0769-y

2020年7月24日金曜日 0 コメント

COVID-19:なぜコウモリ由来の伝染病が多いか

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

ペトのパラドックスいうのがあります。
体の大きさと癌に罹患する確率が一致しない
ということです。
体が大きくなれば細胞の絶対数が大きくなりますから
その中で体の一部に癌細胞ができる確率もあがります。
従って、普通に考えれば
体が大きくなれば癌に罹患する確率が
高くなることが考えられますが、
必ずしもそうではない、そこに矛盾がある
と理解しています。
例えば、ゾウは癌にかかりにくいといわれています。
異常が起きた時に癌との関連性が高いと言われている
遺伝子TP53が多型であることが
一つの理由ではないか?と考えられています。
後は、
コウモリも癌を抑制する機能を持ち
体重のわりに寿命が長いといわれています。
京都府立大学の塚本康浩教授が研究される
ダチョウに関しても、
癌に関しては未調査ですが、
免疫機能が発達していて病気になりにくい
と言われていました。

人畜共通感染症の原因となるウィルスに関して
コウモリ由来であることが多いことに着目しています。
新型コロナウィルスも
中間宿主の存在は示唆されていますが、
コウモリ由来であると理解しています。
従って、
最新の注意は必要ですが、
コウモリを研究することは、
新型コロナウィルス対策だけではなく
今後の感染症のリスク対策を考える上でも重要になります。

コウモリは非常に多種で
哺乳類の20%を占めるといわれています。
従って、一部の結果が
他の種のコウモリにも同様に当てはまるか?
というのは議論の余地があります。
しかし、参考文献によれば
いくつかの種の免疫機能において
炎症を引き起こすような遺伝子が欠如していて
かつ抗ウィルスを示す遺伝子が複数存在する
ことが確認されています。
それは、microRNAによって制御されている
ということです。
つまり
抗ウィルス性を示し
ウィルスを異常増殖させない状態で
かつ免疫異常を起こさない生理があるとすると、
逆に考えると
他の生物なら免疫異常を起こして
死亡してしまうようなウィルスでも
体内に存在させ続けることができるかもしれない
と考えることができます。
もし、
多くのウィルスが脅威となる場合が
免疫機能の異常、不全によるならば、
免疫機能の異常を起こしにくい
(かもしれない)コウモリは
潜在的には脅威となるウィルスを
持ち続けることができるかもしれない
とも推測できます。
ひょっとするとそれが
今まで世界的に問題となった感染症が
コウモリ由来であることが多いことの
一つの理由かもしれません。

以上です。

(参考文献)
David Jebb, Zixia Huang, Martin Pippel, Graham M. Hughes, Ksenia Lavrichenko, Paolo Devanna, Sylke Winkler, Lars S. Jermiin, Emilia C. Skirmuntt, Aris Katzourakis, Lucy Burkitt-Gray, David A. Ray, Kevin A. M. Sullivan, Juliana G. Roscito, Bogdan M. Kirilenko, Liliana M. Dávalos, Angelique P. Corthals, Megan L. Power, Gareth Jones, Roger D. Ransome, Dina K. N. Dechmann, Andrea G. Locatelli, Sébastien J. Puechmaille, Olivier Fedrigo, Erich D. Jarvis, Michael Hiller, Sonja C. Vernes, Eugene W. Myers & Emma C. Teeling 
Six reference-quality genomes reveal evolution of bat adaptations
Nature volume 583, pages578–584(2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2486-3


2020年7月23日木曜日 0 コメント

COVID-19:日本で承認されたデキサメタゾンについて

いつも記事を読んで下さり、ありがとうございます。

厚生労働省は抗炎症薬「デキサメタゾン」を
新型コロナウイルス感染症の治療薬として認定しました。
5月に特例で承認した「レムデシビル」につづき
2例目の正式なコロナ治療薬です。

レムデシビルは、
ウィルスの細胞内でのRNAの増殖に防ぐことが期待され、
新型コロナウィルスの増殖を防ぐものである
と理解してます。

このデキサメタゾンは、抗炎症薬であり
自己免疫疾患の治療などに使われるとされています。
従って、
新型コロナウィルスに直接的に作用するというよりも
免疫機能を整える役目があると理解しています。
もちろん免疫機能に作用することは、
自然免疫や獲得免疫のバランスも変える可能性があるので
間接的にウィルスに作用する事はあると思います。

日本ではレムデシビルは
初めは重症の患者さんに絞って使用されている
とメディアの情報から理解しています。
このデキサメタゾンは
アメリカの国立衛生研究所(NIH)、
イギリスの国民医療サービス(National health service)において
使用を推奨されている患者さんは、
人工呼吸器を使っているか
酸素の補充を必要としている患者さん
といわれています。
つまり酸素の補充を必要としない軽症、中程度の患者さんには
使用を進められないとされています。
しかし難しいのは
アメリカの国立衛生研究所(NIH)では
その点の認識が異なり、
それ以外のケースでも使用が考えられるとされています。

日本の報道でもあるように
海外の研究結果で
デキサメタゾンにおいて
人工呼吸器が必要な患者さんに対して
一定の奏功が認められたとされています。

以上です。

(参考)
Wikipedia:Dexamethasone

2020年7月21日火曜日 0 コメント

COVID-19:間葉系幹細胞による治療について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

昨日の読売テレビ(さん)の『情報ライブ ミヤネ屋』で
ロート製薬(さん)による間葉系幹細胞を使った
新型コロナウィルスに対する治療について
放送されていました。

すでに海外において肝臓に対する治療効果が
確認されており、
そのメカニズムは、
免疫異常であるサイトカインストームを防ぐことが
考えられています。
肝臓だけではなく、肺に対しても効果がないか?
確認されているところです。

間葉というのは結合組織なので
細胞間にあるコラーゲンなどと共存し(?)
形としてはいびつな細胞だと理解しています。
ロート製薬(さん)では
その幹細胞を作る際に人の脂肪から組織を抽出すると
言われています。
侵襲性が低いために取り出しの際の体への負担は少ない
と述べられています。
またすでに肝硬変に対する静脈内投与の
安全性のデータが蓄積されているので
過去研究されていたことが生かせるということです。

おそらく肺炎や他の臓器の機能不全、炎症は
免疫系の暴走によって起きていると推測されていますが、
その炎症に対して
新型コロナウィルスが直接的に関わっているか
それとも今の述べた様に免疫系の異常か
というのははっきりとはわかっていません。
しかし
新型コロナウィルスに感染して亡くなられた方の
臓器を分析する中で
その場所にいた新型コロナウィルスの数と
炎症の程度が相関がなかったことから
おそらく免疫系の異常による炎症であると
推測されています。

従って、間葉系幹細胞によって
サイトカインストームを緩和することができるならば
すでに報告されている肝臓以外の
例えば肺に対しても効果が得られるかもしれません。

以上です。

(参考文献)
(1)
ロート製薬、ニュースリリース
国産初、COVID-19重症肺炎に対する他家間葉系幹細胞を用いた再生医療の企業治験を計画
(2)
Meriem Belabed 
Virus dissociated from inflammation in fatal COVID-19
Nature Reviews Immunology (2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-0403-5

2020年7月20日月曜日 0 コメント

COVID-19:抗体の抗ウィルス能力に対する構造的な評価

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

今解析技術というのはかなり発展しています。
新型コロナウィルスの構造解析で
よく使われているものが
クライオ電子顕微鏡というもので
低温にして物質の動きを止めて解析する方法です。
液体ヘリウムで冷却すれば、
-296℃(4K)まで低温にすることが可能です。
透過型電子顕微鏡に低温にする設備を備えれば、
電子の試料中での拡散を防ぐことができるため(?)
像の解像度をÅ単位まで小さくすることができて
細かな構造解析が可能になる
と理解しています。

ウィルスのSタンパク質と抗体の構造
それらがどう接着するか?
というのを詳細に調べることで
明らかになることがあります。
それが良い抗体の開発につながると推測します。

例えば、
抗体の性能を調べる上で
中和活性、
ACE2ブロック能力
タンパク質のエクトドメインの結合能力
受容体結合ドメインの結合能力
というのがあると言われています。
1つの抗体がタンパク質の「複数の部分」に
結合する可能性はあるかどうかというのは
私自身まだわかっていない部分がありますが、
少なくとも抗体の能力を評価する要因は、
静電引力、極性を弱める中和能力だけではなく、
「構造的に(?)」結合をブロックする能力もあるかもしれない
ということです。
さらに今回認識したのは、
「抗体によって結合部位が異なる」ということです。
これはどういう事を意味するか?
というと、
結合部位が異なるということは
複数の抗体を同時に作用することができる
ということです。
一つのワクチンによって
生まれる抗体の種類が複数になることもある
と思います。
あるいは異なるワクチンを同時に接種する
ということも考えられます。
もちろん複数の抗体に対して評価するとなると
それぞれの重みづけによって変わるし、
相互作用がどのようになっているか?
という部分も考えないといけなくなるため
評価が非常に複雑です。
しかし、想定しておく必要があるのが
1つのワクチンを接種した場合でも
そこから生まれる抗体の種類は複数あって
タンパク質の複数の部位に同時についているかもしれない
ということです。

従って可能であれば、
新型コロナウィルスに感染している状態で
ワクチン接種有無で
新型コロナウィルスのSタンパク質に
どのように抗体がついているか?
上で挙げた低温電子顕微鏡などを使って
比較することはできないか?
と思います。
ワクチンの効果を調べていくうえでは
中和活性、抗体検査、メモリ細胞などの
評価をすることになると思いますが、
構造的なアプローチで評価することも
多面的な考察を実現する上では大事だと思います。
それによって
ワクチンの安全性などに貢献する可能性があります。

以上です。

(参考文献)
Seth J. Zost, Pavlo Gilchuk, James Brett Case, Elad Binshtein, Rita E. Chen, Joseph P. Nkolola, Alexandra Schäfer, Joseph X. Reidy, Andrew Trivette, Rachel S. Nargi, Rachel E. Sutton, Naveenchandra Suryadevara, David R. Martinez, Lauren E. Williamson, Elaine C. Chen, Taylor Jones, Samuel Day, Luke Myers, Ahmed O. Hassan, Natasha M. Kafai, Emma S. Winkler, Julie M. Fox, Swathi Shrihari, Benjamin K. Mueller, Jens Meiler, Abishek Chandrashekar, Noe B. Mercado, James J. Steinhardt, Kuishu Ren, Yueh-Ming Loo, Nicole L. Kallewaard, Broc T. McCune, Shamus P. Keeler, Michael J. Holtzman, Dan H. Barouch, Lisa E. Gralinski, Ralph S. Baric, Larissa B. Thackray, Michael S. Diamond, Robert H. Carnahan & James E. Crowe Jr 
Potently neutralizing and protective human antibodies against SARS-CoV-2
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2548-6

2020年7月19日日曜日 0 コメント

COVID-19:一部の人が保有しているかもしれない事前の免疫

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

おそらく多くの人が興味のある事だと思います。
「一度新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に罹ったら
どれだけ免疫が持続しますか?」
ということです。
免疫の持続性を評価するうえで
抗体検査があります。
SARS-CoV-2に特異性を持つ抗体を調べる
と理解してます。
日本で罹患した人が抗体検査をしたときに
初めは陽性だったけど、
数週間たったら陰性だったという話もあり、
その点で怖さを持っている人がいると思います。
つまり、
「一度罹っても、すぐに免疫の効力が消えて
再度かかる可能性があるのではないか?」
ということです。

実はその免疫については
もっと複雑な生態機序があります。
私が知っている限りでは、
記憶性のB細胞があります。
B細胞はウィルス抗原を認識して、抗体を放出するものですが
それが記憶性になることによって
迅速にできるようになるために
免疫機能が上がるかもしれないということです。
後は記憶性T細胞もあります。
それによって免疫の調整や活性化が起こります。

つまり何が言いたいかというと
抗体が陰性になってなくなる、
あるいは少なくなっても
「細胞が覚えている。」
「T細胞、B細胞が記憶している。」
かもしれない
ということです。

参考文献によれば、
SARS-CoVという2003年に流行し後、
17年間、記憶性T細胞は持続して存在していて、
それはSARS-CoV2と交差反応、
つまり新型コロナウィルスにも効果があった
といわれています。
また、SARS-CoV1やSARS-CoV2
旧型、新型コロナウィルスに対して既往歴がない
人においても記憶性T細胞は存在している
といわれています。
理由は、
すでに存在している
少なくとも4種類のコモンコールド(毒性の低い)コロナウィルスや
動物が持っているコロナウィルスが
関係しているからかもしれません。

「シンガポール」在住の人において
SARS-CoV(2013)とSARS-CoV-2(2020)に罹った人は
それぞれ23人、36人において、回復後
いくつかのタンパク質部位において
反応性を示したタンパク質の構造部位は異なるものの
「全ての人」のおいていずれかの構造で
SARS-CoV-2に対して反応性を示しました。
つまりT細胞に記憶性が認められたといわれています。
また、いずれにも罹っていない人も
約半数の人がT細胞の記憶性を示しました。

同じように「アメリカ」の報告でも
40~60%の人がSARS-CoV-2にさらされていない人が
SARS-CoV-2に反応性を示すT細胞が確認されています。

どのタンパク質部位に反応性を示すか?
というのは個人差があって、
それぞれに対して働くT細胞が異なります。
CD4の場合もあるしCD4,CD8両方の場合もあります。
それぞれ免疫機序が異なります。
コロナウィルスに罹患した時に
無症状、軽症、中程度、重症の程度のばらつきの
要因の「一つ」として、
記憶性T細胞の有無、違いが関係しているかもしれません。

長く続く可能性があるということですから
すぐに急いでする必要はないですが、
日本でも大規模では難しくても
研究としてでもいいので、
抗体検査だけではなく
記憶性のT細胞、B細胞があるかどうか?
疫学データが欲しいなと思います。

以上です。

(参考文献)
Nina Le Bert, Anthony T. Tan, Kamini Kunasegaran, Christine Y. L. Tham, Morteza Hafezi, Adeline Chia, Melissa Hui Yen Chng, Meiyin Lin, Nicole Tan, Martin Linster, Wan Ni Chia, Mark I-Cheng Chen, Lin-Fa Wang, Eng Eong Ooi, Shirin Kalimuddin, Paul Anantharajal Tambyah, Jenny Guek-Hong Low, Yee-Joo Tan & Antonio Bertoletti 
SARS-CoV-2-specific T cell immunity in cases of COVID-19 and SARS, and uninfected controls
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2550-z

2020年7月18日土曜日 0 コメント

COVID-19:想定される抗体による免疫バランス

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

私たちは抗体をワクチンによって入れたら
予防にもなるし、
罹患したとしても症状は軽くなる
と考えます。
過去のワクチンは、
様々な治験や治療実績を重ねる中で
それが実現されています。
新型コロナウィルスでは
早期のワクチン開発が求められているため
副作用のリスクを考えると
非常に難しい状況にあると考えています。

そこで抗体を入れた時の
効用と副作用について整理したいと思います。
(効用)
①Sタンパク質(スパイク)の中和
  それによってエントリー受容体を介しての
  細胞への浸入を防ぎ細胞への感染を防ぐ。
-----
②粘膜によって捕獲される
  それによって固定化されるため
  細胞への接近、感染を防ぐ。
-----
③樹状細胞へ結合することによってT細胞の活性を高める
 Sタンパク質に結合した2つの抗体をが2つの受容体に
 並列に結合することを通じて。
   予防接種の効果、
  細胞の活性を調整する
  抗原提示の活性化  
   樹状細胞がウィルスと結合する事により
   細胞表面に抗原の一部を提示してT細胞と結合して
   免疫を活性化させる
  末梢性寛容
   抗原に対して選択的に反応するT細胞、B細胞が
   通常の細胞まで攻撃する自己免疫疾患を防ぐ役割
 -----
④プラズマ(形質)細胞へ結合
  形質細胞を通じて様々な形の抗原を複製することができる

(副作用)
①好中球結合する
  細胞外トラップと結合して細胞死をもたらす(?)(NETosis)
    食作用を通じて細胞死をもたらす(Phagocytosis)
    ケモカインを放出する
   これらの3つの過程によって通常細胞が異常に攻撃される。
----
②単球、マクロファージに結合する。Sタンパク質に結合した
 2つの抗体をが2つの受容体に並列に結合することを通じて。
  食作用を通じて細胞死をもたらす(Phagocytosis)
  細胞毒性
  炎症性サイトカインの放出
  ケモカインの放出
   これらの4つの過程によって通常細胞が異常に攻撃される。
---
③抗体がNH細胞表面に結合する
  細胞毒性。通常細胞が異常に攻撃される。

これらのことから
抗体は様々な細胞の表面に存在する受容体と
結合する可能性があると考えられます。
それが抗ウィルス性を示すこともあれば、
逆に通常細胞を攻撃し、炎症の原因になったり
サイトカインストームの原因になる可能性も考えられます。
従って、
抗体の「選択性」が一つ重要になるのではないか?
と思います。
少なくともワクチンによる抗体作製の目的の大きな一つは
中和活性で細胞への浸入を受容体結合を抑制することで
防ぐことです。
その中で基本的には中和活性が高い抗体を作ることが
重要ではないかと思います。

以上です。

(参考文献)
Tomer Zohar & Galit Alter 
Dissecting antibody-mediated protection against SARS-CoV-2
Nature Reviews Immunology volume 20, pages392–394(2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-0359-5

2020年7月17日金曜日 0 コメント

COVID-19:ラクダ科の特殊な抗体の中和活性

いつも記事を読んで下さり、ありがとうございます。

昨日の記事で
質の良い抗体をつくる事がワクチン開発で大事である
と考えられる、といいました。
その理由は、
抗体の中和活性が低いと
抗体依存性感染増強のリスクが高くなるかもしれない
といわれているからです。
免疫機能は、良いものと悪いものの
天秤が常にあって、
抗体をいれることはゼロリスクではありません。
従って、新型コロナウィルスにうまく整合した
質の良いワクチンを作ることが大事です。

ナノボディーというのがあります。
ラクダ科で作られる抗体(免疫グロブリン)は
通常の抗体が重鎖と軽鎖からできているのに対して
この抗体は重鎖のみでできているため
可変領域のみで抗原と結合できます。
従って、それを利用して
アルパカ、ラマなどのラクダ科の動物に
新型コロナウィルスを感染させて免疫をつけさせ
抗体を放出する液性免疫を担っているB細胞を回収して、
そこから抗原認識部位だけを取り出します。
従って、抗体の中の余計な部分がそぎ落とされているために
物質としては通常の抗原に対して小さなものになります。
別名は「Single domain antibody」と呼ばれます。
単一のドメインしか持たない抗体ということです。

参考文献ではラマから作られた
ナノボディーによって
新型コロナウィルスの抗体として
少なくとも一部では
高い親和性を持っているといわれるCR3022
とその抗体の能力を比較して
高い中和活性を示す物質を抽出しました。
ナノボディーは2種類あり、
H11-D4、H11-H4です。
コロナウィルスのSタンパク質と
ACE2受容体の結合確率が半分に下がるまで
でどれくらいの濃度必要か?
ということで抗体の能力を比較しました。
その結果
H11-H4は(61nM)
H11-D4は(161nM)
CR3022(803nM)
となっています。
つまりナノボディーを使った抗体は
顕著に少ない量で中和抗体としての能力を発揮する
というデータになっています。
またもう一つ感染細胞に関与するFc受容体では
H11-H4は(34nM)
H11-D4は(28nM)
CR3022(効果なし)
となっています。
つまりCR3022にではFc受容体に対して
中和抗体として働かないのに対して
ナノボディーでは非常に高い効果を発揮しています。

ただしこれは生体内ではなく
試験管による(in vitro)の結果です。
従って、
今後、動物や人の体内で同じように高い中和活性を示すか
研究を進めていく必要があります。

また注目すべき結果として
SARS-CoV1に対してラマに免疫を付けたときに
得られたナノボディーVHH72も
SARS-CoV2(新型コロナウィルス)に対して
CR3022よりも高い中和活性を示したということです。
つまり
ここからの私の考察は
ナノボディーはより「広範」に中和抗体として
働く可能性があるということです。
従って、Sタンパク質の変異が起こったとしても
許容範囲が広いために、
そういった改変に強い抗体と言えるかもしれません。
これだけ
世界でSARS-CoV2が蔓延していますから
もし変化に強い効果的な抗体が得られれば、
ワクチンの汎用性、安全性が高まる可能性があります。

H11-H4と
新型コロナウィルスのSタンパク質の受容体結合面
の微視的結合状態を見てみると(Fig.4(g))
水素結合で結ばれている部分が
単位ユニットあたり(?)8つもあって、
いろんな部位で静電引力的相互作用があります。
従って、密着力が強く(?)、
複数の相互作用によって中和されていると
推測されます。

ちなみにラクダ科から取り出した上述したタイプの抗体は
VHH抗体といわれますが、
花王(さん)と
埼玉大学関連ベンチャーEpsilon Molecular Engineering(さん)
北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学Ⅰ研究室
片山和彦教授
のチームが性能評価をしているとのことです。

以上です。

(参考文献)
Jiangdong Huo, Audrey Le Bas, Reinis R. Ruza, Helen M. E. Duyvesteyn, Halina Mikolajek, Tomas Malinauskas, Tiong Kit Tan, Pramila Rijal, Maud Dumoux, Philip N. Ward, Jingshan Ren, Daming Zhou, Peter J. Harrison, Miriam Weckener, Daniel K. Clare, Vinod K. Vogirala, Julika Radecke, Lucile Moynié, Yuguang Zhao, Javier Gilbert-Jaramillo, Michael L. Knight, Julia A. Tree, Karen R. Buttigieg, Naomi Coombes, Michael J. Elmore, Miles W. Carroll, Loic Carrique, Pranav N. M. Shah, William James, Alain R. Townsend, David I. Stuart, Raymond J. Owens & James H. Naismith
Neutralizing nanobodies bind SARS-CoV-2 spike RBD and block interaction with ACE2
Nature Structural & Molecular Biology (2020)
doi.org/10.1038/s41594-020-0469-6

2020年7月16日木曜日 0 コメント

COVID-19:親和性の高い良い抗体をワクチンでつくる必要性

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスに対して
今世の中の人が一番関心があるのが
ワクチン、薬の開発状況だと推測します。
インフルエンザはワクチンがあり、薬があるから
共存していても社会経済に大きな打撃を与える
ことはありません。
ワクチンは、抗体を体内で事前に作り出して、
それによって免疫をつけて、
新型コロナウィルスが実際に体内に入ってきた時に
増殖を防いで、症状を和らげるという効果と、
それによって
社会全体でウィルスの数の絶対数が減る
という効果もあります。
そのためにはその抗体が「有効」である
必要があります。
その抗体は「中和抗体」といわれますが、
コロナウィルスのSタンパク質(スパイク)の
受容体結合面(Receptor binding domain)に
ナノスケールでうまく結合するように設計されていて
極性を中和させることによって
ACE2受容体との間に働く静電引力を弱めることで
体内に漂うコロナウィルスが受容体に
近づかないようにすることで
感染細胞の数を減らすことが考えられます。
中和という言葉が使われるので
私はこのように理解しています。
感染細胞が減れば、ウィルスは増殖できませんし、
細胞外で漂うウィルスは寿命を迎えて
自然死します。
あるいは体内の自然免疫あるいは獲得免疫によって
攻撃されて死滅します。

そうするとワクチンによって
どんな「抗体」を作れるか?
というのが一つ非常に重要な要因になります。
世界でいろんなワクチンが開発されていますが、
それで作られる抗体は、
大枠でみれば物質として近くても
ナノスケールでみれば異なる事が考えられます。
その中で参考文献では、
「最適ではない」抗体が作られることに
警鐘を鳴らしています。
抗体依存性感染増強(antibody-dependent enhancement)
という現象が
過去に社会で蔓延した他のRNAウィルスで確認されています。
旧型のコロナウィルスでも確認されています。
抗体がある事で
逆に病状が悪化してしまう懸念があります。
免疫機能というのは
非常に複雑で多岐にわたります。
おそらくまだわかっていないこともあると思います。
前述したような
Sタンパク質とエントリー受容体との結合で
エンドサイトーシスによって細胞内に入って
感染して増殖するだろうということはわかっていますが
それだけではなく
抗体は違う経路で免疫細胞と相互作用することが
推測されています。
例えば、Fc受容体というのがあり
それが抗体と相互作用しますが、
そのFc受容体は白血球やマクロファージなどにあり
その受容体と抗体が付着したウィルスが結合して
その細胞内に入り、
免疫機能に影響を与えるサイトカインに影響を与え、
免疫暴走などによる炎症、重症化に
関係している可能性が示唆されています。
参考文献よれば
旧型のコロナウィルスにおいて
その免疫細胞内でのRNAの増殖は確認されていないものの
入ることで免疫機能に影響を与えることが
指摘されています。(と理解しています。)
従って
「抗体がFc受容体との結合を亢進し、
免疫細胞内へのウィルスの感染を促進する可能性」
が懸念されています。
それが抗体依存性感染増強と関連している要因の
一つかもしれないと考えられています。
この抗体依存性感染増強は
抗体の中和活性がある閾値よりも低い場合に
多く起こる傾向があるので、
平たく言えば
「質の低い抗体は副作用が懸念される」
ということです。
従って、ワクチン開発においては
質の高い、親和性の高い抗体を作る必要があります。

以上です。

(参考文献)
Akiko Iwasaki & Yexin Yang 
The potential danger of suboptimal antibody responses in COVID-19
Nature Reviews Immunology volume 20, pages339–341(2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-0321-6

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COVID-19:新型コロナウィルスと水分についての仮説

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスはRNAウィルスです。
その構造はよくわかっていないと思いますが、
スパイクと呼ばれる突起があって
(他にも表面に何かあるかもしれないですが)
その土台にRNAを覆う膜があって
その中にRNAを覆う粒のようなものがあって、
RNAがあると理解しています。
新型コロナウィルスが死滅するとは
そのRNAが分解されることだと理解しています。
それが特別な酵素によって分解されることもある
といわれています。
またDNAに寿命があるように
RNAもずっとそのままでいられるわけではなくて
いずれ寿命を迎えます。
それは分解することを意味します。
その分解は加水分解だと言われているので
そのプロセスに水が関わっています。
そうすると
もし寿命が環境によって差が出るとすれば、
水分量が関わっていて、
水が不足している状態では、
加水分解が起こりにくいかもしれない
という視点が生まれます。
例えば、
同じように飛沫感染すると考えられる
インフルエンザウィルスが
どういう環境の時に蔓延しやすいか考えてみます。
冬の乾燥した時期です。
冬は低温だから蒸気圧が低いので
水分が少ないうえに
日本の気候の特徴として乾燥しています。
そのような状況で感染しやすいから
少なくともインフルエンザウィルスでは
水分が環境中に少ない状況で
寿命が長くなるかもしれないということは
考察としてありえます。

新型コロナウィルスも同じように
空気中の水分が少ない状況で
寿命が長くなるかもしれないという推察が
当てはまるとすると
マスクで鼻、口を覆って
ウィルスの入り口のところの
保湿性を唾液の蒸発などによって高める事
あるいはこまめに水分をとって喉を潤すことは
感染予防として効果があるかもしれません。
もちろん
マスクは飛沫感染を抑えるという
効果が期待できますが、
それにプラスして効果があるかもしれません。

従って、環境中の水分量を変えたときに
新型コロナウィルスの寿命がどうなるか?
という科学的データがほしいなと感じます。

もちろんRNAの分解が水分量で変わったとしても
分解のための飽和水分量があるかもしれないし、
周辺の膜がどれくらい水分を通すかもわかりません。
膜が水分をどれくらい通すかは
その膜が疎水性、親水性をどの程度示すか
というのが一つ重要なパラメータだと仮説を立てています。

このような疑問を抱く方もいるでしょうか?
ではなぜ汚染された水が多いところで
ウィルスを含めた感染症が懸念されるのでしょうか?
というものです。
これに対する私の考察は
一つは、細菌とウィルスは異なるということです。
細菌性の病気は汚染された富栄養の水では
多く繁殖するからということです。
もう一つは、
その細菌や蚊などがウィルスを媒介して
人に移す可能性があるから
だとおもっています。
つまり、汚染された水に露出して
ウィルスが増えているわけではないと
私は考えます。

以上です。


2020年7月14日火曜日 0 コメント

COVID-19:罹患後の獲得免疫の3要素について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

今、世界でワクチン開発が鋭意進められており、
段階的に実用化されてくると思われます。
しかし、まだ一定の時間はかかる
という見方もあります。
そのワクチン。
基本的には体の免疫機能の機序を利用するものです。
一つのタイプは、
液性免疫のメカニズムで、
B細胞がから放出される抗体を
体外、あるいは体内で外因的に制御して
作成できるようにします。
それによって「免疫がつく」と理解しています。
大阪で今、治験が開始されているのは
その抗体の設計図であるDNAを体内に入れて
それに従って体内で抗体をつくるという仕組みである
と理解しています。
しかし、
獲得免疫に関して、
私自身、理解が曖昧な部分がありました。
実際に新型コロナウィルスに罹患した後に、
免疫がつくとは、
Sタンパク質を中和させる
抗体「そのもの」が体内に残るのか?
あるいは
それをすばやく作製できるように、
メモリーB細胞ができるのか?
あるいは、その両方か?
ということです。
参考文献では、両方が残るといわれています。
さらにそれに加えて残る物質として、
濾胞性BヘルパーT細胞と呼ばれる
抗原経験CD4+T細胞が残るといわれています。
------
オーストラリア大人:41人
PCR陽性後:32日
------

このCD4+T細胞は
ヘルパーT細胞と呼ばれ、
T細胞サイトカインを放出することによって
他の免疫細胞の活性を助ける役目をする
と考えられています。
従って、抗原経験ということですから
新型コロナウィルスに特異的に働く
ヘルパーT細胞で
ウィルスが浸入した時に
他の免疫細胞を迅速に助けるということだと考えました。
実際に抗原特異性を持つメモリーB細胞を機能を助ける
と言われています。
このB細胞への働きかけは
CCR6というケモカインが関わっている可能性が示唆されます。
この抗原経験CD4+T細胞は
普及しているインフルエンザワクチンで
高い反応性を示しているようです。
他の慢性感染でも同様です。
しかし、新型コロナウィルスで反応性の高い
表現型と異なるといわれています。

抗原経験CD4+T細胞は
ACE2エントリー受容体、Sタンパク質(スパイク)
ともにPCR陰性の患者さんよりも多く検出されましたが
高い反応性を示したのは
コロナウィルスのSタンパク質(スパイク)でした。

しかしながら、
Sタンパク質と結合する受容体面と
T細胞とB細胞の反応性が
Sタンパク質の反応性比べて低いことが懸念されています。
ワクチンを開発するときの
中和抗体の機能をあげるためには、
抗体の認識の精度を上げることと、
Sタンパク質と結合する受容体面をブロックすることが
求められると言われています。
この点に関して理解が不明瞭な部分がありますが(?)
Sタンパク質に対する免疫細胞の反応性が高いので
ウィルス側においては
免疫機能を発揮することができるけど、
感染する細胞側では
エントリー受容体に対する反応性が低いために
うまく抗体によってブロックできない
ということでしょうか?

この報告を読んで気になったのが
新型コロナウィルスのスパイクや
あるいはACE2受容体の結合面に整合する
抗体が作られたとしても、
うまく免疫機能が働くか?ということです。
獲得免疫には
この抗体のほかに、
メモリーB細胞、
あるいはメモリーヘルパーT細胞
(抗原認識ヘルパーT細胞)
が関与していることが考えられます。
抗体を単独で入れたときに
「付随的に」これらの2つの細胞が活性化されるか?
が気になります。
そう考えると
ワクチンの評価において
摂取後、獲得免疫の少なくとも上の3要素が
実際に罹患した後の状態とうまく整合するか?
ということを確認するのが重要ではないか?
と考えました。
例えば、
ワクチンの効果がでないという理由が
抗体はあるけど、メモリーB、T細胞が
上手く活性化されていない
あるいは表現型が違うからということも
可能性としては挙げられます。

以上です。

(参考文献)
Jennifer A. Juno, Hyon-Xhi Tan, Wen Shi Lee, Arnold Reynaldi, Hannah G. Kelly, Kathleen Wragg, Robyn Esterbauer, Helen E. Kent, C. Jane Batten, Francesca L. Mordant, Nicholas A. Gherardin, Phillip Pymm, Melanie H. Dietrich, Nichollas E. Scott, Wai-Hong Tham, Dale I. Godfrey, Kanta Subbarao, Miles P. Davenport, Stephen J. Kent & Adam K. Wheatley 
Humoral and circulating follicular helper T cell responses in recovered patients with COVID-19
Nature Medicine (2020)
doi.org/10.1038/s41591-020-0995-0

2020年7月13日月曜日 0 コメント

COVID-19:ネットワークのアプローチで弱体化させる

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

NHK教育テレビ(さん)の7/12(日)放送
サイエンスZERO 
"withコロナ時代"にいまこそ知りたいウィルスの正体
を見ました。
その放送内容の中で、
過去にオーストラリアでうさぎが異常繁殖し、
強力なウィルスによってその量をコントロールしようとしたときに
その毒性が時間の経過につれてどんどん下がっていった
というのがあります。
7年後には、死亡率が1/3になったといわれています。
その理由は、
ウィルスが増殖していくときに
強力なウィルスはウサギを含む宿主を死滅させてしまうために
宿主を必要とするウィルスは生き残れない
というのがあるからです。
従って、
弱毒の特徴を持つウィルスほど生き残りやすいために
原理的にウィルスは弱毒化していく可能性があるということです。
しかし、
番組に出演されていた
京都大学ウィルス・再生医科学研究所の朝永啓造先生は、
新型コロナウィルスにおいて
どれくらいのタイムスパンで弱毒化が起こり
人と自然に共生できるようになるかは未知数といわれています。

また、コロナウィルスはRNAウィルスであり、
RNAは不安定で、動的であることから
突然変異が起こりやすいので、
そうした時に弱毒化が原理通りにストレートに進むかも
わかりません。

先ほど「宿主」といいました。
ウィルスが寄生する母体は
大きく見れば、人や動物、あるいは植物です。
新型コロナウィルスでは人に多く感染しています。
しかし、宿主はスケールを変えることができて
例えば、各臓器であったり、
もっと細かく言えば細胞です。
それも宿主と言えると思います。
もし、強毒性を持ったウィルスが宿主を死滅させるとしたら
それを持った細胞が死滅することになります。
細胞が死滅するときには、
同時にウィルスの一部も破壊される可能性も考えられます(?)。
そうしたら
体内でも強毒なウィルスの生存は脅かされます。
逆に弱毒性のウィルスは生き残りやすいです。
実は、
新型コロナウィルスは弱毒性の特徴を持つから
つまり軽症患者が多いから
これだけ広がったとも言われています。
それも原理的には納得できる部分です。

つまり、
これはネットワーク理論のアプローチで考える事ができます。
グラフ理論ではノード(点)に対して
複数のエッジ(線)が伸びます。
この「点」が宿主、「線」の数が増殖数です。
より強毒な遺伝子、特徴を持つ「太い線」は
ノードの部分で宿主が死んでしまうため
そこで終端してしまいます。
そこからエッジが伸びることはありません。
未来に対して線を伸ばせるのは
生き残った証であり、
そのためには宿主を生き残こす必要があるので、
弱毒である必要があります。
そうするとしばらく時間が経つと
その時にある宿主の中のウィルスは
過去よりも弱毒になると考えられます。

このネットワークのアプローチは
実は、日本でも社会的に試みられています。
クラスターを抑え込むのも、
多くの「線」の元となる「点(この場合人)」の部分を
隔離して「終端」させることです。
それによって原理的には
ウィルスの増殖を減らすことができます。

今、感染者数が増えていますが、
一つはPCR検査数が増えているからです。
もちろん第二波、あるいは第一波の残りの可能性もあります。
しかし、今政府、自治体が行っているのは
多く発生しているところを把握して
抑え込みに行っています。
経済を優先する必要があるために
今までのように完全には自粛しない中で、
それでも多く感染を生み出しているところを明らかにして
隔離して、発展を終端させようとしています。

経済を止めるわけにはいきませんから
ある程度の拡散は避けられませんが、
これを愚直に続けていくことだと思います。

もっと大切なのは
強、中程度
通常より強い毒性を持つウィルスを持つ患者さんを
確実に隔離することです。
例えば、
若い人の感染が増えている中で
ある特定の地域が重症化する傾向が強ければ、
そこは、今までよりも強く隔離する必要があります。
それが店であれば、
そこは閉鎖する必要があるでしょう。

あるいは薬やワクチンのアプローチとして
「強毒なウィルスだけ」うまく死滅させることができる
薬、ワクチンが開発されれば、
機能を少なくすることができるため
副作用を小さくすることができるかもしれません。
例えば、
異常の元になる免疫系に強く作用する
何らかの機能、遺伝子を発見できれば
それに対応する酵素、タンパク質、核酸などを
ピンポイントに弱める薬なども考えられます。
あるいは
細胞内に入るための鍵となる
Sタンパク質を全部ではなくても減らすことが
有効かもしれません。
ウィルスをもちろん死滅させることが基本ですが、
社会に流布するウィルスを弱体化させるため
ネットワークのアプローチで考えると
「強毒なウィルスだけ死滅させる」
という視点も生まれてきます。

あるいは、今後海外との渡航制限をどう緩和するか
という点においては
疫学データにおいて、
死亡率が高い国、地域においては慎重に判断する必要がある
というのもあるかもしれません。
それも強毒なウィルスを如何に終端させるか?
という視点に基づきます。

その中でほしいデータとして
人口当たりの死亡率ではなくて
感染者あたりの死亡率の推移が知りたいです。
さらには無理かもしれないですが
PCR検査数あたりの感染者および死亡者数の推移です。
今、日本が出しているデータを見ると
人口当たりの死亡者の割合が減っている国は
ほとんどない状態です。
ウィルスの毒性が高まっているかどうかの
一番重要なデータは
「実際に罹患している数」に対する「死亡者数」の推移です。
もしそのパーセンテージが減ってきていれば
毒性が下がっているといえます。
しかし、それを難しくしているのが
実際に罹患している人の数を知るのが非常に困難な事です。
無症状、軽症の方で認知されていない人も恐らくいるし、
検査の検出限界もあります。
極端な話、新型コロナウィルスが体内に1個いれば
それは「感染者?」という話にもなります。
この本当のデータを得るのはおそらく不可能です。
しかし、
少なくとも感染がすでに広がっていて
頭打ちになっている国で
重症の患者さんの数がどうなっているか?
というざっくりとした見積もりはできるかもしれません。
時間が経てば自然とわかってくることですが、
政府、自治体、企業、組織、個人事業主
フリーランス、未来を担う学生(さん)としては
先の事を知る必要があるので、
これは知りたいポイントだと思います。
ウィルスが強毒になっているのか?
あるいは現状維持か?
もしくはここで記した通り弱毒になりつつのあるのか?
ということです。
海外が人種問題であんなにパニックになっている状態で
人々が密になっている状態で、
深刻な医療崩壊の問題が出てこないのが
私は気になります。
初めのニューヨークの状況と
今は少し異なるようにみえるのは私だけでしょうか?
ここを特に政府、自治体、企業、組織の
重要なポジションにいる方
あるいは社会で先を見通そうとしている方は、
冷静にしっかり見る必要があります。


おそらくこれだけウィルスが世界中に蔓延している中で
絶滅させることは不可能です。
うまく共生していく必要があります。
その中で「ウィズコロナ」といわれます。
そうしたときに
どうやったら人にとって毒性を下げるか?
というのが重要になります。
その一つのアプローチは
今述べたようなグラフ理論、ネットワーク理論です。
それを
様々なスケールの生理学、医学、疫学
あるいは社会学、経済学、
などいろんな面で適用することで、
いろんなバランスを取りながら
ウィズコロナ時代をうまく乗り切っていけると考えます。

以上です。


2020年7月12日日曜日 0 コメント

COVID-19:新型コロナウィルスの白血球の異常について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスでは重症の患者さんにおいて
Ⅰ型インターフェロンが少なくなる報告があります。
このⅠ型インターフェロンは
一般的に抗ウィルス作用を示すために
これが少なくなることによって
ウィルスあるいは感染細胞の死滅を阻害させる
可能性が考えられます。
しかしながら
新型コロナウィルスが免疫機能を乱す要因は
それだけではなく
単球やリンパ球が減少することも知られています。

単球は白血球の一種でマクロファージや樹状細胞に分化することができ
食作用、抗原提示、サイトカインの産生の機能を持ちます。
食作用では微生物を粒子に取り込み破壊する役目を持つため
ウィルスそのものを死滅させる働きがあると考えられます。
抗原提示は、
ウィルスを細胞内に取り込んで、
細胞表面にタンパク質など(?)で提示することで
T細胞やB細胞がそれを認識できるようにすることです。
細胞性免疫や液性免疫を活性化するものです。
おもにワクチンなどでモデルとされる機序は
抗体が独立して放出される液性免疫です。
従って、ウィルスに合わせた抗体を生み出すための
初期過程を担うと考えられます。

リンパ球にはナチュラルキラー細胞(NK細胞)
T細胞(細胞性、細胞傷害性適応免疫)
B細胞(液性、抗体による適応免疫)があります。

単球とリンパ球が減少するということは、
新型コロナウィルスが浸入した時に抗体をうまく
作り出せないという可能性が考えられます。
従って、
ワクチンなどによって抗体をあらかじめ入れることは
新型コロナウィルスに感染する際に
少なくとも一部の患者さんにおいて
白血球の異常が起こる可能性を考慮すると
一定の薬効を発揮するかもしれません。

また単球は
またグルココルチコイドを多く含み
これらは炎症を抑制する機能がある、
また免疫抑制効果があると言われています。
従って
新型コロナウィルスでの症状の一つである
免疫暴走と関係しているかもしれません。

新型コロナウィルスは特に重症化すると
白血球に異常が出ることが考えられるため、
治療の際には血液採取をして
白血球の成分分析をすることは必要かもしれません。
もし、重症化するまえに
白血球の異常の兆候が見られれば、
早めにリスク対策をすることができる可能性があります。

以上です。

(参考文献)
Matthew D. Park 
COVID-19 and influenza: preparing for the storm
Nature Reviews Immunology (2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-0392-4


2020年7月11日土曜日 0 コメント

COVID-19:Sタンパク質と受容体の結合力に関与する酵素

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

昨日、広島でも4人の
新型コロナウィルス感染者が発表され
そのうちの3人は家族内による感染でした。
男性が東京に出張した後に
発熱の症状を訴えて受診し検査したところ
陽性であると判明したので
接触歴のある家族を同様にPCR検査したところ
陽性であると確認されました。
このように非常に感染力の強い
新型コロナウィルスですが、
なぜ感染力がこれほどまで強いのか
はっきりしたことはわかっていないと認識しています。
いくつか仮説があって
その一つは、
新型コロナウィルスのSタンパク質(スパイク)
とACE2エントリー受容体の結合力が高いことが
挙げられています。
それによってエンドサイトーシス(?)によって
細胞内にウィルスが入り、細胞が感染します。
中国からの報告によれば
そのSタンパク質はACE2エントリー受容体に合うように
「柔軟に」構造を変えられる能力があり
それが感染力の高さに貢献しているかもしれない
というものがあります。
従って、新型コロナウィルスのSタンパク質の
構造の特徴を調べることは非常に重要です。

本日紹介する報告では、
新型コロナウィルスに構造が非常に類似する
コウモリのウィルスであるRaTG13と
人の新型コロナウィルスの構造を比較した時に
人の新型コロナウィルスと
人のACE2エントリー受容体の結合力は
RaTG13に比べて約1000倍強いかもしれないと言われています。
その理由は
遺伝子Furinたんぱく質からなる酵素が働く
Sタンパク質内にある特定の結合面においての
へき開(結合がきれること)が
構造としての「(熱的な)不安定性」を生み、
それが結合力が上がることに関与しているかもしれない
ということです。
つまり、柔軟に構造を変えられるとは、
この特定のタンパク質部位における結晶面の切断によって
構造が(熱的に?)不安定であることを意味するかもしれない
と理解しています。
具体的には結合に関与するタンパク質の単位である
アミノ酸を含めた面が動くことを意味します。

またコウモリのウィルスであるRaTG13
のSタンパク質の構造的な類似性によって
コウモリが新型コロナウィルスの中間宿主になっているか
どうかの議論がされています。
この構造解析の比較から、
RaTG13と人のACE2エントリー受容体の結合親和性は
高くない(約1/1000)と考えられており、
直接的に関与しているかどうかは疑問符が打たれています。

このFurinという酵素に関して
-----
HIV、インフルエンザ およびデング熱ウイルスのような
同じRNAウィルスにおいて
ウイルスのエンベロープタンパク質が十分機能するために
フーリンかフーリン様タンパク質分解酵素に切断される必要がある。
(Wikipediaより)
-----
とされています。
従って、今までのウィルスでも同じような機序が
確認されているようです。
仮にこの酵素の働きを弱めるようなことが
薬剤、あるいはワクチンによって副作用なくできれば、
感染力低下を促し、
新型コロナウィルスの予防、治療に役立つ可能性があります。
例えば、
結合のへき開に働く酵素の働きを弱めることもそうですが、
タンパク質がへき開されてオープンになるまえに
何からの物質を付けて安定性を高めるということも考えられます。
またこれは、
他のウィルスの治療にも貢献する可能性があります。
すでにその阻害効果がある物質については
研究レベルではいくつかあるようです。

以上です。

(参考文献)
Antoni G. Wrobel, Donald J. Benton, Pengqi Xu, Chloë Roustan, Stephen R. Martin, Peter B. Rosenthal, John J. Skehel & Steven J. Gamblin 
SARS-CoV-2 and bat RaTG13 spike glycoprotein structures inform on virus evolution and furin-cleavage effects
Nature Structural & Molecular Biology (2020)
doi.org/10.1038/s41594-020-0468-7

2020年7月10日金曜日 0 コメント

COVID-19:免疫治療の副作用について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

先日、新型コロナウィルスの重症の患者さんの
一つの特徴として、
インターフェロンが少ないということが上げられていました。
このインターフェロンは抗ウィルス作用を持つので
新型コロナウィルスを攻撃する
あるいは感染した細胞を死滅させることに
貢献すると考えられますが、
それが少ないためにウィルスが体内で増殖してしまう
一因となっているかもしれないということです。
実際にそれは特定の遺伝子が関与している可能性がある
ことが日本の研究によって明らかになっています。

アメリカ食品医薬品局(FDA)で承認されている
薬剤によるインターフェロンは複数あると言われています。
そこでインターフェロンをいつ薬剤によって
注入するのがいいか議論されています。
その中で
症状が悪化した後に注入すると
免疫機能が活性化されるために、
免疫暴走などの(?)免疫疾患の原因になるかもしれない
とわいれています。
従って、症状が悪化する前の初期の段階で
インターフェロンを注入するのが
もし薬剤によって介入するのであれば好ましいだろう
ということです。
しかし、それをすることの大きな警告を発せられています。
マウスでは一定の効果が見られた研究が複数はあるものの、
人では強い副作用があったといわれています。
インフルエンザに似た症状、頭痛、嘔吐、抑うつ
などです。
従って、インターフェロンが下がっているからと言って
それを単純に薬剤で補うことがよいかどうか?
というのは慎重な議論が必要です。

他の報告でも言われていることですが、
免疫機能に作用する薬というのは
一定の副作用を伴うケースがあるということです。
たとえば
免疫抑制剤の一つであるコルチコステロイドでは
高血圧、骨粗しょう症、筋力低下などの副作用が
分量によっては出ることがあるようです。
おそらくこのような副作用が出るのは
上の頭痛や抑うつなどの副作用も同様ですが、
免疫機能の調整に神経機能が関わっていることが
一因だと思われます。
身体が自然に調節しているものが外部によって
許容範囲を超えて(?)乱されると、
そこに一定の障害が生じる可能性がある
ということを想定しました。
従って、このような副作用につながる可能性がある
と考えられます。
実際にこのコルチコステロイドの副作用について
言及されている報告は
COVID-19に関するものですが
「神経学」の学術雑誌に分類されています。

新型コロナウィルスが体の免疫機能を乱す働きがあって
それを薬剤などで外因的に調整する場合においては、
十分な経過観察の元で行われる必要があると考えます。
また、リスクとベネフィットの関係性の中で
介入を行う必要があるかも十分な議論が求められます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Meredith Wadman
Can interferons stop COVID-19 before it takes hold? 
Scinece vol.369 issue.6500 pp.125-126 (2020)
DOI: 10.1126/science.369.6500.125
(2)
Catharina Korsukewitz, Stephen W. Reddel, Amit Bar-Or & Heinz Wiendl 
Neurological immunotherapy in the era of COVID-19 — looking for consensus in the literature
Nature Reviews Neurology (2020)
doi.org/10.1038/s41582-020-0385-8


2020年7月9日木曜日 0 コメント

COVID-19:無症状、軽症患者さんの疫学データについて

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

今、PCR検査の拡充の影響もあり
陽性の患者さんが日本で増えています。
若い人の感染確認が多く、
無症状、軽症の人が多いと思われます。

もし可能であれば、
患者さんの血液のデータがほしいです。
新型コロナウィルスに感染している状況で
なぜ無症状、軽症に終わっているか?
という統計的な疫学データを取る機会でもあります。
もちろん患者さんの同意は必須だとは思います。

例えば、昨日報告を紹介したように
「common cold(共通にコールドな)」コロナウィルス
HCoV-OC43, HCoV-HKU1, HCoV-NL63 and HCoV-229E
などの抗体を保有しているか?
また
白血球(単球(マクロファージ)、リンパ球、好中球、好塩基球、好酸球)
あるいは赤血球など血液の基本的なデータをとります。

トータルの人数で言えば
数千人規模でデータをとれる可能性があるので
重要なものになるはずです。
また、保管することもできるので
後で色んな事が明らかになったときに
追加で調べることもできます。

以上です。

2020年7月8日水曜日 0 コメント

COVID-19:毒性の低いコロナウィルス属による免疫について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

癌細胞で
「Cold(コールド)」と「Hot(ホット)」
という比喩的な概念が出てきます。
免疫機能がしっかり働いている状態が「ホット」で、
免疫がうまく働かない状態が「コールド」
と理解しています。
本日、紹介する報告では、
ウィルスにもそのようなコールドとホットがあって
実は、新型コロナウィルスに類似する
コロナウィルスは従来から存在していて
それが「コールド」であるために
問題にならなかったかもしれないと私は推測しています。

しかし、毒性の低いコールドなコロナウィルスに対しても
T細胞などの免疫機能は働きます。
ウィルスを攻撃して数を減らそうとします。
その中でT細胞がコロナウィルスの特徴を「記憶して」
同じ、もしくは類似するウィルスが入ってきた時に
「迅速に」反応できるように準備する
といいます。
ひょっとすると
新型コロナウィルスにおいて無症状や症状が軽い人の
中にはすでに類似するコロナウィルスの免疫機能が
あってそうなっているかもしれないといいます。
しかしながら後述しますが、
それが逆効果になることもあるようです。

実際に少なくとも4つの報告から
新型コロナウィルスにさらされていない
20~50%の人(詳細な国は未調査)が
免疫細胞(NK細胞、T細胞、B細胞)である
リンパ球が新型コロナウィルスの抗原に対して
高い反応性を示したと言われています。
その中で
2015年から2018年に採取した血液においても
新型コロナウィルスに対して
免疫の反応性が見られたと言われています。
この期間は世界的流行の前なので
その時に採取した血液が
すでに免疫活性を持っていたことは、
注目に値することです。
採取した血液の元はアメリカで取られていて
その50%が免疫反応性を示したといわれています。
またドイツでも血清反応陰性の健康な人において
34%の人がT細胞反応性を持っていたといわれています。

新型コロナウィルスのT細胞反応性で
重要な役割を担っていたのはCD4+T細胞で
CD8+T細胞の貢献は小さいといわれています。
このCD4+T細胞はヘルパーT細胞と言われて
免疫機能を調整する機能を持っていますが、
抗ウィルス性を持つインターフェロンガンマを産生するので
重要なT細胞と言えます。
またこのCD4+T細胞がコロナウィルスに対して
ウィルス特異性を持ち「記憶する」と
B細胞と連携して(?)中和抗体を迅速に出して
ウィルスが細胞内に入ることを防ぐのに貢献する
かもしれないと言われています。
またこのメモリーCD4+T細胞があると
ワクチンの結果においても変わる可能性があるようです。
ワクチンによって生み出された中和抗体に対して
迅速に免疫反応が得らえる可能性があると言われています。

しかしながら、冒頭で少し触れた様に
事はそれほど単純ではありません。
「original antigenic sin(抗原原罪)」という現象があります。
それはすでに存在する免疫記憶が
弱い免疫機能を誘発する可能性があるということです。
つまり、免疫記憶が
本来持っている免疫に対して助ける場合もあれば、
逆に免疫の邪魔をしてしまうこともあるということです。
(と理解しています。)

この「common cold(共通にコールドな)]コロナウィルスは
HCoV-OC43, HCoV-HKU1, HCoV-NL63 and HCoV-229E
が少なくとも知られているといいます。
これらは人の社会の中にいて、
多くの人がこれらのウィルスに対して血清反応陽性を
示すと言われています。
しかし日本やアジアにおいてそれらのウィルスが
社会の中にいるかどうかはわかりません。
またT細胞反応性を示すかどうかも現状では
わかっていません。

これから重要になるのは
疫学データとこれらの情報を
うまくリンクさせることだと思います。
例えば、
日本でのコロナウィルスの軽症の方の血液から
免疫細胞の記憶特性がもしわかるのであれば
T細胞やB細胞を分析していもいいと思います。
あるいは、
HCoV-OC43, HCoV-HKU1, HCoV-NL63 and HCoV-229E
といったコールドなコロナウィルスに対して
抗体を持っているかどうかの検査も助けになると思います。
もし、これらの毒性の低いコロナウィルスの
抗体を持っている人が無症状、軽症で終わるケースが
多いならば、それは一つ重要なデータです。
そうであれば、
意図的にそのコールドなコロナウィルスを
「ワクチン」として接種することも考えられます。
ただ、
逆効果も考えられるという話もあります。
年齢によっても効果は異なるかもしれません。
慎重な議論は必要ですが、
すでに新型コロナウィルスに類似した
毒性の低いコロナウィルスは社会に以前からいて
それに対して抗体を持っているかもしれない
という可能性を追究するのは大切だと考えます。

以上です。

(参考文献)
Alessandro Sette and Shane Crotty  
Pre-existing immunity to SARS-CoV-2:the knowns and unknowns
Nature Review Immunology (2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-0389-z

2020年7月7日火曜日 0 コメント

COVID-19:免疫異常と肺疾患のメカニズムについて

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスで重症患者の方が直面する
一番優先順位の高い問題は、肺炎です。
肺の炎症によって酸素を取り込めなくなることです。
数時間で一気に症状が悪化することがあり、
その点が一つ大きな怖さであります。
従って、そうなる前にわかる指標があれば、
事前に対策が打てるため、それが強く求められます。

コロナウィルスによって肺炎を起こす機序は
日本のメディアでも度々放送されているように
サイトカインストームともいわれます。
肺胞のマクロファージからのサイトカインの放出
による炎症が一つ挙げられています。
もう一つは放出が異常亢進した時に炎症の原因となる
好中球が肺胞の環境で増えることが
挙げられています。
実際に新型コロナウィルスの患者さんで
好中球が多く出ていたというデータもありました。
これら免疫細胞によって起こる要因は
肺胞の上皮と血管内皮の間に作用することによって
肺胞にダメージをあたえます。
そのダメージは具体的にはたんぱく質の分解です。
この上皮と内皮の間の障壁、組織が
タンパク質の分解によって破れ、
液体がもれ、老廃物が蓄積し、
粘膜(?)など界面活性するサーファクタントの分泌が減少して、
肺胞の機能が低下します。
それによって酸素(ガス)の交換能力が落ち、
低酸素状態、呼吸困難、チアノーゼ、頻呼吸
になります。
それによって、酸素が各臓器に送り込めなくなり
脳、心臓、腎臓など主要臓器に影響を与えます。

従って免疫のバランスと肺胞の破壊が
酸素が取り込めなくなる原因となっている可能性があるため
免疫のバランスが崩れないように
患者さんの状態をしっかりモニターすることが求められます。

以上です。

(参考文献)
Janelle S. Ayres
A metabolic handbook for the COVID-19 pandemic
Nature matabolism (2020)
doi.org/10.1038/s42255-020-0237-2


2020年7月6日月曜日 0 コメント

COVID-19:重症化、治療、対策における代謝的アプローチ

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスで一番怖い症状は、
肺の障害で酸素がうまく取り込めなくなることです。
酸素が取り込めなければ、
全身に必要なそれを送り込むことができませんから
人工呼吸装置や
場合によってはECMOが必要になります。
ECMOを新型コロナウィルスの治療に使うためには
私が知る限り特別な訓練が必要で、
1人の患者さんに対して複数人、10人程度の
医療従事者の方が必要で人材の確保が大変です。
従って、装置の制約よりも人のそれの方が
大きいと理解しています。
従って、そのような重症にならないように
ワクチンや薬を開発、普及が強く望まれます。
重症患者が増えれば、医療崩壊が一気に進みます。

その重症化のリスクは、代謝機能とも関係があると言われています。
生活習慣病で代謝異常による疾患である、
2型糖尿病や高血圧は新型コロナウィルスの病気のリスクを
あげると世界的にいわれています。
新型コロナウィルスは血栓ができやすく、
血管の炎症を促す作用もあると報告されているので
もともと血管の機能になんらかの障害があると
リスクが高まることは考えられます。
またもともと上述した病気は、
免疫機能にも影響があると考えられているため
新型コロナウィルスの重症化との関連が示唆されています。

また、新型コロナウィルス罹患を通じて
複数の臓器のダメージも考えられます。
実際にオルガノイド(人工臓器)ですが
腸の細胞でも新型コロナウィルスの増殖が確認される
という研究もあります。
トイレに新型コロナウィルスが多いということは
日本でも頻繁にメディアを通して伝えられており、
便から検出されることも推定されます。
便から出るということは
腸の細胞にも新型コロナウィルスが感染していても
不思議ではありません。
それは、腸だけではなく、
他の臓器でも血管やリンパ(?)を通して
感染することは考えられることです。
その中で
心筋炎などの心臓機能障害、急性腎障害(腎臓)、
認知症や脳卒中(脳)、非アルコール性脂肪肝(肝臓)など
様々な病気と負の連鎖を起こす可能性が示唆されています。
例えば、
これらが血管を通じてのウィルスの拡散
あるいはサイトカインストームによる血管の炎症と
関連しているならば、
少なくとも後者に関しては、
過去に血管系の治療に使われた薬などを
補助的に使えないかなどの検討が必要かもしれません。

また日本で流行が見られなかった
2003~2004年のSARSでは後遺症として
高脂血症、心血管異常、高インスリン症など
血管系の疾患との関連性も指摘されています。
もちろんその後の生活習慣にも関連する事なので
それを無視して議論することはできませんが、
特に重度の症状が出た場合には
少なくとも回復後も定期健診を受けるなど
モニターをしていく必要はあると思います。
また同時に長期的な心のケアなども必要だと思います。

また、
ソーシャルディスタンスや在宅ワークなどが増えると
運動する機会が減ります。
万歩計を付ければ定量化できると思いますが、
社会的な活動が減ることによって
生活習慣病のリスクが上がっていきます。
従って、
意識的に公園を歩いたり、
スーパーまで自転車や車で行くところを
徒歩にしてみたり、
あるいは、運動経験のある人は適度な運動を
少しずつ始めてみたりすることが大切になると思います。
しかしこれからの季節、熱中症のリスクもあるので
比較的温度の低い午前中の早い時間にする
あるいは、運動の程度を落とす、
その代わりに頻度をあげるなど工夫が必要だと思います。
空調が効いているジムなどを
積極的に利用してもいいと思います。
また、ソーシャルディスタンスによって
孤独感を得る事も多いですが、
インターネットや電話などを効果的に使って、
日常的に誰かと話をする時間を少しでも設けるなど
必要だと思います。
これら運動とストレス解消という点では
歌を歌ったり、ダンスをするなど
楽しいことと両立できる運動を家でする
というのも賢明な過ごし方と言えそうです。
最近ではこういったプログラムの運動を
ジムのインストラクターの方と
ズームでつないで一緒にするという活動もあるようです。
離れてはいますが一緒に汗を流して
運動が終わった後は、達成感を
何か飲み物をとりながら共有しているといいます。

一方で代謝的な治療戦略も考えられます。
インフルエンザの例ですが、
ウィルスの複製の時にはエネルギーの交換が必要になります。
その際に糖の分解やグルタミン分解が
亢進されるという報告が小児の患者さんの例で確認されています。
新型コロナウィルスでも
同じようにRNAウィルスが細胞内で増殖するときに
どのような代謝機序があるか?を理解することは
代謝的なアプローチで薬剤によって治療できる事に
繋がると思います。

また新型コロナウィルスではⅠ型インターフェロンが
多く出ないことが報告されています。
それが自然免役など免疫系のバランスを崩す
原因になっている可能性が示唆されています。
NHK総合テレビ(さん)のNHKスペシャルで
タモリさんと山中伸弥先生が司会、解説されている
"人体VSウィルス”驚異の免疫ネットワーク
での放送の中で
東京大学医科学研究所佐藤佳准教授が
コロナウィルスが持つ定の遺伝子ORF3bが
インターフェロンと拮抗作用を持つので(2)
それが原因ではないか?
と言われていました。
どれくらいの量の変化があるかにもちろんよるのですが、
例えば、代謝的なアプローチで、
空腹のとき、つまり低血糖状態では
Ⅰ型インターフェロンが多く出るということが言われています。
極端な低血糖はもちろん危険ですが、
あまり満腹になるほど食べないということは、
特にリスクがある人は重要かもしれません。
あるいは血糖値を急上昇させないように
GI値の低いものから食べるということは、
日常生活でも重要ですが、血糖値との関連を考慮すると
より大切になってくる習慣の可能性があります。

以上です。

(参考文献)
(1)
Janelle S. Ayres 
A metabolic handbook for the COVID-19 pandemic
Nature Metabolism (2020)
doi.org/10.1038/s42255-020-0237-2
(2)
Yoriyuki Konno, Izumi Kimura, Keiya Uriu, Masaya Fukushi, Takashi Irie, Yoshio Koyanagi, So Nakagawa, Kei Sato
SARS-CoV-2 ORF3b is a potent interferon antagonist whose activity is further increased by a naturally occurring elongation variant
bioRxiv
doi.org/10.1101/2020.05.11.088179

2020年7月4日土曜日 0 コメント

COVID-19:RNAウィルスの細胞内抗体とワクチンの可能性について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

今世界で最も開発が進んでいるワクチンは
オックスフォード大学が進めているイギリスのもので
早ければ9月に供給可能ということです。
10億本の生産能力があって、
9億本はすでに各国で確保されていますから
日本に十分な数、早い段階で回ってくるかというのは
不透明です。政府の方が交渉はされているようです。
しかし、第三段階の数百人の治験の中で
成功する確率は半分くらいと言われています。
もともとワクチンの開発は、
健常者の前もって予防のために打つので
副作用を抑える必要があるので
開発を慎重にする必要があり、
長ければ10年くらいかかると言われています。
それを1年以内でしようとしているわけですから
当然うまくいかないことも想定しないといけません。
今、少なくとも100以上のワクチン開発が世界で進んでいますから、
その中で有効なものが生まれることが期待されます。

そのワクチン開発においては、
私が把握している限り、ほとんどのものは、
液性免疫の機序によって
B細胞から中和抗体が出て
それがウィルスのエンベロープ(膜)の
周りに複数存在する突起であるSタンパク質(スパイク)の
ドメインについて極性を弱めて(中和して)
ACE2エントリー受容体への結合活性を弱めるものです。
そして、細胞の飲食作用(?)で膜がウィルスを包み込んで、
細胞内にウィルスが浸入することを防ぎます。
その抗体が体内に存在する、
あるいはメモリーB細胞が迅速に抗体を出すことにより
実際に新型コロナウィルスが体内に入った時の
増殖を弱めることができるというものです。
(と今は理解しています。)
従って、ACE2エントリー受容体に作用するものですが、
もし違う機序の免疫機構があって
それにたいして「免疫をつける」ことができれば、
2本同時に打つことによって、
さらに効果を高められる可能性があります。
そもそも
身体がウィルスから守る機序は、
ACE2エントリー受容体に対する中和効果だけではなく
感染細胞を破壊するものであったり、
中での増殖を防ぐものもあります。
おそらく他にもいろいろあると思います。
その「複数」の機序の中で
1つの防御機能を高められたとしても、
高い効果が得られるかどうかはわかりません。
つまり
複数の防御機構に作用することができれば、
うまくいけばその確率を高めることができると推測します。

新型コロナウィルスで確認されたわけではないですが、
SARS-CoV-2が属するRNAウィルス(ex.アデノウィルス)において、
細胞内抗体というのが確認されています。
通常、抗体は細胞の外の空間を巡回して
細胞外で結合して細胞内に感染しにくくしますが、
細胞内部にも免疫系があって、
その免疫系を活性化することで
RNAの複製、つまりウィルスの増殖を防ぐことができる
可能性が示唆されています。
RNAウィルスにはそれを覆う膜の外側にスパイクがあって
そこに抗体が付きますが、
仮に抗体がついても露出されたスパイクが残っていれば
そのドメインとエントリー受容体が結合する可能性は残ります。
それによって飲食作用(?)により膜が
ウィルスを包み込むように細胞内に取り込みます。
そのウィルスには抗体がいくつかついていますが、
働かなかった抗体にTRIM21という細胞質の抗体受容体が
細胞内でくっついて、免疫機能が働き
ウィルスの増殖を防ぐ作用が細胞内にある可能性がある
と報告されています。
この免疫機序は詳細には
K-63リンクユビキチン化といわれています。
ユビキチンとはタンパク質の装飾ということですから
初めにスパイクに就いた抗体(タンパク質)に結合して
機能的な変化をもらたすと考えられます。
その機能的な変化の中で
炎症性サイトカインを放出して、
ウィルスのRNAの分解などに貢献すると理解しています。
また細胞そのものを破壊するNK細胞、炎症性T細胞の活性も
間接的に高めると言わています。

このTRIM21という酵素はほとんどの細胞で発現され
骨髄性細胞、樹状細胞、マクロファージで多いと言われています。

このような細胞内部の免疫機序をワクチンとして利用するのは、
少し頭をひねらせる必要はあります。
というのは、
仮にワクチンによって細胞内抗体を誘発させても
それが残るか?
それによって感染後の発現が高められるか迅速になるか?
がわからないからです。
あるいは事前にワクチンによって
疑似的なウィルスを細胞内に入れる必要があるならば
通常のワクチンよりもリスクを伴う可能性があります。

しかし、一つ考えられることは
通常のワクチンによって抗体が
ウィルスのスパイクにつきやすいようになれば
仮に残りのスパイクによって細胞内に入ったとしても
その細胞外抗体の活性度が上がることによって
細胞内の抗体が働きやすくなる
ということが考えられます。
ついている抗体が多くなれば、
細胞内抗体がそれを装飾してくれるからです。
従って、通常のワクチン開発において、
数あるスパイクにできるだけ多く抗体が付くような
ワクチンであって
それを中和活性など何らかの指標でモニターすることは
必要かもしれません。
なぜなら、
単に細胞内に感染しないだけではなく、
細胞内の免疫機序を誘発させて、別の機序で
ウィルスを除去することにおいても有効である
可能性があるからです。

以上です。

(参考文献)
Teunis B H Geijtenbeek & Sonja I Gringhuis
An inside job for antibodies: tagging pathogens for intracellular sensing
Nature immunology vol.14 pp.309-311 (2013)
doi.org/10.1038/ni.2574


2020年7月3日金曜日 0 コメント

COVID-19:Ⅰ型インターフェロンの抗ウィルス作用と重症化ケースの不足について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

今世界でワクチンが開発されていて
日本でも治験が始まっています。
有効なワクチンが生まれれば、
体内で新型コロナウィルスが増えにくくなるわけですから
体内を含めた社会の中の新型コロナウィルスが
時間とともにその絶対量が少なくなるので
感染リスクも下がります。
また個人のウィルス増殖力も下がるので
重症化のリスクも下がってきます。
ゼロにはならない中でも
社会の中の安心感が上がってきて、
経済活動に力を入れられるようになります。
あるいは余暇を心から楽しめるようになります。

そのワクチンの私が今把握している機序は
液性免疫の機序によって
B細胞から中和抗体が出て
それがウィルスのエンベロープ(膜)の
周りに複数存在する突起であるSタンパク質(スパイク)の
ドメインについて極性を弱めて(中和して)
ACE2エントリー受容体への結合活性を弱めます。
そして、細胞の飲食作用(?)により
細胞内にウィルスが浸入することを防ぎます。
その抗体が体内に存在する、
あるいはメモリーB細胞が迅速に抗体を出すことにより
実際に新型コロナウィルスが体内に入った時の
増殖を弱めることができるというものです。
(と今は理解しています。)

しかし、免疫機能がウィルス増殖を弱める機序は
これだけではないと考えられています。
ウィルス撃退に対して重要な役割を果たす
Ⅰ型インターフェロンというサイトカインがあります。
このサイトカインは、
複数の経路で抗ウィルス作用を示すと言われています。
一つは、
タイプIインターフェロンそのものが(?)、
細胞に結合することで特定の酵素が働きます。
その酵素の働きにより
ウィルスの複製を制御する伝令RNAを分解します。
それによってウィルスを撃退します。
もう一つは、
NK細胞(ナチュラルキラー細胞)の制御を行います。
このNK細胞がウィルスが感染している細胞「だけ」に働いて
感染細胞「ごと」死滅させるように
MHCクラスI分子の発現を細胞ごとにコントロールします。
従って、
ウィルスそのものの増殖も防ぐし、
ウィルスが感染した細胞もNK細胞を通じて死滅させます。
ゆえに
新型コロナウィルスの体内増殖を防ぐうえで
非常に重要な分泌物、サイトカインです。

しかし、参考文献によると
新型コロナウィルスで重症化しているケースでは
このタイプⅠインターフェロンの数が少なかった
と言われています。

従って、少なくとも症状があって
新型コロナウィルスで経過観察が必要な場合には
このサイトカインのモニターをするということは
今後必要になってくるかもしれません。

ただタイプⅠインターフェロンを増やす薬を
いれるとどうなるか?
というのは、過去のウィルス感染の例では
タイミングが難しいらしく
そのタイミングを間違えると副作用が大きく出た
という研究もあり、
事は単純ではないと考えられます。
しかしながら、
重症化した患者さんでタイプⅠインターフェロンが
少ないかもしれないという事実は
医療において重要なデータとなりえます。

以上です。

(参考文献)
(1)
Wikipedia:I型インターフェロン
(2)
Dhiraj Acharya, GuanQun Liu & Michaela U. Gack 
Dysregulation of type I interferon responses in COVID-19
Nature Reviews Immunology volume 20, pages397–398(2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-0346-x

2020年7月2日木曜日 0 コメント

COVID-19:ワクチン開発と治験評価、それに対する免疫学の基礎について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

東京で本日新規感染者の方が107人となっています。
難しい状況ではありますが、
私としては、ワクチン、薬、治療戦略など
医療への貢献を軸に日々情報を
私の知識、知恵、経験を駆使して発信していくつもりです。

新型コロナウィルスの怖さは
おそらくほとんどの方が知っていると思いますが、
急速に症状が悪化することです。
肺に炎症が起き、酸素が取り込めなくなります。
従って、人工呼吸器やECMOなどが必要になります。
ECMOは多くの医療従事者の方からの継続的な監視が必要であり、
重症者が増えた時の医療負担などが懸念されます。
また、回復した時の後遺症などもあります。
(後遺症の懸念については、後日詳しく情報発信します。)
従って、「如何に重症化させないか?」
というのは
「初期感染を如何に防ぐか?」に次ぐ大事な事です。
その重症化は、主に肺の炎症が挙げられますが、
それは、ウィルスの量が増えることよりも
免疫の異常活性によるものであるという見解が強いです。
もちろんこれらの要因は完全に切り離せるものではないですが、
(つまりウィルス量が増える事で免疫恒常性が崩れるという相関が
あるということ。)
免疫の制御がうまくいかないことによる
肺胞の炎症が原因ではないか?
という認識が世界の研究者の方の見方であります。
その「免疫」。
細胞性免疫と液性免疫という大分類があります。
細胞性免疫というのは、
基本的に免疫細胞(T細胞)が
直接標的となる細胞にくっつくことによって
働く免疫で、一般には例えば癌細胞の攻撃に役立つものです。
一方、
液性免疫というのは細胞ごと働くものではなく
細胞と切り離された抗体(タンパク質)単体が
標的となる細胞よりもずっと小さいウィルスタンパク質の
スパイクなどにくっつき電機極性を中和して
ACE2エントリー受容体との静電引力を弱くして、結合を防ぎ、
それによって細胞のエンベロープの飲食作用を防ぎ、
細胞内に入ってRNAが増殖することを防ぐ役割を果たすものです。
従って、
新型コロナウィルスの免疫機序は「主には」
液性免疫であると言えます。
その液性免疫の媒体となる細胞はB細胞であります。
新型コロナウィルスが体内に入った時
その抗原をB細胞が認識して、
抗体を放出します。
その抗体が新型コロナウィルスのスパイクに結合して
ACE2エントリー受容体との親和性を下げて
くっつきにくくして、
細胞内に入らないように感染を防ぎます。
それが「免疫がつく」ということです。

今、大阪でワクチンの治験が始まっています。
うまくいけば来春には供給可能になります。
大阪大学、大阪市立大学、アンジェスによる
産学連携によりオール大阪で挑戦が始まっています。
ワクチンの開発には通常10年はかかるといわれており、
仮に失敗しても次につながるものとは思われますが、
ぜひ期待したいです。

このワクチンはDNAワクチンといわれており
DNAによる設計図により新型コロナウィルスの
Sタンパク質のスパイクを「単独で」作ることができ
それによって抗体を誘発するものです。
その抗体は上述したB細胞から放出され
その機序は「液体免疫」と言えます。
もし、このワクチンによって抗体がでれば、
どういうことが起こるか?
それを予測することは難しいですが、
基本的に「液体免疫がつく」とは
「メモリーB細胞」ができるということです。
これができると何がいいか?
この「メモリーB細胞」が生まれ、体内に残れば、
新型コロナウィルスが体内に入った時に
「通常よりも迅速に」抗体を産出することができます。
そうすると、
新型コロナウィルスの増殖を「早期に」防ぐことができます。
それによって体内のウィルス量が少なくなりますから、
それに対する体の反応も緩やかになることが予想されます。
免疫暴走もおそらく起こりにくいでしょう。
それでこの病気が脅威ではなくなります。
インフルエンザの予防接種と同じです。

そうした時に、
ワクチンを打った後、メモリーB細胞ができるどうか?
が抗体の産出を実際に調べるのと同じくらい
大切になると考えました。
従って、大阪ワクチンで
治験ボランティアの人数を増やしていく段階で
いろんな評価がなされると思いますが、
その時に新型コロナウィルスにあった
メモリーB細胞が産出されているかどうかを
実際に計測することが大事です。
そのメモリーB細胞は
CD27とCD19の関係を2次元マッピングすることにより
調べられると今調べる限り理解しています。
そのサイトによれば
CD27に対してCD19が通常よりも
高い領域に信号が生じれば
メモリー性を有していると判断できると理解しています。

そのワクチン。
今私が調べていることがあります。
細胞内抗体というものがあり、
細胞の外で防ぐ通常考えられる機序に加えて、
細胞内で防ぐ機序がある
という可能性を想定しています。
このアプローチのワクチンは世界にはまだありません。
それらを併用することはできないか?
提案していきます。
後日、詳細については記事にします。
いずれにしてもワクチンを開発した後の
治験の評価をどうするか?というのは非常に大事です。
それが多面的であればあるほど
仮に効果が限定的であっても、
次の開発に役立つはずです。
なぜなら考察できる余地が大きいからです。
そのデータが次につながります。
ひょっとすると液体免疫だけではなく
細胞性免疫の機序もあるかもしれないし、
液体免疫を評価する指標が
数あるサイトカインなどを含め多くあるかもしれません。
取得できるデータをできるだけ多くとって
多面的かつ統計的に評価することで
表面的な結果だけに影響を受けないような
治験につなげていただきたいです。

コロナウィルスとの闘いは、
これからもずっと続くものです。
粘り強く一緒に頑張っていきましょう!

以上です。


2020年7月1日水曜日 0 コメント

COVID-19:気道での上皮細胞と免疫細胞の相互作用、異常活性について

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

コロナウィルスが口、鼻、目から入って、
コロナウィルスタンパク質がACE2エントリー受容体に結合して
細胞のドアの鍵があいて、
中に入って、そこでRNAが増殖する
ということを考えたときに、
それが具体的にどこで起こっているか?
というのは気になるところです。
過去の報告では、鼻にACE2エントリー受容体が多くあり、
そこからも起こっているだろうということは推測されます。
少なくとも5つの研究報告では、
初期のウィルス感染は、気道の上部の粘膜で起こっている
といわれています。
従って鼻、口、喉などの気道の表面を覆っている
粘膜でACE2エントリー受容体に結合して
ウィルスが細胞内に入り、増殖し、
体内でのウィルスの数が増えます。

参考文献では。
外気や液体にさらされている頂端面、結合組織に接着する基底面
である上皮細胞において、
コロナウィルスの患者さんはACE2エントリー受容体が
(健常者に比べて?)3倍の量確認されたとされています。
重症の場合には
この上皮細胞と免疫細胞がケモカインを含むサイトカインを
分泌を通して相互作用して、
それが免疫暴走を誘発する可能性が示唆されています。
その中でケモカインである
CCR1とCCR5を薬で作用を抑えれば、
免疫の異常な活性化を抑えることができるかもしれない
とされています。
CCR1、CCR5といのは、その遺伝子によってコード化された
つまり設計され、作られたタンパク質であり
ケモカインの受容体です。
この受容体は特定の細胞の表面でみつかります。
このケモカインはCCケモカインという分類に属します。
ケモカインは白血球の遊走を引き起こし炎症形成に関与する
といわれています。

新型コロナウィルスの怖いところは、
一気に症状が悪化することです。
その悪化によって急に酸素が取り込めなくなる
ということだと理解しています。
原因は、肺の炎症が一気に進むからです。
その肺炎の原因はウィルスの除去が適切ではない
というよりも
免疫機能の暴走によって起きているということが
少なくとも2つの研究報告によって明らかになっています。
従って、上述しているように
免疫暴走の機序を理解することは、
薬剤によってそれを効率よく制御する上で大切になります。
またこの免疫の異常活性が起こす遺伝子の表現型は
鼻咽頭部よりも気管支で多く起こっている
とされています。
もし感染細胞と免疫細胞の相互作用の度合いが
「距離」によって変わり、近いほうが高いならば、
気管支付近、つまり肺に近いところでの
ウィルス感染が肺炎の起こりやすさに関係している
可能性があります。
そうすると気道上部で感染してしまったときに
気管の下側に移動しないようにできないか?
という視点も生まれてきます。
単純な考え方ですが、
例えば、立つということがリスクの一つになるかもしれません。
なぜなら重力でウィルスは下に行くからです。
横になった状態をできるだけ長く維持することができれば、
気管支への移動を緩和できるか?という視点です。

上皮細胞で3倍のACE2受容体が確認されたというのは
どういうことなのか?
という疑問があります。
具体的には、
ウィルス感染することによってその後の経路で
ACE2受容体を持つ細胞が上皮に多く集まってきたのか?
あるいは
元々コロナウィルスに罹患する人は
ACE2受容体を持つ細胞が多かったのか?
というものです。
文章中には、ACE2発現レベルが上がったとあります。
発現とは遺伝子の情報が細胞における構造、機能に
変換される過程とあります。
ひょっとすると、
上皮細胞一つ当たりのACE2受容体の数は、
遺伝子による作用によって変わるかもしれない
と考えました。
ACE2+繊毛細胞の数は変わらなかったけど
ACE2+細胞の数は多くなったとあります。
つまり感染に対する感受性が変わっているとあります。
ACE2+繊毛細胞とACE2+細胞の違いは、
はっきりとはわかりませんが、
新型コロナウィルスのスパイクと親和性の高い
構造を持つACE受容体の数が異なっていると推測しました。
上の問いに対する一つの解において、
免疫細胞のIFNG信号(インターフェロンガンマ)
によってACE2が亢進されるとあります。
従って、ウィルス感染が始まり、
免疫機能が反応すると細胞が構造変化して
ACE2エントリー受容体が現れる、
あるいは感受性があがるということが起こると考えられます。
つまり、ウィルス感染することで
ACE2受容体の数が増える、感受性があがる
ということが推測されます。
これが上述した上皮細胞と免疫細胞の
「相互作用」ということになると考えます。
従って、この相互作用を抑えるような薬剤があれば、
細胞の増殖を防ぐことができるかもしれません。
また、実際にインターフェロンガンマの量を
調べることも重要です。

分泌腺や繊毛細胞に多くウィルス感染細胞がある
とされています。
繊毛細胞は、気管や鼻腔に多くあるといわれています。
分泌腺は
汗腺、唾液腺、涙腺などの外分泌腺
下垂体・甲状腺・副甲状腺・膵臓・
副腎・松果体・精巣・卵巣・胎盤
などの内分泌腺があります。
また免疫細胞には感染されている細胞は少ないと言われています。

味噌や枝豆のような大豆食品によって
ACE2受容体の数は下がるかもしれないという結果があります。
実際に人の体内、あるいは上皮細胞で
その数に変化があるかどうかはわかりません。
また食べる量で変化が現れるかどうかもわかりませんが、
ACE2受容体の数が重要である可能性があるので
今後の研究進捗は注目したいです。

以上です。

(参考文献)
Robert Lorenz Chua, Soeren Lukassen, Saskia Trump, Bianca P. Hennig, Daniel Wendisch, Fabian Pott, Olivia Debnath, Loreen Thürmann, Florian Kurth, Maria Theresa Völker, Julia Kazmierski, Bernd Timmermann, Sven Twardziok, Stefan Schneider, Felix Machleidt, Holger Müller-Redetzky, Melanie Maier, Alexander Krannich, Sein Schmidt, Felix Balzer, Johannes Liebig, Jennifer Loske, Norbert Suttorp, Jürgen Eils, Naveed Ishaque, Uwe Gerd Liebert, Christof von Kalle, Andreas Hocke, Martin Witzenrath, Christine Goffinet, Christian Drosten, Sven Laudi, Irina Lehmann, Christian Conrad, Leif-Erik Sander & Roland Eils 
COVID-19 severity correlates with airway epithelium–immune cell interactions identified by single-cell analysis
Nature Biotechnology (2020)
doi.org/10.1038/s41587-020-0602-4

 
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