2024年9月14日土曜日

機能的磁気共鳴脳解析の原理と脳神経系細胞種特異的薬物送達システムへの応用

(概要)(1)
機能的磁気共鳴画像法。
(Functional magnetic resonance imaging (fMRI))
脳の各領域の活性化に応じて、
関連する組織に流れる血液の酸素レベルを依存性に基づき、
血液動態を画像化するための手段です。
Blood oxygen level dependence(BOLD)の原理を発明したのは
日本人で小川 誠二先生(大阪大学、東北福祉大学)です。

画像化プロセスは区分(segmentation)と登録(registration)
という二つの方法で実施されます。

区分アルゴリズムでは脳の表面に基づいた分析を行い、
酸素の代謝状態に基づく磁気共鳴データ内で
皮質野で自動化された組織的なラベリングを行います。

登録アルゴリズムでは2つ以上の画像化手法を利用して
頭蓋内の幾何学的な特徴を提供します。
このアルゴリズムによって
脳の活性化状態の臨床で利用できる
神経系、運動系の情報を保証します。


(内容)
デオキシヘモグロビン(Deoxyhemoglobin),
酸素を持たない形態のヘモグロビンは
血流が増加することによって局所的に減少する事が知られています。
デオキシヘモグロビンは周知のとおり、
鉄から酸素が切り離された状態で、磁性を持つ鉄を構造内に有します(2)。
従って、身体の中に自然に存在する
常磁性のコントラスト剤(造影剤)として機能します。
これが磁気共鳴イメージングシグナルの
横緩和時間を変化させるため、
T2強調の条件で撮影すると差別化してコントラストを取ることができます(3)。
デオキシヘモグロビンの量でT2強調で
頭脳をイメージングすると
Sebastian Baecke(敬称略)らがFigure 2に示すように
脳の各領域の血流量を造影することができます(4)。
(参考文献(1) Figure 3)

体の中に自然に含まれる磁性材料は
今述べた鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケルがありますが、
鉄は体重に対して最も多く含まれる磁性材料で
(約0.006%〜0.01%(体重に対する割合))
それが血流に応じて敏感に変わります。
磁性材料はMRIで造影に使われるため
血流量の変化の多い、頭脳の血液動態の分析対象として
非常に適しているということです。
他に腎臓、肝臓、骨格筋など血流の多い組織がありますが、
その血流量の変化を測ることに頭脳ほどの大きな意義はありません。
例えば、脳の場合は
被験者に様々なタスクをしてもらって
そのタスクに応じてどの脳の領域の代謝活性が上がっているか?
この事が機能的磁気共鳴画像法によって明らかになるため、
この測定法の恩恵を受けて、
脳神経科学が前進したという事はあると思います(5)。

この脳の代謝機能が領域ごとに上がり、
血流がそれに応じて領域上がるという事は、
当然、細胞種特異的薬物送達システムにも利用できます。
この事から非常に脳神経系に対しては
細胞種特異的薬物送達システムは大きな機会があるという事です(6,7)。
Rakesh Sharma(敬称略)らは
その領域の機能に該当するタスクが行われたときに
血流量の時間変化を示しています。
それによるとおおよそ10秒以内に顕著な変化がります。
(参考文献(1) Figure 1)
このことから脳神経系の組織特異的薬物送達について考えると
磁気、電場、超音波などで
その領域の神経細胞を刺激して、一時的な血流をあげ
その血流に同じように便乗して、薬物を送達させる事を考えた場合、
その時間スパンが明らかになります。
すなわち、10秒以内の血流の変化を利用する必要があります。
この時間から、こうした方式では
すでに患者さんに対して薬物が投与された状態で、
循環器にすでに薬物がある状態で
送達したい脳の領域の神経系を刺激する事で
薬物をその領域に有効に送達できる可能性があります。
例えば、
細胞種特異的薬物送達システムは
小児脳腫瘍の治療のために初めに開発されますが、
その投薬システムではエクソソームをトレースするため、
磁気共鳴装置と超音波装置を利用します。
従って、超音波をそのまま神経刺激として利用できる環境にあります。
エクソソームが投与された段階で
脳腫瘍が見られる領域の神経系を超音波で刺激して
神経系の活動性を高め(8)、
その領域に血流を集める事を考えます。
その血液濃度に従って、エクソソームも集まります。
こうしたことが実際に起こる可能性があります。
こうした方式は
エクソソームに限らず、あらゆる薬剤で利用できます。
この時にfMRIで血流を分析することは
エクソソームを追跡する事と並行して行う事になる可能性があります。
こうした可能性を考慮するとやはり
脳神経系細胞種特異的薬物送達システムの実現のためには
超高解像度磁気共鳴分析/全頭部固定焦点式超音波装置。
この開発を成功させなければなりません。
これが本来難しいDDSの長距離の走化性、臓器向性
の実現と評価に関わります。
但し、こうした局所的な刺激が病変部位とは関連の無い
脳の領域の活性を一定の時間差で上げる可能性があります。
そうすると時間差でその領域に薬物が送達されてしまうことになります。
こうした超音波による神経刺激は
それによる治療、DDS両方において
その後の対象疾患として指定している
多様な脳神経系疾患の治療に適用できる可能性があります(9-11)。
但し、一番下の領域で説明するように
超音波刺激を脳神経系の疾患に生かすためには
特に連携性に異常がある疾患の場合には
少なくとも脳領域の磁気共鳴による解析データを
多元的な指標で、かつ多元的な数学モデルで定量化する必要があります。


冒頭の概要で述べた区分(Segmentation)は
イメージングのプロセスで必要なアルゴリズムです。
神経活動量に応じて、オンとオフを設け
それを統計的に比較して脳の領域の区分を行います。
これらの統計は
Bayesian approach
General Linear Model
Markov Random Field (MRF) model
これらに基づきます(1)。
それでその領域が刺激されているかどうかを定量します。
従って、オフ状態がレファレンスとなります。
元々一定量の鉄(デオキシヘモグロビン)があるわけですから、
信号のコントラストから活性状態を判断するためには
オフ状態を参照データとして比較して
その相対量によって活性化状態を定量する必要があるからです。
この区分ではTalairach座標系へMRIデータが変換された後、
角ボクセルのデータがどこの脳の解剖学位置に
割り当てられるかを明示させる事です。
Talairach座標は脳の左右方向がx軸、前後がy軸、高さがz軸と
3次元の座標を取り、脳の解剖学的位置を考慮しながら
3次元座標系が構築されます。
従って、Talairach変換を行うと脳の形や大きさに依存されず、
角ボクセルのデータがどこの解剖学的位置に属するがわかります。
機能的磁気共鳴映像法(fMRI)では
それぞれのタスクに対して、脳のどの解剖学的位置の活性が高まっているか?
それを評価する事が重要なので、
とりわけTalairach座標変換が必要になります。

もう一つはfMRIでは
Rakesh Sharma(敬称略)らがFig.1に示したように
10秒間くらいの血流の動的な変化を
脳の各領域、もっといえばボクセルごとに評価する必要があります。
例えば、ある一瞬の決まった時間の画像だけでは
脳のどの領域の活性が高まっているかを十分に評価できません。
時間軸を含んだ3D、4Dの解析が前提となっているため、
一定のタイムスライスごとの画像の位置を整合させる
画像処理技術が必要になります。
それに関連するのが登録(Registration)です。
画像を回転させながら特徴量を分析して
各タイムスライスごとの画像の位置の整合を行います。

画像の後プロセスとしてはいくつかのソフトウェアが開発されています。
'BrainVoyager', 'AFNI','LOFA', 'AIR' 
これらです(1)。

fMRIのデータ解析としてICS解析が利用されることがあります。
このICS解析とは
Independent component-cross correlation-sequential epochと呼ばれます。
基本的な考え方は
ノイズを含めた多変数のデータを個別の変数に分離して、
それぞれの変数に対して領域間、時系列で相関分析をすることです。
脳の領域ごとの活動を分析するためには
これらの相関分析をすることが求められます。
なぜなら、領域ごとにそれぞれ異なる変数で
それぞれの領域で構成される細胞の活性度が変化するからです。
離れた野で相互関係を持ち、活性度が揺らいでいる可能性もあります。
そうした相関を領域、時系列両方で相関分析する事によって明らかにします。
従って、こうした分析は
脳の機能的な特徴を考慮したうえで構築された
データプロセスアルゴリズムです。

様々な神経系の疾患の中で
精神疾患、発達障害などの神経の連結性に異常がある疾患では、
異なる脳の解僕学的領域の連携性に異常が出ているケースがありあす。
自閉症とはコミュニケーション、対人関係、学習などに
異常がでる疾患ですが、
それを測るSRSと呼ばれる自閉症尺度はガウシアン分布があって
基本的に自閉症の有無を完全に分離できない部分があります。
言い換えると、全ての人が多かれ少なかれ
自閉症の特質を有しているとも言えます(12)。
fMRIでは特定のタスクをしたときの
脳の解剖学的な野ごとの連携を様々な数学モデルによって
相関係数として定量化することができます。
こうしたfMRIから得られる30のバイオマーカーを指定して
SRSを含めた自閉症の特質の関係性を調べた報告があります(13)。
この30のバイオマーカーは
ABIDE (Autism Brain Imaging Data Exchange) プロジェクトに基づきます。
R-fMRI バイオマーカー(R1からR10)
これらのバイオマーカーは、脳のネットワーク接続に関連する指標です。具体的には以下のようなものが含まれます:

機能的接続性:異なる脳領域間の時間的な信号の相関を測定します。
ネットワークメトリクス:中心性、モジュラリティ、接続強度など、脳ネットワークの役割や相互作用を説明します。
グラフ理論メトリクス:ノードの次数、クラスター係数、経路長など、脳ネットワークの組織と効率を測定します。
ネットワーク効率:情報転送の効率を評価します。
相関マップ:脳全体の機能的接続性の空間分布を示します。
レスト状態ネットワーク(RSN)の強度:特定のレスト状態ネットワーク(例:デフォルトモードネットワーク、前頭後頭ネットワーク)の接続強度を測定します。
シードベース接続性:事前に定義された「シード」領域と他の脳領域間の接続を測定します。
独立成分分析(ICA)コンポーネント:ICAから得られる異なる機能的ネットワークの成分を示します。
動的機能的接続性:時間的に変化する機能的接続パターンを測定します。
位相同期:脳の異なる領域間での位相の同期を測定します。

その他のバイオマーカー(A1からA20)
これらのバイオマーカーは、脳の機能や構造に関連する他の指標です。具体的には以下のようなものが含まれます:

血流量測定:脳の異なる領域における血流量を定量化します。
低周波変動の振幅(ALFF):fMRI信号の低周波変動の振幅を測定し、脳の自発的活動を反映します。
低周波変動の分数振幅(fALFF):ALFFを全信号のパワーで正規化し、グローバルな信号変動を考慮します。
局所一貫性(ReHo):指定したボクセルの時間系列が近隣ボクセルとどれだけ類似しているかを測定し、局所的な同期を示します。
動的タイムワーピング(DTW):異なる脳領域や条件間の時間的パターンの類似度を測定します。
タスク関連の活性:特定のタスクや刺激に関連する脳の活性を測定します(利用可能な場合)。
灰白質体積:異なる脳領域の灰白質体積を定量化します。
白質の健全性:拡散テンソル画像(DTI)から得られる白質トラクトの健全性を測定します。
脳脊髄液(CSF)体積:異なる脳領域におけるCSF体積を定量化します。
レスト状態ネットワークの活性:レスト状態ネットワーク内の活性を測定します。
ボクセルベースの形態測定(VBM):脳画像を分析して、群間の灰白質密度の違いを評価します。
表面ベースの測定:皮質の厚さや表面積など、皮質表面分析から得られる指標です。
脳半球の非対称性:両半球間の構造や機能の非対称性を測定します。
皮質の厚さ:異なる脳領域の皮質の厚さを測定します。
接続強度:脳領域間の接続の強度を定量化します。
パワースペクトル密度:fMRI信号の周波数成分の分析を行います。
接続の変動性:時間的または被験者間での接続測定の変動性を測定します。
スペクトルエントロピー:fMRI信号の周波数分布の複雑さを測定します。
BOLD信号の変動性:異なる脳領域でのBOLD信号の変動性を評価します。
行動指標との相関:fMRI測定と行動的または臨床的指標との相関を測定します。

こういった指標の中で、
例えば社会的モチベーションが一番問題の患者さんがいたとすれば、
それと関連の深い指標を推定して、
超音波刺激、薬物治療、カウンセリングなどを行ったのち、
社会的モチベーション指標とこうした治療後の貢献について評価できます。
従って、超音波刺激を本気で自閉症、精神疾患などの
神経系の連結、連携に関わると疾患の治療に役立てる事を考える時には
それぞれの自閉症形質に対してのfMRIバイオマーカーの関連性を掴み、
fMRIのバイオマーカーと超音波刺激のパターンの関連性をさらに掴み、
最終的に超音波刺激と自閉症形質の関係性を把握する事が求められます。
少なくともfMRIから得られるデータを
かなり多くの次元で評価して数字化することがベースとして求められます。
逆に言うと
磁気共鳴分析/全頭部固定焦点式超音波装置の1号炉には
こうした多元的な指標が出力された画像データから
自動で計算されるようなソフトウェア解析ツールを入れたい
という事があります。
特に、fMRIでは領域間がどのように相関しているかの情報が得られるので
それに関しては下記に示すようないくつかの相関モデルで数字化して
Talairach座標で示される解剖学的領域の組み合わせと共に
多元的な数字として相関モデルと共に出力したいということもります。
あるいは、装置とは独立してそういった計算ができるように
処理しやすい形で数字の生データを出力できるようにはしたいです。

1. ピアソンの相関係数 (Pearson's Correlation Coefficient)
2. クロス相関関数 (Cross-Correlation Function)
3. 自己相関関数 (Autocorrelation Function)
4. スピアマンの順位相関係数 (Spearman's Rank Correlation Coefficient)
5. グレンジャー因果性 (Granger Causality)
6. コヒーレンス (Coherence)
7. 空間相関行列 (Spatial Correlation Matrix)


(参考文献)
(1)
Rakesh Sharma & Avdhesh Sharma 
Physiological basis and image processing in functional magnetic resonance imaging: Neuronal and motor activity in brain
BioMedical Engineering OnLine volume 3, Article number: 13 (2004) 
(2)
Questions and answers in MRI
Forms of Hemoglobin
What are the different forms of hemoglobin and why do they have different magnetic properties?
(3)
Govind B. Chavhan, MD, DNB, Paul S. Babyn, MD, Bejoy Thomas, MD, Manohar M. Shroff, MD, and E. Mark Haacke, PhD
Principles, Techniques, and Applications of T2*-based MR Imaging and Its Special Applications1
Radiographics. 2009 Sep; 29(5): 1433–1449.
(4)
Sebastian Baecke, Ralf Lützkendorf, Johannes Mallow, Michael Luchtmann, Claus Tempelmann, Jörg Stadler & Johannes Bernarding 
A proof-of-principle study of multi-site real-time functional imaging at 3T and 7T: Implementation and validation
Scientific Reports volume 5, Article number: 8413 (2015)
(5)
Emily S. Finn, Russell A. Poldrack & James M. Shine
Functional neuroimaging as a catalyst for integrated neuroscience
Nature volume 623, pages263–273 (2023)
(6)
Jingjing Gao, Ziting (Judy) Xia, Swetharajan Gunasekar, Christopher Jiang, Jeffrey M. Karp & Nitin Joshi 
Precision drug delivery to the central nervous system using engineered nanoparticles
Nature Reviews Materials volume 9, pages567–588 (2024)
(7)
Elizabeth Nance, Suzie H. Pun, Rajiv Saigal & Drew L. Sellers
Drug delivery to the central nervous system
Nature Reviews Materials volume 7, pages314–331 (2022)
(8)
Benjamin Clennell,a Tom G.J. Steward,a Meg Elley,a Eunju Shin,b Miles Weston,c Bruce W. Drinkwater,d and Daniel J. Whitcomba,
Transient ultrasound stimulation has lasting effects on neuronal excitability
Brain Stimul. 2021 Mar-Apr; 14(2): 217–225.
(9)
Yun-Yun Hu, 1 , 2 , † Gang Yang, 3 , † Xue-Song Liang, 1 , 2 , 4 Xuan-Si Ding, 1 , 2 De-En Xu, 5 Zhe Li, 1 , 6 Quan-Hong Ma,, * Rui Chen,corresponding author 1 , * and Yan-Yun Sun
Transcranial low-intensity ultrasound stimulation for treating central nervous system disorders: A promising therapeutic application
Front Neurol. 2023; 14: 1117188.
(10)
Anita Barzegar-Fallah,1,2 Kushan Gandhi,1,2 Shakila B. Rizwan,2,3 Tania L. Slatter,4 and John N. J. Reynolds
Harnessing Ultrasound for Targeting Drug Delivery to the Brain and Breaching the Blood–Brain Tumour Barrier
Pharmaceutics. 2022 Oct; 14(10): 2231.
(11)
Ying Meng, Kullervo Hynynen & Nir Lipsman
Applications of focused ultrasound in the brain: from thermoablation to drug delivery
Nature Reviews Neurology volume 17, pages7–22 (2021)
(13)
Chia-Min Chen, Pinchen Yang, Ming-Ting Wu, Tzu-Chao Chuang & Teng-Yi Huang
Deriving and validating biomarkers associated with autism spectrum disorders from a large-scale resting-state database
Scientific Reports volume 9, Article number: 9043 (2019)

 

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