2024年9月30日月曜日

超高解像度を持つ細胞外小胞分離技術 ~総括~

(背景)
宇宙、地球には天文学的な数の物質があります。
生物、人、もっといえば、人間一人の身体の中においても
その数のスケールは構造ベースで考えると天文学的になります。
そうした数は定量できる次元を超えています。
自然に、全く何一つ同じものはない。
それはまるでフェルミ粒子は同じ量子状態をとれない。
このことにもつながるように思えます。

しかし、人は、そうした自然の異種性、非同一性の中に
人だけが主に構築する「概念」を持ち込み、
一定の精度で集合を作り、
それを概念上は同一のものとして定義します。
そうしたいわば、近似が
少し大げさですが私たちの近代的生活を支えています。

その「概念」とは特定の解像度で分離した集合として定義する。
このようにもいえます。
その概念は頭の中だけで形成されることもあります。
芸術、数学がその代表であり、
より近代的なところでは人工知能、仮想空間がそうです。

分類学(Taxonomy)という学問があります。
生物を種々な共通的な特徴によって分類し、
体系的にまとめ、生物多様性を理解する。
このように定義されます。
広義にいえば、数学も含め、あらゆる学問は
人による理解を伴なうモノであり、
生物が共通的に持つ感覚から超越した領域を含みます。

こうした「理解」「概念」のために
人は簡単な言葉でいえば「分ける」という事を
ひたすらしてきました。
この「分ける」という取り組みが、
間違いなく今日の人類の繁栄に関係しています。

超高解像度細胞外小胞分離技術は、
物質の構造解像度で、物質を「分ける」という事を目指します。

人が部屋の中を掃除するときを考えます。
衣類、ゴミ、常備薬、書物、食品など
生活に必要な様々な「物質」がありますが、
片づける時には、傾向として
こうした分類可能な生活要因を個別に分ける事をします。

人には上述した「概念化」も含めて
「分ける」という事が極めて生活の中で基本的な事なので
超高解像度細胞外小胞分離技術と
仮に、たいそうな名称で定義しています。
根本は「分ける」ということなので、
その内容を知ると、極めて普通の事で
この技術の背景に存在する重要性を多くの人は気づきません。

もし、そこに気付いているなら、
すでに世界の誰かが、この技術を発明し、
それを実用化し、すでに普及しているはずです。

超高解像度細胞外小胞分離技術は
物質間の結合と重さの違いに着目して
物質を分離する事を目的としています。
この物質を分けるという事は
人間の営みにおいて極めて基本的、かつ普遍的な事なので
元々、出発点が医療ではありますが、
その適用範囲は
あらゆる学問、あるいは人の生活に関わります。

この技術が実現した時の応用が「無数」にあるのは
その分けるという行為が
今まで人間がしてきた近代的生活のプロセスの中で
基本的必要要件の一つだからです。

少し、私が目指す領域とは離れた応用について
ここで少し考えてみましょう。

世界に80億人の人が生活しています。
その生活の中で排出される膨大なゴミがあります。
日本では、そのゴミは適切に処理され、
それが道端に散乱していることはありません。
しかし、区画化されたごみ捨て場に
誰もいない早朝にカラスが来て、
排出されたごみがあたりに散乱することがあります。
でも、誰かが掃除をして、また、綺麗に保たれます。
今では、ゴミはある程度は分けられます、
ゴミ処理場でのごみの処理において、
ゴミを分類して、焼却など適切な処理を行うための
労力、エネルギーは膨大です。
上述したように散乱したごみを綺麗にする
人がいるから、道端は綺麗に保たれ
それによって衛生状態も維持されます。
そこにも人による労力が費やされます。

もし、こうしたごみを非常に高精度に分ける技術があれば、
生活の中でのごみの処理、リサイクルは非常に楽になります。
私が開発する超高分解能細胞外小胞分離技術と
こうした生活の中でのごみ処理問題は
スケールが違うので当然、そのまま当てはめることができませんが、
広義に基本的なコンセプトに着目すると
新たに効率的にごみを処理するプロセスに貢献するかもしれません。
例えば、
私の分離技術では「重さ」に着目しますが、
ごみを「重さ」と「沈降速度」で簡便に分ける事で
ゴミ処理において何か付加価値をもたらすことはないか?

「分ける」という事は
このような全く異なるスケールでの分類の応用としても
生かす事ができるくらい普遍的な事です。

従って、私が、分子構造レベルで
結合性、重さ、沈降速度に主に基づいて分けるというシステムは
単に医療だけではなく、
宇宙を含めた工学、生物学、薬学、
それに紐づく様々な分野において貢献しうることです。

分けるという事は地味なことですが、
上述したような人間の営みにおいて基本的な事であるがゆえに
その応用は無数にあり、
それによってもたらされる付加価値は膨大であるという事です。
少なくとも、それに私は気づいたという事です。

従って、この総括では
その「無数」に存在しうる応用において
一つ一つ具体的な応用を示すことはしませんし、
とても、そうした応用を1人の人間が全て包括する事は不可能です。

日本を始め、世界には
多くの人がいて、知識、知恵、経験などの知的資産があります。
また、応用を可能とする技術的資産もあります。
私が出発点として示した
この普遍的な分離技術を是非、
極端な話、技術に関わらない主婦の方も含めて
色んな観点で考え、
人の持続可能かつ近代的な生活に貢献してほしいと思います。


(技術)
上述したように応用範囲は非常に広いですが、
私個人としては、生物学、薬学、医学、医療。
その中でも特に医療。
もっといえば、小児医療。
さらにしぼれば、小児がん、小児脳腫瘍。
これの顕著な改善のために、この超高精度な分離技術を適用します。

この総括ではそうした目的に応じて
内容をある程度絞って、書き記します。

私の目的の最も下位、具象、核にあるのが小児脳腫瘍です。
従って、患者(お子さん)の脳神経内にある
癌細胞から出る物質を「分ける」事を目指します。

それを実現するために考えているより具体的な手段は
癌細胞から放出される細胞外小胞を
採血を通して、1ppmの精度で検出し、分離精製する事を目指します。

1ppmとは1 part per millionですから
全細胞外小胞10^6個から1個の精度で分離精製する事を示します。
そのためには
分離するためのS/N比。
ここにおける
S(シグナル)は、癌細胞由来の細胞外小胞を検出する精度
N(ノイズ)は、癌細胞由来ではない細胞外小胞を検出してしまうレベル
このように定義すると
分離精製の精度である10^6のS/N比では足りません。
その精度では1ppmしか含まない癌細胞の細胞外小胞環境にある時、
半分以上の無視できないレベルで
癌細胞由来ではない細胞外小胞を検出してしまいます。
それくらいの数しかない癌細胞を99%含むような
分離精製を実現するためには
少なくとも1ppmよりも2桁程度高いS/N比を実現する必要があります。
すなわち、S/N比:10^8ということです。

この精度は、細胞外小胞を実際に薬物キャリアとして利用する
あるいは液体生検のバイオマーカーとして利用するために
実務経験として扱ったことのある人にとっては
明かに度を越えた難しさであるという事は自明です。

では、具体的にどういった技術で
特定の細胞種、上の例では脳神経系の癌細胞の細胞外小胞を
非常に高精度に識別して、分離精製する事ができるでしょうか?

まずは、それについての概要を説明します。

癌細胞由来の細胞外小胞の生物発生機序は一つではないですが、
非常に小さなExomereなど、発生機序が未だはっきりしない
ものを除けば、おおよそ共通なことがあります。
細胞質にある物質を内腔に含み
その内腔を囲む膜は細胞膜から生成されます。
また、細胞膜上の膜タンパク質は
そのまま細胞外小胞の膜タンパク質として引き継がれます。
こういった
細胞外小胞の物質は癌細胞の情報そのものですから
その物質情報だけではなく、
幾何学的、電気的に現れる特徴も含めて
癌細胞由来の細胞外小胞を分離精製する事を試みます。

そのための方法を一つの限定する事はしませんし、
それが可能なあらゆる方法が技術開発の対象となりますが、
今、1次評価の現時点で想定している事は
モノクローナル抗体による免疫沈降のコンセプトに倣い、
結合性、重さ、沈降速度による分離です。
より具体的には
癌細胞由来の細胞外小胞に特徴的に発現される、
あるいは統計的に多く発現される膜タンパク質に
特異的な結合親和性を持つ膜タンパク質を装飾した
分離精製媒体である細胞外小胞を
エンジニアリングによって別途用意し、
それらの結合によって、重さによって差別化し、
その重さの違いによる沈降速度を精度よく利用して
溶液内で分離する事を試みます。

こうした方法は極めて先進的ですが、
それでも上述した1ppmしか含まれない
癌細胞由来の細胞外小胞を精度よく分離精製するために
求められる仕様には
一つの分離メカニズムでは到底、到達しません。

例えば、脳腫瘍の表面タンパク質に着目したプロテオーム解析、
すなわちSurfacomeのデータを見ると、
Receptor-type tyrosine-protein phosphatase eta
これであるDEP-1と呼ばれる表面タンパク質。
(参考文献(2) Figure 8)
これは癌細胞で約48倍(log2:5.61)発現されています(1)。
このThe protein tyrosine phosphatase (Ptp) familyと
一般的な癌との関連は指摘されています(3)。
しかし、
最も通常細胞と差が現れたこのタンパク質でさえも50倍の差です。

従って、もし、特異的な結合でもって
細胞外小胞で分離する事を試みても、
せいぜい1/100程度の精度、すなわちS/N比10^2くらいが限界です。
もし、S/N比を7桁、8桁高めるためには
これと合わせたタンデム(直列)な対策が必要になります。

言い換えると、複数の乗算される高次の対策が必要です。
基本的に、今、1次評価の時点で
私の頭の中にある素案は下の5つです。

(1D)タンパク質特異性:発現量の多い対タンパク質の装飾
(2D)結合力特異性
(3D)組み合わせ「AND」;タンパク質構造/結合力
(4D)重さ特異性:沈降速度
(5D)細胞外マトリックス-インテグリン仲介沈降

これに加えて、
バックグラウンド、参照データを集め、
癌細胞由来の細胞外小胞の幾何学的、電気的データが
下記に示す、様々な特徴量に対して
特異的に明示されると
その結果から想起される
別の次元の分離プロトコルが生じる可能性はあります。

(特徴量)
サイズ:粒子の直径や長さ(例えば、ナノ粒子追跡法で得られるサイズ分布)。
形状の均一性:球形か楕円形か、などの形状的な偏りを示す指標(例えばアスペクト比)。
表面テクスチャ:表面の滑らかさや粗さを反映した特徴。
凸性:粒子が凸形かどうかを示す指標。
輪郭の複雑さ:フラクタル次元などを用いて輪郭の複雑さを計算。
膜の厚みや密度
上述した特徴量の細胞外小胞の統計的なバラツキ
上述した特徴量のサイズ依存性
付着物質

例えば、硬さ、柔らかさは反発係数として物理的に現れてきますから
沈降のプロセスで人工物と多く衝突させることで
それによる速度差によって
硬さ、柔らかさに応じて細胞外小胞を分離出来る可能性があります。

上の5つの次元の対策について、一つ一つ説明していきます。

(1D)タンパク質特異性:発現量の多い対タンパク質の装飾
 

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