2024年9月14日土曜日

磁気共鳴温度測定の原理、課題

(背景)
磁気共鳴分析/全頭部固定焦点式超音波装置において
頭蓋内の任意の位置において超音波治療を行う際の
位置ガイドとして温度測定は一つの重要な機能です。
また、温熱治療、サーマルアブレーションを
高密度焦点式超音波(HIFU)で行う場合においても
厳密に患部の温度管理を行う必要があります。
また、磁気共鳴分析と
全頭部固定焦点式超音波イメージングの
座標を整合させる際にも温度評価は一つの重要な機能です。

(重要な前提)
磁気共鳴による温度測定は、
水分子の水素結合の変化、それによる局所磁場の変化によって
生じるわずかな周波数、位相シフト(0.01ppm/℃)。
これらを検出することを試みます。
基本的に水が少ない脂肪組織、骨、表皮では
温度測定を磁気共鳴ですることは原理的に難しいです。
後は、女性の乳房も一定量水分が含まれますが
脂肪が多いため高い精度で検出する事が難しいかもしれません、
また、脳神経系でも
パーキンソン病、脳梗塞、アルツハイマー病、多発的硬化症などの
疾患においては水分量が減少する事があるため、
治療の際に患部に対して
超音波で介入を行うケースが将来的に生じた時に、
磁気共鳴で温度管理する事に支障が生じる場合があるかもしれません。
ただ、脳組織は加齢に伴い水分を失う傾向にはありますが、
もともと水分量が多い組織の為、
測定系が確立すれば、特に問題なく測定できる可能性もあります。
一方で、
超音波でも温度が計測できる可能性があるので(3)、
1次調査、研究開発の段階でその方法を除外しない事が重要です。
但し、超音波は骨は特に非常に反射が大きな組織で
計測の大きな障害になるので、
基本的には微細な温度計測には向かない事と
水分が少ない脂肪組織も同様です。


(内容)
磁気共鳴ではラーマー共鳴させる
水素などの電子の以下の特性が温度によって
一定の係数で変化します。
それを精密に計測することによって温度を特定します。
それぞれ数式や測定プロトコルを示します(Open AIより)。

--
(MR-TM1)プロトン共鳴周波数シフト(PRF, Proton Resonance Frequency Shift)
<数式>
プロトンの共鳴周波数 νは、温度 T に対して次の式で変化します。

(Δν/ν(0)) = α * ΔT

Δν:共鳴周波数の変化
ν(0):温度変化前の共鳴周波数
α:温度感受性係数
ΔT:温度変化

従って、波長シフトは温度変化に対して線形に変化します(1)。

この温度感受性係数はおおよそ
-0.01ppm(-1.03±0.02 * 10^-8)です(1,2)。
ラーマー共鳴周波数が短くなり、レッドシフトする理由は
温度が上昇すると水分子の水素結合が弱くなり、
それによって水素分子の自由度が高まるため、
局所的な磁場が遮蔽される(弱まる)からです。
従って、この係数は当然、
重水素になると変化します。
基本的に化学結合が弱い方が、温度に対して敏感に
結合状態が動くと考えられるため、
重水素や脂肪組織の水素は
水の水素結合よりも強い力で水素が束縛されているため、
温度に対する化学シフト量が小さくなります。

例えば、温度1℃の変化をモニタリングするためには
RFコイルで検出される周波数を
0.01ppmの正確性で分析する必要性が出てきます。
今、私の取り組みとして
ラジオ波の半値幅の低減を目指しています。
だいたい1~2ppmくらいを目指しています。
こうした半値幅精度がRFコイルも含めて入射回路系で上がる事は
同時にアンテナとしてラジオ波信号を受けとる
ピーク波長(周波数)の検出感度と直接的に関連します。
実際に温度1℃の精度でMRIで温度分析するためには
私が目指すラジオ波半値幅よりもさらに1/100以上高い精度で
ピーク波長の違いを識別する必要があります。
これはOpen AIの回答なので検証する必要がありますが、
ピーク波長の検出感度は波長半値幅の
1/1000〜1/100程度になることが多いとされています。
従って、温度1℃の精度で分析するためには
ラジオ波の半値幅の低減は絶対的に必要であり、
私が目指す1~2ppm程度の半値幅正確性を実現しないと
温度0.1 - 2℃の精度で磁気共鳴温度測定を実施する事は難しい
という計算になります。

但し、実際に周波数が温度によってシフトすると
それによって放出されるラジオ波の位相も変化します。
Gradient-Recalled Echo (GRE)によって位相を高感度に取る事によって
波長シフトだけに頼らない、位相シフトによっても
温度変化を検知できます。
一方で、この位相シフトも0.01ppm/℃/360°しか動かないため
非常に微妙な位相シフトを捉える必要があります。

<測定プロトコル>
高磁場強度(1.5Tまたは3T)のMRシステムを使用し、
温度感受性の高い組織での周波数シフトを測定します。
T2*-weighted gradient echo シーケンスなどを用いると
高感度に測定できます。
この時、T2強調とするのは脂質内の水素などと切り分けて
水の水素の信号を強調するためです。

--
(MR-TM2)拡散係数(D, Diffusion Coefficient)
体の中に豊富にある水分子の拡散係数は、温度が上がると増加します。

<数式>
拡散係数D と温度 T の関係は、次のようなストークス・アインシュタインの式で表されます。

D ≒ e^(-Ea(D)/(k * T))
(参考文献(1) 式(10)

Ea(D):水の分子拡散の活性化エネルギー
k:ボルツマン定数
T:絶対温度

温度感受性は2%/℃なので比較的高いです。

<測定プロトコル>
Diffusion-weighted imaging (DWI) を使って拡散係数の変化を捉えることができます。強い勾配磁場が必要であり、通常は EPI(Echo Planar Imaging)シーケンスを用います。

--
(MR-TM3)T1緩和時間(T1 Relaxation Time)
T1緩和時間は温度上昇に伴い増加します。
これは、温度が上がるとプロトンが緩和するのに時間がかかるためです。

<数式>
T1と温度の関係は一般に指数関数的な変化として表現されます。

T1(T)∝ e^(-E0(T1) /(k * T))
(参考文献(3) 式(3))

E0(T1):縦緩和プロセスの活性化エネルギー
k:ボルツマン定数
T:絶対温度

このE0(T1)は組織タイプ依存的であるため、
T1緩和時間が温度に対してどういった感受性で
変化するかが組織ごとに変わります。
従って、T1緩和時間の変化から
温度変化を推定するのは
比較的特性が揃う水の化学シフトよりも難しいです。


<測定プロトコル>
Inversion recovery シーケンス や Look-Locker シーケンス を使ってT1緩和時間を正確に測定します。

--
(MR-TM4)T2緩和時間(T2 Relaxation Time)
T2緩和時間は温度の上昇によって減少する傾向があります。温度が上がると分子運動が活発化し、スピンの位相が崩れやすくなるためです。

<数式>
T2と温度の関係もT1と同様に温度依存の関係を持ちます。

T2(T) = T2(0) * e^(-γ * T)

T2(T):温度TにおけるT2緩和時間
T2(0):基準温度でのT2緩和時間
γ:温度感受性係数

<測定プロトコル>
Spin Echo シーケンス や Multi-echo シーケンス を使用してT2緩和時間を測定します。

--
(MR-TM5)磁化転送(Magnetization Transfer, MT)
温度が変化すると、自由水と結合水との間の磁化転送率が変化します。これにより、温度依存の信号変化が観察されます。

<数式>
MTの温度依存性は複雑で、組織や周波数によって異なるため、単純な数式で表すことは難しいですが、プロトンの化学シフトや結合状態に依存しています。

<測定プロトコル>
Magnetization Transfer Imaging (MTI) シーケンスを使用します。特定のラジオ波パルスを用いることで結合水の磁化転送効果を捉えます。

--
(MR-TM6)プロトン密度(Proton Density)
プロトン密度は平衡状態の磁束密度に線形に依存します。

PD ∝ (N * γ^2 * h^2 * (I(I+1)) * B0) / (3 * μ0 * k * T)
(参考文献(1) 式(1))

N:体積当たりのスピンの数
γ:時期回転比
h;プランク定数
I:スピンシステムの量子数
B0:磁束密度
μ0:自由空間の透磁率
k:ボルツマン定数
T:絶対温度

従って、プロトン密度は絶対温度の1乗に反比例します。

<測定プロトコル>
Proton Density-Weighted Imaging(PDWI)を使用してプロトン密度の変化を追跡します。

--
(MR-TM7)温度感受性コントラスト剤
温度感受性のMRコントラスト剤は、温度に応じてその磁気特性が変化し、MR信号の変化を引き起こします。特に、ガドリニウムベースのコントラスト剤や特定の超常磁性ナノ粒子が使用されます。

<数式>
温度感受性コントラスト剤の磁気特性の変化は、次のような形で表されます。

R1 = R1(0) + k * (T - T0)

R1:コントラスト剤の縦緩和率(T1の逆数)
R1(0):基準温度T0における緩和率
k:温度感受性係数
T:現在の温度
T0:基準温度

--
ただし、これらの温度測定でわかることは
いずれも「相対温度変化」です。
また、係数がはっきりわかっていない場合、
信号から温度変化が起こった事実はわかっても、
実際に何度、温度が変わっているかがわかりません。
例えば、温熱療法やサーマルアブレーションでは
それぞれ42-45℃、50℃-80℃程度で行われますが、
絶対的な温度で医師、技師が確認したいという事があります。
そのためには基準温度計測と相対温度変化の
定量化のための係数決定(測定)が必要になります。
基準温度計測は、MRI装置の外で
深部温度を計測できる装置、デバイスがあれば、
ある程度の位置、温度精度で
基準温度を確認すればいいので、
必ずしもMRI装置の中に温度センサーを置く必要はありません。
体内に共通的に存在する水分子の水素の電子が
温度測定対象として望ましく
その係数は-0.01ppm/℃とされていています(1,2)。
(参考文献(4) FIG.4参照)
しかし、波長シフトする量は温度に対して非常に微量です。
事前の深部温度の測定に関して、
人の表面体温と深部温度の関係性がある程度わかれば、
最終的には、MRI測定の前に簡単にできる
表面体温測定だけで済むということになるかもしれません。


(参考文献)
(1)
Viola Rieke, PhD,* and Kim Butts Pauly, PhD
MR Thermometry
JOURNAL OF MAGNETIC RESONANCE IMAGING 27:376–390 (2008)
(2)
Jing Yuan1, Chang-Sheng Mei2, Lawrence P. Panych2, Nathan J. McDannold2, Bruno Madore
Towards fast and accurate temperature mapping with proton resonance frequency-based MR thermometry
Quant Imaging Med Surg. 2012;2(1):21-32. d
(3)
Emad S. Ebbini, Claudio Simon, and Dalong Liu
Real-time Ultrasound Thermography and Thermometry
IEEE Signal Process Mag. 2018 March ; 35(2): 166–174.
(4)
K. Kuroda, 1,2,3 R.V. Mulkern, 2,4 K. Oshio, 2 L. P. Panych, 2 T. Nakai, 3 T. Moriya, 3 S. Okuda, 2 K. Hynynen, 2 and F.A. Joles
Temperature Mapping Using the Water Proton Chemical Shift: Self-Referenced Method With Echo-Planar Spectroscopic Imaging
Magnetic Resonance in Medicine 43:220–225 (2000)

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