磁気共鳴分析や超音波エコー分析、
あるいは超音波を使った治療では
装置の性能として空間分解能という重要な因子があります。
もちろん、空間分解能を上げれば
それだけ信号が弱くなり、測定時間も要するという事がありますが、
今までよりもより細かく体の中の病変部位の検出や
あるいは小さな病変部位を治療することが可能になります。
今は、磁気共鳴分析、超音波分析、治療の
保証された分解能はおおよそ1mmくらいです。
人の構成単位である細胞の直径が数十μmなので
細胞レベルの検出は難しく、
分解能を超える少なくとも数mmくらいの
まとまった形の特性変化が必要になります。
その空間分解能は何に律速されているか?
それを理解する事が大切です。
磁気共鳴分析や超音波エコー分析では
特定の周波数で振動するラジオ波や超音波信号の
周波数正確性が空間分解能に影響を与えます。
例えば、
ラジオ波であれば、実現できる半値幅が
共鳴範囲に影響を与える為、
周波数コードした領域に直接的に影響を与え、
それが実現できる空間分解能になります。
その為には交流信号の発振器の時間分解能、正確性が必要になります。
一方で
超音波エコー分析装置でも
位相アレイトランスデューサーが利用され、
その方向、言い換えれば角度の正確性が
焦点位置での空間分解能に関与します。
位相アレイトランスデューサーでは
その角度の正確性のためには
位相の制御の正確性が必要になり、
その正確性を根本で保証する
超音波発信源の時間応答特性が関係すると考えられます。
今まで、超音波トランスデューサーに利用されてきた
ピエゾ素子(圧電素子)において
非接触で操作できる光超音波に関しては
熱膨張や熱的相転移を利用しているため
その時間正確性はナノ秒時間スケールが限界でした。
Tatsuya Amano(敬称略)らの研究グループは
モット材料であるV2O3の
金属層から絶縁層の相変換の際に起こる結晶構造の変化を利用して
そこから超音波に利用できうるひずみ波を生じさせました。
今までの光超音波の応答速度よりも100倍程度速い
数十ピコ秒の応答速度を実現したと報告しています(1,2)。
そうした相変換の誘導は
フェムト秒領域の応答速度を持つ光によって生じます。
このような相転移に伴う構造の変化は
電子が周期的に列をなして並ぶ電荷密度波の有無でも生じます(3)。
例えば、光ではなく高圧状態での
超伝導相転換でも構造的な変化が生じることがあります(4)。
Tatsuya Amano(敬称略)らが確認した
光励起での相転換による結晶構造の変化は
Rb0.94Mn0.94Co0.06[Fe(CN)6]0.98
この材料でも生じるとされています。
(参考文献(5) Fig.3)
しかし、実際のひずみ波を放出するときには
相転換に伴う構造の変化がどれだけダイナミックに生じるか?
これが一つ重要かもしれません。
相転移というのは
例えば、金属から絶縁に特性が「急に」変わる事を示します。
この「急に」というのは連続的、漸次的な変化ではない事を示します。
ちょっと口語的なイメージで言うと
電子に連続的なエネルギー量変化を与えた時
量子化した電子は
がまんして、がまんして、がまんして、、、、
ある閾値になったら
「ストーン」って、他のエネルギー状態に移ります。
この「ストーン」というプロセスが
非常に速いということです。
Tatsuya Amano(敬称略)らがFig,1に示すように
その材料の電子が取り得るエネルギー状態は
連続的ではなく離散的です。
こうした離散性は量子化、量子現象と密接に関わります。
エネルギー取得による
電子のエネルギー状態間の遷移速度は
速い場合はフェムト秒スケールで生じるとされています(Open AI)。
今回のTatsuya Amano(敬称略)らの遷移過程が
ピコ秒スケールで生じているのが興味深いです。
どういたタイムスケールで遷移が生じるかの
物理現象が一義的に決まっているかどうかはわかりませんが、
例えば、
ピコ秒スケールの電子の緩和は
「格子振動、フォノン」が関わっているという研究もあります(6)。
また、光誘導での電子状態の遷移は
ピコ秒よりも速いフェムト秒スケールで生じるという研究もあります(7)。
これを踏まえて、Ooen AIにこのような質問をしてみました。
(質問)
材料の電子のエネルギー状態の遷移によって
相転換、構造変化が生じる場合、
電子のエネルギー遷移と構造変化は完全に同期するか?
あるいはマクロな構造変化は遅れるか?
(答え)
材料の電子のエネルギー状態の遷移と構造変化は、
必ずしも完全に同期するわけではなく、
構造変化は遅れることが一般的です。
以下にその理由を詳しく説明します。
1. 異なるダイナミクス
電子遷移の速さ:
電子のエネルギー状態の遷移はフェムト秒スケールで
発生することが多いですが、
構造変化は通常、原子間の結合や格子の振動に関連しており、
これにはピコ秒からナノ秒のスケールが関与します。
したがって、電子の遷移が迅速に進行するのに対して、
構造変化は遅れることがあります。
2. エネルギーの非平衡
非平衡状態の形成: 電子が高エネルギー状態に遷移すると、
材料内のエネルギーが非平衡な状態になります。
この非平衡状態では、電子のエネルギー状態が変化した後に、
格子や原子がそれに応じて動くため、
構造変化が遅れることがあります。
3. 相互作用の影響
フォノンとの相互作用: 電子の遷移後、
原子の構造変化はフォノン(格子振動)と
の相互作用によって引き起こされます。
この相互作用には一定の時間がかかり、
その間に構造が安定するまでに時間がかかることがあります。
4. 遷移メカニズム
連鎖的なプロセス:
相転換は多くの場合、電子遷移から始まりますが、
その後、原子が新しいエネルギー配置に
移動するための連鎖的なプロセスが必要です。
このプロセスは、エネルギーの散逸や
結合の再形成を含むため、全体の遷移が遅れる要因となります。
まとめ
材料の電子のエネルギー状態の遷移と構造変化は、
必ずしも完全に同期せず、構造変化が遅れることが一般的です。
電子遷移の迅速さに対し、
構造変化はエネルギーの散逸やフォノンとの相互作用を経るため、
時間的に遅れが生じることがあります。
(回答終わり)
--
例えば、今回、エネルギーの遷移の媒体が主に電子でしたが、
それが光子や他の粒子になった場合はどうか?
このような疑問が生じます。
例えば、材料に適切に設計した周期構造を作ると
フォトニックバンドギャップが生じます。
そのフォトニックバンドギャップでは
光、フォトン、光子が
バンドギャップのエネルギーを取ることが許されませんから、
そこに離散性が生じます。
このフォトニックバンドギャップ間の
光子のエネルギー遷移の速度はどれくらいか?
例えば、アト秒スケールで起こるのか?といった疑問もあります。
(参考文献)
(1)
Tatsuya Amano, Danylo Babich, Ritwika Mandal, Julio Guzman-Brambila, Alix Volte, Elzbieta Trzop, Marina Servol, Ernest Pastor, Maryam Alashoor, Jörgen Larsson, Andrius Jurgilaitis, Van-Thai Pham, David Kroon, John Carl Ekström, Byungnam Ahn, Céline Mariette, Matteo Levantino, Mikhail Kozhaev, Julien Tranchant, Benoit Corraze, Laurent Cario, Mohammad Dolatabadi, Vinh Ta Phuoc, Rodolphe Sopracase, Mathieu Guillon, Hirotake Itoh, Yohei Kawakami, Yuto Nakamura, Hideo Kishida, Hervé Cailleau, Maciej Lorenc, Shinichiro Iwai & Etienne Janod
Propagation of insulator-to-metal transition driven by photoinduced strain waves in a Mott material
Nature Physics (2024)
(2)
東北大学 2024/プレスリリース・研究成果
名古屋大学 研究成果発信サイト
量子物質の光照射によって数兆分の1秒で構造が変化することを発見 ─ 光音響デバイスの新規開拓に期待 ─
(3)
T. Huber, S. O. Mariager, A. Ferrer, H. Schäfer, J. A. Johnson, S. Grübel, A. Lübcke, L. Huber, T. Kubacka, C. Dornes, C. Laulhe, S. Ravy, G. Ingold, P. Beaud, J. Demsar, and S. L. Johnson
Coherent Structural Dynamics of a Prototypical Charge-Density-Wave-to-Metal Transition
Phys. Rev. Lett. 113, 026401
(4)
Qing Dong, Quanjun Li, Shujia Li, Xuhan Shi, Shifeng Niu, Shijie Liu, Ran Liu, Bo Liu, Xuan Luo, Jianguo Si, Wenjian Lu, Ning Hao, Yuping Sun & Bingbing Liu
Structural phase transition and superconductivity hierarchy in 1T-TaS2 under pressure up to 100 GPa
npj Quantum Materials volume 6, Article number: 20 (2021)
(5)
Marius Hervé, Gaël Privault, Elzbieta Trzop, Shintaro Akagi, Yves Watier, Serhane Zerdane, Ievgeniia Chaban, Ricardo G. Torres Ramírez, Celine Mariette, Alix Volte, Marco Cammarata, Matteo Levantino, Hiroko Tokoro, Shin-ichi Ohkoshi & Eric Collet
Ultrafast and persistent photoinduced phase transition at room temperature monitored by streaming powder diffraction
Nature Communications volume 15, Article number: 267 (2024)
(6)
N. Buecking,1,2 P. Kratzer,2,3 M. Scheffler,2 and A. Knorr1
Linking density functional and density-matrix theory: Picosecond electron relaxation
Physical reviews B 77, 233305 2008
(7)
Yu Takahashi1, Takeshi Suzuki2 , Masaki Hattori1 , Mario Okawa1 , Hidenori Takagi3,4 , Naoyuki Katayama5 , Hiroshi Sawa5 , Minoru Nohara6 , Yigui Zhong2, Kecheng Liu2, Teruto Kanai2, Jiro Itatani2, Shik Shin2,7, Kozo Okazaki2 , and Takashi Mizokawa
Temporal Evolution and Fluence Dependence of Band Structure in Photoexcited Ta2Ni0.9Co0.1Se5 Probed by Time- and Angle-Resolved Photoemission Spectroscopy
J. Phys. Soc. Jpn. 92, 064706 (2023)
登録:
コメントの投稿 (Atom)

0 コメント:
コメントを投稿