実際に血液などの(液体)生検から
癌細胞由来の細胞外小胞を高精度で分離するときに
「確かにそれが癌細胞由来の細胞外小胞である」
この確からしさをどうやって評価するか?
この前提となる問題、課題があると思われます。
ここでは小児脳腫瘍について、例説します。
私が現在評価する中での必要条件は
バックグラウンドの参照データを構築するということです。
具体的には
小児脳腫瘍の組織を取り出して、
その癌細胞から放出されるエクソソームを分析します。
内容物、膜構成、表面タンパク質、
大きさ分布、形、電荷。
これらあらゆることがベースデータとなります。
しかし、当然、脳腫瘍の種類ごとに
こうした物質的、幾何学的、電気的特性は大きな偏差がある。
この可能性もありますし、
1人の患者(お子さん)でも、データとして収束しないかもしれません。
脳腫瘍は外科的に除去される臨床のケースが多いと推定しています。
当然、先生(外科医)と患者様の同意が必要ですが、
摘出した脳腫瘍の組織を頂いて、
構成される癌細胞を精製、場合によっては培養して
そこから生み出されるあらゆるサイズの細胞外小胞を分析します。
この細胞外小胞が
私が生検で目指す「ゴール」です。
得られた癌細胞の細胞外小胞を余すところなく
内容物、膜構成、表面タンパク質、
大きさ分布、形、電荷。
これらなどの統計的情報を取得します。
分類できる項目はできるだけ細かく分ける事を考えます。
その分類を合成する事は任意に可能ですが、
分類せずに分析すると、後に分ける事ができないからです。
典型例としては
細胞外小胞の「大きさ」を区分して分けて分析する
ということです。
Exomere、Supermereなど未開の細胞外小胞も
生物学そのものへの貢献も考慮して、分析対象とします。
このデータが
後に分離した細胞外小胞が
「確かに癌細胞由来の細胞外小胞である」
とプロセス段階で評価するための
バックグラウンド、参照データとなります。
従って、貴重なデータなので、非常に慎重に扱う必要があります。
少なくともどういった条件、項目でデータを取るのか?
それについては2次評価でしっかり議論する必要があります。
この組織から得た癌細胞からの細胞外小胞を
骨の髄まで余すところなく分析する事は
私が強い決意を持って実現を目指す
細胞種解像度の細胞外小胞分離技術ができるかどうか。
その確認を待たずして、実施したいということがあります。
この組織解析自体が、評価に使えるため、
細胞種解像度の細胞外小胞分離技術開発のプロセス、達成有無に
直接的に関連するということもあります。
もう1つは、癌細胞の細胞外小胞を徹底的に分析する事が
私が生検で目指す「ゴール」なので
その価値を事前に確認できるという事があります。
具体的にどういう物質的情報が得られるかがわかるので
そこからどう薬の選択を含めた治療に役立てるのか?
それを事前に評価する事が可能になります。
それを高い精度で行うためには
データを取る段階で、「個人」で分けたデータも
少なくとも一部は用意しておく必要があります。
なぜなら、最終的に患者さん一人の癌細胞の組織から、
細胞外小胞を通じて、物質、幾何情報も含めた
様々な分析を行い、そこから投薬を決定する
というシナリオを描いているからです。
それを事前に評価できるというのは大きなチャンスなので
できれば、データ分析は個人で分けたいということがあります。
医師にデータを届ける時にも
複雑な大量のデータをそのまま渡しても
先生がそれを解釈するのが非常に大変ということがありますから、
ある程度、コンピューター(人工知能)が
特徴を抽出して、薬剤処方につなげる結果を
複数のパターンで出力するアルゴリズムを組み
環境を構築する必要があります。
上述したようにすでに組織から取得した
私が目指す「ゴールの型」となるデータがあれば、
それを元に事前にこうしたシステムを構築する事が可能になります。
細胞外小胞による評価の達成の有無にかかわらず、
手術で取り出した癌細胞の細胞内の物質を分析して
それをアドジュバントを含めた内科的治療に生かす
というプロセスも当然考えられますから、
その物質の評価に対しても整合するように
コンピューター(人工知能)アルゴリズムを組みます。
お子さんの脳腫瘍の組織を外科的に摘出する機会があるなら
当然、その生の組織を癌細胞、細胞外小胞を含めて
分析する、治療手順を確立する事は
当然、必要なことです。
それに対して、液体生検で細胞外小胞を分析する価値は
「残存している癌細胞特異的に」
癌細胞内の物質の一部を分析できる事と、
「半年後、1年後、数年後、、」
どのタイミングでも頭蓋骨をへき開することなしに
残存している癌細胞特異的に
癌細胞内の物質の一部を分析できることにあります。
ここについては、大切なところなので
もう少し詳しい説明が必要です。
(特に子どもの)腫瘍組織は
組織内、個体内(お子さん1人)での異種性があります
(inter- and intra-tumor heterogeneity)
目的は「残っている癌細胞を消滅させる事」ですから、
残っている細胞に対して、より適した薬剤を選択したい
ということがあります。
大きな腫瘍を分析すると
細胞形質に大きな偏差がある場合、
残っている癌細胞とは異なる特徴量を抽出して
適切ではない薬物が選択される確率が上がるということがあります。
液体生検による細胞外小胞の分析では
細胞外小胞は回転率が高いので(12分)、
一定の時間を空ければ、
血液中に存在する癌細胞由来の細胞外小胞は
そのほとんどが「残存している癌細胞」由来の細胞外小胞になります。
これをそのまま分離して、高度に分析するわけですから、
残っている癌細胞を精度よく分析する事が可能になります。
それによって抜き取った組織ごと多くの物質情報を得るよりも
それが少なく、より正確に絞られるため、
それに基づくデータ分析も正確になり、
適切な薬剤、治療が実現される可能性があります。
一方で、
組織の解析は、そのまま取り出したものをみればいいわけですから
私たちが苦労して開発する高度な分離技術を必要とせず、
その気になれば、今すぐにでも実施できることですし、
すでに、それは実施されているかもしれません。
組織ごとの解析が可能なので、
細胞外小胞とは異なり、完全な細胞の情報を取ることができます。
どちらにも有利、不利があり、
両方行う事で、相互補完的な治療付加価値が生まれます。
例えば、
細胞外小胞から得られる一部の物質情報と
組織を抽出した時に得られた細胞ごとの物質情報を整合する事で
より、残存している癌細胞に対して
正確な治療が行える可能性があります。
もし、今、組織解析が行われていないのであれば、
すでに装置処理能力、人的労力、コストの問題で
それが実施できないということがあるかもしれません。
この問題は
細胞種解像度で細胞外小胞を抽出する技術を開発しても
今のままでは同じように個別の患者さんに適用できない
という結果にもつながるので、
装置処理能力、人的労力、コストの問題を乗り越えられるように
徹底的な自動化、人工知能の組み込み。
これらなどを行う必要があります。
逆に言えば、これを機にこうした開発をすることは
私の最重要なプロジェクトである
細胞種解像度を持った細胞外小胞分離技術の
実現の可、不可にかかわらず、
外科的に摘出した癌細胞を患者さんごと
実現可能な形で分析して、内科的治療に生かせる。
この事に繋がります。
従って、こうした可能性を含めてシステム開発が必要で
それは、私のプロジェクトに対する
一つのリスクヘッジになり、
また、両方達成した時の相乗効果を生むことになります。
ここまで説明すると一部の人は
「細胞解像度の細胞外小胞の分離技術はいらないのではないか?」
このように思われるかもしれません。
それは高い確率で見当違いです。
脳腫瘍は外科的手術だけではなく、放射線によっても治療されます。
また、それ以外の内科による治療の可能性もあります。
従って、必ずしも組織が手に入るわけではない
ということが一つとしてあります。
このいずれの治療のケースでも
癌細胞特異的な細胞外小胞の分離技術は適用可能です。
もう1つは、この技術の波及効果を考える必要がある
ということです。
きちんとバックグラウンドデータベースを構築する。
それに基づいて細胞種ごと表面タンパク質依存的に
高精度で分離する技術は、
組織が手に入りにくい他の疾患や
全身性の疾患などの治療にも原理的に適用可能です。
また、
腫瘍組織は高度、高次に微小環境を形成するため
血管の細胞種、周辺のグリア細胞、免疫細胞
線維芽細胞など関連性のある他の細胞種の
細胞の一部の情報をそこから分泌された細胞外小胞を
骨の髄まで分析する事で
その細胞の形質の一部を理解する事が可能です。
あるいは、この技術は
世界の感染症の管理、海などの微生物を通した環境管理、
効果的な敗血症の治療システムの構築など
医療、環境など様々な事に貢献する事ができます。
これを機に
色んな微生物の表面タンパク質を調べるきっかけになります。
今は、まだわかっていないことが多いからです。
こうした明確な目的、出口戦略があれば、
今までよりも詳しいデータベースの構築の駆動力になります。
また、そのデータベースに基づいて
適切に設計された細胞外小胞の分離技術で
より高精度に微生物を分析、管理することが可能になります。
後、参照(レファレンス)、バックグラウンドデータとして
もう一つ、私が1次評価として必要と考えるのが、
癌細胞と特性を比較する通常細胞の細胞外小胞のデータです。
この時には、
癌のないお子様に採血の協力をしていただいて、
その血液のデータから、通常細胞の細胞外小胞を分析します。
このとき、「お子様」「採血」としたのは
最終的に細胞外小胞を実際に分析するときに
脳腫瘍を頂く患者様が子どもの場合には
その比較データも同じようにお子様にしたいという事。
実際に液体生検の手段は血液を想定している事。
これらが理由としてあります。
できるだけ実施する条件と揃えて
参照データを構築したいということがあります。
特に重要なのが「表面タンパク質」のデータです。
これが小児脳腫瘍の癌細胞から分泌された
細胞外小胞を1ppmという高精度で分離するための
基本的な手段に関わるからです。
重要なのは表面タンパク質の「有無」よりも
その「発現量」です。
他のあらゆる細胞種に観られず
癌細胞の細胞外小胞だけが発現していて
かつ、それが高頻度で発現している表面タンパク質が
今の1次評価の時点で「ない」とは言えませんが、
身体の連続性を考えると、その確率は低いといえるので、
発現量を「相対的に定量したい」ということがあります。
その為には比較対象とする細胞外小胞の
少なくとも大きさが揃い(表面積の近似)、
かつ分析対象の細胞外小胞の数を正確に定量する必要があります。
様々な表面タンパク質が出てくると思います。
例えば、インテグリンαvβ3が(1)
最も発現頻度も高く、発現比(癌細胞/通常細胞)も大きいとすれば、
このインテグリンαvβ3との特異的結合を想定して
選択的沈降のキャリアである
細胞外小胞のバイオエンジニアリングを試みます。
例えば、小児脳腫瘍の癌細胞のストックがあれば、
そこから細胞外小胞を分泌させ、
事前に血液から採取した通常細胞の細胞外小胞と
個別に正確に定量し、
0.1ppm、1ppm、10ppm、100ppm
これらの数の比(癌細胞EVs/通常細胞EVs)で混合して
実際にインテグリンαvβ3で分離できるか?
その実験モデルを構築する事もできます。
こういった実験は
細胞種解像度での細胞外小胞分離技術の実験手順、
その性能評価に直接的に関わるため、
やはり、実際の組織、血液による
癌細胞と通常細胞の参照データを構築する事は
細胞外小胞の分離ができるかどうかの決定を
待たずにすることが求められます。
もし、より慎重な判断でもって決定する場合には
最低限の前提条件を確認してから行うでも可能です。
例えば、
そもそも、細胞外小胞に任意のタンパク質が装飾できるのか?
装飾できたとして、ちゃんと結合して、沈降速度に違いがでるのか?
こうしたことは分離技術の基本的なことなので
それをまず、確認するというのがより安全な選択肢です。
また、細胞外小胞の形を決める特徴量を
できるだけ高次元に定義するため
癌細胞由来の細胞外小胞と通常細胞由来の細胞外小胞を
◎SEMなどの電子顕微鏡
◎Stimulated emission depletion microscopy⇔輪郭蛍光剤塗布の有無
◎光学顕微鏡⇔輪郭蛍光剤塗布の有無
これらなどスケールの異なる顕微鏡でデータ化して
以下の想定される特徴量を定義します。
(特徴量)
サイズ:粒子の直径や長さ(例えば、ナノ粒子追跡法で得られるサイズ分布)。
形状の均一性:球形か楕円形か、などの形状的な偏りを示す指標(例えばアスペクト比)。
表面テクスチャ:表面の滑らかさや粗さを反映した特徴。
凸性:粒子が凸形かどうかを示す指標。
輪郭の複雑さ:フラクタル次元などを用いて輪郭の複雑さを計算。
膜の厚みや密度:透過型電子顕微鏡(TEM)画像から膜の構造情報を抽出。
これを元に人工知能でトレーニングして、
初めに出所がわかっている細胞外小胞によって
正確な推論が可能かどうかをテストします。
最終的に患者さんから
表面マーカーを頼りに分離した
「正解のわからない」
癌細胞由来と思われる細胞外小胞に対して
事前に正解のわかっている癌細胞/通常細胞の特徴量の違いによって
学習した人工知能モデルを使って、
その形から癌細胞かどうかの確からしさを評価します。
その時には細胞外小胞のサイズに応じて
適切な分析方法を選択します。
電子顕微鏡の場合はダメージを与える為、
複数のランダム抜き取り検査になると想定されます。
(参考文献)
(1)
William Echavidre,1 Jérôme Durivault,1 Célia Gotorbe,1 Thays Blanchard,1 Marina Pagnuzzi,1 Valérie Vial,1 Florian Raes,2 Alexis Broisat,2 Rémy Villeneuve,3 Régis Amblard,3 Nicolas Garnier,3 Cécile Ortholan,4 Marc Faraggi,5 Benjamin Serrano,3 Vincent Picco,corresponding author1 and Christopher Montemagnocorresponding author1
Integrin-αvβ3 is a Therapeutically Targetable Fundamental Factor in Medulloblastoma Tumorigenicity and Radioresistance
Cancer Res Commun. 2023 Dec; 3(12): 2483–2496.
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