2020年の統計によると0-19歳までの未成年(子ども)のうち
世界で30,766人が脳腫瘍に発症して、
15,337人が亡くなったと報告されています(1)。
アフリカが統計上、非常に発症も死亡も低いので
診断されなかった人も含めて
これが正確な数を示しているかわかりませんが、
こういった数になっています。
アメリカとカナダは発症率が高いけど、
死亡率はそれに対して非常に低いという統計になっています(1)。
診断の精度が高い事と、治療の技術が優れているからかもしれません。
一方で
日本は脳腫瘍全体で見ると
年間で人口10万人当たりの脳腫瘍の死亡者数が1人で(2)
他の地域よりも4倍近く低くなっています。
しかし、この統計は大人も含まれます。
世界の未成年の脳腫瘍死亡者数を0人にする
という目標は、明らかに挑戦的、最難関ですが、
私のリソースを小児脳腫瘍に絞ってするという事を決定したので
目標は高い方が良いと思うので、ここに設定しています。
ただ宣言するだけではなくて
具体的に実現するためにはどうしたらいいかは当然考えます。
スイスが報告(紹介)している疫学データでは(3)
小児脳腫瘍は大人よりも救命率が高いです。
(5年生存率:25–83% in adults and 50–90% in children)
より重要な事があります。
外科により完全な切除が実現した場合には
5年生存率は子どもの場合、90%を超えると言われています(3)。
また、
最近の日本の国立がんセンターを中心とした報告でも
脳腫瘍ではなく、大腸がんですが、
数か月後のCell free DNAの液体生検の検査で
癌に対して陰性になった人は
4年間の生存率が98.0%(1737/1773)で
陽性の人の生存率84.5%(284/336)
これよりも顕著に高い数字になっています。
癌の再発率ではもっと差が出ています(4)。
白血病など血液の癌では微小残存病変を下げる事が
従来から管理されていますが、
大腸がん、脳腫瘍などの組織常在型の癌でも
初期の治療の時に完全に癌を除去する事が
患者さんの生存率を上げる事につながります。
報告にはありませんが、
生存だけではなく、生活の質にも関わるかもしれません。
ただ、ctDNAも完全ではなくて
ctDNAで陰性でも再発した人はいます。
感度や遺伝子検査に現れにくい、ない癌もあるので
こうした臨床成績はありますが、課題はあるという指摘もあります(5)。
しかしながら、数千人にもなる大規模な臨床調査で
ctDNA陰性では4年間で亡くなった方が36人しかいなくて
生存率が98.0%だったという結果は
小児脳腫瘍の死亡率を世界で0人するという目標を達成する上で
スイスが報告(紹介)している疫学データも合わせると
一つの重要なマイルストーンであるという認識です(3,4)。
国立がんセンターの先生(医師)は
こうした結果を治療に役立てていきたいと言われていました。
すなわちctDNAで癌の状態をモニターして
適切な薬剤の選択をしたいということでした。
私が注力する細胞外小胞、エクソソームは
薬物送達キャリアよりもバイオマーカーとして期待されています。
エクソソームの中は血液中で守られる事と
癌細胞は多くの場合、エクソソームを多く出すことから
エクソソームだけを抽出して、
通常細胞由来の物と混ぜた状態で
中の遺伝子解析をしてもおそらく感度は高いと思われます。
ただ、ctDNAとの差別化をより鮮明にするためには
エクソソームのバイオマーカーとしての潜在性を
最大限引き出したいということがあります。
そのために必要な事は
エクソソームの中身を出さない状態で
通常細胞と癌細胞のエクソソームを分離することです。
さっきからそのプロトコルを考えていましたが
これは結構、難易度が高いです。
私が現時点で考える一番いい方法は
細胞外小胞沈降による分離です。
その手順について以下で説明します。
まず、血液中の細胞外小胞を全て抜き出します。
その中から150nm以下のエクソソームだけを抽出します。
これは空孔や遠心分離などが使えます。
それに対して、300nm以上のマイクロベシクルの表面に
癌マーカー、
例えば、PDL1などの癌の細胞表面で発現が見られる
タンパク質をエンジニアリングによって形成します。
インテグリン、テトラスパニンなども
おそらく発現量は多いと思いますが、
特異性に欠けるため、
PDL1に限らず、癌特異的であれば理想的です。
これを決定するところに一定の困難があります。
また、
マイクロベシクルに他のタンパク質も装飾されるため
それが分離の上で障害になる可能性があります。
この分離は
合成ナノ粒子で抗体で形成する方が好ましい可能性もあります。
この記事ではコンセプトを示すことを目的とします。
150nm以下のエクソソームが浮上する液体条件にして
300nm以上のマイクロベシクルと
癌マーカー同士が結合する事で
300nmの小胞は重いですから、
それによって選択的に癌マーカーのあるエクソソームを沈降させます。
但し、浮上しているエクソソームが凝集しないように
超音波などの処理が必要かもしれません。
沈降したマイクロベシクルと癌マーカーエクソソームを抽出して
超音波処理などで結合状態を解消します。
マイクロベシクルは大きいいですから
150nm以下のエクソソームだけを細孔や遠心分離で抽出します。
これによって原理的に
癌マーカーを持つエクソソームを分離できます。
ある程度の通常細胞の混入はあるにしても
物質としての純度が上がっているので
この物質をマルチオミックス解析する事で
単に、癌が有無を高精度に評価するだけではなく、
過剰になっているタンパク質、
過少になっているタンパク質が
タンパク質そのものや、遺伝子的にわかりますから、
それによって
どういった薬剤を選択すればいいかの正確な指標になる可能性があります。
まずは、従来の無差別のエクソソーム解析で
癌の有無をctDNA、ctRNAと並列した形で行って
それをより正確に診断したうえで
癌があった人のみを上述した多少手間のかかるプロトコルで
再度、患者さんの血液からエクソソーム取り出し
そこから癌エクソソームを精製します。
Xiaoxiao Sun(敬称略)らがFig.1aで示すように(5)、
癌が残っている場合、再発した場合には
多くの場合、遺伝子的形質が変わって、
薬に対する抵抗性を持っている事がありますが、
血液を採ったタイミングがリアルタイムなので
再発した癌の形質の情報を色濃く反映しているので
現状の癌にあった治療方法を様々な方略で治療できる可能性があります。
タンパク質の情報が多様になるはずなので
治療の選択はおそらく一つではないはずです。
この方法なら、偽陰性の可能性も低くなるし
偽陽性も複数の方法で確認するので慎重に検証することができます。
そうするともっと生存率が上がる可能性があります。
また、癌がある人に対して
より正確な情報に基づいて適切な治療法、薬剤を選択できます。
また、細胞種特異的薬物送達システムが確立した時には
エクソソームの表面マーカーから
癌細胞の標的を明かにできるため
より有効な薬剤を癌細胞があるところに
有効に届けることができる可能性があります。
もし、小児脳腫瘍において
外科手術、放射線治療の高度化、
私が開発を目指す
超音波によるサーマルアブレーション、温熱治療、
これらが確立し
さらに上のプロトコルで微小残存病変と癌の形質を正確に掌握し
癌が残っているお子さんに対しては
表面マーカーによる細胞種特異的薬物送達システム、
抗がん剤についてはタンパク質情報に基づいた薬物の選択を行う事で
本当に世界の小児脳腫瘍で命を落とす人をなくす
可能性が見えてくるかもしれません。
まだ、不明瞭なところは残りますが、
私は現時点でもそのような展望を持っています。
(参考文献)
(1)
CBTRUS
FACT SHEET for PEDIATRIC BRAIN TUMORS
(2)
Julie Gould
Breaking down the epidemiology of brain cancer
Nature Outlook
(3)
Ladina Greuter,1,* Raphael Guzman,1,2,3 and Jehuda Soleman1,2
Typical Pediatric Brain Tumors Occurring in Adults—Differences in Management and Outcome
Biomedicines. 2021 Apr; 9(4): 356.
(4)
Yoshiaki Nakamura, Jun Watanabe, Naoya Akazawa, Keiji Hirata, Kozo Kataoka, Mitsuru Yokota, Kentaro Kato, Masahito Kotaka, Yoshinori Kagawa, Kun-Huei Yeh, Saori Mishima, Hiroki Yukami, Koji Ando, Masaaki Miyo, Toshihiro Misumi, Kentaro Yamazaki, Hiromichi Ebi, Kenji Okita, Atsushi Hamabe, Hiroki Sokuoka, Satoshi Kobayashi, George Laliotis, Vasily N. Aushev, Shruti Sharma, Adham Jurdi, Minetta C. Liu, Alexey Aleshin, Matthew Rabinowitz, Hideaki Bando, Hiroya Taniguchi, Ichiro Takemasa, Takeshi Kato, Daisuke Kotani, Masaki Mori, Takayuki Yoshino & Eiji Oki
ctDNA-based molecular residual disease and survival in resectable colorectal cancer
Nature Medicine (2024)
(5)
Xiaoxiao Sun, Lani F. Wu, Steven J. Altschuler & Aaron N. Hata
Targeting therapy-persistent residual disease
Nature Cancer (2024)
2024年9月18日水曜日
Cell-type-specific delivery system,
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小児脳腫瘍の治療方針
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