2020年8月9日日曜日

COVID-19:タンパク質安定化により細胞内感染を防ぐ

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

ウィルスが細胞内に感染して、
細胞内で増殖して、また細胞外に出されて、
また細胞内で増殖する。
ウィルスが増殖することによって
免疫機能が乱され、
サイトカインストームなどによって炎症が起こったり、
抗ウィルス性を身体が継続的に発する中で
肺の正常な組織が破壊される、
といった負の連鎖が考えられます。
従って、
多くの因果関係があるため
ウィルスから体を守るための
様々な戦略が考えられます。
例えば、
ワクチンによって受容体結合面に結合して
細胞内にウィルスが入らないようにしたり、
薬剤によって、細胞内でのウィルスの増殖を防いだり、
あるいは、免疫機能を調整したり
といったことが考えられます。

ウィルスのライフサイクルには
様々な複雑な段階があると考えられるので、
その経路ごとにワクチンや薬剤が関与する余地が
与えられています。
例えば、ウィルスの細胞内への感染を防ぐ場合においても
エントリー受容体へのウィルスタンパク質の結合を
防ぐだけではなく、結合した後
細胞の膜を曲げて細胞の中に入り込む
(エンドサイトーシス)
のを防ぐことも考えられます。

このエンドサイトーシスでは、
Sタンパク質は段階的な構造変化が必要だといわれています。
構造を変化させるためには、
Sたんぱく質のエネルギー状態が高く不安定で、
かつ構造を変えるようなタンパク質の結合を切る
働きが必要です。
その過程では
PHの変化、タンパク質分解活性、
タンパク質同士の相互作用が関与している
ことが考えられます。
従って、このようなたんぱく質の構造、配座の変化を
止めるような機序を生む安定化のための結合を
事前にタンパク質に組み込むことができれば、
ウィルスの細胞内への感染を防ぐことに
貢献することが期待されます。

例えば、インフルエンザウィルスでは
RNAの拡張を防ぐようなプロリン置換が
ウィルスタンパク質の安定化に貢献したという
報告もあります。
このようなプロリン置換は
ウィルスのタンパク質の安定化には
比較的広範な効果を示していて、
MARS-CoVやSARS-CoVなどにも効果を示した
とされています。

参考文献では
ウィルスタンパク質の安定化の方略の
もう一つのアプローチとして
ジスルフィド結合を検討しています。
この結合は2個の硫黄原子が繋がったジスルフィド基を通じた
結合で、共有結合的に強い安定性を発揮します。
コロナウィルスのタンパク質は、
S<sub>b</sub)置換というのを通して
タンパク質の部位がドメインを境界として
離れたり、くっついたりしています。
離れた場合を「Open conformation」
くっついた場合を「Closed conformation」
と呼び、オープンになってぐらぐらしている状態で
基本的に構造の不安定化、連続的な変化が起こる
と理解しています。
それがエンドサイトーシス、
ウィルスの細胞内への浸入を起こします。
このジスルフィド結合は、
いわば「留め金」のような役割をしていて、
タンパク質の部位がはずれてオープンに
なるのを防ぐように働きます。
その留め金が共有結合性を有していて強いから
より効果的であると考えられます。

実際に、新型コロナウィルスにおける
ACE2受容体への認識は、
このジスルフィド結合を取り入れた場合には
2桁下がったとされています。
従って、エントリー受容体への感受性が弱まったため
タンパク質の結合が防がれ、
細胞感染の予防が期待されます。
また
Sタンパク質が密着して安定化しているために
抗体の結合能力が下がっていることを示しました。
これは一見悪い結果のように思えますが、
私の理解では
「構造がすでに安定化しているために
抗体が結合する必要がない。
抗体がつかなくても細胞内の感染を防ぐことが
できる状況。」
というものです。
この効果は、2002年に流行した
SARS-CoVでも確認されています。
従って、コロナウィルス全般に効果を発揮する
可能性が示唆されます。

またタンパク質分解は、
抗体の結合状態に影響を与えますが、
このジスルフィド結合があることによって
それらのトリプシンやキモトリプシンなどの
タンパク質分解物質に対する耐性が強まった
事を示しています。
このことは、
抗体と両立して使うことができて
より安定的な効果を発揮することに
貢献するかもしれない結果だと認識しています。

従って、薬剤によって
これらの結合をどのように実現するか?
というのは、別の選択肢として
あげられる可能性を考えました。

以上です。

(参考文献)
Matthew McCallum, Alexandra C. Walls, John E. Bowen, Davide Corti & David Veesler
Structure-guided covalent stabilization of coronavirus spike glycoprotein trimers in the closed conformation
Nature Structural & Molecular Biology (2020)
doi.org/10.1038/s41594-020-0483-8


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