2020年8月1日土曜日

質の良い抗体はコロナウィルスにどのように結合するか

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスの顕微鏡画像を何度か目に
した方は多いかもしれません。
その円形の細胞のような核の周りに
いくつかのスパイク、突起がうっすらみえます。
その突起は、Sタンパク質と呼ばれます。
そのSタンパク質の特定の面(受容体結合面)が
エントリー受容体(ACE2)に結合することによって
細胞内に侵入して感染すると考えられています。
(※並列して別の機序もあると理解しています。)
そのSタンパク質は三量体(trimetric)と呼ばれ、
その三量体とは生化学的には
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3つのタンパク質または核酸のような高分子同士が
非共有結合し形成した複合体。
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と呼ばれています。
従って、共有結合ではないので頑丈な結合ではなく
比較的低いエネルギーによって構造を動かすことが
できる可能性を考えました。

そのSタンパク質に結合する抗体は
様々な種類が確認されていますが、
一般的に「質が良い」とされている抗体は、
「Sタンパク質とエントリー受容体の結合を
少ない量で防ぐことができる抗体。」
とされています。
また、コロナウィルスは変異しやすいので
交差反応(つまり変異しても広く効果がある)
を示す抗体が質が良いと考えられます。
その中で、
SAR-CoV-1とSARS-CoV-2両方に中和活性を示す抗体は少ない
と言われていますが、
回復期の新型コロナウィルス患者の方から採取された
抗体の中で「EY6A」は両方に中和活性を示すことが知られており
新型コロナウィルスに対して高い中和能を示す
と考えられています。

その質が良いと考えられるEY6Aを
取り出して生体外で細胞と反応させて
その構造を評価する中でいくつかわかったことがあります。
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この抗体はCR3022という他の抗体に対して
「①10倍以上接近してSタンパク質の受容体結合部位に
 結合すること」がわかっています。
従って、引き合う力が強いので
極性を弱める働きが強いかもしれないし、
一度結合したら乖離しにくいかもしれません。
また、このことと関連しているかもしれないですが、
「②結合時の歪が小さい」と言われています。
つまりSタンパク質の構造とよく整合して
形を変えなくても結合することができるため
構造として安定している可能性があります。
また、
「③結合する際にタンパク質の「蓋をとるような」働きがある」
とも言われています。
それによってたんぱく質が比較的安定的に持つ
エネルギー障壁を超えて結合することを可能にしています。
さらに、結合するときの障壁、邪魔となる
「糖化」という現象があります。
この「④糖化が起こりにくい」と言われています。
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他の報告では、受容体結合部位の場所によって
中和能力が異なっていて
特定の領域につく抗体は効果が強い傾向にある
といわれていました。
このような場所依存性も確認されていますが、
このような最適な場所において
どのように結合するか?
というのも中和活性を決めている一つの原因だと思います。

また一つ重要な情報として
細胞ごとに中和能力が異なる可能性も考えられる
といわれていました。
同じ種類の細胞でもそうかもしれないし、
細胞の種類が異なれば同じように当てはまるかもしれません。
そのような中和能力に対する
細胞間の異種性も考慮していく必要性が想定されます。

以上です。

(参考文献)
Daming Zhou, Helen M. E. Duyvesteyn, Cheng-Pin Chen, Chung-Guei Huang, Ting-Hua Chen, Shin-Ru Shih, Yi-Chun Lin, Chien-Yu Cheng, Shu-Hsing Cheng, Yhu-Chering Huang, Tzou-Yien Lin, Che Ma, Jiandong Huo, Loic Carrique, Tomas Malinauskas, Reinis R. Ruza, Pranav N. M. Shah, Tiong Kit Tan, Pramila Rijal, Robert F. Donat, Kerry Godwin, Karen R. Buttigieg, Julia A. Tree, Julika Radecke, Neil G. Paterson, Piyada Supasa, Juthathip Mongkolsapaya, Gavin R. Screaton, Miles W. Carroll, Javier Gilbert-Jaramillo, Michael L. Knight, William James, Raymond J. Owens, James H. Naismith, Alain R. Townsend, Elizabeth E. Fry, Yuguang Zhao, Jingshan Ren, David I. Stuart & Kuan-Ying A. Huang
Structural basis for the neutralization of SARS-CoV-2 by an antibody from a convalescent patient
Nature Structural & Molecular Biology (2020)
doi.org/10.1038/s41594-020-0480-y


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