2020年8月2日日曜日

パパイン様タンパク質分解酵素の機序と薬剤によるウィルス増殖抑制

いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。

新型コロナウィルスには
様々な種類のタンパク質があります。
抗体がつくと言われている
Sタンパク質(スパイク)をよく耳にしますが、
それ以外にも
Nタンパク質(ヌクレオカプシド)、
Mタンパク質(被膜)
Eタンパク質(エンベロープ)
が存在すると言われています。
さらに、非構造タンパク質や装飾タンパク質もあると
理解しています。
このようにウィルスに存在するタンパク質もあれば、
宿主となる細胞の中にも
複数のタンパク質があります。
そのような多様なたんぱく質、
あるいはそれらの動的な振る舞いが
免疫機能の一つであるサイトカインの分泌を制御している
可能性が示唆されています。
例えば、そのサイトカインには
宿主のインターフェロンやNF-κBが挙げられます。
新型コロナウィルスでは
抗ウィルス作用があるⅠ型インターフェロンが不足する場合があり
それが重症化との関連があるかもしれない
と考えられています。
このようなサイトカインの後天的な修正も
一つはタンパク質とタンパク質分解酵素の働きによって
上流側の経路として関わっている可能性があります。

例えば、そのたんぱく質分解酵素として
参考文献ではパパイン様タンパク質分解酵素
(papain-like protease)
が関わっているとされています。
タンパク質は、インターフェロンの分泌に関わっている
ISG15という遺伝子でコード化されたタンパク質が
関わっているとされています。
このたんぱく質はユビキチン様とされているので
他のタンパク質を装飾するものです。
それらの触媒サイトにおける結合において
疎水性の相互作用が重要だといわれています。
またその分解においては抹消部である
K48-Ub2という部分が構造から剥離されると
考えられています。
ISG15は細胞内に存在するもので
それらが外に放出されることもありますが、
おそらく新型コロナウィルスが入ってきた時に
インターフェロンを出すように指令を出しますが、
このパパイン様タンパク質分解酵素によって
その機能が損なわれていると理解しています。

このサイトカインの制御に関わっているかもしれない
たんぱく質分解酵素は
GRL0617という薬剤で抑制することができます。
これはナフタレンを基礎として
非共有結合的にタンパク質分解酵素の
働きを抑制することができます。
これは分解酵素のTyr268というサイトに結合して
ISG15というたんぱく質が触媒サイトに結合することを
防ぐように働きます。
このGRL0617は2003年に流行した
SARS-CoV1にはウィルス複製抑制の効果があった
という報告もすでにあります。
実際に試験管の結果では(in vitro)
細胞内に新型コロナウィルスのRNAの量が減った
という結果があります。
またそれに付随する結果として
狙い通り、IFNに反応性を持つ遺伝子(ISG15, OAS1, PKR, MX1)
の発現レベルが薬剤投与によって上がりました。

上述したパパイン様タンパク質分解酵素の働きを
抑制する戦略は急速に発展を遂げており、
これは新型コロナウィルスの増殖を防ぐだけではなく
宿主の自然免疫を亢進する2重の働きが期待されています。
また
RNA依存のタンパク質分解酵素の働きに影響を与える
薬剤と併用することも今後検討の余地があるとされています。
例えば、レムデシビルはRNAタンパク質分解酵素の
働きに影響を与えて、ウィルス増殖を防ぐものなので
この薬との併用によって
より強い抗ウィルス作用を実現できるか?
という点が気になります。

以上です。

(参考文献)
Donghyuk Shin, Rukmini Mukherjee, Diana Grewe, Denisa Bojkova, Kheewoong Baek, Anshu Bhattacharya, Laura Schulz, Marek Widera, Ahmad Reza Mehdipour, Georg Tascher, Paul P. Geurink, Alexander Wilhelm, Gerbrand J. van der Heden van Noort, Huib Ovaa, Stefan Müller, Klaus-Peter Knobeloch, Krishnaraj Rajalingam, Brenda A. Schulman, Jindrich Cinatl, Gerhard Hummer, Sandra Ciesek & Ivan Dikic 
Papain-like protease regulates SARS-CoV-2 viral spread and innate immunity
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2601-5


0 コメント:

コメントを投稿

 
;