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新型コロナウィルスの感染によって
免疫機能が擾乱されることが大きな問題になっています。
例えば、
Ⅰ型インターフェロンの分泌のタイミングが遅れて、
初期に分泌が少なく抗ウィルス機能を発揮せず
ウィルスが増えて病状が悪化した後に
分泌が多く、そして長く放出されると
それによる肺の炎症が発生する
と理解しています。
免疫機能はよく天秤に例えられますが、
亢進と抑制の微妙なバランスの中で、
体の恒常性が保たれます。
ウィルスによって乱されたときに
その天秤の左右のバランスが大きく崩れると
体の様々な機能、あるいは組織に
影響を及ぼすと理解しています。
その免疫機能の中に
神経免疫系統というのがあり
神経システムと免疫システムが
電気生理学的に相互作用する中で
病原体から細胞を防御するというのがあります。
その中には神経細胞も含まれます。
参考文献によると
肺の機能において、
その神経免疫系統が影響を与えていると
考えられています。
それについて
「肺の神経支配(lung innervation)」
という記載があります。
その神経支配には
交感神経系、副交感神経系があります。
機能としては
副交感神経系の経路では
気管支収縮、粘液の分泌、気管支血管拡張
があります。
これに影響を与える受容体に対して
新型コロナウィルスによって影響を受ける
サイトカイン(IFNγ, TNF and IL-1β)
がその感受性に対して影響を与えるために、
間接的に新型コロナウィルスに感染することで
肺機能に影響を与えてしまう
ということです。
また腹部まで達する迷走神経の改変が
ぜんそく、鼻炎、慢性閉塞性肺疾患などの
アレルギー疾患の症状を生むとされており、
それにより
くしゃみ、せき、粘液過分泌、気管支収縮
が起こるとされています。
先ほど、サイトカインが神経系に
影響を与える可能性があると述べましたが、
新型コロナウィルスによって
症状として出る、せきなどは、
サイトカインストームなどの異常によって
神経系に関連する受容体に作用して
その機能を改変し、
それによって生まれた症状である
と考えられる可能性があります。
また気道内腔の様々な刺激
例えば、
低酸素症、高炭酸、機械的伸張、ニコチン刺激など
に対してのセンサーとして
神経上皮性細胞ボディー(neuroepithelial cell bodies)
があり、
これが肺の病気によって過形成されることが
知られています。
従って、神経上皮性細胞ボディーの形成状態を
薬剤によってコントロールすることができるかどうか?
という視点が生まれます。
また、高齢の方が重症化しやすい
という特徴があります。
様々な病理があると思いますが、
一つとして
迷走神経の活動が乱されている事が考えられます。
またそれと関連がある可能性がありますが、
神経伝達物質であるアセチルコリンなどが
肺胞マクロファージにうまく伝わらないために
呼吸器を守るこの肺胞マクロファージの機能を
うまく引き出せていない可能性も考えられます。
また、
老化によって、
交感神経系の活性が高まり、
逆に副交感神経系の活性が低くなる
といわれています。
副交感神経系と肺機能の関連について前述し、
迷走神経に関しても述べましたが、
老化したときのこの相対的関係性の中で
肺機能が乱されやすいというのがあるかもしれません。
従って、考えられる治療戦略としては
迷走神経系刺激(vagus nerve stimulation:VNS)
が考えられるとされています。
そのためには
炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6 and TNF)の
リポ多糖誘発性の発現を減少させるということです。
しかしながら
このアプローチを新型コロナウィルスの治療で
使うためには障害があるとされています。
なぜなら迷走神経の解剖学的構造が
まだはっきりわからないことと
具体的に何を刺激すれば最適か?
ということがわかっていないからです。
ただ、先ほど神経伝達物質である
アセチルコリンが肺胞マクロファージに
上手く伝達しないことを記述しました。
従って、このアセチルコリンの分泌、
あるいはそれにかかわる受容体の
活性を変えることができれば、
迷走神経系の機能を高めることに貢献する
可能性が考えられます。
もちろん慎重な議論が必要ですが、
副交感神経系の機能を刺激する薬
(ガスモチン、アコファイド、ベサコリン、アボビス)
などはアセチルコリンに作用すると言われており、
検討の余地があるかもしれません。
また迷走神経が乱されると
呼吸系の機能不全に関係するだけではなく
心臓の機能不全、食欲減退などがあるため
呼吸器だけではなく
心臓の機能、食欲なども
症状の程度を判断する上で参考になる可能性があります。
また現在研究中の薬として
神経系で発現される
transient receptor potential
cation channel subfamily V member 1(TRPV1)
のアゴニスト(作動薬)である
レシニフェラトキシン(resiniferatoxin)
というのがあります。
これは免疫系の信号の活性を改変するものです。
新型コロナウィルスでも効果があった
という報告があります(2)。
神経系からの治療戦略は
今まではないものだと思います。
現状の抗ウィルス薬、
あるいは免疫抑制剤などの治療と合わせて
神経系のアプローチも併用できるか?
今後検討されていくものだと思います。
以上です。
(参考文献)
(1)
Francesco De Virgiliis & Simone Di Giovanni
Lung innervation in the eye of a cytokine storm: neuroimmune interactions and COVID-19
Nature Reviews Neurology (2020)
doi.org/10.1038/s41582-020-0402-y
(2)
Nahama, A., Ramachandran, R., Cisternas, A. F. & Ji, H.
The role of afferent pulmonary innervation in poor prognosis of acute respiratory distress syndrome in COVID-19 patients and proposed use of resiniferatoxin (RTX) to improve patient outcomes in advanced disease state: a review.
Med. Drug Discov. 5, 100033 (2020).
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