いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスに罹患した時の特徴的な症状として、
味覚、嗅覚障害があります。
必ずしも出るものではないですが、
一部の人はそれを経験します。
このような症状は
神経学的兆候(neurological manifestations)と
呼ばれています。
その他には
頭痛、めまい、倦怠感、筋肉痛などもあります。
これらの症状は
神経系と関係していますから
その病理を理解するために
MRI、腰椎穿刺、筋電図検査などが
検査として挙げられていますが、
新型コロナウィルス以外の疾患を持っている
患者さんに対しての感染を防ぐために、
これらの検査を行うことはリスクがあり
なかなか実施できないという現状があるといわれています。
上述した味覚障害、嗅覚障害は
他の上気道感染症でも確認されている
といわれています。
従って、上気道あるいは肺に対する症状と
神経系の相互作用によって
生じている可能性が考えられます。
例えば、日本脳炎や細菌性の髄膜炎などにおいては
脳脊髄液所見があるといわれています。
例えば、液圧、外観、たんぱく質などが
正常と変わっていることがあるようです。
しかし、新型コロナウィルスに関しては、
神経学的兆候が症状の中にあっても、
脳脊髄液の中にウィルスが確認されなかった
という報告があります。
しかし、他の疾患と同様に
上述した所見が見られる可能性があります。
ウィルスが神経侵襲を起こす考えられるルートとして、
2つが考えられるとされています。
一つは血液を通じて、血液脳関門を超えて
脳に浸入している可能性と
もう一つは神経を通じて伝搬するというルートです。
脳血管関門を超えるためには
受容体を介して、扉を開ける必要があるので
一定の条件があります。
新型コロナウィルスが脳血管関門を超えるかどうかは
まだ明らかにされていませんが、
免疫機能の乱れなどによって生じた
組織の炎症によってこの障壁、関門を崩壊させる
可能性が示唆されています。
そうすると脳の障害をきたしやすくなる
ということも考えらえます。
神経を介するウィルスの伝搬は
Viral neuronal tracingと呼ばれ、
その概念の中にいくつかの輸送方式がありますが、
実際にミニブレインの神経細胞に感染することが発見され
神経細胞に感染する可能性があると考えられます。
新型コロナウィルスが細胞に感染する機序は
ACE2エントリー受容体を介すると共通認識があります。
このACE2受容体は神経細胞、星状膠細胞、乏突起膠細胞
など神経系の細胞に存在するといわれており、
神経系細胞に感染する可能性が考えられます。
まだ脳の影響に関するデータは少ないのが現状ですが
新型コロナウィルスに感染した4人の患者さんにおいて
MRI像で、脳動脈血栓症、点状出血が見られたとされています(2)。
従って、脳以外の血管においての血栓が確認されていますが、
脳においても同様に血管の障害がみられるケースも
存在するということです。
しかしながら、新型コロナウィルスによる
直接的な効果がどうかはまだ明らかになっておらず
さらなる証拠の積み上げが必要だとされています。
これらの診断のためには
プロトロンビン時間、Dダイマーレベル
血小板減少有無などが挙げられ、
低フィブリノゲン血症のケースはない
といわれています(3)。
以上です。
(参考文献)
(1)
Alessandro Pezzini & Alessandro Padovani
Lifting the mask on neurological manifestations of COVID-19
Nature Reviews Neurology (2020)
doi.org/10.1038/s41582-020-0398-3
(2)
Nicholson, P., Alshafai, L. & Krings, T.
Neuroimaging findings in patients with COVID-19.
AJNR Am. J. Neuroradiol.(2020).
https://doi.org/10.3174/ajnr.A6630
(3)
Al- Ania, F., Chehadea, S. & Lazo- Langnera,
A.Thrombosis risk associated with COVID-19 infection. A scoping review.
Thromb. Res. 192, 152–160 (2020).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
ある致命的な細菌に由来する病気に罹患した時には
抗生物質が使われることがあります。
抗生物質は微生物の発育を阻害する物質と定義されます。
あるいは、農薬などにも抗菌剤が使われます。
そうした生活の中で使われる抗生物質が乱用されると
あるいはガイドラインに従って使用していたとしても
遺伝子変異によって、それに耐性を持った
細菌が現れることがあります。
それが社会の中で一つ共通の脅威となっています。
同じようにウィルスでも変異は起こります。
新型コロナウィルスでも同様です。
その新型コロナウィルスに対して、
ワクチンの開発が進んでいて、
日本は有効性のあるワクチンの取得に
厚生労働省を中心して鋭意動かれています。
それに対する社会の期待は大きいです。
しかし、そのワクチンは
抗体依存性増強という抗体を入れることで
逆に病状が悪化する事があります。
あるいは副作用も考えられます。
従って、
今の状況に安心することなく
継続的にある程度の緊張感を持って
社会として動いていく必要があります。
本日紹介する報告は
アメリカのリジェネロン社という製薬会社からのものです。
その報告に、
「生体内ではなく試験管の結果」ですが、
ある単一の抗体を入れると、
それに耐性を持つ、つまり中和能を下げるような
変異型のスパイクが現れる結果が示されました。
この変異型のスパイクは
複数の抗体を同時に入れる、併用することで
少なくとも発現されにくいことが示されました。
おそらく世間の方は
新型コロナウィルスのSタンパク質に抗体が結合して
ファンデルワールス力を弱めて、中和して、
エントリー受容体(ACE2)への結合能力を弱めて
それによって細胞内の感染を防ぐ中において
その「抗体がつく場所」は同一である
と考えている人もいると思います。
しかし、ナノスケールでみれば、
同じ受容体結合面(Receptor binding domain:RBD)であっても
抗体の種類ごとに微妙に結合する場所が違います。
そうであるから
抗体ごとに中和する能力、
言い換えればワクチンの性能が異なります。
それは見方を変えれば
「複数のワクチンを併用接種できる」
可能性を示唆しています。
つまり、複数の抗体を違う効果的な結合部位に結合させる
ことができます。
以前の報告では、効果的な結合部位は
一か所ではなく、散在もせず
集合的に存在することがわかっています。
参考文献では
このように複数の抗体を新型コロナウィルスに対して
試験管で作用させることによって、
新型コロナウィルスの変異の起こりにくさを示しました。
この結果は2つの側面を示しています。
一つは
これからワクチンが開発されて、それが有効であったとしても
継続的に違うワクチン、あるいは改良版を
開発し続けなければいけない
ということです。
なぜなら何十億という数の人にワクチンを接種すれば
おそらくそこに変異型のウィルスが生まれる可能性が高い
からです。
インフルエンザのように毎年ワクチンを打つ中で
その都度、ワクチンを最適化する必要性です。
もう一つは、
違う種類のワクチンを併用して打つことのメリットです。
ただそれらを副作用を含めて評価することは
単一のワクチン接種に比べて複雑になりますが、
良い場所に複数の抗体を結合させることができて
相乗効果を生む可能性もあります。
さらにはここで示された変異が起こりにくいわけですから
新たなワクチンを開発する必要性も下がってきます。
それは大きく意味のあることです。
ここからは内容のより詳しいことになります。
実際にどの抗体を組み合わせれば
効果が出たかというが示されています。
その中で
特に注目したいのが
REGN10987+REGN10933の組み合わせです。
この組み合わせでいくつか着目できる点があります。
それはこれらの併用で
重複することなく違うRBD部位に抗体が結合したこと
が確認されたということです。
つまり上述した意図が結果に反映された形になっています。
また抗体を新型コロナウィルスのSタンパク質に作用
させたときの変異が起こりやすいところは、
遺伝子位置:5040, 5122
Sタンパク質遺伝子位置:1963, 2045
参照ヌクレオチド:C, G
変異ヌクレオチド:T, A
タンパク質位置:655, 682
、、、
となっています。(Fig.2参照)
これらの変異が
REGN10987+REGN10933(10μg/ml)の併用では
ほとんど確認されませんでした。
また、想定される変異(Escape mutants)において
中和活性はどれも高く維持されています。
しかし、これらの抗体が単一の場合では
いくつかの変異において中和活性が落ちています。
つまり併用による効果が出ています。(Table.2参照)
また今回併用の検討を行う中で
結合するタイミングが同時ではなく異なる中で
結合強度が変わるという点です。
例えば
REGN10989が先に結合した後、
REGN10987は緩く結合することがわかっています。
このことは、
複数のワクチンを接種するときには
同時に接種するのではなく
その順番、タイミングを考慮する余地を与えています。
従って、
最適な接種条件を探すためには
併用の場合には非常に複雑にはなります。
この試験管の結果を受けて、
継続的に新型コロナウィルスのワクチンが開発されていく中で
抵抗性ウィルスを生みにくい世界を実現するために
これから開発されるワクチンを
どういう組み合わせで、どういう条件で
接種するかというのは治験が進められていくと思います。
抵抗性ウィルスが減れば、
開発労力、費用の削減、
早期供給、安定供給にもつながり
それは世界的にメリットがあることです。
以上です。
(参考文献)
Alina Baum, Benjamin O. Fulton, Elzbieta Wloga, Richard Copin, Kristen E. Pascal, Vincenzo Russo, Stephanie Giordano, Kathryn Lanza, Nicole Negron, Min Ni, Yi Wei, Gurinder S. Atwal, Andrew J. Murphy, Neil Stahl, George D. Yancopoulos, Christos A. Kyratsous
Antibody cocktail to SARS-CoV-2 spike protein prevents rapid mutational escape seen with individual antibodies
Science 21 Aug 2020:
Vol. 369, Issue 6506, pp. 1014-1018
DOI: 10.1126/science.abd0831
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
従来になんらかの治療に使われていた薬を
新型コロナウィルス用に使うことを
リパーポスと呼びますが、
猫の伝染性腹膜炎の治療に用いられている薬品
GC376という薬剤が
新型コロナウィルスにおいて
ウィルスの産生を阻害し、治療の効果が
表れるかもしれない可能性が示唆されています(2)。
GC373も含めて、この薬剤GC376は
SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)が
細胞内でRNAを増殖させるために必要な
タンパク質加水分解酵素(プロテアーゼ:Mpro)
を阻害する働きがあり、
試験管による結果(生体内ではない)において
SARs-CoV-2のウィルス産生を抑え、
その数を減らすことができる可能性があります。
この薬は2003年に流行したSARS-CoVにも
同様に可能性があることがわかっています。
その可能性を示唆する
ウィルス増幅に関わるプロテアーゼ(Mpro)に対する
50%阻害濃度は
SARS-C0V-2
GC373 IC50=0.40±0.05μM
GC376 IC50=0.19±0.04μM
SARS-C0V
GC373 IC50=0.07±0.02μM
GC376 IC50=0.05±0.01μM
となっています。
但し、プロテアーゼに対する阻害なので
新型コロナウィルスそのものを減らしたという
直接的な結果ではないということは
注意が必要であるという理解です。
この薬剤は、構造的には
プロテアーゼMpoの活性ポケットである
求核性触媒として働くシステイン(C145)に
共有結合することで機能を弱めるといわれています。
触媒サイトに結合して活性を
反応活性を弱まると理解しています。
しかしながら、いくつかの
プロテアーゼMpro抑制剤は抗がん剤としても使われ、
通常細胞毒性を有しており、
重篤な副作用があるとされています。
この薬剤に関しては猫に使われており、
人への副作用に関しては未知であります。
すでに使用実績のあるレムデシビルは
ポリメラーゼと呼ばれるRNAを合成する
酵素を阻害することによって
RNAの増殖を防ぐものです。
この薬剤GC373、GC376は
ウィルスが増幅するための
「機能的なたんぱく質」を生み出すための
ポリタンパク質の酵素による分解を防ぐものです。
作用する酵素が微妙に異なると理解していますが、
同じような効果が得られるか?
という点が今後の焦点になると思います。
以上です。
(参考文献)
(1)
Wayne Vuong, Muhammad Bashir Khan, Conrad Fischer, Elena Arutyunova, Tess Lamer, Justin Shields, Holly A. Saffran, Ryan T. McKay, Marco J. van Belkum, Michael A. Joyce, Howard S. Young, D. Lorne Tyrrell, John C. Vederas & M. Joanne Lemieux
Feline coronavirus drug inhibits the main protease of SARS-CoV-2 and blocks virus replication
Nature Communications volume 11, Article number: 4282 (2020)
doi.org/10.1038/s41467-020-18096-2
(2)
ネコ用コロナの治療薬 人間の新型コロナにも有効か
https://news.yahoo.co.jp/articles/d20aa090a9e82bee0ed1672fa5a65c885e211390
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスのワクチンに対する
世の中の期待は大きいと思います。
しかし、インフルエンザも含めた
呼吸器系に作用するワクチンにおいて、
今まで撲滅させるほどの効果のある
ワクチンを開発できたことはない
といわれています。
長い年月をかけて開発してきたものでも
そうですから、
今年から流行し始めて、
1年と少しで従来のワクチンの効果を
超えるような性能の良いものを開発する
ということは極めて難しい
ということを推し量ることは容易です。
しかし、一つの伝染病に対して
ここまで世界が団結したことは、
今までにないかもしれません。
今はインターネットがありますし、
グローバルな研究がなされて久しいですから
そのポテンシャルの中で
従来にはなかった偉業を
世界の多くの人の手によって達成することは
可能であるという見方もできます。
今、最終段階に進んでいるワクチンがありますが、
量産性、価格、世界的な均等供給、
数量、副作用、効果など
全てにおいて全く欠点のないものを
1種類のワクチンで達成する事は困難です。
少しずつの積み重ね、改善の中で
よいワクチンが段階的に複数開発されると
日常生活を取り戻せるということが
実現されると思います。
そのためには、ワクチンの効果を
いろんな観点で分析することは欠かせません。
そのワクチンの解析の中で
微視的な構造を知ることは必須です。
メディアで映像を見た人は多いと思いますが、
新型コロナウィルスの形状は
球状であって、その周りに多くの突起があります。
その突起はSタンパク質、スパイクと呼ばれます。
そのスパイクの特定の位置に
ワクチンによって生成された抗体がつくことによって
エントリー受容体(ACE2)を通した
細胞への感染を防ぐことが可能になるだろう
ということです。
従って、前述した
Sタンパク質、突起の「特定の位置」
言い換えれば「最適な位置」に抗体が結合することが
「肝、キー」ですから、
抗体がつく前後のSタンパク質の構造を
細かく可視化して解析することは、
重要であるということです。
しかし、
このSタンパク質は構造を柔軟に変えたり、
ウィルスに複数ある中での構造のばらつき、差があったり
することがわかっています。
本日、紹介する報告は、
単一のSタンパク質の構造解析ではなく、
多くのSタンパク質の構造解析の中での
差、分布を見るための統計データを提供するものです。
今述べた様にSタンパク質には
いくつかの構造的な差、種類があります。
その大きな類別において
「Open prefusion conformation オープンな配座」
「Close prefusion conformation クローズな配座」
というのがあります。
※配座とは3次元的な幾何構造という意味です。
------
オープンな構造では、
Sタンパク質の
「へき開面の非共有結合的な架橋部分が離れていて(?)」
それによって受容体結合面(Receptor binding domain:RBD)が
浮かび上がって露出している状態
-------
クローズな構造では
Sタンパク質がしっかり固定されていて
それによって受容体結合面がスパイク表面上に平坦になっていて
結合サイトが塞がれている状態
--------
とされています。
このへき開面は2つあるので
①すべてがオープン
②1つオープン、1つがクローズ
③すべてがクローズ
という3種類の構造が大きく分けて存在します。
参考文献によれば
179個の「無傷」の新型コロナウィルスにおいて
3854個のSタンパク質の構造を調べる中で
①すべてがオープン:14%
②1つオープン、1つがクローズ:55%
③すべてがクローズ:31%
となっています。
従って、すべてがオープンになっていて
受容体結合面が完全に露出している割合は
少ないというデータになっています。
また一つのウィルス粒子に対する
Sタンパク質の数は24±9個といわれています。
この数のばらつきは
ある程度ウィルス粒子の大きさと関連があるようです。
またSタンパク質のウィルス粒子の表面(エンベロープ)
の存在位置は均等ではなく、偏りがあります。
今述べた様に大きさにもバラつきがあり。
91±11nmといわれています。
(ref.(1)Extended Data Fig. 1a:ヒストグラム参照)
またSタンパク質は、
ウィルス粒子の表面に垂直に立っているのではなく
ある程度の傾きがあります。
その傾きのヒストグラムは
ref.(1)Extended Data Fig. 1cにあります。
これを見ると50°くらいが一番
頻度としては大きくなっています。
突起が垂直に立っているイメージが強いですが
傾いているものが多いということです。
またウィルス粒子表面にどれくらいの密度で
Sタンパク質が存在するか?
それは1000nm2に1つといわれています。
インフルエンザでは100nm2に1つなので
密度としては1/10となっています。
もちろん受容体結合面がどれくらい露出されているか?
もしくは結合面での親和性などにもよりますが、
細胞に感染するためのSタンパク質の密度が
インフルエンザウィルスよりも少ないために
ワクチンの効果が出やすい可能性はあります。
これらを踏まえてた上でいくつかの疑問があります。
Q1:オープンとクローズの配座で中和抗体の付き方が違うか?
オープンでは受容体結合面が露出しているから
抗体が近づいてきた時に
露出していることによって
そのサイトに結合しやすいか?
もしそうであれば、オープンが多い状態では
ワクチンが効果を発揮しやすいかもしれない
という考え、
あるいは別の疑問
Q2:オープンからクローズに切り替わるために
物質的なきっかけは何か?
というものにもつながります。
例えば、薬剤によってそれを促すようなものがあれば、
ワクチンと併用することによって
効果が出やすくなるか?
ここまでくると飛躍している部分は否めないですが、
数珠的にこのような考えが浮かびます。
また
「ワクチン接種後」の中和抗体がついた状態での
新型コロナウィルスのSタンパク質の構造解析において
このように統計的に調べることができたら、
単に中和能を見るだけではなく
どれくらいのSタンパク質に
あるいはどの構造のSタンパク質に
どの位置に抗体がついているかがわかるか?
それによって構造的な裏づけ
論理根拠が得られる可能性があり、
ワクチンの機序の理解に貢献する部分がある
と考えます。
以上です。
(参考文献)
Zunlong Ke, Joaquin Oton, Kun Qu, Mirko Cortese, Vojtech Zila, Lesley McKeane, Takanori Nakane, Jasenko Zivanov, Christopher J. Neufeldt, Berati Cerikan, John M. Lu, Julia Peukes, Xiaoli Xiong, Hans-Georg Kräusslich, Sjors H. W. Scheres, Ralf Bartenschlager & John A. G. Briggs
Structures and distributions of SARS-CoV-2 spike proteins on intact virions
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2665-2
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスにおいて、
高齢の方、あるいは糖尿病、肥満、癌などの
既往歴のある方は重症化しやすいという
事はわかっています。
私が今までニュースを見る限り、
性差に関しての情報が繰り返し取り上げられる
事はあまりありません。
しかし、世界では新型コロナウィルスで
亡くなられた方の60%は男性であるといわれています。
イギリスの1700万人の調査でも
男性の方がリスクが高いと言われています。
一般的に
他のウィルス(A型肝炎、結核、HIVなど)に対しても
男性の方がウィルス量が多い、
あるいは罹患しやすいといわれています。
新型コロナウィルスに関しては未知ですが
女性の方がワクチンに対する免疫応答が
基本的に良いといわれています(2)。
日本に関しては詳しいデータは公表されていませんが、
治療を行っている医師の方は
現場で何となく性別の差について感じているかもしれないし、
実際にデータでも表れているかもしれません。
アメリカのイェール大学による
イェールニューヘブン病院の患者さんにおける
5月の数十人規模の調査によれば、
免疫機能の中のT細胞に統計的な有意差がある
ことが示されました。
特にキラーT細胞であるCD8+T細胞の差が
罹患した時の男女で顕著に表れています。
女性の方が多くなっています。
このキラーT細胞のいくつかの表現型は、
重症化した患者さんで少なくなっていることが
わかっているので、
女性が重症化しにくい、あるいは命を失いにくい
理由としてこの差が関係している可能性が示唆されます。
このキラーT細胞は自然免疫系であり、
ウィルスに感染した細胞を死滅させる役割がある
と考えられるので、
罹患後のウィルスの増殖率に差が出ている可能性を
考えました。
日本でもこのキラーT細胞において
同じような傾向がみられるか気になるところです。
以上です。
(参考文献)
(1)
Takehiro Takahashi, Mallory K. Ellingson, Patrick Wong, Benjamin Israelow, Carolina Lucas, Jon Klein, Julio Silva, Tianyang Mao, Ji Eun Oh, Maria Tokuyama, Peiwen Lu, Arvind Venkataraman, Annsea Park, Feimei Liu, Amit Meir, Jonathan Sun, Eric Y. Wang, Arnau Casanovas-Massana, Anne L. Wyllie, Chantal B.F. Vogels, Rebecca Earnest, Sarah Lapidus, Isabel M. Ott, Adam J. Moore, Yale IMPACT research team, Albert Shaw, John B. Fournier, Camila D. Odio, Shelli Farhadian, Charles Dela Cruz, Nathan D. Grubaugh, Wade L. Schulz, Aaron M. Ring, Albert I. Ko, Saad B. Omer & Akiko Iwasaki
Sex differences in immune responses that underlie COVID-19 disease outcomes
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2700-3
(2)
Fink,A et al.
Biological sex affects vaccine efficacy and protection against influenza in mice.
Proc. Natl Acad. Sci. USA 115, 12477–12482 (2018).
doi.org/10.1073/pnas.1805268115.
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスの感染によって
免疫機能が擾乱されることが大きな問題になっています。
例えば、
Ⅰ型インターフェロンの分泌のタイミングが遅れて、
初期に分泌が少なく抗ウィルス機能を発揮せず
ウィルスが増えて病状が悪化した後に
分泌が多く、そして長く放出されると
それによる肺の炎症が発生する
と理解しています。
免疫機能はよく天秤に例えられますが、
亢進と抑制の微妙なバランスの中で、
体の恒常性が保たれます。
ウィルスによって乱されたときに
その天秤の左右のバランスが大きく崩れると
体の様々な機能、あるいは組織に
影響を及ぼすと理解しています。
その免疫機能の中に
神経免疫系統というのがあり
神経システムと免疫システムが
電気生理学的に相互作用する中で
病原体から細胞を防御するというのがあります。
その中には神経細胞も含まれます。
参考文献によると
肺の機能において、
その神経免疫系統が影響を与えていると
考えられています。
それについて
「肺の神経支配(lung innervation)」
という記載があります。
その神経支配には
交感神経系、副交感神経系があります。
機能としては
副交感神経系の経路では
気管支収縮、粘液の分泌、気管支血管拡張
があります。
これに影響を与える受容体に対して
新型コロナウィルスによって影響を受ける
サイトカイン(IFNγ, TNF and IL-1β)
がその感受性に対して影響を与えるために、
間接的に新型コロナウィルスに感染することで
肺機能に影響を与えてしまう
ということです。
また腹部まで達する迷走神経の改変が
ぜんそく、鼻炎、慢性閉塞性肺疾患などの
アレルギー疾患の症状を生むとされており、
それにより
くしゃみ、せき、粘液過分泌、気管支収縮
が起こるとされています。
先ほど、サイトカインが神経系に
影響を与える可能性があると述べましたが、
新型コロナウィルスによって
症状として出る、せきなどは、
サイトカインストームなどの異常によって
神経系に関連する受容体に作用して
その機能を改変し、
それによって生まれた症状である
と考えられる可能性があります。
また気道内腔の様々な刺激
例えば、
低酸素症、高炭酸、機械的伸張、ニコチン刺激など
に対してのセンサーとして
神経上皮性細胞ボディー(neuroepithelial cell bodies)
があり、
これが肺の病気によって過形成されることが
知られています。
従って、神経上皮性細胞ボディーの形成状態を
薬剤によってコントロールすることができるかどうか?
という視点が生まれます。
また、高齢の方が重症化しやすい
という特徴があります。
様々な病理があると思いますが、
一つとして
迷走神経の活動が乱されている事が考えられます。
またそれと関連がある可能性がありますが、
神経伝達物質であるアセチルコリンなどが
肺胞マクロファージにうまく伝わらないために
呼吸器を守るこの肺胞マクロファージの機能を
うまく引き出せていない可能性も考えられます。
また、
老化によって、
交感神経系の活性が高まり、
逆に副交感神経系の活性が低くなる
といわれています。
副交感神経系と肺機能の関連について前述し、
迷走神経に関しても述べましたが、
老化したときのこの相対的関係性の中で
肺機能が乱されやすいというのがあるかもしれません。
従って、考えられる治療戦略としては
迷走神経系刺激(vagus nerve stimulation:VNS)
が考えられるとされています。
そのためには
炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6 and TNF)の
リポ多糖誘発性の発現を減少させるということです。
しかしながら
このアプローチを新型コロナウィルスの治療で
使うためには障害があるとされています。
なぜなら迷走神経の解剖学的構造が
まだはっきりわからないことと
具体的に何を刺激すれば最適か?
ということがわかっていないからです。
ただ、先ほど神経伝達物質である
アセチルコリンが肺胞マクロファージに
上手く伝達しないことを記述しました。
従って、このアセチルコリンの分泌、
あるいはそれにかかわる受容体の
活性を変えることができれば、
迷走神経系の機能を高めることに貢献する
可能性が考えられます。
もちろん慎重な議論が必要ですが、
副交感神経系の機能を刺激する薬
(ガスモチン、アコファイド、ベサコリン、アボビス)
などはアセチルコリンに作用すると言われており、
検討の余地があるかもしれません。
また迷走神経が乱されると
呼吸系の機能不全に関係するだけではなく
心臓の機能不全、食欲減退などがあるため
呼吸器だけではなく
心臓の機能、食欲なども
症状の程度を判断する上で参考になる可能性があります。
また現在研究中の薬として
神経系で発現される
transient receptor potential
cation channel subfamily V member 1(TRPV1)
のアゴニスト(作動薬)である
レシニフェラトキシン(resiniferatoxin)
というのがあります。
これは免疫系の信号の活性を改変するものです。
新型コロナウィルスでも効果があった
という報告があります(2)。
神経系からの治療戦略は
今まではないものだと思います。
現状の抗ウィルス薬、
あるいは免疫抑制剤などの治療と合わせて
神経系のアプローチも併用できるか?
今後検討されていくものだと思います。
以上です。
(参考文献)
(1)
Francesco De Virgiliis & Simone Di Giovanni
Lung innervation in the eye of a cytokine storm: neuroimmune interactions and COVID-19
Nature Reviews Neurology (2020)
doi.org/10.1038/s41582-020-0402-y
(2)
Nahama, A., Ramachandran, R., Cisternas, A. F. & Ji, H.
The role of afferent pulmonary innervation in poor prognosis of acute respiratory distress syndrome in COVID-19 patients and proposed use of resiniferatoxin (RTX) to improve patient outcomes in advanced disease state: a review.
Med. Drug Discov. 5, 100033 (2020).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスにおける
免疫機能がどれくらい維持するか?
それは一つの関心事です。
今年の1月ごろから中国から流行して
今は8月ですから、
報告としても長期的なものも出てきています。
参考文献によれば
新型コロナウィルスに罹患した
346人を長期的に免疫機能の調査をした
報告について簡素にまとめられています。
その中で、
IgM抗体は初めの1週間で急激に上昇し、
10~13週でほぼ検出されえなくなりました。
しかし、IgG抗体に関しては、
時間が経つについて減少はみられるものの
6か月後も比較的高いレベルで検出された
とあります。
このIgG抗体は中和能と密接に関係しているとされています。
しかし、これが新型コロナウィルスに対する防護の
正確な関連はまだわかっていない
とされています。
IgMは免疫の初期の反応に現れ、大きな抗原について
反応性が高いとされています。
IgGは主に循環器に存在する抗体だと言われれています。
以上です。
(参考文献)
Ewoud B. Compeer & Lion F. K. Uhl
Antibody response to SARS-CoV-2 — sustained after all?
Nature Reviews Immunology (2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-00423-9
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
Ⅰ型インターフェロンは自己分泌、傍分泌の作用機序で
一般的に宿主細胞に対する抗ウィルス性を
示すことで知られています。
しかし、SARS-CoV-2の初期の調査、研究結果では
このⅠ型インターフェロンが分泌不足、
一方で炎症性を示すサイトカイン(TNF,IL-6,NF-κB)の
産生が多くなっていることが確認されています。
それが重症化と関係している可能性が示唆されています。
しかしながらⅠ型インターフェロン(IFN-Ⅰ)については
このことが単純に当てはまらないような結果も出てきています。
例えば、重症の新型コロナウィルスの患者さんの中には
このIFN-Ⅰが多く分泌されている人もいます。
従って、IFN-Ⅰが少ないことが
一方的に、あるいは普遍的に関係しているか
という点において懐疑性を与えるものです。
これらの結果を総合的に考えると
検出の方法、場所、あるいはタイミングなどによって
IFN-Ⅰの分泌量に差があり、
この影響を見るときには、
これらの要素を考慮する必要があるということです。
またIFN-Ⅰは抗ウィルス性を示しますが、
一方で炎症性を亢進する働きがSARS-CoVのマウスの
研究結果から得られています。
従って、
今では逆にIFN-Ⅰの信号経路を抑える
JAK抑制剤を使う臨床研究が行われています。
JAK抑制剤の一つとして、
バリシチニブが挙げられています。
ただ、この薬は他の炎症性サイトカインの
活性を弱める働きもあるので、
排他的にIFN-Ⅰの抑制の効果を見ているわけではない
という点において注意が必要です。
またインターフェロンは3つタイプがあり、
そのうちの一つであるⅢ型インターフェロンは
炎症効果を引き起こさずに
抗ウィルス性を示す可能性が示唆されています。
あくまで私の仮説ですが、
おそらくⅠ型インターフェロンは
ウィルスが増殖を初期でこの働きによって
抑えられると重症化を防ぐことができるかもしれません。
十分にウィルスが増えてしまった状態では
Ⅰ型インターフェロンが異常に分泌しすぎて
副作用である炎症性の効果が大きく出てしまう
ということがあるのかもしれません。
従って、感染した時の初期に
うまくこのⅠ型インターフェロンが働いた場合、
症状の悪化を防ぐ一翼を担う可能性を考えました。
以上です。
(参考文献)
Jeong Seok Lee & Eui-Cheol Shin
The type I interferon response in COVID-19: implications for treatment
Nature Reviews Immunology (2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-00429-3
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスに罹患したら、
再度感染して症状が出ることがあるのか?
あるいは、
ワクチンで抗体を作ったら
それによって感染が防げるのか?
これらの点は注目されるところです。
ニュースで再入院というケースもありますが、
専門家の方の見解では、
再感染ではない可能性を示唆されています。
実際にアカゲザルで
新型コロナウィルス罹患後、
再度、感染させたときにどうなるか?
という報告がありましたので
内容の一部を紹介します。
6歳から12歳の大人のアカゲザル9匹で
ウィルス量を3段階に変えて
1回目のウィルス感染後の症状、ウィルス量や
免疫機能を調べました。
PCR検査によるウィルス量の調査では
ウィルスの添加量と検知された量は
比例関係ではないものの
あるいは個別差があるものの
それぞれの条件で
十分なウィルス量が肺胞、および鼻腔で検知されました。
肺胞では7日間続き、10日後には検知されなくなっています。
鼻腔ではそれ以上に長く28日間続いています。
一番多くウィルスを体内に入れたグループでも
症状としては軽く、発熱や呼吸困難は起こしていません。
また免疫機能の反応も見られました。
液性免疫である
抗体、それによる中和活性が見られ、
細胞性免疫である、
T細胞やインターフェロンの反応も見られました。
初回感染から35日後
再度、新型コロナウィルスに感染させました。
同じようにウィルス量を3段階に変えています。
肺胞に関しては
1日後にわずかな上昇がみられた条件はあるものの
その後、すぐに消え去ります。
ウィルス導入後、
全く検出されなかったケースもあります。
いずれにしても3日目以降は
どの条件においても検出限界以下となっています。
鼻腔では
ウィルス導入後、上昇は見られたものの
6日~14日後には検出限界以下になっています。
従って、
再感染させたときの肺胞のウィルス量は
10万分の1以下となっています。
鼻腔ではウィルスの上昇は
再感染時見られますが、
減少スピードは速くなっています。
研究報告された方は、
液性免疫、細胞性免疫が
再感染時にどのように働いたか詳しいことがまだ
わかっていないとされています。
また、注意すべき点として
これは「アカゲザル」の報告であり、
人でも同じように当てはまるか
今後の追跡調査が待たれるとされています。
今回の再感染は初回の感染から35日後と
比較的短いタイムスパンでの再感染と
なっているので、
それが数か月、1年となったときにはどうか?
という点が気になります。
また、アカゲザルは
体内に入れられたウィルスの量が多くても
発熱もなく症状としては軽い状態となっているので
そもそも新型コロナウィルスに対する
免疫反応の違いが人とある可能性があります。
従って、
人でも同じように当てはまるかは
認識として注意が必要です。
以上です。
(参考文献)
Abishek Chandrashekar et al.
SARS-CoV-2 infection protects against rechallenge in rhesus macaques
Science 14 Aug 2020:
Vol. 369, Issue 6505, pp. 812-817
DOI: 10.1126/science.abc4776
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
今世界で約160種類のワクチンが開発されている
といわれています。
日本にもすでに2つのワクチンが順調に進めば
アメリカ、イギリスから供給されるとあります。
また国内での開発も並行して進んでいくと思われます。
ワクチンは事前に抗体を体内で作成することから
ウィルスの感染を未然に防ぐことが期待されます。
もし罹患したとしても軽症で済むことも
同時に期待されます。
しかし、過去のデング熱で実際に
抗体依存性感染増強(ADE)と呼ばれる
ワクチンを接種することで
逆にウィルスの感染性、毒性が上がってしまった
ということが起こりました。
従って、SARS-CoV-2でも
それが起こらないような効果の高い
ワクチンを注意深く作る必要があります。
基本的には中和活性が高いワクチンは
それが起こりにくいといわれています。
その抗体依存性感染増強は、
細胞に違った経路で感染することが
考えられています。
通常、新型コロナウィルスは
ACE2というエントリー受容体を通じて
細胞内に入りますが、
細胞には様々な受容体があり
その一つとして
FcγRsと呼ばれる受容体があります。
この受容体は
抗体が持つFc面と親和性を持つので、
ウィルスに抗体がつくことによって
あるいは抗体が存在することによって
初めて生まれる経路だと理解しています。
このFcγRsはいくつかのタイプがあって
免疫細胞などを始め
様々な細胞の表面に存在するものです。
従って、
抗体がつくことによって
感染しうる細胞の多様性が上がる可能性
が考えられます。
例えば、B細胞、NK細胞などの免疫細胞に
ウィルスが感染することも考えられます。
そうした抗体独自の経路によって
免疫機能が乱され、
炎症性サイトカインの亢進、
あるいは抗炎症性サイトカインの抑制などが
発生する可能性が示唆されています。
抗体単体で細胞に結合することもあれば、
ウィルスに抗体がついた状態で細胞に結合する
事も考えられます。
またウィルスに抗体がついた状態で
細胞に結合した時にエンドサイトーシスが
起こるかどうか?
という区分のあると思います。
このように多様である可能性があるため
必ずしも炎症性、毒性を高めるように働くか
どうかはわかりません。
むしろ抗ウィルス性を高めるような
パターンもあるかもしれません。
他のウィルスで実際にFcγRsを通じた
抗ウィルス作用の報告はいくつかあります。
従って、新型コロナウィルスで
どの細胞にどの型のFcγRsに抗体がついたときに
免疫機能のバランスがどうなるか?
という仕分けができれば、
それは一つより効果的で副作用のない
ワクチン開発に寄与すると考えます。
すでにどの抗体がどのタイプのFcγRsの活性を
変えるかというのはいくつか明らかになっています。
(参考文献:Table1より)
これもFcγRs経路を使った
ワクチン戦略の一つになると考えます。
このようなメカニズムが
抗体依存性感染増強と関係していると
考えられています。
このメカニズムは
どの抗体にもある程度共通に起こる可能性がある
と考えました。
中和効率が高く、作用が強い質の良いワクチンは
そのような副作用があったとしても
効果の方が大きく出るため、
結果としてリスクを弱めるということが
あるかもしれないと推測しました。
解析として様々な細胞の表面のFcγRsに対して
作製する抗体が結合するのか?
その立体構造解析ができれば、
新型コロナウィルスの抗体が
FcγRs受容体を通じて
どの細胞に感染する可能性があるのか?の
一つの情報になると考えます。
以上です。
(参考文献)
Stylianos Bournazos, Aaron Gupta & Jeffrey V. Ravetch
The role of IgG Fc receptors in antibody- dependent enhancement
Nature Reviews Immunology (2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-00410-0
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
レムデシビルに続き、
デキサメタゾンは2020年7月21日に
新型コロナウィルス感染症の治療薬として
使用が承認されました。
このデキサメタゾンは
安くて、広く利用可能で、
60年間の使用実績があるため
薬剤として使用するための障害は小さい
と考えられます。
デキサメタゾンは、RECOVERYレポートなどによって
統計的な治療優位性が認められています。
基本的には
人工呼吸器、酸素の補充が必要な
重症の患者さんに投与する場合に
治療効果があったとされています。
一方、
それを必要としない軽症の患者さんに対する
効果は認められなかったとされています。
デキタメタゾンは
細胞の中の核に働きかけて
遺伝子の機能的な変化を促します。
その中で
B細胞、T細胞、樹状細胞など
多岐にわたる免疫系の細胞に対して、
炎症性の機能(サイトカイン)を抑える働きがあります。
従って、
免疫機能がある閾値を超えて、
バランスが崩れて
サイトカインストームを起こした時に、
その機能回復に貢献します。
従って、
免疫の擾乱によって肺の機能が低下した
重症の患者さんに対して
一定の奏功を示すということだと理解しています。
薬の処方において
その量、タイミングなど考慮すべき
要因はありますが、
参考文献によれば
1日6mg程度の少なめの量で様子を見ることが
副作用を軽減しながら、薬剤抵抗性を下げながら
効果を得る上で好ましいのではないか?
と言われております。
以上です。
(参考文献)
Derek W. Cain & John A. Cidlowski
After 62 years of regulating immunity, dexamethasone meets COVID-19
Nature Reviews Immunology (2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-00421-x
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
免疫というのは体を防御する役割でありますが、
経験のない、記憶免疫性に乏しい
未知のウィルスなどが体の中で増殖すると、
免疫の負担が増え、
それによってバランスが崩れることはあるかもしれません。
例えば、
Ⅲ型インターフェロンは抗ウィルス性を持ち、
ウィルスを撃退する働きがありますが、
それが継続的に分泌されると
ウィルスの増殖抑止効果があっても
その副作用として肺胞の組織が破壊される
かもしれないということがありました。
それは、同じように抗ウィルス性を持つ
NK細胞も同じです。
中等症、重症の患者さんの
肺胞の状態を調べるとNK細胞の量が増えており、
そのNK細胞は獲得性、特殊性を持っていて
そのCD56<sup>bright</sup>NK細胞と
組織の炎症との関わりが示唆されています。
ウィルスの量を減らすことと
体の組織を守ることの両立というのは、
難しさを感じます。
従って、ワクチンや薬剤などによって
ウィルスの量を外因的に減らすことは、
体の負担を軽減するのに寄与する可能性があります。
以上です。
(参考文献)
Aljawharah Alrubayyi
NK cells in COVID-19: protectors or opponents?
Nature Reviews Immunology (2020)
doi.org/10.1038/s41577-020-0408-0
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
ウィルスが細胞内に感染して、
細胞内で増殖して、また細胞外に出されて、
また細胞内で増殖する。
ウィルスが増殖することによって
免疫機能が乱され、
サイトカインストームなどによって炎症が起こったり、
抗ウィルス性を身体が継続的に発する中で
肺の正常な組織が破壊される、
といった負の連鎖が考えられます。
従って、
多くの因果関係があるため
ウィルスから体を守るための
様々な戦略が考えられます。
例えば、
ワクチンによって受容体結合面に結合して
細胞内にウィルスが入らないようにしたり、
薬剤によって、細胞内でのウィルスの増殖を防いだり、
あるいは、免疫機能を調整したり
といったことが考えられます。
ウィルスのライフサイクルには
様々な複雑な段階があると考えられるので、
その経路ごとにワクチンや薬剤が関与する余地が
与えられています。
例えば、ウィルスの細胞内への感染を防ぐ場合においても
エントリー受容体へのウィルスタンパク質の結合を
防ぐだけではなく、結合した後
細胞の膜を曲げて細胞の中に入り込む
(エンドサイトーシス)
のを防ぐことも考えられます。
このエンドサイトーシスでは、
Sタンパク質は段階的な構造変化が必要だといわれています。
構造を変化させるためには、
Sたんぱく質のエネルギー状態が高く不安定で、
かつ構造を変えるようなタンパク質の結合を切る
働きが必要です。
その過程では
PHの変化、タンパク質分解活性、
タンパク質同士の相互作用が関与している
ことが考えられます。
従って、このようなたんぱく質の構造、配座の変化を
止めるような機序を生む安定化のための結合を
事前にタンパク質に組み込むことができれば、
ウィルスの細胞内への感染を防ぐことに
貢献することが期待されます。
例えば、インフルエンザウィルスでは
RNAの拡張を防ぐようなプロリン置換が
ウィルスタンパク質の安定化に貢献したという
報告もあります。
このようなプロリン置換は
ウィルスのタンパク質の安定化には
比較的広範な効果を示していて、
MARS-CoVやSARS-CoVなどにも効果を示した
とされています。
参考文献では
ウィルスタンパク質の安定化の方略の
もう一つのアプローチとして
ジスルフィド結合を検討しています。
この結合は2個の硫黄原子が繋がったジスルフィド基を通じた
結合で、共有結合的に強い安定性を発揮します。
コロナウィルスのタンパク質は、
S<sub>b</sub)置換というのを通して
タンパク質の部位がドメインを境界として
離れたり、くっついたりしています。
離れた場合を「Open conformation」
くっついた場合を「Closed conformation」
と呼び、オープンになってぐらぐらしている状態で
基本的に構造の不安定化、連続的な変化が起こる
と理解しています。
それがエンドサイトーシス、
ウィルスの細胞内への浸入を起こします。
このジスルフィド結合は、
いわば「留め金」のような役割をしていて、
タンパク質の部位がはずれてオープンに
なるのを防ぐように働きます。
その留め金が共有結合性を有していて強いから
より効果的であると考えられます。
実際に、新型コロナウィルスにおける
ACE2受容体への認識は、
このジスルフィド結合を取り入れた場合には
2桁下がったとされています。
従って、エントリー受容体への感受性が弱まったため
タンパク質の結合が防がれ、
細胞感染の予防が期待されます。
また
Sタンパク質が密着して安定化しているために
抗体の結合能力が下がっていることを示しました。
これは一見悪い結果のように思えますが、
私の理解では
「構造がすでに安定化しているために
抗体が結合する必要がない。
抗体がつかなくても細胞内の感染を防ぐことが
できる状況。」
というものです。
この効果は、2002年に流行した
SARS-CoVでも確認されています。
従って、コロナウィルス全般に効果を発揮する
可能性が示唆されます。
またタンパク質分解は、
抗体の結合状態に影響を与えますが、
このジスルフィド結合があることによって
それらのトリプシンやキモトリプシンなどの
タンパク質分解物質に対する耐性が強まった
事を示しています。
このことは、
抗体と両立して使うことができて
より安定的な効果を発揮することに
貢献するかもしれない結果だと認識しています。
従って、薬剤によって
これらの結合をどのように実現するか?
というのは、別の選択肢として
あげられる可能性を考えました。
以上です。
(参考文献)
Matthew McCallum, Alexandra C. Walls, John E. Bowen, Davide Corti & David Veesler
Structure-guided covalent stabilization of coronavirus spike glycoprotein trimers in the closed conformation
Nature Structural & Molecular Biology (2020)
doi.org/10.1038/s41594-020-0483-8
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスに罹患された患者さんのうち
重症になった場合には、
Ⅰ型インターフェロンの量が少なかった
という報告があります。
このインターフェロンは抗ウィルス性を示すので
その分泌量減少に注目が集まっています。
一方、
Ⅲ型インターフェロンは粘膜表面で主に機能を示す
ということで注目されています。
最近の報告では、抗ウィルス活性を示すとともに
好中球による組織のダメージを制限する
というものがあります。
しかし、肺でⅠ型、Ⅲ型インターフェロンが
長期的に作用した時の
肺組織に対する影響はわかっていません。
つまりウィルスを撃退することができるかもしれない
一方で、肺の正常な組織に対する影響は
わかっていないということです。
Ⅲ型インターフェロンの肺での影響を
調べるために「マウス」で
その分泌量を上げるpoly(I:C)を投与して
肺での影響を調べた結果、
肺胞の上皮細胞の組織修復を抑制して
上皮バリアを損傷させると同時に
細菌などによる2次感染が起こりやすい可能性が
示唆されました。
このⅢ型インターフェロンは樹状細胞によって
放出され、TLR3経路が活性化された時のみに
誘発されることが樹状細胞の試験管内の実験によって
明らかになっています。
またpoly(I:C)にtriphosphate hairpin RNA
を細胞内に運ぶことができれば、
Ⅰ型インターフェロンだけを亢進させ
Ⅲ型インターフェロンを抑えることができる
ことがわかっています。
一方、Ⅰ型インターフェロンについて。
インフルエンザウィルスに感染させたマウスの実験において
(※新型コロナウィルスではない)
インターフェロンの放出を制御する受容体の活動
を抑えたマウスとの比較において
Ⅰ型インターフェロンも同様に
細胞分化の抑制の関連性が示唆されています。
これらの結果から
Ⅰ型、Ⅲ型インターフェロンは
おそらくウィルス感染細胞に対する攻撃には
効果を発揮するかもしれないけど、
それが長期間、肺胞の上皮細胞に放出され続けた時には
回復期において組織の修復に悪影響を与えるかもしれない
ということが示されました。
つまり
治療において少なくなっている
インターフェロンの量を薬剤によって
制御しようとしたときには、
そのタイミング、期間、
同時に肺の状態のモニターは欠かせないかもしれない
ということが示唆されます。
また、すでに肺組織の機能が落ちている状態では
細菌などによる2次感染のリスクが高まる可能性があります。
以上です。
(参考文献)
(1)
Achille Broggi et al.
Type III interferons disrupt the lung epithelial barrier upon viral recognition
Science 07 Aug 2020:
Vol. 369, Issue 6504, pp. 706-712
DOI: 10.1126/science.abc3545
(2)
Jack Major et al.
Type I and III interferons disrupt lung epithelial repair during recovery from viral infection
Science 07 Aug 2020:
Vol. 369, Issue 6504, pp. 712-717
DOI: 10.1126/science.abc2061
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
日本の大阪で治験が始まっている
ワクチンはDNAワクチンと呼ばれます。
基本的に抗体を作り出す設計図を体内に入れて
体内で合成するような機序であると理解しています。
今、
アメリカのモデルナ(バイオテクノロジー企業)
アメリカ国立衛生研究所
でフェーズ3の段階に進んでいるワクチンも
同じようなワクチンでmRNAワクチンと呼ばれるものです。
mRNA-1273と命名されています。
これらの共通するメリットは
製造スピードが速いので量産性に優れているということです。
また、少なくともmRNAワクチンに関しては
体液性の免疫、細胞性の免疫の両方を誘発する
とされています。
つまり抗体の産生も促すし、
T細胞などによる感染細胞の攻撃にも寄与する
可能性が示唆されています。
参考文献には人の研究結果に関しての
詳細な情報は掲載されていませんが
「マウス」のデータにおいて
中和活性、ヘルパーT細胞、キラーT細胞に
作用していることが確認されています。
ヘルパーT細胞では1型、2型のバランスが取れた
反応が得られています。
2型の反応性に対しては呼吸器疾患の緩和の
可能性が期待されるとされています。
キラーT細胞に関しては、
適正な量を投与すれば、CD8+T細胞において
強固な反応性を示したとされています。
また実際の肺のウィルス量も接種量と逆相関があり、
ワクチンの接種がウィルス量低減に貢献している
可能性が高いことを示しています。
また、抗体として効果、
キラーT細胞、ヘルパーT細胞の効果は
3か月以上続いたことを確認しています。
この結果は人でも近いものが得られているとのことです。
人への投与量は
マウスの100倍の量で接種、評価されています。
ワクチンの効果は
抗体の産生に注目されるところがありますが、
B細胞、T細胞の記憶性、
あるいは細胞性免疫の活性についても
評価することが好ましいと考えられます。
今回、抗体だけではなく、T細胞の活性に関しても
効果が確認されています。
以上です。
(参考文献)
Kizzmekia S. Corbett, Darin K. Edwards, Sarah R. Leist, Olubukola M. Abiona, Seyhan Boyoglu-Barnum, Rebecca A. Gillespie, Sunny Himansu, Alexandra Schäfer, Cynthia T. Ziwawo, Anthony T. DiPiazza, Kenneth H. Dinnon, Sayda M. Elbashir, Christine A. Shaw, Angela Woods, Ethan J. Fritch, David R. Martinez, Kevin W. Bock, Mahnaz Minai, Bianca M. Nagata, Geoffrey B. Hutchinson, Kai Wu, Carole Henry, Kapil Bahi, Dario Garcia-Dominguez, LingZhi Ma, Isabella Renzi, Wing-Pui Kong, Stephen D. Schmidt, Lingshu Wang, Yi Zhang, Emily Phung, Lauren A. Chang, Rebecca J. Loomis, Nedim Emil Altaras, Elisabeth Narayanan, Mihir Metkar, Vlad Presnyak, Cuiping Liu, Mark K. Louder, Wei Shi, Kwanyee Leung, Eun Sung Yang, Ande West, Kendra L. Gully, Laura J. Stevens, Nianshuang Wang, Daniel Wrapp, Nicole A. Doria-Rose, Guillaume Stewart-Jones, Hamilton Bennett, Gabriela S. Alvarado, Martha C. Nason, Tracy J. Ruckwardt, Jason S. McLellan, Mark R. Denison, James D. Chappell, Ian N. Moore, Kaitlyn M. Morabito, John R. Mascola, Ralph S. Baric, Andrea Carfi & Barney S. Graham
SARS-CoV-2 mRNA vaccine design enabled by prototype pathogen preparedness
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2622-0
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
日本で感染がひろがっている中で
特に懸念されるのは、
高齢の方や基礎疾患のある方に感染が広がる事です。
もちろん行政としても注視している部分だと思われますが、
該当する方自身も注意されている部分があると思います。
あるいは一人で生活しているわけではないので、
周りの人の配慮についても気になります。
日本は高齢の方の割合が多いので、
とくに注意が必要です。
実際にアメリカ(ニューヨークなど)の
11116人の新型コロナウィルスに罹患した患者さんの
基礎疾患別のデータが整理されています。
その中で
どのような基礎疾患がどれくらいリスクを高めるか?
というのが少し明らかになってきています。
------
亡くなられた患者さんの割合
全体 10.2% (n=11116)
黄斑 25.0% (n=88)
凝固 17.1% (n=1239)
高血圧 18.7% (n=1988)
2型糖尿病 21.0% (n=911)
肥満 13.8% (n=831)
冠動脈疾患 20.0% (n=1698)
65歳以上 21.4% (n=2400)
※参考文献 Table.1より
------
黄斑とは、黄斑変性のことで
網膜に障害が起きる目の病気です。
補体と関係があるといわれているので
原因の一つとして免疫機能異常が関係している
可能性があります。
加齢性のものがあります。
凝固とは血管に関わる疾患です。
例えば、血小板減少症、血栓症、出血などです。
上のデータを見ると
肥満、喫煙は1.5倍程度リスクをあげる
可能性があります。
他の疾患はおおよそ2倍程度のリスクがあります。
高血圧、喫煙は身近な生活習慣に関わりますが、
新型コロナウィルスは
血管と肺に影響を与える病気なので、
特に気を付ける必要があります。
ただ、高血圧が
数値としていくらからなのか
というのが明らかではないので、
その点は認識として注意が必要です。
それは肥満についても同様です。
日本とアメリカで基準が異なる可能性があります。
またリスクを見積もるうえで注意が必要なのが
上述した疾患を持っている方は
他の疾患も併発している割合が高いということです。
例えば、凝固は
高血圧、2型糖尿病、肥満、冠動脈疾患
といった疾患を持っている患者さんの割合が高いです。
高齢の方もそれは同様です。
従って、
新型コロナウィルスが今後長期化する可能性を考えると
喫煙、肥満、高血圧など
生活習慣でよくできることは、
少しずつでも取り組んでいくことは大事になる
と思います。
以上です。
(参考文献)
Vijendra Ramlall, Phyllis M. Thangaraj, Cem Meydan, Jonathan Foox, Daniel Butler, Jacob Kim, Ben May, Jessica K. De Freitas, Benjamin S. Glicksberg, Christopher E. Mason, Nicholas P. Tatonetti & Sagi D. Shapira
Immune complement and coagulation dysfunction in adverse outcomes of SARS-CoV-2 infection
Nature Medicine (2020)
doi.org/10.1038/s41591-020-1021-2
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
今、医療従事者の方は
ECMOのトレーニングを広めている
と理解しています。
新型コロナウィルスのために使うには、
特別な訓練が必要だからです。
そのECMOは血液を装置を通して循環させて
酸素を人工的に送り込んで、
肺の機能を休ませて治癒を促すもの
という理解でいます。
人工呼吸器でも手に負えないような
重症の患者さんの最後の手段として使われます。
その血液は外から見ることができて
詰まることがあるようです。
血液をメディアを通してみたことがありますが、
白いネバネバしたものがあって、
それが血栓と関係があるという認識です。
そのような血栓ができる疾患として
血栓性微小血管症(TMA)というのがあります。
新型コロナウィルス罹患を通じて
この血栓性微小血管症が生じることがあるようです。
従って、
従来から確認されているこの疾患の
考えられる治療が新型コロナウィルスに生かせる
可能性があると考えています。
例えば
①血漿交換
②静脈注射免疫グロブリン
③ステロイドなどによる免疫抑制
などが挙げられています(1)。
すでに治療として採用されているものがあると思います。
②、③については検討及び採用されていると認識しています。
③については、大阪大学の宮坂昌之先生もいわれていましたが
「投薬のタイミング」が大事と考えられています(1)。
また肺が炎症を起こして繊維素がある場合には、
繊維素溶解が治療方針としてあると考えられています。
これは血栓が成長して問題になるのを防ぐプロセスです。
そのために
プラスミノゲン活性化因子(Plasminogen activator)が
治療として有効である可能性が示唆されています(2)。
以上です。
(参考文献)
(1)
Joan T. Merrill, Doruk Erkan, Jerald Winakur & Judith A. James
Emerging evidence of a COVID-19 thrombotic syndrome has treatment implications
Nature Reviews Rheumatology (2020)
doi.org/10.1038/s41584-020-0474-5
(2)
Wang, J. et al.
Tissue plasminogen activator (tPA) treatment for COVID-19 associated acute respiratory distress syndrome (ARDS): a case series.
J. Thromb. Haemost. 18, 1752–1755 (2020).
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
免疫機能というのは天秤に例えられることがあります。
つまり強めようとする作用と抑えようとする作用があって
それらのバランスによって成り立っている
と考えられます。
サイトカインストームというのは
免疫の暴走といわれます。
それが肺炎などの原因となっていると考えられている
と理解しています。
その暴走とは、上で述べた均衡状態が崩れて
免疫を強めようとする物質の中で
炎症を引き起こすような物質をうまく抑えられていない状態
だと考えています。
体の適正な恒常性のために重要な役割をになっている
一つの細胞群は、ヘルパーT細胞だと考えられます。
Th細胞、CD4+T細胞といわれます。
このヘルパーT細胞には
Th1、Th2と二つの亜型があるといわれています。
Th1は細胞を仲介した様々な生体反応を強めるものです。
作用サイトカイン:IL-12, IFN-γ, IL-2
作用細胞: CD8 T細胞, IgG B細胞, IFN-γ CD4 T細胞
だと考えられています。
一方、
Th2は体液性の免疫反応を導くとといわれています。
作用サイトカイン:IL-2, IL-4, IL-5, IL-9, IL-10, IL-13, IL-25
作用細胞:好酸球, 好塩基球, 肥満細胞, B細胞, IL-4/IL-5 CD4 T細胞
だと考えられています。
従って、
ヘルパーT細胞は様々な免疫細胞、サイトカインに作用して
それらの司令塔のような役割をしていると考えられます。
参考文献によれば、
ChAdOx1Cov-19という複製を無効化した
アデノウィルスワクチンによって
バランスのとれたTh1/Th2細胞の機能を引き出すことができた
と言われています。
つまりヘルパーT細胞の機能を全体的にうまく
引き出すことができたといえます。
その中で、
人でははなくアカゲザルのケースですが、
肺炎を防ぐことができたといわれています。
考えられる理由の一つとして
気管支肺胞、気道下部のウィルス量を劇的に減らすことが
できたことが考えられます。
このワクチンに対して
プライムブーストという投与方法では
IgG抗体、中和抗体は56日間、
つまり2か月近くは維持しています。
ただ、抗体価が最大値まであがるまでは
少し時間がかかっていることが特徴です。
ワクチンを接種することで
ヘルパーT細胞の活性化がみられるので、
罹患した後に速やかにワクチンを摂取するという
治療戦略も考えられます。
抗体の感染の増加だけではなく
免疫細胞やサイトカインに働きかける機序もあるので
薬のような役割として
ワクチンを使うという治療も考えられると思います。
以上です。
(参考文献)
Neeltje van Doremalen, Teresa Lambe, Alexandra Spencer, Sandra Belij-Rammerstorfer, Jyothi N. Purushotham, Julia R. Port, Victoria A. Avanzato, Trenton Bushmaker, Amy Flaxman, Marta Ulaszewska, Friederike Feldmann, Elizabeth R. Allen, Hannah Sharpe, Jonathan Schulz, Myndi Holbrook, Atsushi Okumura, Kimberly Meade-White, Lizzette Pérez-Pérez, Nick J. Edwards, Daniel Wright, Cameron Bissett, Ciaran Gilbride, Brandi N. Williamson, Rebecca Rosenke, Dan Long, Alka Ishwarbhai, Reshma Kailath, Louisa Rose, Susan Morris, Claire Powers, Jamie Lovaglio, Patrick W. Hanley, Dana Scott, Greg Saturday, Emmie de Wit, Sarah C. Gilbert & Vincent J. Munster
ChAdOx1 nCoV-19 vaccine prevents SARS-CoV-2 pneumonia in rhesus macaques
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2608-y
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスには
様々な種類のタンパク質があります。
抗体がつくと言われている
Sタンパク質(スパイク)をよく耳にしますが、
それ以外にも
Nタンパク質(ヌクレオカプシド)、
Mタンパク質(被膜)
Eタンパク質(エンベロープ)
が存在すると言われています。
さらに、非構造タンパク質や装飾タンパク質もあると
理解しています。
このようにウィルスに存在するタンパク質もあれば、
宿主となる細胞の中にも
複数のタンパク質があります。
そのような多様なたんぱく質、
あるいはそれらの動的な振る舞いが
免疫機能の一つであるサイトカインの分泌を制御している
可能性が示唆されています。
例えば、そのサイトカインには
宿主のインターフェロンやNF-κBが挙げられます。
新型コロナウィルスでは
抗ウィルス作用があるⅠ型インターフェロンが不足する場合があり
それが重症化との関連があるかもしれない
と考えられています。
このようなサイトカインの後天的な修正も
一つはタンパク質とタンパク質分解酵素の働きによって
上流側の経路として関わっている可能性があります。
例えば、そのたんぱく質分解酵素として
参考文献ではパパイン様タンパク質分解酵素
(papain-like protease)
が関わっているとされています。
タンパク質は、インターフェロンの分泌に関わっている
ISG15という遺伝子でコード化されたタンパク質が
関わっているとされています。
このたんぱく質はユビキチン様とされているので
他のタンパク質を装飾するものです。
それらの触媒サイトにおける結合において
疎水性の相互作用が重要だといわれています。
またその分解においては抹消部である
K48-Ub2という部分が構造から剥離されると
考えられています。
ISG15は細胞内に存在するもので
それらが外に放出されることもありますが、
おそらく新型コロナウィルスが入ってきた時に
インターフェロンを出すように指令を出しますが、
このパパイン様タンパク質分解酵素によって
その機能が損なわれていると理解しています。
このサイトカインの制御に関わっているかもしれない
たんぱく質分解酵素は
GRL0617という薬剤で抑制することができます。
これはナフタレンを基礎として
非共有結合的にタンパク質分解酵素の
働きを抑制することができます。
これは分解酵素のTyr268というサイトに結合して
ISG15というたんぱく質が触媒サイトに結合することを
防ぐように働きます。
このGRL0617は2003年に流行した
SARS-CoV1にはウィルス複製抑制の効果があった
という報告もすでにあります。
実際に試験管の結果では(in vitro)
細胞内に新型コロナウィルスのRNAの量が減った
という結果があります。
またそれに付随する結果として
狙い通り、IFNに反応性を持つ遺伝子(ISG15, OAS1, PKR, MX1)
の発現レベルが薬剤投与によって上がりました。
上述したパパイン様タンパク質分解酵素の働きを
抑制する戦略は急速に発展を遂げており、
これは新型コロナウィルスの増殖を防ぐだけではなく
宿主の自然免疫を亢進する2重の働きが期待されています。
また
RNA依存のタンパク質分解酵素の働きに影響を与える
薬剤と併用することも今後検討の余地があるとされています。
例えば、レムデシビルはRNAタンパク質分解酵素の
働きに影響を与えて、ウィルス増殖を防ぐものなので
この薬との併用によって
より強い抗ウィルス作用を実現できるか?
という点が気になります。
以上です。
(参考文献)
Donghyuk Shin, Rukmini Mukherjee, Diana Grewe, Denisa Bojkova, Kheewoong Baek, Anshu Bhattacharya, Laura Schulz, Marek Widera, Ahmad Reza Mehdipour, Georg Tascher, Paul P. Geurink, Alexander Wilhelm, Gerbrand J. van der Heden van Noort, Huib Ovaa, Stefan Müller, Klaus-Peter Knobeloch, Krishnaraj Rajalingam, Brenda A. Schulman, Jindrich Cinatl, Gerhard Hummer, Sandra Ciesek & Ivan Dikic
Papain-like protease regulates SARS-CoV-2 viral spread and innate immunity
Nature (2020)
doi.org/10.1038/s41586-020-2601-5
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
新型コロナウィルスの顕微鏡画像を何度か目に
した方は多いかもしれません。
その円形の細胞のような核の周りに
いくつかのスパイク、突起がうっすらみえます。
その突起は、Sタンパク質と呼ばれます。
そのSタンパク質の特定の面(受容体結合面)が
エントリー受容体(ACE2)に結合することによって
細胞内に侵入して感染すると考えられています。
(※並列して別の機序もあると理解しています。)
そのSタンパク質は三量体(trimetric)と呼ばれ、
その三量体とは生化学的には
-----
3つのタンパク質または核酸のような高分子同士が
非共有結合し形成した複合体。
-----
と呼ばれています。
従って、共有結合ではないので頑丈な結合ではなく
比較的低いエネルギーによって構造を動かすことが
できる可能性を考えました。
そのSタンパク質に結合する抗体は
様々な種類が確認されていますが、
一般的に「質が良い」とされている抗体は、
「Sタンパク質とエントリー受容体の結合を
少ない量で防ぐことができる抗体。」
とされています。
また、コロナウィルスは変異しやすいので
交差反応(つまり変異しても広く効果がある)
を示す抗体が質が良いと考えられます。
その中で、
SAR-CoV-1とSARS-CoV-2両方に中和活性を示す抗体は少ない
と言われていますが、
回復期の新型コロナウィルス患者の方から採取された
抗体の中で「EY6A」は両方に中和活性を示すことが知られており
新型コロナウィルスに対して高い中和能を示す
と考えられています。
その質が良いと考えられるEY6Aを
取り出して生体外で細胞と反応させて
その構造を評価する中でいくつかわかったことがあります。
------
この抗体はCR3022という他の抗体に対して
「①10倍以上接近してSタンパク質の受容体結合部位に
結合すること」がわかっています。
従って、引き合う力が強いので
極性を弱める働きが強いかもしれないし、
一度結合したら乖離しにくいかもしれません。
また、このことと関連しているかもしれないですが、
「②結合時の歪が小さい」と言われています。
つまりSタンパク質の構造とよく整合して
形を変えなくても結合することができるため
構造として安定している可能性があります。
また、
「③結合する際にタンパク質の「蓋をとるような」働きがある」
とも言われています。
それによってたんぱく質が比較的安定的に持つ
エネルギー障壁を超えて結合することを可能にしています。
さらに、結合するときの障壁、邪魔となる
「糖化」という現象があります。
この「④糖化が起こりにくい」と言われています。
-------
他の報告では、受容体結合部位の場所によって
中和能力が異なっていて
特定の領域につく抗体は効果が強い傾向にある
といわれていました。
このような場所依存性も確認されていますが、
このような最適な場所において
どのように結合するか?
というのも中和活性を決めている一つの原因だと思います。
また一つ重要な情報として
細胞ごとに中和能力が異なる可能性も考えられる
といわれていました。
同じ種類の細胞でもそうかもしれないし、
細胞の種類が異なれば同じように当てはまるかもしれません。
そのような中和能力に対する
細胞間の異種性も考慮していく必要性が想定されます。
以上です。
(参考文献)
Daming Zhou, Helen M. E. Duyvesteyn, Cheng-Pin Chen, Chung-Guei Huang, Ting-Hua Chen, Shin-Ru Shih, Yi-Chun Lin, Chien-Yu Cheng, Shu-Hsing Cheng, Yhu-Chering Huang, Tzou-Yien Lin, Che Ma, Jiandong Huo, Loic Carrique, Tomas Malinauskas, Reinis R. Ruza, Pranav N. M. Shah, Tiong Kit Tan, Pramila Rijal, Robert F. Donat, Kerry Godwin, Karen R. Buttigieg, Julia A. Tree, Julika Radecke, Neil G. Paterson, Piyada Supasa, Juthathip Mongkolsapaya, Gavin R. Screaton, Miles W. Carroll, Javier Gilbert-Jaramillo, Michael L. Knight, William James, Raymond J. Owens, James H. Naismith, Alain R. Townsend, Elizabeth E. Fry, Yuguang Zhao, Jingshan Ren, David I. Stuart & Kuan-Ying A. Huang
Structural basis for the neutralization of SARS-CoV-2 by an antibody from a convalescent patient
Nature Structural & Molecular Biology (2020)
doi.org/10.1038/s41594-020-0480-y
いつも記事を読んでくださり、ありがとうございます。
世の中の方の一つの注目点として
ワクチン開発があると思います。
また一方で、
重症化する原因の一つとして
サイトカインストームによる組織の炎症
ということをメディアを通じて耳にします。
それらに深くかかわる機序として
免疫があります。
世の中で、大枠ながら一つの生理機序に対して
専門家の方だけではなく一般の人の
ここまで注目を浴びたことはあまりないと思います。
専門家以外の方にもわかりやすいように
免疫について単純化されて可視化されます。
その中でワクチンによって生まれる
抗体はY字型で
それが新型コロナウィルスに近づいて
その突起に結合するイメージがあります。
また、自然に備わっている免疫として
細胞が刀を持っていて、
その刀を振るってウィルスに感染している
細胞を攻撃するといった像も浮かびます。
そういった免疫は一般的に
細胞の外で行われるイメージがあります。
抗体も細胞に入る前に
細胞の外でつくものだと考えられています。
あるいは、
T細胞による攻撃も細胞の外から接近していきます。
そういった免疫は、
ウィルスを増殖させないように
コントロールするためですが、
そういったウィルスの増殖を防ぐ機序は
細胞内にもあると考えられています。
つまり、
新型コロナウィルスが細胞内に入って
そこでRNAを増殖させようとするとき、
増殖させるために働く因子と
それを防ごうとする因子があると考えられています。
つまりそこにも「天秤」があります。
その防ごうとする因子は
一つは細胞内にあるミトコンドリアに依ります。
ミトコンドリアはエネルギーの管理をする役割があって
細胞の維持のためには欠かせない細胞内小器官である
と理解していますが、
このミトコンドリアには、
抗ウィルス信号をもつたんぱく質がある
といわれています。
この増殖を防ぐ因子が強く働けば、
ウィルスが細胞内に入っても
あまり多くは増殖できないことを意味するかもしれません。
しかし、過去流行した同じコロナウィルスである
SARS(-CoV)ではこれらの細胞内での
抗ウィルス信号を抑制する働きを持つかもしれない
と考えられています。
それはSARS(コロナウィルス)が持っている
いくかのタンパク質が関与している可能性が示唆されています。
それは感染力の強い新型コロナウィルスでも同じで
非構造タンパク質(non-structural protein)
あるいは装飾タンパク質(オープンリードフレーム、ORF)
のいくつかの型のタンパク質が関わっている可能性があります。
この非構造タンパク質は、
ウィルスの構造に含まれないタンパク質で
その増殖に関与するものとされています。
具体的な構造、場所を示す情報を私はまだ得ていませんが
いくつかの情報によれば、
それは
「毛糸のようにエンベロープ(膜)にまとわりついてる(?)。」
と私は仮として認識しています。
また装飾タンパク質は
ちゃんとした概念は理解していませんが、
機能の一部の記述として、
ウィルスが細胞にエンドサイトーシスするときに
ウィルスから細胞表面に移動する
といったものがあり、
ウィルスの表面にあって可動性に富んでいる
と私は仮に認識しています。
これらのタンパク質は、
Ⅰ型インターフェロンの分泌にも影響を与えている
可能性が示唆されています。
このⅠ型インターフェロンは抗ウィルス作用を持ち、
重症化の要因の一つとして挙げられています。
Ⅰ型インターフェロンの中に
インターフェロンβというのがありますが、
非構造タンパク質(NSP1, NSP3, NSP12, NSP13, NSP14)
装飾タンパク質(ORF3, ORF6)が
その分泌を弱める因子であると示唆されています。
その中で特にORF6というたんぱく質が関連が強い
と考えられています。
このインターフェロンは
自己分泌と傍分泌に関与するので
感染した細胞そのもの
あるいは近くの感染細胞に働きかける機能を
持つと考えられます。
私の理解では、
細胞内でのいろんなバランスによって
そのインターフェロン分泌のための信号のバランスが変わり
その結果分泌されれば
自らの細胞や近くの細胞を攻撃すると考えられています。
つまり
インターフェロン分泌を決めている上流の経路の一つとして
細胞内で働くタンパク質のバランスがある
と推測しています。
ここからはまだ
具体的な科学的な情報がとれていない仮説です。
細胞の外で働く抗体はSタンパク質の
受容体結合面にエピトープ部分で結合します。
それによって極性を弱めて中和する
と考えています。
同じように非構造タンパク質や
装飾タンパク質で重要な役割を担っている部分に
ワクチンや薬剤によって
機能を弱めるような物質をつけることができたら
ひょっとすると
ウィルスの増殖を減らせる可能性があるのではないか
と思いました。
例えば、インターフェロンの分泌を抑えているかもしれない
装飾タンパク質ORF6に
その機能を弱める物質が結合することによって
ウィルスの増殖を制御できないか
という可能性を抗体のようなモデルで考えました。
以上です。
(参考文献)
Xiaobo Lei, Xiaojing Dong, Ruiyi Ma, Wenjing Wang, Xia Xiao, Zhongqin Tian, Conghui Wang, Ying Wang, Li Li, Lili Ren, Fei Guo, Zhendong Zhao, Zhuo Zhou, Zichun Xiang & Jianwei Wang
Activation and evasion of type I interferon responses by SARS-CoV-2
Nature Communications volume 11, Article number: 3810 (2020)
doi.org/10.1038/s41467-020-17665-9

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