(概説)(1)
共鳴非弾性X線散乱(RIXS)
Resonant inelastic X-ray scattering (RIXS)。
これは測定検体である材料の電子構造の中の
特定の軌道の電子状態をターゲットとして
X線入射エネルギーを設定し(共鳴X線エネルギー、波長)、
その緩和過程(励起状態⇒低エネルギー状態)のエネルギー差に基づいて
失われたエネルギーが光子に変わり((非)弾性散乱)、
その2次光(X線)信号を光検出器で区別して検出する(分光法)ことです。
この時、入射された光と散乱した光のエネルギー、波長が異なる場合には
非弾性散乱と定義されます。
(参考文献(1) Fig.2a参照)
その電子構造はX線入射によってプローブされた材料の局所状態特有であるため、
厳密にはその材料の構成元素、配位状態、結合状態などを識別することができます。
こうした材料にX線を入射するときには
異なる特性を持つ粒子(例えばmagnons, phonons, plasmons and orbitons)
これらを集団励起子し、同時にそれらの緩和過程が2次信号に含まれます。
そのスペクトルにより
材料の磁気的、力学的、電気的、および軌道の性質を詳細に理解することができます。
X線が吸収されると励起された電子が励起状態に遷移する過程で
コア状態にある電子の空孔によるホール(正孔)が生成されます。
通常、共鳴非弾性X線散乱(RIXS)でされる電子状態は
強いエネルギーで束縛された内殻に近い軌道、エネルギー状態が選択されます。
そうすると電子が軌道から抜けて、高いエネルギー状態に遷移した時に、
そこで生じた空孔は非常に不安定な状態です。
従って、電子が緩和する過程でより高いスピードで低い状態に遷移します。
この時、不確定性原理によってΔEが大きくなり、
スペクトルは波長、エネルギーに対してブロードになります。
なぜなら不確定性原理では
ΔE * Δt ≧ (h / 2π) / 2 (h : プランク定数)
このような式が成り立ち、時間が速くなる(Δtが小さくなる)事は
原理的にΔE、すなわちエネルギーの広がりが大きくなるからです。
(詳細内容)
入射する光信号(光子、X線からなるビーム)は
特性としてその電磁波の揺らぎの周期から成る波長、つまりエネルギーと
実空間を伝搬するための方向(波数ベクトル:wave vector ki) 。
これを持っています。この時のベクトルの向きは光が進む方向ですが、
強度は光のエネルギーに対応します。波長に比例して小さくなります。
X線は波長が短いですから波数ベクトル強度は大きくなります。
波数は一定距離にどれだけの波を持つかですから、
X線は実空間に対してより高い空間解像度を持つ事になります。
一方で、光は偏光状態を持っています。
すなわち、光が伝搬する周囲の電場を進行方向に対して
どういったパターンで動かすか?というパラメータがあります。
こうした方向はX線が照射された物質が構成する
結晶格子(タンパク質の場合であれば、高分子の幾何学的配置パターン)が
どういったパターン、対称性を持っているかで
光と物質の相互作用の強さが変わります。
こうした「向き」に対する相互作用の強さを「選択則」と呼びます。
生体内に存在するタンパク質の構造は半導体材料と比べて、
主に酸素、炭素、水素から構成され、
それらの3次元的な配置パターンは一様ではなく、
折り畳みパターンによっても異なります。
基本的には波数ベクトルの向き、偏光状態、すなわち電場の向きに対して
対象となる検体の結晶構造に則した形で干渉し、結果吸収されますが、
パターンが複雑であるため、個別の方向パラメータに対して
選択則で示される選択性の程度が低いと考えて自然です。
複数の個別の選択性を持つと考える為、
詳しい構造をより正確に計算しようと思ったら
全方向からスキャンしながらX線を照射し、
その吸収スペクトルを見ていくことが求められます。
これは一般的にはX線吸収分光法(XAS)の
特に複雑な生体分子の構造解析において利用される測定モダリティーです。
しかし、こうした手法を人体に対して非侵襲で行おうとすると
照射時間が極めて長くなるため、被ばく時間が長くなり、
人体に対して有害になり、安全性が担保されません。
従って、この方式でタンパク質の構造を非侵襲で測定するためには
より限定的な情報から人工知能によってスペクトルを推論させる事、
あるいはコンピューター解析によって計算すること、
あるいはそれらの両方が少なくとも求められるでしょう。
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上述したように
通常、共鳴非弾性X線散乱(RIXS)でされる電子状態は
強いエネルギーで束縛された内殻に近い軌道、エネルギー状態が選択されます。
そうすると電子が軌道から抜けて、高いエネルギー状態に遷移した時に、
そこで生じた空孔は非常に不安定な状態です。
従って、電子が緩和する過程でより高いスピードで低い状態に遷移します。
この時のコアホール(正孔)の寿命は数フェムト秒(10^-15秒)程度です。
このコアホールは非常に短いライフタイムを持ち、
その不安定性を安定化させるための環境ストレスが駆動し、
それに応じて、系のエネルギーが少なくとも極小となるように、
電子が励起された高いエネルギー状態から低い状態へと緩和されます。
その緩和過程で失われたエネルギーに相当する光信号は
入射光と同様に特定の向き(波数ベクトル、偏光状態)を持ちます。
しかし、共鳴非弾性X線散乱では
特定の軌道を持つ電子が電子状態に応じて
コア状態から励起状態に遷移されますが、
励起状態から緩和されて低エネルギー状態に遷移されるときに
選択される状態はエネルギーの最も低い基底状態ではありません(1)。
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一つ、生体内で非侵襲でタンパク質を検出する上で重要な現象があります。
Anti-Stokes resonant x-ray Raman scattering (AS-RXRS)。
という共鳴X線ラマン散乱測定があります(2)。
これはAnti-Stokes lineという2次的な散乱光を得る方式で去り、
この場合、散乱する光のエネルギーは入射エネルギーよりも高くなります。
通常、エネルギー保存則がありますから、
こうした事は生じにくいように思えるかもしれないですが、
実際は、物質が持つ内部エネルギーも利用できるので、
エネルギー保存則がバイオレーションされる(破られる)わけではありません。
これでは、すでにX線でエネルギーを得た「励起状態」にある電子を
さらに高いエネルギーまで励起する事で生じる緩和過程を利用します。
これがなぜ、生体内で非侵襲でタンパク質の構造を解析するときに重要になるでしょうか?
その理由は、入射X線に対して散乱X線のエネルギーが小さくなる
ストークスシフトの場合には、散乱X線のエネルギーが小さくなることから、
一般的に体の中での透過率が低下してしまいます。
元々、こうした散乱光を利用したタンパク質の構造解析では
散乱効率や散乱光子の方向が離散化されることで
その光子を検出する受光素子の感度を天文学的に高める必要があります。
従って、散乱X線の強度ロスは最小にしたいという需要があります。
その場合、散乱X線のエネルギーを入射に対して高く取れれば、
散乱光の生体内での吸収ロスを減らせるため、原理的に深部観測が可能になります。
これをたんぱく質に対して利用するためには
異なるエネルギーを持つX線を照射できる線源を複数(少なくとも2つ)用意する必要があります。
タンパク質に対して効率的に励起状態にするための
共鳴波長を選定し、電子を励起状態にして、一定の内部エネルギーを保持させます。
しかし、この電子の励起状態に際して生じたコア状態の正孔は、
通常、離脱させるために高いエネルギーを必要とする内部軌道が選択されますから、
不安定性は高くなり、正孔のライフタイムは短くなります。
通常は、それが数フェムト秒です。
従って、この数フェムト秒以下の早いタイミングで同期させて
励起状態にある電子にエネルギー的に共鳴させる
別の波長を持つX線を照射する必要があります。
それで、より高い励起状態にし、一回の励起では得られないエネルギー差に基づいて
より高いエネルギーを持つ散乱光を得る事ができます。
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昨日の記事で述べた様に
人の身体の中でタンパク質の構造をサブタイプ精度で
さらに非侵襲で、安全に検出しようと思うと、
人工知能によるビックデータがあって、照合可能な条件であっても、
実際に任意の生きた人に対して非侵襲で検出する
散乱X線信号が原理的に数桁以上入射光に対して弱いという事があります。
これは、避ける事ができない根本的な問題です。
なぜなら、入射X線を全て吸収させ、電子を励起させる事は難しいからです。
しかしながら、少なくとも散乱X線強度を上げる方法、モダリティーは存在します。
その一つの糸口は、X線を入射する前に
より多くの電子を「事前に」励起状態にしておくということです。
ただ、この場合の内部エネルギーの保持時間は
共鳴させるX線のエネルギーが高いほど、短くなります。
従って、この内部エネルギーを利用できる猶予時間は非常に短いです。
ただ、こうしたモダリティーはアンチストークスシフトは可能になりますが、
原理的に多くの光子数を生み出す事にはつながりません。
やはり、1つのタイミングで多くの電子を励起状態にするモダリティーが必要です。
この時にエネルギーの異なる電子を複数の光源で励起することで
それが実現されますが、検出される信号の波長が分散されるため
積分強度はあがりますが、ピーク強度に変化がないため、
ノイズに対する信号強度を高める事にはやはり貢献しません。
一つ考えられる工夫としては
やはり、時間の精密な管理です。
物質内で電子が遷移し、緩和して、光を放出するまでには一定の時間幅があります。
こうした過程が生じている時間内の連続した信号の一部はロスにつながります。
従って、こうした物質的に決定される遷移タイミング(フェムト秒)に
入射するX線源をパルス信号として同期させる事が有効です。
これにより入射するX線のパワーを下げられ、有効に使える為、
原理的に安全な範囲でより多くの電子を励起できる事につながります。
一方で、検出器の時間管理も重要です。
検出器では光電変換が行われますが、
その光から電子に変えるまでの一定の時定数があり、
その時間幅以内で次の信号が来ても、デバイスは機能しません。
従って、フェムト秒ごとにくる信号を有効に電気信号に変えるためには
それ相応の早い時定数、信号処理が必要になります。
もし、受光系の時定数が数桁遅いのであれば、
それに合わせて、入射系のパルス信号の周期、Dutyを設定する必要があります。
数桁遅いのであれば、Dutyはその桁分、少なくすることが求められます。
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結局、空間的(3次元)、時間的、エネルギー的、ベクトル的な効率を上げる
(ロス、損失を下げる)。
この事に収束し、スケールを変えて考えるという事です。
身体の中の場を動かせる要因としては
電磁波、磁場、格子振動(熱)、粗密(音波)などがあります。
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例えば、ベクトル的な効率を考えます。
上述したようにX線には波数ベクトルで定義される光線の向きがあります。
一方で、検体となるたんぱく質の水素、酸素、炭素、あるいは微量金属などを
ターゲットとした場合、その周辺の各軌道の電子分布があります。
特定の軌道の電子を共鳴波長のX線で吸収する場合には
中心の陽子に対して内側から外側へ電子がエネルギーを受け取って移動しますが、
その遷移確率はそのエネルギーに一致したX線の波長だけでは決まりません。
一般にベクトル空間に基づく「選択則」があります。
この選択則は電子の向きが揃っている方が特異的になるため、
外部磁場が掛かっている状態で、その磁場の向きを最適化すれば、
選択則に従って、電子の遷移確率は上がり、
吸収効率を上げられる可能性があります。
この電子の向きは、MRIの測定原理で示されるように
磁場やラジオ波で調整することができますが、
ラジオ波は磁場があって、電子の回転が上がって、トルクがある状態ではないと
回転軸を波数ベクトルの向き(電波の向き)に揃えることはできません。
本当はラジオ波を使用したいですが、現実的には磁場が必要です。
しかし、X線を照射させる事で束縛エネルギーから開放して遷移させるような
高い束縛エネルギーを持つ軌道の電子に対して
その電子の回転軸を揃えるような磁場は
現実的にMRIで安全な範囲で利用れる1.5~3テスラという磁場では
圧倒的に力が足りません。その100倍くらいの力が必要です。
この軌道の電子はスピン軌道相互作用は非常に強く、
スピンと軌道角運動量が強く結びついているからです。
従って、電子の回転軸を揃えるような外部磁場を人体に掛ける事は
基本的に極めて危険で不可能です。
従って、「ベクトル」という観点でX線の吸収係数を上げる手法は
電子レベルという非常に微小な観点では現実的ではありません。
但し、最も巨視的な観点では、最適化できます。
タンパク質がどういった3次元構造を取っているかによって
電磁場に対して選択則を持っているため
X線を照射させる最適な方向があるはずです。
--
次に3次元空間の観点です。
各、元素の周りには
s軌道(球対称)、p軌道(ダンベル型)、
d軌道(4つのd軌道は四葉型で、1つはドーナツ型)
f軌道(さらに複雑な形状)
といった陽子からの距離に応じた軌道があります。
これらの軌道には決められた数の電子があります。
その電子は軌道内で量子力学によって定義化される確率分布を取ります。
確率分布なので、雲のようにぼやけていて、位置不確定性があります。
この不確定性は
Δx * Δp ≧ (h/2π) / 2
これで定義される位置と運動量の不確定性原理があります。
一般的に内側の束縛エネルギーが強い電子は外側の軌道へ遷移させるときに
多くのエネルギーが必要です。
従って、人体を通過でき、かつ空間解像度の
高いX線など高エネルギー電磁波ので吸収させ
電子構造をプローブする(探索させる)ためには
基本的には最も内側のs軌道の電子を標的化します。
このs軌道の電子は中心の陽子に対して球対称の分布を取り
電子はこの球対称の範囲の全体で確率分布を取ります。
この電子軌道の球対称の範囲、すなわち径は外部から
エネルギーを供給することによって
電子はエネルギーを相対的に獲得するため、
他の軌道に遷移しない場合には、
陽子に対してより外側にも確率分布することになります。
これによって位置の不確定性はあがります。
このような介入をすると
3次元的空間の観点で正確性を上げる事が難しくなるため、
おそらくタンパク質のX線の吸収効率は下がります。
しかし、そういった高エネルギー状態は不安定なので、
一定の時定数で緩和し、またもとの状態に戻ります。
このモデルから、X線を連続で照射すると、
電子は継続的にエネルギーを受け取った状態になるため、
空間的な不確定性が上がり、分解能がさがり、
結果、共鳴性が下がり、吸収係数を下げるはずです。
従って、一定のDutyでオフ時間を設け
電子をより低い状態にしておくことがおそらく重要です。
この場合の位置の偏差、バラツキは
X線の焦点範囲と比べると顕著に小さいので、関係がなさそうですが、
この陽子の周りの電子がとる位置というのは
エネルギーと関係していて、位置の不確定性が高いという事は
同時にエネルギー状態の不確定性が高いという事なので、
特定のX線エネルギーを持たせて共鳴させるシステムにおいて、
その共鳴の程度を下げることにつながります。
その程度が実はあまりインパクトがなかったとしても、
不必要にX線を照射しないという事は
人体(患者さん)の被ばく量を減らす事につながるので、
また、安全に照射できるエネルギー量が高くなることにつながるので
その点においても好ましいということです。
しかし、フェムト秒の周期でパルス駆動するとなると
電子を使った信号で入射系を制御するシステムでは
おそらく難しく、光駆動の入射システムが必要ですが、
このレーザー誘導のX線発生は
人体透過性が低いエネルギーの低い軟X線(3)に限られるかもしれないので
そういった信号系システム上の技術的障壁は存在します。
--
冒頭で述べた様に非弾性散乱とは
「弾性」の概念がバネ様で可逆で
同じだけ帰ってくるという考え方に基づくと
それが「非」ですから、入射したエネルギーの一部が失われて
散乱する光のエネルギーが下がる事を意味します。
系の全体のエネルギーは保存されますから
失われたエネルギーは「何か」にエネルギーを与えていることになります。
実際に、半導体などに使われる無機の固体材料にしろ、
ここで私が問題にする生体内のタンパク質であるにしろ、
分子構造を取っている物質にX線を照射します。
この時に光のエネルギーの一部は
こうした分子の相互作用に影響を与えます。
分子は絶対零度ではない限り、振動して周期的に動いています。
この振動はフォノン(格子振動)と呼ばれますが、
こうした分子の振動の振幅、動き幅がその物質の温度と関連があります。
X線を照射した時、軌道の電子にエネルギーを与えるだけではなく、
もっと巨視的な結晶格子の振動の幅に影響を与えます。
言い方を変えれば、熱に変わります。
エネルギーが一部こうして失われるため、
正味の電子の遷移のエネルギーは入射X線のエネルギーに対して小さくなります。
従って、入射スペクトルと散乱スペクトルの差を分析すると
格子振動のモードの情報が少なくとも一部示されます。
散乱光の向きは格子振動の向きの情報を反映します。
散乱光の向きが格子振動の向きの影響を受けるのは
根源的には「運動量保存の法則」に基づきます。
運動量は速度とベクトル(向き)からなります。
X線が入射されたときに一部は格子振動に変わりますが、
その格子振動は向きと当然持ちます。
その向きは入射光と必ずしも一致はしません。
そうした場合、元々ある光の運動量を保存するためには
向きの異なる運動量を与えたわけですから、
それによって生じる光も向きを変える必要があります。
散乱光の運動量の向きと格子振動の向きの足し合わせが
入射光の向きと一致するようにならないと運動量保存則が破れるからです。
この事は散乱光の向きと入射光の向きを比較する事で
格子振動のエネルギーの情報だけではなく、
格子振動の向きを分析できる事に繋がります。
--
特定のエネルギー幅∂ωを持ち、ω to ω + ∂ωのX線が
どういった角度、エネルギーを持つX線に散乱されるかは
∂^2σ/(∂Ω * ∂ω)
∝ ∑f | ∑j <f| T^-1 k0ε0 | j><j | T k0ε0 |i> / (ωi + Ei + iΓj/2 - Ej)|^2
* δ(Ei + ωi - Ef - ω0)
これらの数式で表されます。
<f| T^-1 k0ε0 | j>はX線散乱光の放出プロセスを示し、
始状態である励起量子準位がjで示されます。
それが緩和過程で量子準位fの終状態になります。
これが遷移演算子T^-1で示されます。
∣⟨f∣T∣i⟩∣^2が遷移確率で ∑が和ですから
遷移する電子は一つではないですから、全ての電子の遷移を示している事になります。
<j | T k0ε0 |i> は逆に吸収の遷移を示します。
Eiが吸収の始状態エネルギーですから
もともとS軌道にある電子のエネルギーを示します。
Ejが共鳴によって励起された電子のエネルギーです。
ωiが照射するX線のエネルギーを示すので
(ωi + Ei + iΓj/2 - Ej)これの実部は照射X線と遷移エネルギー差の差分を示します。
従って、照射X線が遷移エネルギーと一致する場合、虚部を無視すれば、
無限大になり、これは「共鳴している」という事を数学的に示すことになります。
虚数項iΓj/2は量子状態jの時間減衰を示しています。
これは量子状態Eの時間変化を示すe^i(E-iΓj/2)と記述するのに
こうした複素数表示が都合がいいからです。
そもそもEは量子状態なので、一義的な数字が入るわけではなく、
時間変化(時間発展)を伴う一定の不確定性を持つエネルギー量です。
従って、シュレーディンガー方程式で記述するのに適した表記となっています。
δ(Ei + ωi - Ef - ω0)はδ(0) = 1で それ以外ゼロで
エネルギー保存則を満たすことを意味しています。
--
こうした材料にX線を入射するときには
異なる特性を持つ粒子(例えばmagnons, phonons, plasmons and orbitons)
これらを集団励起子し、同時にそれらの緩和過程が2次信号に含まれます。
冒頭でこのように記述しましたが、
これら以外に電荷密度波(CDW)なども調べる事ができます。
格子振動と同じように
Frank M. F. de Groot(敬称略)らがFig.3bで示すように(1)
それぞれの集団的な励起の為に必要となるエネルギー量で
それは言い換えれば、入射X腺から励起の為に
それぞれの集団的な状態が吸収するエネルギー量です。
この時にそれぞれの集団的な状態が示す運動量がありますから、
そのベクトルに対して、運動量保存則、エネルギー保存則を満たす形で
それぞれ散乱角、散乱X線エネルギーが決定されます。
(参考文献)
(1)
Frank M. F. de Groot, Maurits W. Haverkort, Hebatalla Elnaggar, Amélie Juhin, Ke-Jin Zhou & Pieter Glatzel
Resonant inelastic X-ray scattering
Nature Reviews Methods Primers volume 4, Article number: 45 (2024)
(2)
Kristjan Kunnus11,1,2, Ida Josefsson3, Ivan Rajkovic12,4, Simon Schreck13,1,2, Wilson Quevedo1, Martin Beye14,1, Sebastian Grübel15,4, Mirko Scholz16,4, Dennis Nordlund5, Wenkai Zhang
Anti-Stokes resonant x-ray Raman scattering for atom specific and excited state selective dynamics
New J. Phys. 18 103011
(3)
Henry N. Chapman, Anton Barty, Michael J. Bogan, Sébastien Boutet, Matthias Frank, Stefan P. Hau-Riege, Stefano Marchesini, Bruce W. Woods, Saša Bajt, W. Henry Benner, Richard A. London, Elke Plönjes, Marion Kuhlmann, Rolf Treusch, Stefan Düsterer, Thomas Tschentscher, Jochen R. Schneider, Eberhard Spiller, Thomas Möller, Christoph Bostedt, Matthias Hoener, David A. Shapiro, Keith O. Hodgson, David van der Spoel, Florian Burmeister, Magnus Bergh, Carl Caleman, Gösta Huldt, M. Marvin Seibert, Filipe R. N. C. Maia, Richard W. Lee, Abraham Szöke, Nicusor Timneanu & Janos Hajdu
Femtosecond diffractive imaging with a soft-X-ray free-electron laser
Nature Physics volume 2, pages839–843 (2006)
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