2024年8月12日月曜日

超音波検査の原理、改善策、組織の機械的特性評価への応用

超音波測定の原理に入る前に、最も基本的な事。
音(音波)とはなにか?
音、音波とは物質波の一種で、
その波とは物質の密度の変化を伴う「粗密波」です。
すなわち、物質密度の大小を一定の周期で繰り返します。
その周波数、すなわち大小の密度が小さくなると、
音は高く聞こえるようになります。
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人の聴覚の範囲は20Hz~20kHzです。
それは波長にすると17.15m ~ 1.72cmの範囲です。
一方、超音波(エコー)測定で情報伝搬に使われる媒体は超音波で
超音波の範囲は人の聴覚範囲以上の周波数を持ちます。 
すなわち
20kHz以上です。
実際に人の身体の中にいれる超音波信号は
(1)低周波
 周波数範囲: 約1 MHz λ(波長) = 1.5 mm

(2)中周波
 周波数範囲: 約3-5 MHz λ(波長) = 0.5 - 0.3 mm

(3)高周波
 周波数範囲: 約7–20 MHz λ(波長) = 0.214 - 0.075 mm
となります。

音の大きさは物質の密度差が大きければ波の
振幅が大きくなるため大きくなりそれはdBで示されます。
これが音の信号を示しますが、
超音波、さらにはその中で高周波の領域は
信号強度を上げる密度の微分係数、すなわち変化率が非常に高くなるため、
減衰しやすいという特徴があります。
このような変化率が高いと媒質、超音波検査では人体(水分子やタンパク質など)、
の変化に対して敏感になり、秩序の高い波を作ることが難しくなります。
エントロピーが高くなり、散逸され、物質の密度差が結果、
より小さな距離で短くなります。
従って、エコー検査で高周波にすると人体に物質波として、信号として
浸入できる深さは小さくなります。
しかし、物質波の波長が短くなるため、粗密が高い空間解像度で繰り返されるため
その信号を利用した臓器、組織、血管などをより精細に見る事ができます。
当然、身体に超音波を照射するときには媒質である水分子や組織を構成する
タンパク質の高分子などを動かしますから、
物質の振動は熱に変わるため、温度上昇したり、
物質の動きに伴う機械的な圧力にもつながります。
従って、照射時間、照射部位によってもガイドラインとして異なるのですが、
おおよそ80-100dBの範囲で調整されます。
この強度は人の聴覚範囲では
大音量の音楽や工事現場の音程度の大きさなので
やや強めの信号と言えます。

人体の中の分子構成比では
65%:酸素 18%:炭素 10%:水素なので
これらが93%を占めます。
これらの人体の物質に対して、超音波を高精細に制御するためには何が重要でしょうか?

(1)音響インピーダンス(Acoustic Impedance)
媒質の密度と音速の積で示されます。
この媒質の密度が異なると反射や屈折が生じます。
実際に皮膚の表面から非侵襲に超音波を入れる時には、
通常の人工的に作り出した固体から成る材料とは異なり、
細胞、細胞膜、細胞外マトリックスなど様々な層からなります。
細胞など主に水から構成されるところは
物質としての一色性が高いため、音響インピーダンスは低くなりますが、
細胞膜など脂質、タンパク質が塊として存在するところで
音響が反射、屈折し、特定のベクトル強度が小さくなります。
従って、超音波を体内に信号として入れる時には
できるだけ進路において細胞比が多いところが好ましいはずです。
もっと原理的な事をいえば、水分比が多いところを通します。
しかし、見たい場所との距離の関係ももちろんあります。
例えば、脂肪組織と骨は10~30%程度の水分しかなく、
その他の物質の分子密度揺らぎが大きいですから、
超音波の伝搬効率は下がってしまいます。
従って、女性や肥満の人は超音波測定が難しくなります。
医師が超音波測定の際にプローブを肌に接触させて、角度や位置を微調整するのは
当然、像を観ながら、よく見える位置を探しているわけですが、
実質的には観たい位置に対して信号が効率よく通過する位置を探している
こととほとんど等価です。
後は、
(2)周波数選択(Frequency Selection)
(3)エネルギー強度(Intensity Control)
(4)減衰率(Attenuation Rate)
(5)屈折・反射の制御(Refraction and Reflection Control)
(6)温度管理(Temperature Control)
これらの項目がありますが、
基本的には像の解像度を上げるためには高周波の方がいいですが、
そうすると屈折、反射、散乱などの影響を受けやすくなります。
また、像をコントラスト、強度を上げるためには
エネルギー強度、すなわちdBを上げたいという事になりますが、
そうすると物質を強く振動させる必要があるため、
温度が上がりやすく患者さんへの身体の安全性が低くなります。
基本的に最も重要なことは
前述したように超音波信号を通す経路の最適化です。
人体の場合はできるだけ物質としての均一性を保つため、
水分比が多い経路を通すことが大切になります。
子どもは大人に比べて水分が多いし、身体も小さいので
この超音波検査には非常に適しています。
また、超音波検査の安全性は一つは熱なので
標準装備はされていないものの、熱の測定は可能なので、
安全に行われるかどうかの一つの重要な基準は
モニターしながら確認できるという事です。

ここまで基礎的な事を確認しました。
ここからは具体的に医療での超音波測定のシステムに関して掘り下げて考えます。

(1)入射系
入射系は、超音波を生成し、対象物に向けて照射するシステムです。

超音波プローブ(トランスデューサ):
超音波を発生させるために使用される主要なデバイスです。
トランスデューサは電気信号を超音波に変換する
ピエゾ素子(ピエゾエレクトリック材料)で構成されています。
逆に、受信した超音波を電気信号に変換することもできます。
同じプローブで受診するタイプがシステムとして簡便となるため一般的です。
医師が患者にプローブを当てる時には周りには検出器はありません。
それは同じプローブが送信と受信、両方を担っているからです。
超音波測定では患者さんの身体の条件に合わえて
音響ビーム系を微調整する必要があります。
なぜなら、上述したように骨や脂肪組織の小さい領域の探索や
柔らかい肌を少し力学的に抑え込むことによって
脂肪組織の一部を押圧によって周辺に移動させたり、
観たい患部までの位置を近づける事をします。
プローブをどういった入射角度で焦点位置まで合わせるかも重要です。
こうした微調整は人の手で画像をリアルタイムに観ながらすることが適しています。
例えば、CTやMRIなどのように人と送信系を定めると
このような微調整をすることを自動でするとなると
測定時間の大幅なロスになります。
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超音波測定がなぜ「エコー(Echo)」と呼ばれるか?
このエコーとは日本語で「反響、残響」という意味で、
例えば、遠い山にむかって「ヤッホー」といったときに
時間差でその言葉が返ってきます。これをエコーと言いますが、
それは音を発した人とそれを受け取る人(の耳、蝸牛)が同じだからです;
エコー測定も上述したように同じプローブの
同じピエゾ素子が送信と受信の両方を担うためエコーと呼ばれます。
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入射系の超音波はオンとオフ、矩形波のパルス信号となっています。
超音波は動画(1)のように長い時間幅で同じ場所の動きを見る事ができます。
例えば、
最も高周波数20MHzの超音波を選択した場合、
1サイクルあたり50nsであり、
3パルス信号を単位として入れるとすると150nsです。
この信号を入れた後、
反響した超音波から信号を差別化して受け取る必要があるため、
入射系の信号をいったん止めます。
そうして検出して、画像信号の生信号を受け取った後、
また、同じように3パルス信号を入れます。
従って、厳密には超音波の動画はとぎれとぎれの情報です。
しかし、実際の心臓の動きなどは0.6秒周期くらいなので
この超音波の画像の時間分解能よりも顕著にゆっくりなので
ほとんど連続した画像、動画として観察することができます。
高周波数の条件では出力された画像の分解能は150nsくらいです。
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ピエゾ素子は最も高い周波数20MHzの超音波を用いた場合で
もし、2パルスの条件での単位信号とすると100nsですから
この時間よりも十分に速い電子-音波変換時定数でないといけません。
ピエゾ素子の変換時定数は数ns~数十nsなので
高周波の条件で入射して高解像度にするためには
応答速度の十分早いピエゾ素子を選択する必要があります。
数十nsの時定数ではパルス信号としての精度は足りません。
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ではピエゾ素子の原理についてここで簡単に確認します。
先ほど、エコーでは同じ材料から成るピエゾ素子が
電子から超音波に変え、信号を発信し、
反響してきた超音波を同じピぞ素子で電子に変え、
それを画像の元データとします。
この時、電子から超音波に変える変換は逆圧電効果と呼ばれます。
電子信号を特定の材料に送った時に材料の電荷分布に変化が起こり、
それによって圧力が生じ、結果、体積がわずかに変わります。
電子信号を止めるとその体積は元に戻ります。
従って、電子信号のオンオフは物質を振動させます。
これが超音波の源泉となるため、
超音波の周波数に合わせて電子信号をオンオフさせます。
しかしながら、材料には一定の厚み、体積があります。
また、材料の電子分布が変わるまでには物質的な作用がありますから
一定の時間がかかります。
従って、電子信号のパルス波形に対して、
音波のパルス波形には一定の時定数、遅れがあります。
こうした特性は材料特有の時定数と絶対的な体積による時定数があります。
従って、体積を小さくする、特に電気信号の方向の厚みを小さくすることで
逆圧電効果、もしくは圧電効果の時定数を下げる事ができます。
しかし、材料を薄くすると熱膨張の影響を受けやすくなるため、
体積変化が超音波の性能に関わりますから、
別の要因、すなわち熱で体積変化するとそれがノイズとなります。
材料を薄くする事は機械的ストレスによる耐久性への懸念もありますが、
同時に熱の問題を解決する必要性も出てきます。
少なくとも高い周波数を扱うように最適化すると
低周波には向かないため、
専用のエコー装置、あるいはプローブが必要になります。

(2)焦点位置
焦点位置は、超音波が集束する点であり、超音波測定の対象となる領域です。

特殊な音響レンズで、
すなわちレンズの材料により音響インピーダンスの違いを利用して
屈折させ、音の方向を収束させます。
これは超音波トランスデューサ(プローブ)の形状として組み込まれています。
フォーカスアレイ素子など複数のピエゾ素子の出力タイミングを調整することでも
ビームを特定の方向に収束させることができます。
しかし、ここで疑問が生じます。
参考動画(1)ではお子さんの心臓が広範囲に連続的な動画として出力されています。
これがなぜ可能なのでしょうか?
心臓の鼓動の速さは1秒間で2回くらいです。
従って、手動でこうしたスキャンする事は出来ません。
この広範囲動画が得られる理由はプローブ内で
自動でスキャンされるように連続的に焦点位置を
超音波ビームを動かしているからです。
そうすると今度は時間分解能の制限が出そうです。
なぜなら、複数の信号を組み合わせる必要があるからです。
但し、実際にはスキャンポイント倍だけ時間がかかるわけではなく、
アレイ素子によって同時に複数のポイントからエコー信号を得る事ができます。
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参考動画(2)のように4次元の心臓の動画を取ることが可能です。
特定の時間分解能幅、少なくとも数十ms以下くらいの時間で
3次元超音波画像に対して桁で多い測定点数が必要になるので、
アレイ数、レンズ、プローブの大きさ、超音波周波数、
ピエゾ素子応答高速化など様々な要素技術、設計変更が必要になります。

では、次に超音波測定を使って組織の機械的特性をどのように計測するか?
まずは超音波による非侵襲の血圧の測定原理から詳しく確認していきます。


(参考動画)
(1)
Mastering & Guidelines in Ultrasound & Echo-Card
Pediatric Echo: Transthoracic Part 2: PLAX (Parasternal Long Axis)
https://www.youtube.com/watch?v=DDs71_O40VY
(2)
PURDUE University
The power of 4D technology advances care for heart patients

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