2024年8月1日木曜日

フィブリンの構造、機能

フィブリンやフィブリリンはエラスチンと複合体化し、
フック弾性を持つ繊維構造の生体内の形成に関わります。
フィブリリンやフィブリンは多くのカルシウム結合サイトを持ちます。
では、細胞外マトリックスにおいてカルシウムイオンは
具体的にどういった役目、機能があるでしょうか?
1つは、ヒアルロン酸は多糖でありカルボキシル基を持ちます。
これが負に帯電しているため、カルシウムイオンの正電荷と引き合い、
ヒアルロン酸を構造内で安定化させる働きがあります。
ヒアルロン酸は分解されやすい寿命の短い細胞外マトリックスですが、
フィブリリンやエラスチンのように複雑な立体構造を取り
分解酵素のアクセス性を下げ、生体内で構造として
数十年以上安定に存在できる物質と密に相互作用することで
ヒアルロン酸の寿命の向上も少なくとも一定期待できます。
ヒアルロン酸は水分の保持や材料の柔らかさに貢献します。
その他の細胞外マトリックス中のカルシウムイオンの効果は以下です。
(1)細胞接着とシグナル伝達:
カルシウムイオンは細胞接着分子(CAM)と相互作用し、細胞-ECMおよび細胞-細胞の接着を調節します。例えば、カドヘリンやインテグリンといった接着分子はカルシウム依存性であり、これらの機能において重要です。
また、カルシウムシグナリングは細胞の運動、増殖、分化、アポトーシスといった多くの細胞プロセスに関与しており、ECMを介したシグナル伝達においても中心的な役割を果たします。
(2)骨の形成とリモデリング:
ECMの中でも特に骨組織において、カルシウムイオンはミネラル化のプロセスに不可欠です。カルシウムはリン酸イオンと結合してヒドロキシアパタイトを形成し、骨の硬さと強度を提供します。
骨リモデリングの際には、カルシウムイオンの動員と再配置が行われ、骨の健康と修復を支えます。
(3)ECMタンパク質の合成と分泌:
カルシウムイオンは、ECMタンパク質の合成と分泌過程にも影響を与えます。ゴルジ体や小胞体内でのプロテオグリカンの修飾や分泌において、カルシウムは重要な調整役を果たします。
(4)細胞間コミュニケーション:
カルシウムイオンは、ECMを介した細胞間のコミュニケーションを促進します。特に、カルシウム波やカルシウムシグナリングは、細胞集団内での調整を行うための重要な手段です。
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フィブリン(Fibulin)のサブタイプ
Fibulin-1A 537アミノ酸数
Fibulin-1B 572アミノ酸数
Fibulin-1C 654アミノ酸数
Fibulin-1D 675アミノ酸数
Fibulin-2 1157 or 1204アミノ酸数
Fibulin-3(S1-5, EFEMP1) 466アミノ酸数
Fibulin-4(EFEMP2, PH1, MBP1) 416アミノ酸数
Fibulin-5 367アミノ酸数
(参考文献(1) Table 1より)
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それぞれのサブタイプの発現が見られる細胞種と組織
Fibulin-1A:
発現組織: 結合組織、血管、心筋
発現細胞: 線維芽細胞、内皮細胞
Fibulin-1B:
発現組織: 結合組織、血管、骨
発現細胞: 線維芽細胞、骨芽細胞
Fibulin-1C:
発現組織: 皮膚、血管、神経組織
発現細胞: 神経細胞、内皮細胞
Fibulin-1D:
発現組織: 骨、軟骨、心筋
発現細胞: 骨芽細胞、筋細胞
フィブリン1は多くの臓器の基質を含めて発現されています。
Fibulin-2:
発現組織: 結合組織、血管、皮膚
発現細胞: 線維芽細胞、内皮細胞
フィブリン2はフィブリン1に対して発現が見られる臓器が限定されています。
含水率が高いため、運動の多い組織に発現が見られます。
例えば、血管、心臓、肺、神経系、皮膚などです。
フィブリン2は血管の内皮細胞基底に多く見られます(5)。
含水率が多いことは弾性や摩擦を減らす事に貢献します。
心臓、血管、肺に対して、エラスチンなどを使って
弾性を整える場合には、水分量は重要なパラメータです。
糖鎖の量をコントロールする事で水分量を制御することができます。
また、水分子自体は免疫原性が低いため、
付加的に細胞外マトリックスを構築する場合において
水分量を適正に制御する事によって
免疫系を過剰に高める事を防ぐことができる可能性もあります。
糖鎖の量が多い細胞が今トリックアハ
アグリカン(Aggrecan): 主に軟骨に存在し、軟骨の弾力性と圧縮耐性を提供します。
デコリン(Decorin): 皮膚や腱などの結合組織に多く含まれ、コラーゲン繊維の形成を調節します。
ペルレカン(Perlecan): 基底膜の主要な成分であり、細胞の足場として機能し、成長因子の貯蔵と供給に関与します。
フィブロネクチン(Fibronectin): 細胞接着や細胞移動を助ける多機能なグリコプロテインであり、創傷治癒や組織再生に重要です。
ラミニン(Laminin): 基底膜の主要な構成成分であり、細胞接着、分化、移動を促進します。
あとはヒアルロン酸です。
Fibulin-3 (S1-5, EFEMP1):
発現組織: 眼、結合組織、皮膚
発現細胞: 網膜色素上皮細胞、線維芽細胞
Fibulin-4 (EFEMP2, PH1, MBP1):
発現組織: 結合組織、血管、皮膚
発現細胞: 線維芽細胞、内皮細胞
Fibulin-5:
発現組織: 結合組織、皮膚、血管
発現細胞: 線維芽細胞、内皮細胞
結合組織である、上皮細胞、内皮細胞には多くのフィブリンサブタイプが見られます。
それぞれの組織を構成する結合組織がフィブリンにおいて
サブタイプも含めて異なる構造をとるかどうかはわかりません。
独自のプロモーター、選択的スプライシングにより
各組織において構造的に異なるフィブリンが発現されている可能性はあります。
実際に選択的スプライシングはフィブリン1,2で観られています。
(参考文献(1) Figure 3)
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フィブリンの機能は以下です。
Fibulin-1
機能: 結合組織や血管の構造的支持を提供し、細胞の接着や移動に関与します。Fibulin-1は、コラーゲンやエラスチンなどの他のECM成分と相互作用し、ECMの安定性を保つ役割があります。また、血管新生や組織修復にも関与しています。
Fibulin-2
機能: 結合組織や血管の発達に関与し、ECMの構造を調節します。Fibulin-2は、エラスチンと結合してエラスチンネットワークを安定化し、弾力性を提供します。皮膚や血管の強度と弾力性に重要です。
Fibulin-3 (EFEMP1)
機能: 主に眼や結合組織に存在し、細胞の接着や移動、ECMの維持に関与します。Fibulin-3は、特に網膜や皮膚において重要で、特定の遺伝的疾患(例: マルファン症候群)に関連しています。
Fibulin-4
機能: ECMの構造を支持し、特にエラスチンと相互作用してエラスチンのネットワークを安定化します。Fibulin-4は、皮膚や血管、結合組織において重要な役割を果たし、これらの組織の弾力性と強度を維持します。
Fibulin-5
機能: ECMの構造を支持し、特にエラスチンと関与します。Fibulin-5は、皮膚や血管の弾力性と強度を維持するために重要です。また、Fibulin-5の変異は、エラスチンの異常を引き起こし、血管の疾患や皮膚の問題に関連しています。
共通の機能
細胞接着: フィブリンは細胞とECMとの接着を助け、細胞の位置と機能を維持します。
組織修復: 傷や損傷を受けた組織の修復プロセスに関与し、再生を促進します。
血管新生: 新しい血管の形成をサポートし、組織の栄養供給と酸素供給を助けます。
エラスチンネットワークの形成: 特にFibulin-2、-4、-5が関与し、エラスチンのネットワークを安定化させることで組織の弾力性を提供します。
これらの機能により、フィブリンは組織の構造的安定性、柔軟性、再生能力を維持し、さまざまな病理状態(例: 結合組織疾患、血管障害、皮膚の問題)にも関与しています。
従って、フック弾性を持つエラスチン、フィブリリンの繊維構造において
エラスチンと結合し、足場タンパク質として働きます。
上述したようにFibulin-5が欠損すると血管の構造に異常が出ます。
具体的には血管壁が厚くなります(内膜、外膜の厚膜化)(2)。
その理由は以下です。
1. 細胞外マトリックスの構造的サポートの欠如
フィブリンは、細胞外マトリックス(ECM)の重要な構成要素であり、特にエラスチンやコラーゲンと相互作用します。Fibulin-5が欠損すると、以下のような影響があります:
エラスチンネットワークの不安定化: Fibulin-5はエラスチンの安定化に関与しており、欠損によりエラスチンのネットワークが不安定になります。これが血管の弾力性や構造的強度に影響を与え、血管のリモデリング(変形)が異常になります。
コラーゲンの配列異常: Fibulinはコラーゲンと相互作用し、ECMの構造を維持します。Fibulin-5の欠損により、コラーゲンの配置や密度が変化し、血管の強度と安定性が損なわれる可能性があります。
2. 血管リモデリングの異常
血管損傷後のリモデリングは、内膜の再構築と外膜の安定化を含みます。Fibulin-5の欠損により、リモデリングに以下の影響が考えられます:
内膜の過剰な増殖: 内膜の肥厚(ネオイントマ形成)が異常に進行し、血管の内腔が狭くなることがあります。Fibulin-5がECMの適切な構造を提供しないため、内膜細胞の増殖が過剰になります。
外膜の厚みの変化: 外膜の厚みが変化することで、血管の外側からの支持が不足し、血管の構造が崩れることがあります。Fibulin-5の欠損は外膜の安定性にも影響を与える可能性があります。
3. 細胞接着と移動の異常
Fibulinは細胞接着や移動にも関与しています。Fibulin-5が欠損すると、以下のような問題が生じる可能性があります:
細胞接着の異常: Fibulinは細胞とECMとの接着を助け、正常な細胞機能を維持します。Fibulin-5が欠損すると、血管内皮細胞や平滑筋細胞の接着が異常になり、リモデリング過程が乱れます。
細胞の移動の障害: 血管修復の過程で細胞の移動が必要ですが、Fibulin-5が欠損すると細胞の移動が適切に行われず、リモデリングが異常になります。
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フィブリンの構造は以下です。
フィブリンはダンベル様の複合体構造を取ります。
(Fibulin-1)
AT module (3連)
EGF-like module (1連)
Calcium binding EGF-like module (8連)
FC module (1連) (A:なし, B:(35amino) C:(117amino) D:(137amino))
(Fibulin-2)
Cystein riched segment (1連)
Cystein free segment (1連)
AT module (3連)
Calcium binding EGF-like module (1連)
EGF-like module (1連)
Calcium binding EGF-like module (8連)
FC module (1連)
(Fibulin-3,4,5)
AT module (3連)
Modified Calcium binding EGF-like module (1連)
Calcium binding EGF-like module (5連)
FC module (1連) 
それぞれのドメインの構造と結合タンパク質、機能について。
タンパク質においてシステインは硫黄原子を含み、ジスルフィド結合のきっかけとなります。
これは離れたシステイン残基同士を架橋するのでタンパク質の折り畳み構造や
その3次元構造の安定化に関わっています。
システインは一般的な傾向として酵素活性が高いので、
必ずしも当てはまりませんが、システインが多く露出された状態にあると
そのたんぱく質の寿命は短くなる傾向にあります。
特にフィブリン-2はシステインリッチセグメントを含むので
こうしたセグメントが酵素活性を高める可能性はあります。
(Fibulin-1)
AT module (3連)
構造: アノキシン (Anaphylatoxin) ドメイン。
40残基を持ち、4つか6つのシステインを含みます(1)。
コンパクトなαヘリックス折り畳み構造をとります。
システインが3つの組み合わせでジスルフィド架橋結合を取ることで
構造的に安定します(Cys1-4, Cys2-5, Cys3-6)。
結合タンパク質: 不明。
機能: 主に構造的支持を提供し、細胞間相互作用に関与する可能性がある。
EGF-like module (1連)
構造: エピデルミス成長因子 (EGF) 様ドメイン。ループ構造を持ち、システイン残基が特徴的。
結合タンパク質: 他のフィブリンやECM成分。
機能: 細胞成長、接着、およびシグナル伝達に関与。
Calcium binding EGF-like module (8連)
構造: カルシウム結合EGF様ドメイン。構造内に2つのカルシウムイオンをとり、
N-terminalとC-terminalの中央部で疎水性相互作用を取ることで構造的に安定します。
(参考文献(1) Figure 2)
多くの細胞外マトリックスはこのカルシウムに対して結合部位を持つため、
このmoduleの8回繰り返し構造はfibulinの細胞外マトリックス構造内の
安定化(3)、複合体化に関与しています。
カルシウムの有無にかかわらず、EGF-like module(domainⅡ)は
タンパク質分解酵素であるマトリックスメタロプロテイナーゼや
他の酵素に対して抵抗性を持ちます(4)。
結合タンパク質: 不明。
機能: カルシウムイオンと結合して構造安定性を提供し、細胞接着とシグナル伝達に関与。
FC module (1連)
構造: ファイブリンC端ドメイン。フィブリン-1A, 1B, 1C, 1D で異なる長さの配列。
結合タンパク質: ECM成分や細胞表面受容体。
機能: タンパク質-タンパク質相互作用を仲介し、ECMの組織化に関与。
(Fibulin-2)
Cystein riched segment (1連)
構造: 高システイン含量セグメント。150残基の内、多くのシステイン残基(12個)を含む。
結合タンパク質: 不明。
機能: タンパク質のフォールディングと安定化に寄与。
Cystein free segment (1連)
構造: システインを含まないセグメント。
結合タンパク質: 不明。
機能: 柔軟性を提供し、他のドメインと連結する役割。
これら2つのSementはドメインNと呼ばれ、
20個近くの多糖を側鎖としてもちます。
Mucin-liked natureと表現されていますが(1)、
この糖鎖はヒアルロン酸が多糖で水分を多く引き付けるように
ムチンが粘膜で水分を多く引き付けるように
糖鎖があるとグリコキシル基(-COO^-)という陰イオンを持ち、
これが親水性の源泉となっています。
従って、フィブリンで水を多く含ませたい場合には
サブタイプとしてフィブリン2を選択したほうがよいということになります。
AT module (3連)
構造: 同上(Fibulin-1)。
結合タンパク質: 不明。
機能: 同上(Fibulin-1)。
Calcium binding EGF-like module (1連)
構造: 同上(Fibulin-1)。
結合タンパク質: 不明。
機能: 同上(Fibulin-1)。
EGF-like module (1連)
構造: 同上(Fibulin-1)。
結合タンパク質: 他のフィブリンやECM成分。
機能: 同上(Fibulin-1)。
Calcium binding EGF-like module (8連)
構造: 同上(Fibulin-1)。
結合タンパク質 不明。
機能: 同上(Fibulin-1)。
FC module (1連)
構造: 同上(Fibulin-1)。
結合タンパク質: ECM成分や細胞表面受容体。
機能: 同上(Fibulin-1)。
(Fibulin-3, 4, 5)
AT module (3連)
構造: 同上(Fibulin-1)。
結合タンパク質: 不明。
機能: 同上(Fibulin-1)。
Modified Calcium binding EGF-like module (1連)
構造: 修飾されたカルシウム結合EGF様ドメイン。通常のEGF様ドメインに特定の修飾が加わっている。
結合タンパク質: 明
機能: カルシウム結合により構造を安定化し、特定のシグナル伝達プロセスに関与する。
Calcium binding EGF-like module (5連)
構造: 同上(Fibulin-1)。
結合タンパク質: 不明
機能: 同上(Fibulin-1)。
FC module (1連)
構造: 同上(Fibulin-1)。
結合タンパク質: ECM成分や細胞表面受容体。
機能: 同上(Fibulin-1)。
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Fibulinと結合する主要な細胞接着分子およびECM成分
エラスチン (Elastin)
結合親和性: 高い親和性 (KD ≈ 0.6–18 nmol)
フィブリリン2が高い結合親和性を持ちます(6)。
従って、エラスチンベースの弾性繊維構造を構築するときには
フィブリンはエラスチンの足場タンパク質として
エラスチンの安定化、適正配置に関与しますが、
その時には、フィブリリン2が重要な貢献をしている可能性があります。
機能: エラスチンネットワークを安定化し、組織の弾力性を提供。
フィブロネクチン (Fibronectin)
結合親和性: nmol 範囲の高い親和性 (KD ≈ 10–20 nmol)
機能: 細胞接着、移動、成長、分化を促進。
ラミニン (Laminin)
結合親和性: 高い親和性 (KD ≈ 10–50 nmol)
機能: 基底膜の構造を形成し、細胞の接着、移動、成長を支援。
コラーゲン (Collagen)
結合親和性: 中等度の親和性 (KD ≈ 50–100 nmol)
機能: 組織の強度と安定性を提供。
ビトロネクチン (Vitronectin)
結合親和性: 高い親和性 (KD ≈ 10–20 nmol)
機能: 細胞接着、移動、増殖、分化を調節。
インテグリン (Integrins)
結合親和性: 高い親和性 (特定のインテグリンサブタイプに対して、KD ≈ 10–50 nmol)
機能: 細胞とECMの接着を媒介し、細胞の移動、成長、分化を調整。
-
フィブリン1とフィブリン2の細胞外マトリックスとの結合親和性です。
(Fibulin-1)
Fibronectin 139nM
Nidogen-1 2-60nM (distribution in basement membrane)
Laminin-1 80nM
Fibrinogen 3μM
Aggregan(※), versican 10-30nM  (※)軟骨特異的
Tropoelastin 18nM
Endrostatin 46nM
Laminin γ2 chain 20nM (binding to CAMs)
Laminin α2 chain 14nM (binding to CAMs)
(Fibulin-2)
Fibronectin 1000nM
Nidogen-1 500nM(distribution in basement membrane)
Periecan 22nM(distribution in basement membrane)
Fibrillin-1 56nM
Tropoelastin 0.6nM
Endrostatin 33nM
Aggregan, versican 0.1nM
Laminin γ2 chain 20-40nM (binding to CAMs)
Laminin α2 chain 13nM (binding to CAMs)
(参考文献(1) Table 3)
従って、フィブリン2はエラスチン、アグレカン、バーシカンと
非常に高い結合性を持ちます。
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フィブリンの半減期は約24-48時間です。
フィブリン(fibulin)はエラスチンやフィブリリンに比べて半減期が短く、分解されやすい理由は、主に以下のような要因によります:
1. 構造的特性
モジュラー構造: フィブリンは、ATモジュールやEGF様ドメイン、カルシウム結合EGF様ドメインなど、多様なドメインから構成されています。このモジュラー構造は、特定のプロテアーゼに対して容易にアクセスできるサイトを提供するため、分解が促進される可能性があります。
分解されやすいドメイン: フィブリンの特定のドメイン(例えば、EGF様ドメイン)は、プロテアーゼの標的になりやすい構造を持つことがあります。
2. 組織局在と機能
ECM内の局在: フィブリンは、エラスチンやフィブリリンと同様に細胞外マトリックス(ECM)に存在しますが、特定のフィブリンアイソフォームは、他のECM成分に比べて動的な組織リモデリングが活発な場所に多く存在することがあります。これにより、プロテアーゼの影響を受けやすくなります。
組織のリモデリング: フィブリンは、組織の修復や再生、リモデリングに関与するため、これらのプロセスに伴って分解されやすい状況に置かれることが多いです。
3. プロテアーゼ感受性
MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ): フィブリンは、MMPの標的となりやすい構造を持ち、これにより速やかに分解されます。MMPは組織のリモデリングや修復過程で活性化されることが多いため、フィブリンの半減期が短くなります。
その他のプロテアーゼ: フィブリンは、セリンプロテアーゼやカテプシンなど、他のプロテアーゼの標的にもなります。
4. 細胞表面受容体との相互作用
細胞内取り込み: フィブリンは、細胞表面受容体と結合し、エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれることがあります。取り込まれたフィブリンは、リソソーム内で分解されやすくなります。
但し、フィブリンが少なくとも2日で分解されるのは単体としてです。
フィブリリンが安定性の高いエラスチンとフィブリリンの繊維構造の中に
足場タンパク質として取り込まれた場合には物質として安定性が向上します。
1. 保護効果
プロテアーゼからの保護: フィブリンがエラスチンやフィブリリンの繊維構造に取り込まれると、これらの繊維がフィブリンを物理的に覆うことで、プロテアーゼの攻撃から保護される可能性があります。エラスチンやフィブリリンの繊維は、特定のプロテアーゼに対して耐性を持つため、フィブリンも同様の耐性を得ることができます。
2. 安定化効果
繊維構造の安定化: エラスチンやフィブリリンの繊維は、組織内で非常に安定した構造を形成しています。フィブリンがこれらの安定した繊維構造に組み込まれることで、自身の安定性も向上し、分解されにくくなる可能性があります。
3. リモデリングの抑制
組織リモデリングの影響: エラスチンやフィブリリンの繊維は、組織リモデリングの過程で比較的安定しているため、フィブリンがこれらの繊維に組み込まれると、リモデリングによる分解の影響を受けにくくなります。
物質の半減期を決めるのは分解酵素に対する露出が一つとして挙げられるので
物質として安定な構造体と複合体化すると
フィブリンに限らず、他の分解されやすい細胞外マトリックスの寿命も変わる可能性があります。
例えば、コラーゲンは多糖からなり分解されやすいですが、
エラスチンやフィブリリンと複合体化する事で
露出が減り、構造として安定化し、寿命が延びる可能性があります。
従って、コラーゲンによる組織の粘弾性を長持ちさせたいときには
安定な物質を複合体化させて、供給するという手法もあります。
ただし、その環境内で適切な物質構成があるため、
それに整合し、無理のない形で保護組織を形成する必要があります。
例えば、腱、腎臓の糸球体にはエラスチンは含まれません。
こういった組織にエラスチンが供給されると機能不全のリスクはあります。
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フィブリンは高い細胞接着性、シグナル伝達に関わる
フィブロネクチンをベースとしたマイクロ繊維構造と
高い弾性を持つエラスチンをベースとしたマイクロ繊維構造、
これら両方と結合性を持ち、繊維形成に関わっています。
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具体的なエビデンスは不足している状態ですが、
癌の80-90%は上皮細胞性であり、上皮細胞の並びが崩れる事で
腫瘍形成します。腫瘍が大きくなるためには
内腔に対して結節を作ったり、
あるいは上皮組織の基底を超えて実質に浸潤する必要がります。
こうした腫瘍形成の際には細胞外マトリックスもリモデリングされます。
こうした細胞の異常は、細胞自身の遺伝的な形質が変化して
駆動する事も考えられますが、
細胞外マトリックスの繊維構造が細胞の周りに規則的に強く並んでいると
力学的にも癌の浸潤、転移を防ぐ(1)可能性があります。
また、細胞外マトリックスは細胞接着分子との結合による
信号伝達や機械的ストレスに呼応したメカノトランスダクションによって
細胞内の遺伝子発現にも影響を与えます。
フィブリンはフィブロネクチン、エラスチン両方の
繊維形成に関わっており、こうした繊維構造は
細胞外マトリックスの高い配向性に関わっている可能性があるため、
フィブリンが癌に対して抑制的に働く可能性もあります。
ただ、フィブリンが必ずしも繊維構造の高い配向性に寄与するとは限らず、
むしろ、無秩序な配向特性を持つ
癌の周りの細胞外マトリックス形成にも関わる可能性があるため、
むしろフィブリンの発現の亢進が癌の成長に関わる可能性もあります(8)。


(参考文献)
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