2024年8月4日日曜日

ビトロネクチンの構造、機能

糖たんぱく質であるビトロネクチンは
多様なたんぱく質と結合できます。
細胞外マトリックスの成分として分類されます。
その中で生物学的な「のり(Glue)」としての機能があります。
血栓形成、組織の修復やリモデリングの鍵となる制御因子です。
この時、複数の血小板から成る細胞を
ビトロネクチンが構造としてもつRGDドメインと
血小板のインテグリンの結合を介して、架橋します。
そのいわば「のり」の働きにより、
血栓形成の為の血小板の凝集を促します。
こうした細胞間の糊の働きは創傷治癒のプロセスでも生じます。
ビトロネクチンは細胞外マトリックスにおいても
生物学的な「糊」の働きがあります。
クロスリンカーとして機能するため、
複数の異なる機械的性質を持つ細胞外マトリックスを
強くつなげる事ができるので、
例えば、エラスチン弾性繊維と
コラーゲンの架橋物質としての機能性も持ちます。
但し、ビトロネクチンは多糖とは結合性は高くはないとされているので
ヒアルロン酸と架橋させる場合には異なるクロスリンカーが必要になります。
いずれにしても複雑な機械的特性を発揮するためには
複数の細胞外マトリックスを制御して混合させる必要がありますが、
その際、架橋物質は合成の際の鍵となる制御因子です。
その一つが多様なたんぱく質と結合できるビトロネクチンです。
このようなたんぱく質同士を糊として架橋する特徴があるので
ビトロネクチンが過剰に作用すると
血管の狭窄、閉栓、組織の線維化(3)などに関与することがあります
創傷治癒に関わるという事は新たな組織の形成因子ですから、
異常な組織形成である癌、腫瘍組織の促進や
血管形成も支持します。
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ビトロネクチンは2つのサブタイプがあります。
血漿ビトロネクチン(Plasma Vitronectin): 血液中に存在し、血液凝固や傷の修復に関与しています。これは主に肝臓で合成されます。
細胞膜ビトロネクチン(Cellular Vitronectin): 細胞外マトリックスや細胞膜に存在し、細胞接着や細胞移動に重要な役割を果たします。これは主に細胞によって合成されます。
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ビトロネクチンはピーナッツのような構造(4)をとります。
冒頭で述べた様に糖たんぱく質で有り、
Kyungsoo Shin(敬称略)らがFig.1Aで示すように(2)、
側鎖として糖を含みます。
分子量比としてタンパク質に対して30%あります(1)。
以下のようなドメイン構造を持ちます。
SMBドメイン(Sulfated Motif Binding Domain):
44残基数 somatomedin B (SMB) domain
相互作用の強いシステインリッチドメインです。
機能: SMBドメインは、主に硫酸化された糖鎖(例えば、ヘパラン硫酸)との相互作用に関与します。これにより、細胞外マトリックスや細胞膜との結合が調節され、細胞の接着や移動に影響を与えます。
ArgGlyAsp(RGD) motif
機能:インテグリンと結合性をもつ。構造的は高度に保存されます。
Variable Region 1(可変領域1):
装飾されやすいドメイン:リン酸化、硫酸化、糖化
機能: 可変領域1は、ビトロネクチンが他のECM成分や細胞表面レセプターと結合するための特異的な相互作用を提供します。この領域は、ビトロネクチンの機能的な多様性をもたらし、組織の修復や細胞接着に重要です。
Repeat Unit HX1:
HX domain feature: Folding structure as a single four-bladed β/α-propeller
機能: Repeat Unit HX1は、ビトロネクチンの構造的な安定性を提供し、他のECM成分や細胞表面レセプターとの相互作用を媒介します。この領域は、ビトロネクチンの機能的な柔軟性に寄与します。
Repeat Unit HX2:
機能: Repeat Unit HX2も、HX1と同様に、ビトロネクチンの構造を安定させるとともに、ECM成分や細胞表面レセプターとの結合に関与します。この領域は、ビトロネクチンの機能における追加的な調節を提供します。
Repeat Unit HX3:
機能: Repeat Unit HX3は、ビトロネクチンの構造的な安定性を維持し、細胞接着や移動に関与する相互作用を媒介します。この領域は、ビトロネクチンの多様な機能をサポートします。
Variable Region 2(可変領域2):
機能: 可変領域2は、ビトロネクチンの他のECM成分や細胞表面レセプターとの特異的な結合を調節します。この領域は、ビトロネクチンの多様な機能を発揮するために重要です。
Variable Region 3(可変領域3):
機能: 可変領域3は、ビトロネクチンの機能的な柔軟性を提供し、細胞接着や移動、組織の修復に関与します。この領域は、ビトロネクチンの異なる機能をサポートするための特異的な相互作用を可能にします。
Repeat Unit HX4:
機能: Repeat Unit HX4は、ビトロネクチンの構造的な安定性を維持し、他のECM成分や細胞表面レセプターとの結合を調節します。この領域も、ビトロネクチンの多様な機能をサポートします。
(参考文献(2) Fig.1)
ビトロネクチンは3次元配座構造を変えます(Coformational change)。
この配座変化では結合ドメインがより露出された構造をとることがあります(1)。
こうした配座の変化は他の物質との結合活性に関わりますが、
このような転写後の改変(Post-translational modification)は
側鎖として結合する糖鎖によっても起こり、他の物質との相互作用に関わります。
例えば、糖分解酵素による構造改変は
下述する多量体化、コラーゲンとの結合活性に関わります(6)。
また、ビトロネクチンは多量体化もします(multimer complex(5)。
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ビトロネクチンは成長因子、成長因子結合タンパク質、細胞接着分子、
受容体、細胞外マトリックス、酵素、細胞因子など以下、多様な物質と結合できます。
1. 成長因子
Epidermal growth factor (EGF)
Fibroblast growth factor; basic (bFGF)
Insulin-like growth factor II (IGF-II)
Hepatocyte growth factor (HGF)
Transforming growth factor (TGF) β1 (TGF-β1)
TGF β2 (TGF-β2)
Vascular endothelial growth factor A (VEGF A)
Sonic Hedgehog (Shh)
Angiopoietin-1
Angiopoietin-2
2. 成長因子結合タンパク質
IGF-binding protein 2 (IGFBP-2)
IGF-binding protein 3 (IGFBP-3)
IGF-binding protein 4 (IGFBP-4)
IGF-binding protein 5 (IGFBP-5)
3. 細胞接着分子
Integrin β1 (CD29)
Integrin β3 (CD61)
Integrin β6
Integrin β8
Integrin α8
4. 受容体
Tumour necrosis factor receptor superfamily, 11B (TNF-R IIB)
Plasminogen activator receptor, urokinase type (uPAR, CD87)
Syndecan-1 (CD138)
Syndecan-2 (HSPG-1, fibroglycan) (CD362)
Syndecan-4 (amphiglycan)
Nectin-3, Poliovirus receptor-related protein (CD113)
Nectin-5, Poliovirus receptor (PVR) (CD155)
5. 細胞外マトリックス成分
Fibrinogen, c-chain
Collagens, α1A, α2A
SPARC (osteonectin, BM40)
Heparin cofactor II, Prothrombin
Betaglycan (TGF-β-RIII)
6. 酵素
Gelatinase A = Type IV collagenase (MMP-2)
Matrilysin (MMP-7)
Matrix metalloproteinase-26 (MMP-26)
Neurosin (KLK6)
Casein kinase II
Protein kinase C, α
Protein kinase C, β1
Protein kinase C, γ
7. 細胞因子
Granulocyte-macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF)
Interferon-γ
Tumour necrosis factor alpha (TNF-α)
8. その他
Amphiphysin1
Angiostatin (plasminogen fragment)
Lacritin
Kininogen (Fitzgerald factor)
Plasminogen
Galectin 1—thrombospondin I—Fibronectin 1-secreted phosphoprotein 1
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上述した結合分子はビトロネクチンのどのドメインと結合できるかまとめます。
1. SMBドメイン(Sulfated Motif Binding Domain)
結合可能性:
成長因子: EGF、bFGF、IGF-II、HGF、VEGF A、Shh(特に硫酸化糖鎖との結合に関連)
成長因子結合タンパク質: IGFBP-2、IGFBP-3、IGFBP-4、IGFBP-5(硫酸化糖鎖に結合し、IGFの生物学的作用を調節)
細胞接着分子: Integrin β1、Integrin β3、Integrin α8(細胞外マトリックスとの結合に関与)
受容体: Syndecan-1、Syndecan-2、Syndecan-4(硫酸化糖鎖との結合に寄与)
細胞外マトリックス成分: Collagens(α1A、α2A)、Heparin cofactor II、Prothrombin(糖鎖との結合に寄与)
酵素: Gelatinase A、Matrilysin(糖鎖との相互作用に関与する可能性あり)
細胞因子: GM-CSF、Interferon-γ(間接的に結合可能)
2. Variable Region 1(可変領域1)
結合可能性:
成長因子: EGF、bFGF、HGF、VEGF A、Angiopoietin-1、Angiopoietin-2(特異的な相互作用を提供)
細胞接着分子: Integrin β1、Integrin β3、Integrin α8(特異的な結合を調節)
受容体: Nectin-3、Nectin-5(特異的な結合を提供)
細胞外マトリックス成分: SPARC(osteonectin)、Betaglycan(TGF-β-RIII)(特異的な結合に寄与)
酵素: Casein kinase II、Protein kinase C(α、β1、γ)(間接的に結合可能)
3. Repeat Unit HX1
結合可能性:
成長因子: IGF-II、TGF-β1、TGF-β2(構造的安定性を提供し、結合に寄与)
細胞接着分子: Integrin β1、Integrin β3(構造的安定性を提供)
受容体: Syndecan-1、Syndecan-4(構造的安定性に寄与)
4. Repeat Unit HX2
結合可能性:
成長因子: bFGF、VEGF A(構造的安定性を提供)
細胞接着分子: Integrin β6、Integrin β8(結合に関与)
細胞外マトリックス成分: Collagens(α1A、α2A)(構造的安定性に寄与)
5. Repeat Unit HX3
結合可能性:
成長因子: HGF、Shh(構造的安定性を維持し、結合に寄与)
細胞接着分子: Integrin β1(構造的安定性を提供)
受容体: Nectin-5(構造的安定性に寄与)
6. Variable Region 2(可変領域2)
結合可能性:
成長因子: IGF-II、VEGF A(特異的な結合を調節)
細胞接着分子: Integrin α8(特異的な結合を調節)
受容体: Syndecan-2(特異的な結合に寄与)
7. Variable Region 3(可変領域3)
結合可能性:
成長因子: Shh、Angiopoietin-1、Angiopoietin-2(機能的柔軟性を提供)
細胞接着分子: Integrin β3(機能的柔軟性を提供)
受容体: Nectin-3(特異的な結合を可能にする)
8. Repeat Unit HX4
結合可能性:
成長因子: EGF、HGF(構造的安定性を提供)
細胞接着分子: Integrin β6、Integrin α8(結合を調節)
細胞外マトリックス成分: SPARC(osteonectin)(構造的安定性に寄与)
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ビトロネクチンは上述したように多様な種類のタンパク質と
結合できます。細胞接着分子の一つであるインテグリンでは
avb1, avb3, avb5, avb6, avb8 and aIIbb3と
多様なサブタイプ結合出来きます(7)。
ビトロネクチンと結合したインテグリンは
他のリガンドと同様にインテグリンの活性を高め、
インテグリンのクラスタリング、タンパク質ラフトの形成を促します(1)。
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ビトロネクチン(Vitronectin)の寿命についての具体的な数値は、研究によって異なる可能性がありますが、一般的にはビトロネクチンは体内で比較的短い寿命を持つとされています。以下はビトロネクチンの寿命に関連するいくつかの要因と情報です:
血液中の寿命: ビトロネクチンは血漿中に存在し、その半減期は数時間から数十時間程度とされることがあります。例えば、一部の研究では、血液中のビトロネクチンの半減期が約5-10時間とされています。
細胞外マトリックス内の寿命: 細胞外マトリックス(ECM)内でのビトロネクチンの寿命は、ECMの構造や組織の種類によって異なる可能性があります。ビトロネクチンはECM内での分解や再構築に関与し、その寿命は数日から数週間程度と考えられることがあります。
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ビトロネクチンは
線維芽細胞(Fibroblasts)
内皮細胞(Endothelial Cells)
上皮細胞(Epithelial Cells)
マクロファージ(Macrophages)
平滑筋細胞(Smooth Muscle Cells)
これらの細胞種から分泌されます。
特に線維芽細胞から分泌されるビトロネクチンは糊としての機能性が
高い可能性があります。確認が必要ですが、
いずれにしても分泌される細胞種によって機能性が異なる可能性があります。
実際にiPS細胞技術により細胞を向上として
繊維構造形成の為に様々な細胞外マトリックスを放出させる時には
どういった細胞種から得るのが一番、特性がいいか?
これは比較評価して、見極める必要があります。
人工合成との競争に勝たないといけないので、
特に性能の面で上回るように細胞種、状態の最適化が必要です。
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ビトロネクチンは血漿中に多く含まれます(200–400 lg=mL)。
さらに、生物学的な糊の働きがあり、
多くのタンパク質と結合し、橋渡しすることがあるので、
エンジニアリングした細胞外小胞の表面タンパク質に結合して、
標的性の低下させるコロナ形成の
原因物質の一つとなり得る存在です。

(参考文献)
(1)
David I Leavesley 1, Abhishek S Kashyap, Tristan Croll, Manaswini Sivaramakrishnan, Ali Shokoohmand, Brett G Hollier, Zee Upton
Vitronectin--master controller or micromanager?
IUBMB Life. 2013 Oct;65(10):807-18. 
(2)
Kyungsoo Shin,1,* Bernhard C. Lechtenberg,1,*†‡ Lynn M. Fujimoto,1 Yong Yao,1 Sara Schesser Bartra,2 Gregory V. Plano,2 and Francesca M. Marassi1,
Structure of human Vitronectin C-terminal domain and interaction with Yersinia pestis outer membrane protein Ail
Sci Adv. 2019 Sep; 5(9): eaax5068
(3)
Laura Carreras-Planella,1,2 David Cucchiari,3,4 Laura Cañas,1,5,6 Javier Juega,1,5,6 Marcella Franquesa,1,6 Josep Bonet,1,5,6 Ignacio Revuelta,3,4,7 Fritz Diekmann,3,4,7 Omar Taco,5,6 Ricardo Lauzurica,1,6,7 and Francesc Enric Borràscorresponding author1,2
Urinary vitronectin identifies patients with high levels of fibrosis in kidney grafts
J Nephrol. 2021; 34(3): 861–874.
(4)
Gary W. LynnWilliam T. HellerAnand MayasundariKenneth H. MinorCynthia B. Peterson
A Model for the Three-Dimensional Structure of Human Plasma Vitronectin from Small-Angle Scattering Measurements
Biochemistry 2005, 44, 2, 565–574
(5)
A Stockmann, S Hess, P Declerck, R Timpl, K.T. Preissner
Multimeric vitronectin. Identification and characterization of conformation-dependent self-association of the adhesive protein.
Journal of Biologiacl Chemistry Volume 268, Issue 30, 25 October 1993, Pages 22874-22882
(6)
Kotone Sano 1, Kimie Asanuma-Date, Fumio Arisaka, Shunji Hattori, Haruko Ogawa
Changes in glycosylation of vitronectin modulate multimerization and collagen binding during liver regeneration
Glycobiology. 2007 Jul;17(7):784-94. 
(7)
B Felding-Habermann 1, D A Cheresh
Vitronectin and its receptors
Curr Opin Cell Biol. 1993 Oct;5(5):864-8.

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