2022年10月1日土曜日

SARS-CoV-2のmRNAワクチンの副反応とmiRNAsとの関係

ワクチン接種は
世界的なパンデミック状態の場合には
社会的には接種率を上げる事が重要になりますが、
個人的には、
感染症に罹患した時のリスクと、
接種した時の副反応を含めたリスク。
そのベネフィットを天秤にかけることによる
決断になると考えられます。
しかし、
ワクチン接種をしたくても
免疫的な問題で接種できない人もいます。
そのような人も含めて
感染症から守るためには、
抗ウィルス、抗菌薬に加えて、
免疫的なリスクの少ないワクチン開発も
必要になるかもしれません。
そのためには現状のワクチンにおいて
免疫機能がどのように誘発されるかの
詳細な理解が必要になります。
--
Yusuke Miyashita(敬称略)らは
新型コロナウィルスmRNAワクチンにおける
重篤ではない副反応と免疫反応、miRNAsの関係の
コホート研究を発表しています(1)。
要約、背景を参照し、
内容においてはmiRNAsに絞って抜粋しました。
それに対する考察を加えています。
その内容を読者の方と情報共有したいと思います。

//要約//ーー
mRNAワクチンはCOVID-19を撲滅するために使われました。
ワクチンの効果、副反応は
炎症性サイトカイン産生やリンパ球の活性化のような
免疫的な反応に依存します。
Yusuke Miyashita(敬称略)らは
特定の抗体量、
副反応、
炎症性サイトカイン産生、
血清細胞外小胞内の免疫制御性microRNA(miRNA)。
これらの間の関係を調べるために
コホート研究を行いました(1)。
対象となったワクチンは
ファイザー/ビオンテック社のBNT162b2の
mRNAワクチンです。
局所的な痛み、腫れのような
2回目接種の後の局所的な副反応は
熱、筋肉痛のような全身性の副反応と
関係性は低いことが示されました。
一方で、
血清のTNF-αレベルは
全身性の副反応と特異的な抗体量と
相関がありました。
血清中の細胞外小胞内のmiR-92a-2-5pは
副反応と負の相関がありました。
細胞外小胞内のmiR-148aレベルは
特異的な抗体量と相関がありました。
このデータは
ワクチンの効果や副反応のバイオマーカーとして
循環型細胞外小胞内のmiRNAsが
潜在的に使用できる可能性を示唆しています。

//背景//ーー
ワクチン接種は感染症を防ぐための予防的処置で
抗原とアドジュバントから構成されます。
アドジュバントは自然免疫系を誘発します。
炎症性サイトカインや樹状細胞成熟などで
獲得免疫系の反応を活性化させるために必要です。
それは抗原特異的な抗体産生を促します(2)。
アルミニウム塩は
多くのタイプのワクチンで
アドジュバントとして使用されています(3-5)。
トール様受容体のような
パターン認識受容体に対するリガンドが
アドジュバントとして使われます(6)。
しかしながら、
これらの分子が含まれていない場合においても
ワクチンの成分そのものが
アドジュバントとして機能するものがあります。
例えば、
A型インフルエンザワクチンの
ウィルスRNAsはTLR7を活性化させます。
それによって、自然免疫系統を呼び起こします。
炎症性サイトカインも含まれます(7)。
--
ワクチンによって誘発された副反応そのものは
多くのケースで重度ではありません。
副反応に対する不安は
ワクチン接種率を下げる結果となります。
結果として、
ヒト・パピローマウィルス誘導の
子宮頸がんのような感染症の撲滅を難しくします(8)。
副反応のメカニズムを適切に理解することは
不安を払いのけるために重要です。
よく知られた副反応はアナフィラキシー反応です。
これはタイプⅠの過感受性で
機序はよく知られており、
それに対する処置も確立しています(9,10)。
他の副反応は、
熱、局所的な痛み、腫れ、赤みで
炎症性サイトカインや脂質メディエーターによって
引き起こされると想定されています(11-15)。
全身性の炎症性サイトカインは
季節性インフルエンザワクチン接種の後の
副反応の原因となります(16)。
--
細胞外小胞は、エクソソームやマイクロベシクル
など大きさの異なるサブタイプを含みます。
これは血液に含み、
機能性タンパク質やRNAsなどを
ドナー細胞から受け細胞まで輸送する機能があります(17,18)。
MicroRNAs(miRNAs)はmRNAsを標的とし、
それらのタンパク質への翻訳を制御します(19-21)。
細胞外小胞は免疫制御性miRNAsを含み、
そのmiRNAsは宿主の自然、獲得免疫反応を制御します(22)。
例えば、
血清細胞外小胞内のmiR-451aレベルは
季節性インフルエンザワクチン接種の後の
副反応と弱い相関があります(15,23)。
--
SARS-CoV-2は2020年のCOVID-19を引き起こしました(24,25)。
いくつかのCOVID-19ワクチンは承認され、
それを撲滅するために世界中で使用されました。
BNT162b2は
ウィルススパイクタンパク質をエンコードしたmRNA。
これを含む、mRNAワクチンです。
局所的痛み、赤み、腫れ、熱、倦怠感、筋肉痛など
いくつかの副反応が報告さてています(26)25。
これらは免疫反応によって引き起こされます。
しかしながら、
これらの副反応が炎症性サイトカインと
細胞外小胞内のmiRNAsと関連しているかどうか
については未知です。
加えて、
ウィルススパイクタンパク質特異的な抗体量が
副反応の程度、炎症性サイトカイン、miRNAレベルに
関連しているかどうかは未知です。
Yusuke Miyashita(敬称略)らは
これらの因子の関係性を調べるために
miRNAワクチンBNT162b2に対するコホート研究を
行いました(1)。

//内容抜粋(miRNAs関連)//ーー
2021年3月から6月。
61人が参加。
BNT162b2を2回接種。
男女比おおよそ1:1。
30-39歳の割合 45.9%。
50歳以上は18%。
安定的な身体の健康状態。
重篤な副反応はない。
--
副反応と相関が最も高いのは
miR-92a-2-5p
Local(1st)β:-0.99 p値:0.03
Local(2nd)β:-1.40 p値:0.01
Systemic(1st)β:-1.36 p値:0.07
Systemic(2nd)β:-3.38 p値:0.02
(Fig.6b-e)
miR-92a-2-5pにおいて
副反応の中で差があるモノ
腫れ、赤み、頭痛、関節痛。
(Fig.6f)
--
抗体量と相関が高いのは
miR-148a β:-9691 p値:0.003
miR-625-3p β:14145 p値:0.004
(Fig.7a)
--
炎症性サイトカインIL-6, TNF-αと
相関が高いmiRNAsはこの研究では
見出されませんでした。
(Fig.7c,d)

//考察//ーー
miR-92a-2-5pやmiR-148aを内包した
細胞外小胞がどの細胞から出ているか?
あるいは
これらのmiRNAsがどういった機能と関係しているか?
を詳しく調べる事は重要です。
例えば、
miR-148aはB細胞の寛容性と自己免疫性の
重要な制御因子となっているという報告もあります(26)。
従って、抗体量との関係性が
今回の結果(1)で高かったことに対して
一定の論理根拠を見出せます。
細胞外小胞を使ったバイオマーカーの分析では
その輸送媒体である細胞外小胞自身が
ドナー細胞の情報を持っていると考えられるので
miRNAsであれば、その出所を分析する事が
潜在的には可能だと考えられます。
このケースで有れば、
コホート研究の中で
副反応の強さがどういった機序で生じていると
考えられるか?
それが細胞種レベルで分析可能である
ということになります。
細胞外小胞を使ったバイオマーカーの研究は
細胞外小胞の分析によるドナー細胞の識別によって
より発展性があると想定しています。

(参考文献)
(1)
Yusuke Miyashita, Takanobu Yoshida, Yuriko Takagi, Hirotake Tsukamoto, Ken Takashima, Takahisa Kouwaki, Katsunari Makino, Satoshi Fukushima, Kimitoshi Nakamura & Hiroyuki Oshiumi 
Circulating extracellular vesicle microRNAs associated with adverse reactions, proinflammatory cytokine, and antibody production after COVID-19 vaccination
npj Vaccines volume 7, Article number: 16 (2022)
(2)
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The microRNA miR-148a functions as a critical regulator of B cell tolerance and autoimmunity
Nature Immunology volume 17, pages433–440 (2016)

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