小児がんの治療の為の薬剤開発においては
大人の癌よりも遺伝子変異が一般的に
少ないと言われていますが(1)、
その遺伝子を標的とする薬剤が
存在しない場合があると言われています。
薬剤開発が難しい理由は、
小児がんは複数の遺伝子変異によって
生まれたタンパク質が融合して
1つの構造体となっていることです。
これは腫瘍形成の駆動要因となりますが、
一方で、薬剤が作用できる
酵素のポケットが欠けているため、
分子標的薬剤の開発を難しくしています。
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このような「Undruggable」な
融合タンパク質に対しては
タンパク質そのものを分解することで
そのたんぱく質の機能を消失させよう
という薬剤開発指針があります。
これは、細胞が元々もつ
タンパク質分解の機構をまねる、
あるいは乗っ取ることで
狙いのタンパク質を分解させます。
このような戦略で開発された
タンパク質分解薬剤は
急性前骨髄球性白血病(APL)や
多発性骨髄腫などで適用されています(1)。
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もう一つの戦略としては
原因となる遺伝子をノックアウト、ノックダウン
することで
異常な癌関連タンパク質の生成そのものを
抑えるというものです。
このために
CRISPR-Cas9や
short hairpin RNA screensが
使われます。
//考察//ーー
薬理作用させる物質の標的が特異的であり、
さらに薬剤の作用機序が特異的であれば、
オフターゲットが生じにくいために
許容できる副作用で薬効を期待することができます。
上述したような
タンパク質分解の薬剤の分解機序が
広く一般的なものであれば、
他の細胞のタンパク質のバランスを崩してしまう
原因となってしまいます。
特に標的化せず、遊離した状態で
薬剤を送達させる場合には
利用するタンパク質分解経路が
どれくらい一般性があり、
逆にいえば
どれくらい特異性があるかという検証は必要です。
遺伝子改変技術を含めて
一般的に有利に作用すると考えられる事は、
患児の病変部位にどうやって
特異的に薬剤を送達させるか?ということです。
これがある程度、一般的に確立すれば、
タンパク質分解の薬剤や
CRISPR-Cas9などの遺伝子改変技術を
組み込む際の障壁が大きく下がることになります。
利用できるタンパク質分解の経路の
選択肢が広がることにもつながる可能性があります。
もう一つの可能性である
遺伝子改変技術の適用の一つの壁になっているのは
小児がんに限らず、
特定の遺伝子改変させたい細胞(その中の細胞核)に
どのように特異的に遺伝子改変物質を送達させるか?
という難しさであると理解しています。
小児がんは冒頭でも触れた様に
大人よりも少ない遺伝子変異で異常が
生じている事が多いため、
その遺伝子変異に合わせた治療を行うことの
メリットは大きい可能性があります。
細胞種特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)は
細胞種への特異的送達を
現在提案されている様々な輸送媒体において
表面リガンドの構造を任意に選択する事で
実現させようというものです。
仮に実現されたときには
小児がんのお子さんへの負担が
顕著に小さくなる可能性もあります。
Steven G. DuBois(敬称略)らが総括(1)の中で
紹介したタンパク質分解薬剤や
遺伝子改変技術は
小児がんの治療に有望であり
細胞種特異的輸送系統は
その潜在性を高めるものであると考えられます。
(参考文献)
(1)
Steven G. DuBois, Laura B. Corson, Kimberly Stegmaier, Katherine A. Janeway
Ushering in the next generation of precision trials for pediatric cancer
Science 363 , 1175 – 1181 (2019)
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