細胞外小胞との医療の関わりにおいては
3つの分類が少なくともあると考えられます。
①細胞外小胞と病態生理学について考える。
細胞外小胞が自然な形で
病態、生理に対してどのような影響を持っているか?
例えば、癌細胞由来の細胞外小胞が
癌の成長、転移などにどのような影響を持っているか?
といったことが調べられることがあります。
この基礎的な研究は活発であり
報告数も多いと認識しています。
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②細胞外小胞をバイオマーカーとして利用する。
上述したように細胞外小胞は病理、病態と関連がありますから
その特異的な信号を掴み、
それを血液、脳脊髄液、尿などの
液体生検から検出することによって
非侵襲で病気の詳しいタイプや早期発見などを
実現しようとするものです。
細胞外小胞がバイオマーカーとして優れているのは
miRNAなど寿命の短いものも小胞に守られるため
それを使った検出精度が上がる可能性がある事ことと
細胞外小胞自身が表面リガンドなどを通して
ドナー細胞の情報を引き継いでいるため
細胞外小胞のドナー細胞を特定する事ができる可能性です。
従って、後者に関して、
例えば、脳の特定の細胞種に絞った
バイオマーカーの検出が可能になる可能性があります。
バイオマーカーの精度を上げるためには
統計的な有意性を持たせるために
サンプル数を多くする必要があります。
しかし、小児疾患、希少疾患などは
例え、国際チームを組んだとしても、
大規模なコホート研究が難しいことも想定されます。
細胞種特異的なバイオマーカーを
細胞外小胞の検出によって実現することができれば、
少ないサンプル数で統計的な有意性を持たせる事が
できる可能性があります。
バイオマーカーの研究についても
すでにその潜在可能性は示され、
いくつかの成果が出ていると認識しています。
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③細胞外小胞を治療に利用する。
細胞外小胞を治療に利用する報告数は
①、②に比べるとおそらく少ないと考えられます。
①、②は特に細胞外小胞に手を加えることなく
身体の中に存在する細胞外小胞を自然な形で
分析する事で実現しますが、
治療に利用するとなると
多くの場合、大なり小なりのエンジニアリングが
必要になるからです。
100nm程度の直径の細胞よりも100倍程度小さな小胞で
かつ、その形質は合成ナノ粒子よりも
非常に複雑で、異種性に富んでいる事から
治療に応用する際の壁は①、②に比べて高いし
従来のナノ粒子製剤よりも高い、
と考えられます。
ナイーブな細胞外小胞の免疫原性が低い状態であっても
手を加える事で、それが高まる事も指摘されています。
あるいは肝臓でクリアランスされる割合が
高まる事も同様です。
従って、製造においても最終的には
非常に繊細な管理が必要になる事が想定されます。
そういった中でコストや生産性の課題が
指摘されることも多くあります。
さらに、細胞外小胞を使った治療で
標的性を上げるためには
コロナの形成について考える必要があります。
表面リガンドを標的のために適正に作製したとしても
その表面リガンドがコロナによって蓋されてしまう
可能性もあるからです。
あるいは血中で酵素の働きで分解、
あるいは一部変性が生じる事も想定されます。
それによって元来あるはずの標的性が弱められる
可能性があります。
今までのナノ粒子の標的化の成果が十分に出ない
1つの大きな理由として挙げられることがあります。
従って、
エンジニアリングした状態が
標的部位までそのままの状態で送達される
保証はないということです。
標的リガンドの多量体の形成、最外周のデザイン
シナプス形成など
いくつかのアイデアは考えられますが、
一番ストレートには
そのようなコロナの影響を受けても
なお標的性、走化性を失わないような機序を
体内の自然な状態の細胞外小胞から学ぶ
という事が挙げられます。
例えば、
転移に関連する細胞外小胞の輸送形式や
特定の部位において
ドナー細胞が最も離れていると考えられる
細胞外小胞のデザインを分析するなどです。
そこからコロナ形成などに耐性を持つ
何らかの設計指針が生まれる可能性があります。
あるいは臓器特異的な幹細胞由来の
細胞外小胞にヒントがあるかもしれません。
例えば、神経幹細胞由来の細胞外小胞は
神経系の複数の疾患の治療に適用され
基礎研究されています。
従って、
特定の臓器、組織に対して治療するとき
同一の組織特有の幹細胞を細胞外小胞の
ドナー細胞とすることが適合している可能性は
選択肢の一つとして追究する価値があります。
細胞外小胞による治療は
再生医療や遺伝子治療に応用できる可能性がありますが、
これらの実現においても
ベースとして上述した
細胞種特異的な送達システムを確立する事が
重要になると考えられます。
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