2022年10月25日火曜日

小児がんの精密臨床試験の概要

小児がんは大人の癌に比べて、
全てではないものの
大人の癌では見られない希少な遺伝子変異が
見られることがあります。
このような遺伝子変異に合わせて
治療を行う事を「Precision oncology」と呼びます。
2つの報告により
小児がんの共通性の高い遺伝子的な特徴の
包括的なマップが示されています(2,3)。
例えば、
共通的に見られ、悪性度の高い
治療の難しい変異を持つ癌については
Steven G. DuBois(敬称略)らがTable.1に示しています(1)。
遺伝子変異によって生じた
細胞の異常に関わるたんぱく質の抑える
働きを持つ分子標的薬が開発されています。
しかし、少なくとも一部の遺伝子変異に関わる
タンパク質の抑制薬剤は存在していません。
遺伝子変異の中には
一部、大人のがんと共通のものがあり
臨床的な証拠があるものがありますが、
全体の5%から10%程度であるとされています。
大人のがんと小児がんとの違いを考えると
既に実績のある抗がん剤が
小児がんに大人と同様に適しているかという
疑問があり、整合しなければ、
身体に多くのダメージを与える可能性もあるので
小児がんの特徴にあった
「Precision clinical trial」が必要である
と考えられます。
小児がんは異種性があるうえに
高齢になって罹患する癌に比べて、
人数も集める事が難しいため、
臨床試験を効果的に行うためには
いくつかの工夫が必要です。
Steven G. DuBois(敬称略)らはBox.1に
小児がんの臨床試験に適用できる
いくつかのプログラムデザインを整理されています。
その一部を紹介します。
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〇3+3 design
3人のコホートに参加する
フェーズⅠ臨床試験のための
共通のルールベースデザインと
次の3人の薬剤用量の増減は
初めに参加した患者さんで観測された
毒性に基づいて決定される。
-
〇Basket trials
多くの癌タイプを持つ患者さんに対して
バイオマーカーを調べます。
そのバイオマーカーに合わせた
分子標的治療をサブプロトコルに分けて
試験を実施します。
-
〇Bayesian model-based trial designs
逐次出てくるデータに基づいて
臨床試験因子を改変していきます。
-
〇Continual reassessment method:
薬剤用量と許容できない毒性の確立の
数学モデルを逐次組み込みながら、
次の患者さんに対して
毒性が一定以下に下がるような
用量を定めていく治験プログラム。
-
〇Novel-plus-novel combinations:
2つの新規薬剤の組み合わせを
従来の薬剤と1つの新規薬剤と比較する。
-
〇Pediatric Research Equity Act:
大人のために開発された薬剤の
小児用薬剤の開発を委任するために
FDAに根源を与える法整備。
-
〇Sefety run-in
治験を大人数の患者さんにオープンにする
前に毒性を評価するために
小さなグループで
以前に治療したことない療法で治療する。
それをフェーズ2、3の初期要素として
組み込む。
-
〇Umbrella trial
〇特定の癌種
〇バイオマーカー検査
〇バイオマーカーにあった分子療法
これらを合わせ、患者さんを
細かく分類する(Subprotocol)。
--
これらをまとめて考えると
小児がんの治験は精密な合わせ込みが必要なので
サブプロトコルが必要であるということです。
例えば、
臨床に参加する人数が100人だとしても
その100人が10グループに分類されるとすると
平均10人の結果で判断していくことになります。
フェーズⅠ、Ⅱでは
薬剤の効果を確認する事に加えて
重要視されるのは毒性の評価です。
許容できない副作用を評価して、
それが合格した上で効果がでるかどうかを
判断する事になると思います。
また、治験のプログラム進行を固定的
計画通りにするのではなく、
状況に応じて、プログラムを柔軟に改善していく
ということが盛り込まれるデザインもあります。
それはベイズモデルです。
遺伝子的な変異は1つではないケースが
多いと考えられるので、
分子標的薬剤を2つ組み合わせる治験も考えます。
その時には
分子標的薬剤1種類と従来の薬剤と
分子標的薬剤2種類とを比較するプログラムも
上述したように考えられます。

//提案//ーー
このような治験が可能かどうかはわかりませんが、
上記にない視点として、
再発限定の治験プログラムというのは考えられるかもしれません。
治療履歴と遺伝子検査の中で、
2段構えの治験によって
より確実な治療を目指すという考え方です。
小児がんの一部の患児は
再発する難治性であると言われています。
初発だけではなく、
再発に対する治験も考慮の範囲に入るか?
という視点があります。

(参考文献)
(1)
Steven G. DuBois, Laura B. Corson, Kimberly Stegmaier, Katherine A. Janeway
Ushering in the next generation of precision trials for pediatric cancer
Science 363 , 1175 – 1181 (2019)
(2)
Susanne N. Gröbner, Barbara C. Worst, Joachim Weischenfeldt, Ivo Buchhalter, Kortine Kleinheinz, Vasilisa A. Rudneva, Pascal D. Johann, Gnana Prakash Balasubramanian, Maia Segura-Wang, Sebastian Brabetz, Sebastian Bender, Barbara Hutter, Dominik Sturm, Elke Pfaff, Daniel Hübschmann, Gideon Zipprich, Michael Heinold, Jürgen Eils, Christian Lawerenz, Serap Erkek, Sander Lambo, Sebastian Waszak, Claudia Blattmann, Arndt Borkhardt, Michaela Kuhlen, Angelika Eggert, Simone Fulda, Manfred Gessler, Jenny Wegert, Roland Kappler, Daniel Baumhoer, Stefan Burdach, Renate Kirschner-Schwabe, Udo Kontny, Andreas E. Kulozik, Dietmar Lohmann, Simone Hettmer, Cornelia Eckert, Stefan Bielack, Michaela Nathrath, Charlotte Niemeyer, Günther H. Richter, Johannes Schulte, Reiner Siebert, Frank Westermann, Jan J. Molenaar, Gilles Vassal, Hendrik Witt, ICGC PedBrain-Seq Project, ICGC MMML-Seq Project, Birgit Burkhardt, Christian P. Kratz, Olaf Witt, Cornelis M. van Tilburg, Christof M. Kramm, Gudrun Fleischhack, Uta Dirksen, Stefan Rutkowski, Michael Frühwald, Katja von Hoff, Stephan Wolf, Thomas Klingebiel, Ewa Koscielniak, Pablo Landgraf, Jan Koster, Adam C. Resnick, Jinghui Zhang, Yanling Liu, Xin Zhou, Angela J. Waanders, Danny A. Zwijnenburg, Pichai Raman, Benedikt Brors, Ursula D. Weber, Paul A. Northcott, Kristian W. Pajtler, Marcel Kool, Rosario M. Piro, Jan O. Korbel, Matthias Schlesner, Roland Eils, David T. W. Jones, Peter Lichter, Lukas Chavez, Marc Zapatka & Stefan M. Pfister 
The landscape of genomic alterations across childhood cancers
Nature volume 555, pages321–327 (2018)
(3)
Xiaotu Ma, Yu Liu, Yanling Liu, Ludmil B. Alexandrov, Michael N. Edmonson, Charles Gawad, Xin Zhou, Yongjin Li, Michael C. Rusch, John Easton, Robert Huether, Veronica Gonzalez-Pena, Mark R. Wilkinson, Leandro C. Hermida, Sean Davis, Edgar Sioson, Stanley Pounds, Xueyuan Cao, Rhonda E. Ries, Zhaoming Wang, Xiang Chen, Li Dong, Sharon J. Diskin, Malcolm A. Smith, Jaime M. Guidry Auvil, Paul S. Meltzer, Ching C. Lau, Elizabeth J. Perlman, John M. Maris, Soheil Meshinchi, Stephen P. Hunger, Daniela S. Gerhard & Jinghui Zhang
Pan-cancer genome and transcriptome analyses of 1,699 paediatric leukaemias and solid tumours
Nature volume 555, pages371–376 (2018)

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