2022年10月26日水曜日

コロナ禍で経験した若者の心の問題をどう捉え、対処するか?

新型コロナウィルスの世界的蔓延が始まって
もうそろそろ3年になります。
1,2年前に比べれば状況は落ち着いてきましたが、
まだ、完全には脱出できていない状況です。
感染症は罹患した事による身体の問題は
もちろんありますが、
感染対策をする事による精神的、心のダメージもあります。
特に心が発達時期にある若い人にとっては
コロナ禍で心を安定させて、幸福に生活する
難しさを感じている人も多いと推察します。
それは、もちろん若者だけに限りません。
アメリカの未成年に対する調査では
新型コロナウィルスのパンデミックの前後で
不安を訴えた人は6.4%から20.5%
うつ症状に関しては4.9%から25.2%
に上昇したとなっています(参考文献(1) Fig.1)
日本でも国立成育医療研究センターによる調査では
2020年11月~12月に実施した調査では
小学生の15%、中学生の24%、高校生の30%に
中程度以上のうつ症状があったとされています。
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このように心に問題が生じる一つのヒントは
類人猿に見られる「毛づくろい」にあるのではないか?
と考えました。
猿が仲間同士で毛づくろいしている様子を
動物園などで見かけた人も多いと思います。
その理由は毛の細菌やノミを取るのではなく、
不安をやわらげ、リラックスさせるためであると
いわれています。
これは友好関係に関係がないとされています。
このように「体温を感じて触れ合う事」は
全てではないにしろ
多くの人にとって欠かせないことではないか?
という事も考えられます。
特に友人や恋人など自分に近しい、親密な人との
人間関係を非常に重要にし、それを形成する時期に
社会的距離(ソーシャルディスタンス)が必要になったことが
学生さんの心の問題に影響が出た可能性があります。
日本の調査において
小学生よりも高校生に多いという点で
そういった事を考えています。
実際に未成年に関わらず、大人でも
パートナーと毛づくろいを多くする人は
傷からの回復も早く、長く生き、
子供を多く生み、その子供たちの健康状態もいい
とされています(2)。
肩を組みあって、盛り上がって、
何かスポーツやイベントごとに励むという事も重要だし、
時には抱きしめながら涙を流すことも重要です。
涙は「水を表すさんずいに戻る」と書きますが、
悲しい時、辛い時に涙を流す事に寄って
心のうみが洗い流され、リセットする効果がある
と考えられます。
そういった感情的な交換の経験も思春期には
とても大事になると思います。
従って、
上の調査で大学生まで範囲を広げても同じように
心に問題を抱えている人は多くいると思います。
上述した好ましい社会的な結束は
類人猿では幸福ホルモンと呼ばれる
エンドルフィン依存的に強められるといわれています(3-8)。
実際に毛づくろいはエンドルフィンを高める
効果があると言われています(9,10)。
人の場合は上述したように
ハグ(抱きしめる)とか、なでるという行為が
毛づくろいの一つになります(11,12)。
今はソーシャルネットワークなどで
歌ったり、踊ったりすることが流行っていますが、
距離が離れている中において
そのような活動で共有するということは
毛づくろいで得られるような幸福ホルモンが
放出することが期待されると言われています(13-16)。
あとは笑う事、笑顔の共有も挙げられています(17,18)。
エンドルフィンということで言えば、
運動で高まるとも言われています(2)。
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Shetal I. Shah(敬称略)らも言われていますが(1)
子供や若い人において
アンケートなどの基準でうつ症状と診断されるような
心に問題に抱えている場合において、
適切な医療機関へのアクセスに課題があるという事です。
これはアメリカではそうですが、
日本でもそうかもしれません。
それについての情報は日本では得られませんでしたので
確かな事は言えませんが、
心の問題は風邪などのように体温で数値化される
わけではないのでわかりにくいです。
従って、
そのまま我慢してしまうケースがあるということです。
また、WHOも子供、青年の健康の向上の中で
「親の同意なし」に心のケアのサービスが受けられる
仕組みを整えるべきであると言われています(19)。
若い人の心境を察すると、
「親には知られたくない。」という
学生さんもいると思います。
親に必ずしも知らせる必要がなければ
自発的なアクセスに繋がる可能性があります。
但し、
アメリカにおいては医療従事者の数が足りていない
と言われています。
日本でもそれは当てはまるかもしれません。
コロナ禍で対象となる人が増えたのであれば、
なおさらその傾向は当てはまります。
精神的なケアは
薬物療法なのか、
カウンセリングなのか、
行動療法なのか、
それとも何か良い環境を提供する事なのか?
上述したような情報をわかりやすく提供する事なのか?
いくつもの方向性があると思います。
その人にあった治療、処置をするためには
ある程度、見極めの為の時間がかかるので
その人的資源の限界もあります。
そういったことを総合的に考えると
みんなで助け合って、考えて、乗り切っていく
という考え方のベクトルが生まれます。
コロナ禍が軽くなって、
昨今、明るい兆しが見えてきている中で
学生さんの中でうつ症状を乗り越えて
今は元気に過ごしている人もいると思います。
そうした場合、
自分が苦しかった時の記憶は残っているはずですから
その苦しかった経験を活かして、
今、苦しんでいる人を救済するという活動も
提供する側、受ける側両方にメリットがある
可能性があります。
うつ症状のあった自分の過去を否定的に考える
ケースも多くあると思いますが、
その経験を他の人の救済に生かすことができれば、
その過去は肯定的なものに変わります。
それは若い人だけに限らず、
大人であっても同じだといえます。
辛い経験があっても、残された人生があります。
その人生の中で幸せを得るためには
辛い経験を消すのではなく、
辛い経験を他の人を助ける事で生かす
という考え方が一つ有効です。
それは私にも当てはまりますし、
それぞれのやり方があると思います。
但し、
薬物療法が一番有効な場合があるので
精神科の病院にいって適切な処方を受ける事で
一番、効果的に回復することもあります。
しかし、一方で
どこで、だれがその判断をするか?
という難しい問題もあります。
Shetal I. Shah(敬称略)らは
行動保健士(Behavioral health specialists)との
電話での相談によって病院へのアクセス性を
高めた実績があると紹介されていますが(1)、
日本でも病院へ行くまでの
ワンステップとなる人の存在が
特に若い人にとっては必要ではないかと思います。
いずれにしても調査によれば
高校生の場合は3割が経験していることで
人数が多いので、
十把一絡げにこうするのがよい
というone-size-fits-allの答えはなさそうです。
少なくとも年齢、性別に関わらず
現場を良く知っている人が
解決のための会議、議論、話し合いに
参加する必要があると考えられます。
また、相応の立場にある人が
この調査の数字をどのように受け取るか?
といった見方もあります。

(参考文献)
(1)
Shetal I. Shah On behalf of the Pediatric Public Policy Council
Legislative remedies to mitigate the national emergency in pediatric mental health
Pediatric Research (2022)
(2)
Danilo Bzdok & Robin I. M. Dunbar
Social isolation and the brain in the pandemic era
Nature Human Behaviour volume 6, pages1333–1343 (2022)
(3)
Depue, R. A. & Morrone-Strupinsky, J. V. A neurobehavioral  
model of affiliative bonding: implications for conceptualizing  
a human trait of affiliation. Behav. Brain Sci. 28, 313–350 (2005).  
Discussion 350–395.
(4)
Dunbar, R. I. The social role of touch in humans and primates: 
behavioural function and neurobiological mechanisms. Neurosci. 
Biobehav. Rev. 34, 260–268 (2010).
(5)
Inagaki, T. K., Ray, L. A., Irwin, M. R., Way, B. M. & Eisenberger, N. I. 
Opioids and social bonding: naltrexone reduces feelings of social 
connection. Soc. Cogn. Affect. Neurosci. 11, 728–735 (2016).
(6)
Machin, A. J. & Dunbar, R. I. The brain opioid theory of social 
attachment: a review of the evidence. Behaviour 148,  
985–1025 (2011).
(7)
Nummenmaa, L. et al. Adult attachment style is associated with 
cerebral μ‐opioid receptor availability in humans. Hum. Brain 
Mapp. 36, 3621–3628 (2015).
(8)
Pearce, E., Wlodarski, R., Machin, A. & Dunbar, R. I. The influence 
of genetic variation on social disposition, romantic relationships 
and social networks: a replication study. Adapt. Hum. Behav. 
Physiol. 4, 400–422 (2018).
(9)
Fabre-Nys, C., Meller, R. E. & Keverne, E. B. Opiate antagonists 
stimulate affiliative behaviour in monkeys. Pharmacol. Biochem. 
Behav. 16, 653–659 (1982).
(10)
Keverne, E. B., Martensz, N. D. & Tuite, B. Beta-endorphin 
concentrations in cerebrospinal fluid of monkeys are influenced 
by grooming relationships. Psychoneuroendocrinology 14,  
155–161 (1989).
(11)
Suvilehto, J. T., Glerean, E., Dunbar, R. I., Hari, R. & Nummenmaa, 
L. Topography of social touching depends on emotional  
bonds between humans. Proc. Natl Acad. Sci. USA 112,  
13811–13816 (2015).
(12)
Suvilehto, J. T. et al. Cross-cultural similarity in 
relationship-specific social touching. Proc. R. Soc. B 286, 
20190467 (2019).
(13)
Pearce, E., Launay, J. & Dunbar, R. I. The ice-breaker effect: singing 
mediates fast social bonding. R. Soc. Open Sci. 2, 150221 (2015).
(14)
Pearce, E., Launay, J., MacCarron, P. & Dunbar, R. I. Tuning in to 
others: exploring relational and collective bonding in singing and 
non-singing groups over time. Psychol. Music 45, 496–512 (2017).
(15)
Weinstein, D., Launay, J., Pearce, E., Dunbar, R. I. & Stewart, L. 
Singing and social bonding: changes in connectivity and pain 
threshold as a function of group size. Evol. Hum. Behav. 37, 
152–158 (2016).
(16)
Tarr, B., Launay, J., Benson, C. & Dunbar, R. I. Naltrexone blocks 
endorphins released when dancing in synchrony. Adapt. Hum. 
Behav. Physiol. 3, 241–254 (2017).
(17)
Dunbar, R. I. et al. Social laughter is correlated with an elevated 
pain threshold. Proc. R. Soc. B 279, 1161–1167 (2012).
(18)
Manninen, S. et al. Social laughter triggers endogenous opioid 
release in humans. J. Neurosci. 37, 6125–6131 (2017).
(19)
Mental health and COVID-19: early evidence of the pandemic ’ s impact: scienti fi c brief.
https://www.who.int/publications/i/item/WHO-2019-nCoV-Sci_Brief-Mental_health-
2022.1 (2022).


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