2022年10月30日日曜日

大量の造血過程の赤血球遺伝子完全性を守る因子

人の全身を循環している血液は
当たり前ですが、
私たちの健康を維持する上で非常に重要です。
例えば、大量の輸血をすると
身体や脳に変化が起きるという事が
ある可能性があります。
私たちのアイデンティティーの一部を決めている
といっても言い過ぎではないかもしれません。
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その血液は体重によりますが、
全身でおおよそ4.5~5L程度あると言われています。
これが100~120日で全て入れ替わるとされているので
そこから1日あたり
どれくらい赤血球の数が入れ替わるか?
これを計算してみます。
血中の赤血球数は
500万細胞数/mm3(0.001ml)であり
100日で5Lの血液が入れ替わるとすると
1日当たり50mLなので
500万×1000×50=2500億個/日となります。
実際の報告では2000臆個/日となっている(2)ので
この計算はおおよそ当てはまっていると言えます。
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これだけの数の赤血球を生み出すために
毎日、骨髄にある造血幹細胞から
複数の分化プロセスを経て、
赤血球生成が非常に活発に行われます。
そのスピードが非常に速く、多いので、
そのままストレートに考えると
遺伝子的な変異、エラーが生じやすくなります。
このようなDNAコピーのエラーが生じると
貧血など血液の問題が生じます(3)。
しかし、
多くの人において血液の問題が起きていないので
毎日2500億個の赤血球生成においては
非常に洗練された、強い
遺伝子的な完全性、エラー修正の機構が
身体にあるはずであると考えられます。
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Masanori Yoshinaga(敬称略)らは
その遺伝子完全性を決める因子について
明らかにしています(1)。
m6A(N6 -methyladenosine)メチル化は
mRNA調節を行いますが、
その一種であるMETTL16は
上述した赤血球生成において
DNAのエラー修復を行う
遺伝子の調節mRNAである
Brca2, Fancm mRNAsを
活性化させることを示しています(1)。
これらのmRNAはMTR4のRNAエクソソーム複合体
によっても赤血球の前駆体である
赤芽細胞によって調整されることが
しめされています。
ここでRNAエクソソーム複合体とは
細胞外小胞ではなく
RNAを分解する能力のある
タンパク質の複合体です。
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DNA修復というのは
身体(細胞)の健康において非常に重要なので
このMETTL16やMTR4のRNAエクソソーム複合体が
他の細胞でもDNA完全性に寄与しているかどうか?
というのは
Masanori Yoshinaga(敬称略)らは関心を持って
今後、研究の対象として検討しています(1)。
例えば、
造血幹細胞からの分化において共通性があれば、
DNAエラーは癌化にも関わるので、
血液性の癌において
METTL16やMTR4のRNAエクソソーム複合体が
関わっている可能性も考えられます。

//考察//ーー
細胞の入れ替わりという観点で考えると
外部刺激が多かったり、活動量が非常に多い
組織、臓器では早くなっています。
例えば、
胃の粘膜は3日で全て入れ替わります。
腸の微繊毛も1日で全て入れ替わります。
代謝、排出に関わる
肝臓、腎臓は早い細胞で1か月でほぼ入れ替わり
遅いものでも1年で全て入れ替わります。
脳においても
早い細胞は1か月で40%が入れ替わります。
このような
入れ替わりが速い細胞においては
幹細胞から活発に分化させて
新たな細胞を早く、多く生み出していく必要があります。
DNAコピーにおいて一定の割合で
エラーが起こることを想定すると
そのDNAエラーを修復するための遺伝子が
働く機序が赤血球同様に活発である可能性があります。
つまり、それを調べることの意義が
大きい可能性があります。
その時に上述した
METTL16を含めて
遺伝子調節をするmRNAの装飾に関わる因子を
調べる事でそれに関わる疾患や
その健全性維持に貢献できる可能性があります。

(参考文献)
(1)
Masanori Yoshinaga, Kyuho Han, David W. Morgens, Takuro Horii, Ryosuke Kobayashi, Tatsuaki Tsuruyama, Fabian Hia, Shota Yasukura, Asako Kajiya, Ting Cai, Pedro H. C. Cruz, Alexis Vandenbon, Yutaka Suzuki, Yukio Kawahara, Izuho Hatada, Michael C. Bassik & Osamu Takeuchi
The N6-methyladenosine methyltransferase METTL16 enables erythropoiesis through safeguarding genome integrity
Nature Communications volume 13, Article number: 6435 (2022) 
(2)
Muckenthaler, M. U., Rivella, S., Hentze, M. W. & Galy, B. A red
carpet for iron metabolism. Cell 168, 344–361 (2017).
(3)
Kassebaum, N. J. et al. A systematic analysis of global anemia
burden from 1990 to 2010. Blood 123, 615–624 (2014).


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