2022年10月31日月曜日 0 コメント

Correction: 薬剤の送達効率を高める事の重要性

合成ナノ粒子、ジェル、細胞外小胞など
どんな媒体でもいいので、
病変部位近くまで薬剤を保護した状態で送達し、
病変部位での薬剤濃度の偏り、集中を実現する事が
少なくとも内科による薬剤治療の
フェーズを変えると考えられます。
今まで試験管で結果が出ていたものも、
臨床の安全性の段階で問題が出て
多くの開発した薬剤が適用不可になっています。
その薬剤をもし、
病変部位まで特異的に送達できれば、
試験管で得られた良好な結果が
臨床でも反映されるかもしれません。

ナノ粒子でも結局は共通的な結合部位を
標的のためのアンカーに使うと
病変部位近くに集中させる事はできません。
特異性がないからです。
あるいは、様々なデブリが血中にもあり、
結合部位を守る事にも課題があります。
従って、
特異的送達は難しいのですが、
薬剤標的のように特定の結合部位に限られる
わけではないので、
送達の為の標的の選択性が高い
というのが大きなメリットです。
例えば、
固形の癌の治療で有れば、
その腫瘍組織の微小環境のどの要素でも
特異的に結合できる部位があれば
選択可能になります。
遊離薬剤を直接的に作用させる場合には
標的となる部位は1か所に決まってしまいます。
従って、
その一か所の薬効を発揮する
結合部位を生かすために
その病変がある細胞近くで薬剤を放出させる仕組みを
実現する事のほうが、
より容易である可能性があります。

小児がんにおいて癌種にもよるのですが
TP53の変異の影響は大人の癌と同様に大きい
という結果もあります(1,2)。
少なくともTP53の変異を正常化する
薬剤があれば、一部のお子さんは
より良い形での治療が可能になることが示唆されます。
TP53の変異に対する薬剤は
TP53が代表的な癌抑制遺伝子であるために
以前から高く注目されてきましたが、
まだFDAでも承認されていません。
試験管の結果では
p53の転写活性を復活させる薬や
構造的に通常状態を保持しやすいように
ユビキチン化を抑制する薬もあります(3)。
しかしながら、
このような薬は臨床試験を通過することができていません。
その理由は、非特異的な毒性に依ります。
このような経路は
p53以外の生理経路にも影響を与えてしまうのか?
非特異的なので、
通常細胞に悪影響があるかもしれません。
従って、
薬剤を開発する際には
標的となる病変細胞だけではなく
送達が予想される通常細胞の影響も見る必要性がある
ということは想定されます。
一方で上述したように
もし、TP53に異常がある癌細胞だけに
上述したようなTP53の通常性を促進する
薬剤が送達されれば、
その毒性、副作用も下がり、
逆に薬効が相対的に一気に高まる可能性もあります。
遊離薬剤で
TP53「だけに」作用する経路を見つけて
その経路を抑える薬剤を見つけるよりも、
TP53の通常性に作用するいくつかの経路で
他にも作用する可能性があるけど、
TP53に異常がある病変部位「だけに」
届けるシステムを考えるほうが
その後の様々な適用性を考えると
メリットは大きい可能性が高いです。
なぜなら、
冒頭で述べた様に
細胞種特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)
あるいは
微小環境特異的輸送系統
(Microenvironment-specific delivery system)
はTP53標的薬だけではなく
他の今まで適用不可になった薬剤の多くを
再度、臨床で試して許容可能な副作用の範囲で
薬効を得ることができる可能性があるからです。
非特異性であり、
通常細胞に影響を与える事によって
その毒性から適用不可になった有望な薬剤は
多くある可能性があります。

細胞外小胞が良い場合もあるし
合成ナノ粒子が適している場合もあります。
あるいは、
組織の間質を形成するような
ジェルが適している可能性もあります。
それぞれの選択肢を排除することなく、
ナノ技術によって薬剤を選択的に届けるという事は
非常に難しい事であるには変わりないですが、
実現した時の利点は
計り知れないほど大きなものになる
といっても言い過ぎではないと考えられます。

Xiaotu ma, Susanne N. Gröbner(敬称略)らによって
大規模に行われた小児がんの遺伝子分析(1,2)も
実際の臨床現場に生きて、
結果として多くのお子さんの命を救うだけではなく
その後の生活の質をより改善された治療によって
高める事に繋がる事も想定されます。

薬剤の送達効率を高める事は
避けられない重要な課題であると
Ori Hassin、Moshe Oren(敬称略)らの
報告(3)を読み、再認識しました。

近年注目されているタンパク質分解薬剤があります。ユビキチン化を誘発して標的となるたんぱく質を分解させるという報告もあります(4)。また、TP53変異で誘発された細胞突起などを介した細胞の移動を抑える機序についても報告されています(5)。これらの薬は今まで承認されなかったTP53変異に対する治療薬のための開発に貢献する可能性はもちろんありますが、本当に標的タンパク質、その中のTP53だけに作用するかどうかを調べるのは非常に広範な試験が必要になるためその証明が難しいものだと思います。こういった通常細胞を含めた、正常なあらゆる生理経路に対する影響を評価する事は非常に難しく、これは遊離薬剤開発の少なくとも一部で言える事だと思います。細胞外小胞、ジェル、ナノ粒子などの輸送媒体では、通常細胞の影響は、実際に通常細胞にどれくらい輸送されたかで評価することができます。免疫細胞に対する影響の評価も途方もない労力がかかることでは少なくともありません。上述した有効になる可能性のある薬剤を確実に病変部位に届ける技術を洗練させていく方が、副作用の予測、原因掌握ができやすいため、最終的に高い確率で臨床試験に合格する薬剤を生み出しやすくなる可能性があります。通常細胞に対する影響がわかりにくい生理経路を利用する薬剤においては、特異性に極端にこだわらず、細胞の異常形質に対してストレートにそれを正す遊離薬剤を開発する事と、それを確実に標的細胞まで輸送する技術の両輪を回すことで薬剤開発は大きく発展する可能性があります。


(参考文献)
(1)
Xiaotu Ma, Yu Liu, Yanling Liu, Ludmil B. Alexandrov, Michael N. Edmonson, Charles Gawad, Xin Zhou, Yongjin Li, Michael C. Rusch, John Easton, Robert Huether, Veronica Gonzalez-Pena, Mark R. Wilkinson, Leandro C. Hermida, Sean Davis, Edgar Sioson, Stanley Pounds, Xueyuan Cao, Rhonda E. Ries, Zhaoming Wang, Xiang Chen, Li Dong, Sharon J. Diskin, Malcolm A. Smith, Jaime M. Guidry Auvil, Paul S. Meltzer, Ching C. Lau, Elizabeth J. Perlman, John M. Maris, Soheil Meshinchi, Stephen P. Hunger, Daniela S. Gerhard & Jinghui Zhang
Pan-cancer genome and transcriptome analyses of 1,699 paediatric leukaemias and solid tumours
Nature volume 555, pages371–376 (2018)
(2)
Susanne N. Gröbner, Barbara C. Worst, Joachim Weischenfeldt, Ivo Buchhalter, Kortine Kleinheinz, Vasilisa A. Rudneva, Pascal D. Johann, Gnana Prakash Balasubramanian, Maia Segura-Wang, Sebastian Brabetz, Sebastian Bender, Barbara Hutter, Dominik Sturm, Elke Pfaff, Daniel Hübschmann, Gideon Zipprich, Michael Heinold, Jürgen Eils, Christian Lawerenz, Serap Erkek, Sander Lambo, Sebastian Waszak, Claudia Blattmann, Arndt Borkhardt, Michaela Kuhlen, Angelika Eggert, Simone Fulda, Manfred Gessler, Jenny Wegert, Roland Kappler, Daniel Baumhoer, Stefan Burdach, Renate Kirschner-Schwabe, Udo Kontny, Andreas E. Kulozik, Dietmar Lohmann, Simone Hettmer, Cornelia Eckert, Stefan Bielack, Michaela Nathrath, Charlotte Niemeyer, Günther H. Richter, Johannes Schulte, Reiner Siebert, Frank Westermann, Jan J. Molenaar, Gilles Vassal, Hendrik Witt, ICGC PedBrain-Seq Project, ICGC MMML-Seq Project, Birgit Burkhardt, Christian P. Kratz, Olaf Witt, Cornelis M. van Tilburg, Christof M. Kramm, Gudrun Fleischhack, Uta Dirksen, Stefan Rutkowski, Michael Frühwald, Katja von Hoff, Stephan Wolf, Thomas Klingebiel, Ewa Koscielniak, Pablo Landgraf, Jan Koster, Adam C. Resnick, Jinghui Zhang, Yanling Liu, Xin Zhou, Angela J. Waanders, Danny A. Zwijnenburg, Pichai Raman, Benedikt Brors, Ursula D. Weber, Paul A. Northcott, Kristian W. Pajtler, Marcel Kool, Rosario M. Piro, Jan O. Korbel, Matthias Schlesner, Roland Eils, David T. W. Jones, Peter Lichter, Lukas Chavez, Marc Zapatka & Stefan M. Pfister
The landscape of genomic alterations across childhood cancers
Nature volume 555, pages321–327 (2018)
(3)
Ori Hassin & Moshe Oren
Drugging p53 in cancer: one protein, many targets
Nature Reviews Drug Discovery (2022)
(4)
Yoshino Akizuki, Mai Morita, Yuki Mori, Ai Kaiho-Soma, Shivani Dixit, Akinori Endo, Marie Shimogawa, Gosuke Hayashi, Mikihiko Naito, Akimitsu Okamoto, Keiji Tanaka, Yasushi Saeki & Fumiaki Ohtake 
cIAP1-based degraders induce degradation via branched ubiquitin architectures 
Nature Chemical Biology (2022)
(5)
Shigeto Nishikawa, Atsushi Kaida, Alejandro Parrales, Atul Ranjan, Mohamed Alalem, Hongyi Ren, Frank J. Schoenen, David K. Johnson & Tomoo Iwakuma
DNAJA1- and conformational mutant p53-dependent inhibition of cancer cell migration by a novel compound identified through a virtual screen
Cell Death Discovery volume 8, Article number: 437 (2022) 

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細胞外マトリックスの複合体化技術とその応用

科学文献はその報告の専門分野から遠い報告が
引用先の一部になっている報告は
基本的に多く引用されるという傾向があるとされています。
従って、
筆者が報告の参照させてもらう際には
完全、その報告の内容(ライン)に重複させていくのではなく、
自分の軌跡、調査、バックグラウンドを生かして、
違う観点を示すという事を
無理のない形でできるか?
という継続的な課題があります。
--
先日、脳の人工臓器(オルガノイド)の報告(2)を読んでいる時に
関心を持って意識していたのは、
そういったオルガノイドの成長のきっかけとなる
「核形成(Nucleation)」の機序はどのようであるか?
という点でした。
一般的に核形成するためには
分子がある閾値に達するまで集合する必要があります。
雲の形成などでは、空気中でそれが生じますが、
一般的に人為的に無機や有機の物質を核形成する場合
基板(Substrate)、足場(scaffold)がある方が容易です。
例えば、紫外、青色LEDの材料となる
窒化ガリウム系(GaN)の材料を成長させる場合
基板に格子整合系のGaN基板そのものを使うか
あるいは格子不整合系のSi、SiC、サファイヤなどを
使うかという選択肢があります。
格子整合系の場合は
分子のパターンが一致するため
基板と成長膜の界面でほとんど核形成することなく
そのまま成長していく事が可能です。
従って、成長の初期のエネルギーは小さくて済みます。
しかし、格子不整合系の場合には
結晶格子のパターンや間隔が異なるため、
その差異を緩衝する可塑性に富んだ層(緩衝層)を介して
その後、核形成を経由させて成長させていく必要があります。
従って、無機物質の成長を駆動していく場合、
基板、足場の選択は重要になります。
生体内でそういった無機材料の基板の役割を果たすのは
いわゆる組織の軟らかい骨格のような働きをする
細胞外マトリックスであるとされています(1)。
おそらく、足場の条件
例えば、物理的な特性、化学的な特性など
あるいはマクロには網目構造の状態を示す
全体の空間的な配置、密度など
組織を成長させる上で重要になると考えられます。
iPS細胞や幹細胞技術を使って、
臓器を形成していくためには
例えば、溶液の中で
遺伝子ベクター、細胞外小胞などによって
形状などを整える遺伝子などの導入は必要だと
理解していますが、
同時に3次元に形成していくためには
建物の骨格が必要な様に
細胞外マトリックスのような足場が必要です(3)。
(参考文献(3) Fig.1より)
その時に窒化ガリウムで基板を選択するように
3次元的な適切な「足場」が必要になります。
細胞外マトリックスは一つの材料からなっているわけではないので
複合体を形成させる必要があります。
特性の異なる2種類の細胞外マリックスの
構成材料であるヒヤルロン酸とゼラチンを
複合体化(Conjucation)させた
Masashi Okawa(敬称略)らの研究(1)は、
その足場の選択性を上げることに貢献するものである
と理解しています。
つまり、任意の適した物理的、化学的特性を得るための
自由度が向上することを意味します。
これはMicrobial transglutaminase反応性タグを
用いて結合させており(1)、
過去の研究においても結合において
実績があります(4)。
抗体薬物複合体の結合にも利用されています(5)。
この技術が鍵であると理解しています。
--
以上は、再生医療の応用について考えましたが、
Masashi Okawa(敬称略)らは
組織のエンジニアリング、創薬、薬剤送達、
病理学、医療機器開発、生物学的製造
などの応用があるとされています。
このうち
例えば、病理学、創薬においては
癌において応用の可能性があります。
癌細胞を含む腫瘍組織は
細胞外マトリックスを含む癌微小環境を形成しますが、
一般的に微小環境の細胞外マトリックスは密に形成され、
通常のそれとは異なるとされています。
従って、癌の微小環境に類似した
細胞外マトリックスの組み合わせを掌握し
その環境で生体外で癌細胞を成長させることで
病理やその相互作用から創薬に繋がる事も期待できます。
また、
薬剤の送達においては
ヒドロゲルの物理的、化学的性質を
巧みに制御する事によって、
薬剤送達、放出の時空間の制御が可能になる
展望も示唆されています(6)。
上述した複合体化技術は
送達させたい組織に結合親和性を持つ
タンパク質などを同時にジェルの網目組織に
含ませる事によって、
送達の特異性も確保できる可能性があります。
従って、上述した複合体化技術
Microbial transglutaminase反応性タグ
(あるいはその応用)は
非常に重要になる可能性があります。
また、生体内に計測デバイスを入れる際においても
ジェルによって保護しながら、
一定期間、体内に入れて、そして排出する事で
今まで引き出せなかった体内の情報を
得られる可能性もあります。
また、
3次元オルガノイドを作る技術は
Biofabricationに適用することもできます。
生体互換性のある機器を
今までよりも精巧に、複雑に
機能化させて組み立てる技術は
今までにない価値を生み出す可能性もあります。

(参考文献)
(1)
Masashi Okawa, Aki Tanabe, Seiichi Ohta, Satoru Nagatoishi, Kouhei Tsumoto & Taichi Ito
Extracellular matrix-inspired hydrogel of hyaluronan and gelatin crosslinked via a Link module with a transglutaminase reactive sequence
Communications Materials volume 3, Article number: 81 (2022) 
(2)
Oliver L. Eichmüller & Juergen A. Knoblich
Human cerebral organoids — a new tool for clinical neurology research
Nature Reviews Neurology volume 18, pages661–680 (2022)
(3)
Vanessa Velasco, S. Ali Shariati & Rahim Esfandyarpour
Microtechnology-based methods for organoid models
Microsystems & Nanoengineering volume 6, Article number: 76 (2020) 
(4)
Mari Takahara Rie Wakabayashi, Kosuke Minamihata†, Masahiro Goto†, and Noriho Kamiya
Primary Amine-Clustered DNA Aptamer for DNA–Protein Conjugation Catalyzed by Microbial Transglutaminase
Bioconjugate Chem. 2017, 28, 12, 2954–2961
(5)
Aileen Ebenig 1, Norbert Egon Juettner 2 3, Lukas Deweid 1, Olga Avrutina 1, Hans-Lothar Fuchsbauer 2, Harald Kolmar 1
Efficient Site-Specific Antibody-Drug Conjugation by Engineering a Nature-Derived Recognition Tag for Microbial Transglutaminase
Chembiochem. 2019 Sep 16;20(18):2411-2419
(6)
Jianyu Li & David J. Mooney
Designing hydrogels for controlled drug delivery
Nature Reviews Materials volume 1, Article number: 16071 (2016)


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子供のⅠ型糖尿病増加に対する遺伝子分析と新型コロナウィルス感染症との関連

都市化、森林伐採、森林火災、気候変動、
経済の国際化など様々な要因によって
人と動物の生活圏が以前と変わり、
今までにない接触機会によって
ウィルス感染のリスクが高まっています。
実際に新型コロナウィルスの世界的流行の
教訓を生かし、次に備える、
もっといえば二度と起こさないという動きは
当然出ています(2)。
感染症は人の健康や経済に悪影響を及ぼしますが、
人の健康においては
その感染症そのものの身体への影響だけではなく、
その感染症にかかる事によって
他の病気にもかかりやすくなるということが
生じる事があります。
例えば、
性感染症にかかるとHIVや
他の性感染症、癌などのリスクが高まる
といわれています(3)。
このような事は
新型コロナウィルスでも当てはまります。
新型コロナウィルスの不幸中の幸いは
子供が重症化しにくかったという事です。
その理由ははっきりとしたことはわかっていません。
少なくとも感染した子供は
仮に軽症であっても、免疫機能を活性化します。
子供の免疫機能は一般的に
獲得免疫系よりも自然免疫系が支配的で
インターフェロンがよく働くとされています(4)。
(参考文献(4) Fig.2)
一方で、近年日本でもニュースになっていますが、
18歳以下の子供のコロナ禍以降の
Ⅰ型糖尿病の発生件数が
それ以前よりも2.5倍に増えている
というデータがあります(5,6)。
アメリカとイギリスのデータであり、
日本ではどうか?というのは
少なくとも明らかではありませんが、
今後、少なくとも注意が必要です。
まだ、確定的なことを言える段階にはない
と理解していますが、
新型コロナウィルス感染と関連がある可能性があります。
前述したインターフェロンで刺激される
遺伝子OAS1, MX1, ISG15の遺伝子異常が
いずれもⅠ型糖尿病群でコントロール群に対して
高まっている事が示されています(7)。
また、抗ウィルスの自然免疫システムの
制御不全に関わる
2′‑5′oligoadenylate units。
これを分解するPDE12の機能も低下している
ことが示されました(1)。
2′‑5′oligoadenylate unitsが
RNaseLを活性化し、
これが細胞にダメージを与え(8,9)、
マウスのケースですが
Ⅰ型糖尿病を引き起こすことが示されています(10)。
今のところ、
上述したインターフェロンに関わる遺伝子異常や
自然免疫系の制御不全を統制する遺伝子異常が
どのように人の子供のケースで
Ⅰ型糖尿病と関わっているかは不明ですが、
上述した統計データや基礎実験から
一定の関連がある可能性が示唆されます。
--
インフルエンザも含めて
ワクチンの接種に対する
子供におけるリスクとベネフィットの天秤を評価するときに
新型コロナウィルスだけではなく
Ⅰ型糖尿病も含め、
罹患した時に乱された免疫機能によって
他の疾患に罹るリスクも高まる可能性がある事は
考慮に入れる必要はあります。
従って、
感染を未然に防ぐワクチン接種においても
免疫機能は刺激されますが、
それによる上述した遺伝子異常が起こりやすくなるか?
といった付加的な評価も重要になります。
仮にワクチンにおいては
上述した遺伝子の異常が極めて起こりにくく
他の疾患のリスクの低減にも貢献するのであれば、
その価値について見直されると考えられます。

(参考文献)
(1)
Hasim Tekin, Knud Josefsen, Lars Krogvold, Knut Dahl-Jørgensen, Ivan Gerling, Flemming Pociot & Karsten Buschard
PDE12 in type 1 diabetes
Scientific Reports volume 12, Article number: 18149 (2022) 
(2)
Pandemic preparedness
Nature outlook 26 October 2022
(3)
Olivia T. Van Gerwen, Christina A. Muzny & Jeanne M. Marrazzo 
Sexually transmitted infections and female reproductive health
Nature Microbiology (2022)
(4)
Janet Chou, Paul G. Thomas & Adrienne G. Randolph
Immunology of SARS-CoV-2 infection in children
Nature Immunology volume 23, pages177–185 (2022)
(5)
Barrett, C. E. et al. Risk for newly diagnosed diabetes >30 days after SARS-CoV-2 infection among persons aged <18 years - United 
States, March 1, 2020-June 28, 2021. MMWR Morb. Mortal. Wkly. Rep. 71, 59–65 (2022).
(6)
Unsworth, R. et al. New-onset type 1 diabetes in children during COVID-19: Multicenter regional findings in the U.K.. Diabetes 
Care 43, e170–e171 (2020).
(7)
Kristina Pedersen, Martin Haupt-Jorgensen, Lars Krogvold, Simranjeet Kaur, Ivan C. Gerling, Flemming Pociot, Knut Dahl-Jørgensen & Karsten Buschard 
Genetic predisposition in the 2′-5′A pathway in the development of type 1 diabetes: potential contribution to dysregulation of innate antiviral immunity
Diabetologia volume 64, pages1805–1815 (2021)
(8)
Poulsen, J. B. et al. Characterization of human phosphodiesterase 12 and identification of a novel 2 ′-5′ oligoadenylate nuclease – 
The ectonucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase 1. Biochimie 94, 1098–1107 (2012).
(9)
Banerjee, S. et al. OAS-RNase L innate immune pathway mediates the cytotoxicity of a DNA-demethylating drug. Proc. Natl. Acad. 
Sci. 116, 5071–5076 (2019).
(10)
Chun Zeng et al.
RNase L contributes to experimentally induced type I diabetes onset in mice
J Endocrinol. 2014 Dec; 223(3): 277–287.


2022年10月30日日曜日 0 コメント

大量の造血過程の赤血球遺伝子完全性を守る因子

人の全身を循環している血液は
当たり前ですが、
私たちの健康を維持する上で非常に重要です。
例えば、大量の輸血をすると
身体や脳に変化が起きるという事が
ある可能性があります。
私たちのアイデンティティーの一部を決めている
といっても言い過ぎではないかもしれません。
--
その血液は体重によりますが、
全身でおおよそ4.5~5L程度あると言われています。
これが100~120日で全て入れ替わるとされているので
そこから1日あたり
どれくらい赤血球の数が入れ替わるか?
これを計算してみます。
血中の赤血球数は
500万細胞数/mm3(0.001ml)であり
100日で5Lの血液が入れ替わるとすると
1日当たり50mLなので
500万×1000×50=2500億個/日となります。
実際の報告では2000臆個/日となっている(2)ので
この計算はおおよそ当てはまっていると言えます。
--
これだけの数の赤血球を生み出すために
毎日、骨髄にある造血幹細胞から
複数の分化プロセスを経て、
赤血球生成が非常に活発に行われます。
そのスピードが非常に速く、多いので、
そのままストレートに考えると
遺伝子的な変異、エラーが生じやすくなります。
このようなDNAコピーのエラーが生じると
貧血など血液の問題が生じます(3)。
しかし、
多くの人において血液の問題が起きていないので
毎日2500億個の赤血球生成においては
非常に洗練された、強い
遺伝子的な完全性、エラー修正の機構が
身体にあるはずであると考えられます。
--
Masanori Yoshinaga(敬称略)らは
その遺伝子完全性を決める因子について
明らかにしています(1)。
m6A(N6 -methyladenosine)メチル化は
mRNA調節を行いますが、
その一種であるMETTL16は
上述した赤血球生成において
DNAのエラー修復を行う
遺伝子の調節mRNAである
Brca2, Fancm mRNAsを
活性化させることを示しています(1)。
これらのmRNAはMTR4のRNAエクソソーム複合体
によっても赤血球の前駆体である
赤芽細胞によって調整されることが
しめされています。
ここでRNAエクソソーム複合体とは
細胞外小胞ではなく
RNAを分解する能力のある
タンパク質の複合体です。
--
DNA修復というのは
身体(細胞)の健康において非常に重要なので
このMETTL16やMTR4のRNAエクソソーム複合体が
他の細胞でもDNA完全性に寄与しているかどうか?
というのは
Masanori Yoshinaga(敬称略)らは関心を持って
今後、研究の対象として検討しています(1)。
例えば、
造血幹細胞からの分化において共通性があれば、
DNAエラーは癌化にも関わるので、
血液性の癌において
METTL16やMTR4のRNAエクソソーム複合体が
関わっている可能性も考えられます。

//考察//ーー
細胞の入れ替わりという観点で考えると
外部刺激が多かったり、活動量が非常に多い
組織、臓器では早くなっています。
例えば、
胃の粘膜は3日で全て入れ替わります。
腸の微繊毛も1日で全て入れ替わります。
代謝、排出に関わる
肝臓、腎臓は早い細胞で1か月でほぼ入れ替わり
遅いものでも1年で全て入れ替わります。
脳においても
早い細胞は1か月で40%が入れ替わります。
このような
入れ替わりが速い細胞においては
幹細胞から活発に分化させて
新たな細胞を早く、多く生み出していく必要があります。
DNAコピーにおいて一定の割合で
エラーが起こることを想定すると
そのDNAエラーを修復するための遺伝子が
働く機序が赤血球同様に活発である可能性があります。
つまり、それを調べることの意義が
大きい可能性があります。
その時に上述した
METTL16を含めて
遺伝子調節をするmRNAの装飾に関わる因子を
調べる事でそれに関わる疾患や
その健全性維持に貢献できる可能性があります。

(参考文献)
(1)
Masanori Yoshinaga, Kyuho Han, David W. Morgens, Takuro Horii, Ryosuke Kobayashi, Tatsuaki Tsuruyama, Fabian Hia, Shota Yasukura, Asako Kajiya, Ting Cai, Pedro H. C. Cruz, Alexis Vandenbon, Yutaka Suzuki, Yukio Kawahara, Izuho Hatada, Michael C. Bassik & Osamu Takeuchi
The N6-methyladenosine methyltransferase METTL16 enables erythropoiesis through safeguarding genome integrity
Nature Communications volume 13, Article number: 6435 (2022) 
(2)
Muckenthaler, M. U., Rivella, S., Hentze, M. W. & Galy, B. A red
carpet for iron metabolism. Cell 168, 344–361 (2017).
(3)
Kassebaum, N. J. et al. A systematic analysis of global anemia
burden from 1990 to 2010. Blood 123, 615–624 (2014).


2022年10月29日土曜日 0 コメント

組織特有の幹細胞の生成と利用

子供など成長期には身体の大きさや形は
大きく変わりますが、
成人になるとその変化は少なくとも緩やかになり、
数年スパンの短い期間では
何か重い疾患に罹らない限りにおいては
身体の形は大きくは変わる事はありません。
ただ、筋肉の大きさや、
脂肪の量などは変わる事はあります。
しかし、各臓器、骨格、顔のパーツなどは
大きさや場所は大きく変化する事はありません。
そのように恒常性が維持されているのは
細胞からなる体が形を記憶するメカニズムがあるから
であると考える事ができます。
そのような恒常性はあるものの、
細胞は場所によって異なりますが、
適切なタイミングで入れ替わります。
皮膚など入れ替わりが速い組織もあります。
その入れ替わりの際には
その組織特有の幹細胞が関わっています。
皮膚や肝臓など再生能力が高い組織は
創傷が回復します。
皮膚などはその様子を実際に見る事ができます。
その際にも皮膚に常在する幹細胞が
関わっていると考えられます(2)。
基本的に細胞の入れ替わりサイクルが遅く
交換が活発ではない組織は
炎症や損傷があると
その組織の回復が起こりにくいということは
あるかもしれません。
また、高齢になると
「Stem cell theory of aging」によれば
幹細胞の再生能力が低下したり、
幹細胞そのものが老化する事で
あらゆる傷が治りにくいと言われています。
また、それに合わせて
細胞の入れ替わりサイクルも
組織によっては高齢になると遅くなる部位があります。
幹細胞の機能を高める事に寄って
脳神経、各臓器、骨、筋肉、眼、鼻腔、口腔、皮膚など
様々な機能を回復できる可能性があります。
心臓に心筋シートを貼るようなイメージで
部分的に機能が著しく悪化したところを
幹細胞によって生体内で治療する
ということが考えられます。
脳神経、肺、肝臓、腎臓、胃、腸など
重要な組織において
それ特異的な幹細胞があると考えられますが、
その数が減ってくる、機能が落ちるという事を
想定すると、それを補充する案が生まれます。
その時に、どのように
それぞれの組織の幹細胞を生み出すか?
といった問題が生じます。
Peter J. Quesenberry(敬称略)らは
従来は血液系の細胞にしか分化しないと
考えられていた骨髄性の造血幹細胞は
実は他の幹細胞にも変化できる形質を持つことを
総括の中で示しています(1)。
連続的、可逆的、持続的な細胞サイクルの中で
それぞれ特異的なタイミングで
それぞれの臓器から信号を得ると
その臓器特異的な幹細胞になる可能性がある
ということです(1)。
この臓器からの信号の一つは
mRNA, miRNA, タンパク質、DNAなどを輸送する
細胞外小胞であると言われています(1)。
例えば、
特定の細胞サイクルで
肺由来に細胞外小胞を受け取ることで
造血系幹細胞は肺の幹細胞に変わる可能性が
示唆されています(1)。
ここから、
造血幹細胞はユニバーサル性のある幹細胞である
というように推定されています。
iPS細胞でも特定の細胞に分化誘導させる際には
mRNAなどを導入すると言われています。
もし、
任意の組織に分化誘導させたいときに
その組織由来の細胞外小胞の信号が
重要な役割を担っているとしたら、
生体外の分化誘導環境において、
その細胞外小胞に含まれる成分を検討する
という視点が生まれます。
細胞外小胞があれば、
それをそのまま加えるというの案も生まれます。
内容物のmRNAだけではなく、
miRNAなどの他の核酸やタンパク質も関係している
かもしれません。
特定の幹細胞への分化誘導において
その組織由来の細胞外小胞が関わっているなら
その細胞外小胞を体内に入れる事で
元々体内にある多能性幹細胞の分化誘導を
生体内で促すこともできるかもしれません。
あるいは造血幹細胞、間葉系幹細胞、
iPS細胞など多能性を持つ幹細胞を
意図的に多い状態にしておいて、
その状態で幹細胞化させたい臓器の
細胞外小胞を導入することで
幹細胞を体内で増やすこともできるかもしれません。
もちろん
生体外で狙いの幹細胞を作って、
それを確認して生体内に入れるという事は
当然ある選択肢となります。
また、
それぞれの幹細胞が作れるようになると
幹細胞由来の細胞外小胞も作れるようになるため
それを輸送キャリアとして利用する事も出来ます。
例えば、
肺の幹細胞由来の細胞外小胞は
肺への走化性が高いかもしれません。
そうした場合、
肺に作用させたい薬剤と共に
肺組織へ細胞外小胞を送達させる事ができます。
それぞれの組織の幹細胞を
生体内、生体外で人為的に作れるようになることは
おそらく多くの利点があるはずなので、
Peter J. Quesenberry(敬称略)らによって
造血幹細胞でも
適切な細胞サイクルのタイミングで
特定の信号を与える事に寄って
多能性を与えられる可能性が示されたことは
意義がある事であると考えました。
また、そのメカニズムの中には
すでに多能性の証拠が十分にある
iPS細胞における分化誘導のヒントになる
可能性があると仮説を立てています。
iPS細胞で臓器を作るということにおいても
そのベースには
その臓器の様々な細胞種に
分化能がある幹細胞があるはずなので
各臓器の幹細胞の分化誘導を確実にできるようになることは
従来から示されている再生医療の実現にも
貢献できる可能性があります。

(参考文献)
(1)
Peter J. Quesenberry, Sicheng Wen, Laura R. Goldberg & Mark S. Dooner 
The universal stem cell
Leukemia (2022)
(2)
Daniel Díaz-García,1,2 Alžbeta Filipová,3 Idalia Garza-Veloz,4 and Margarita L. Martinez-Fierro
A Beginner’s Introduction to Skin Stem Cells and Wound Healing
Int J Mol Sci. 2021 Oct; 22(20): 11030


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2つの分析手法を統合した細胞種と表面タンパク質の解析

細胞種特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)を
実現するためには、
それぞれの細胞種が
どのような表面タンパク質を発現しているか?
というのを掌握する必要があります。
人の身体には
少なくとも200種類の細胞種があり、
表面タンパク質は2000種類以上がある
という報告もあります(2)。
1つ1つの細胞に対して
細胞種の特定と表面タンパク質の特定を
その都度、行っていくには非常に多くの労力がかかり
現実的ではありません。
また、同じ細胞種でも
検出される表面タンパク質に偏差がある
という事実もあります(1)。
そこで
Justin Lakkis(敬称略)らは
CITE-seqという方法で
細胞内に含まれるRNAと(ラベル付き)表面タンパク質を調べ、
同時に
単一細胞レベルで細胞種がわかる
scRNA-seqと組み合わせることで、
そのRNA情報の重なりから
CITE-seqで出てきた情報において
細胞種を特定し、
偏差が生じた表面タンパク質を修正、補充し、
それを表面タンパク質のデータベースとしました。
そのデータベースを基礎として
scRNA-seqで調べた単一細胞レベルの
RNAパターンから
補正されたCITE-seqのデータベースを参考にし
表面タンパク質を類推するというものです。
(そのように理解しています。)
これをJustin Lakkis(敬称略)らは
sciPENN(Fig.1)と呼んでいます。

//考察//ーー
各細胞種の表面タンパク質のデータベースを
作る事は骨の折れる、労力のかかる作業ですが、
RNA情報という共通性を生かして
他の細胞種の識別という
表面タンパク質情報において重要な項目を持つ
分析手法とRNA情報を重ねて、
機械学習で一致性を分析し、
より少ない労力で
RNA群と表面たんぱく質のデータベースを作り、
処理としてはより速い(?)
single-cell RNA-seqで尋問、クエリすることで
表面タンパク質の有無を機械学習で
確率的に調べるというのは
合理性のある方法であると考えられます。

(参考文献)
(1)
Justin Lakkis, Amelia Schroeder, Kenong Su, Michelle Y. Y. Lee, Alexander C. Bashore, Muredach P. Reilly & Mingyao Li
A multi-use deep learning method for CITE-seq and single-cell RNA-seq data integration with cell surface protein prediction and imputation
Nature Machine Intelligence (2022)
(2)
Damaris Bausch-Fluck, Ulrich Goldmann, Sebastian Müller,  and Bernd Wollscheid
The in silico human surfaceome
PNAS 115 (46) E10988-E10997 (2018)

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生後4か月運動評価による自閉症スペクトラム障がい予測とその意義

自閉症スペクトラム障がい(ASD)は
反復的な行動、制限的な興味、
社会コミュニケーション能力の低さなどが挙げられています(2).
興味範囲が限られることで
それに集中して取り組むことができれば
大きな価値に結びつく事もあると思いますが、
何か負荷がかかった時に
そのストレス解消手段として
分散的な行動選択を取りにくいという事が
あるかもしれません。
また、人とのコミュニケーションは
健全な社会生活で重要な事なので、
お子さんの場合は
学校生活などを通した中での
生きづらさを感じる事もあると思います。
近年、ASDに気付くことが多くなったことや
診断評価基準が変わったことで
ASDと診断される人が多くなったとされていますが、
それだけでは説明できない部分もあるとされています(1)。
現在では決定的な治療法はないのですが、
乳児のうちに早く気付いて、
早く介入すれば一定の効果が出る
という報告もあります(3,4)。
The Early Start Denver Model (ESDM)(3)は
大人との遊びや共同作業を通じて
前向きな関係を気づくことで
社会的案結びつきや共有する事の喜び、
感情の制御などを学びます。
生後9-14カ月の乳児に対して
ビデオを用いた全10回の社会的コミュニケーション介入
(iBASIS-VIPP)も検討されています(4)。
これらの事から
何かに集中しがちで
自分の中に閉じこもる傾向にあるお子さんに対して
社会的に開けた良好な環境を提供し
そこで適切な介入を行うことで、
ASDを軽くし、社会の中で生きやすい
健全な成長を促すことができる可能性がある
ということです。
実際にASDと診断されるのは
3歳程度と言われていますが、
多くの研究で子供の運動、動きなどで
その兆候はもっと若い時から現れている
ことが示されています(5-8)。
--
そこでHirokazu Doi, Naoya Iijima, Akira Furui(敬称略)らは
日本人の子供42人に対して、
4か月の時点で
子供の運動機能、動きについて分析し、
18カ月の時点で
M-CHATによる母親に対するアンケートで
自閉症のリスクを高い、低いにわけ、
動きの特徴を分析し、カットオフを設け、
その運動機能、動きから
事前に自閉症のリスクを予測できるかどうかを
調べています(1)。
その結果、
自閉症のリスクが高いグループは、
①膝より下の下肢の動きが弱い
②体を回すなど、身体全体の統合的、バランスの取れた
動きができにくい(Figure.4)。
higher central frequency and larger standard deviation 
of body center movement along medial-lateral axis.
③リズミカルな動きができにくい
ということがわかっています。
--
実際に生後4か月に調べたのは理由があります。
ASDの子供の脳を調べると
動きに関連する神経領域
〇大脳基底核(Basal ganglia)
〇小脳
これらに異常があることがわかっています(9,10)。
生後3か月から6か月は
これらの領域が活発に代謝活動を行い
組織として成長する時期にあります(11,12)。
従って、
成長途中の4か月の時点で
少なくとも動きに多少の違いがある事は
これらの脳の成長初期段階ですでに
違いが出ている可能性も暗示されます。
一方で、
この動きに関わる脳神経領域の成長期に
適切な介入を行うことができれば、
より根本的なASDの治療につながる事も考えられます。
従って、
Hirokazu Doi(敬称略)らの
早期(生後4か月時点)でのASDリスク評価を
洗練させていくことは
医療的かつ社会的意義があると考えられます。
また、そのお子さん、親御さんの今後長い
将来の幸せな生活に関わる事でもあります。
--
Hirokazu Doi(敬称略)らの今回の研究では(1)
評価人数が少ない事と、
高リスク群の予測が70%程度であったこと、
そのリスク評価M-CHATが
ASD診断の上でまだ信頼性において課題がある事などから
精度の問題でまだ課題はあるとされています(1)。
さらに詳しい研究が行われるということです(1)。

//追記//ーー
20歳未満の精神疾患の患者数は
日本の厚生労働省の統計によると
平成26年(2014年)ごろから急速に増えており、
30万人に迫る数となっています。
おおよそ20歳以下の1.5%程度ですが、
コロナ禍以降、
あるいは診断されていない人も含めると
その割合はもう少し高いかもしれません。
子供の健康に関わる
主要な疾患群であると考えられます。
そのような事情もあり、
子供の報告を選択する際には
心の病に関わる報告に
少なくとも平均以上の注意を向けることは
すでに決定しています。
もう1つはコロナ禍以降で
子供の間で深刻になった疾患も
そのように決定しています。
それが世界の心の病で苦しむお子さんにも
伝われば、それは幸いなことです。
精神疾患は心の病ですので、
組織学的なアプローチだけでは難しい部分もあります。
自分の気持ちを少なくとも少しは
記事に乗せていくという事を考えています。

(参考文献)
(1)
Hirokazu Doi, Naoya Iijima, Akira Furui, Zu Soh, Rikuya Yonei, Kazuyuki Shinohara, Mayuko Iriguchi, Koji Shimatani & Toshio Tsuji
Prediction of autistic tendencies at 18 months of age via markerless video analysis of spontaneous body movements in 4-month-old infants
Scientific Reports volume 12, Article number: 18045 (2022)
(2)
American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5 edn. (American Psychiatric Association, 
Arlington, VA, 2013).
(3)
Dawson, G. et al. Randomized, controlled trial of an intervention for toddlers with autism: the early start Denver model. Pediatrics 
125, e17–e23 (2010).
(4)
Green, J. et al. Parent-mediated intervention versus no intervention for infants at high risk of autism: a parallel, single-blind, 
randomised trial. Lancet Psychiatry 2, 133–140 (2015).
(5)
Adrien, J. L. et al. Blind ratings of early symptoms of autism based upon family home movies. J. Am. Acad. Child. Adolesc. Psychiatry 
32, 617–626 (1993).
(6)
Baranek, G. T. Autism during infancy: a retrospective video analysis of sensory-motor and social behaviors at 9–12 months of age. 
J. Autism Dev. Disord. 29, 213–224 (1999).
(7)
Osterling, J. A., Dawson, G. & Munson, J. A. Early recognition of 1-year-old infants with autism spectrum disorder versus mental 
retardation. Dev. Psychopathol. 14, 239–251 (2002).
(8)
Klin, A., Lin, D. J., Gorrindo, P., Ramsay, G. & Jones, W. Two-year-olds with autism orient to non-social contingencies rather than 
biological motion. Nature 459, 257–261 (2009).
(9)
Rinehart, N. J. et al. Gait function in newly diagnosed children with autism: cerebellar and basal ganglia related motor disorder. 
Dev. Med. Child Neurol. 48, 819–824 (2006).
(10)
Qiu, A., Adler, M., Crocetti, D., Miller, M. I. & Mostofsky, S. H. Basal ganglia shapes predict social, communication, and motor 
dysfunctions in boys with autism spectrum disorder. J. Am. Acad. Child. Adolesc. Psychiatry 49, 539–551 (2010).
(11)
Chugani, H. T., Phelps, M. E. & Mazziotta, J. C. Positron emission tomography study of human brain functional development. 
Ann. Neurol. 22, 487–497 (1987).
(12)
Choe, M.-S. et al. Regional infant brain development: an MRI-based morphometric analysis in 3 to 13 month olds. Cereb. Cortex 
23, 2100–2117 (2013).

2022年10月28日金曜日 0 コメント

早期産児のDHA補充の5歳時点のFSIQ値の影響と日本での検証必要性

日本は低出生体重児の比率が
OECD25カ国と比べて
顕著に高い(6.9% vs 9.6%(Japan) 2010年)ものの
乳児死亡率が2%程度と顕著に低く、
言い換えると
低出生体重で生まれても
命を失う事なくして育っていく
子供が多いことを示しています。
低出生体重児が多い1つの理由は
晩婚化にあると思っていましたが、
データを見るとそうではなく、
以前なら命を落としていた子供が
医療技術、環境の改善で助かっているという事が
大きいと思います。
--
このように低出生体重児比率が高い状況にあるので
この記事の内容は海外のデータですが
日本においてもより詳しい検証が必要になってくる
と思います。
2022年10月27日(つまり昨日)に
The New England Journal of Medicineで
発表された早期産児(平均在胎期間:26.8weeks)に対して
腸に直接、DHAを含めた乳液を与えて、
(Enteral feeds)、
さらに、母乳も与えて、
DHAの補充を月経後36週まで
(つまりおおよそ出生後10週程度)
行った場合、
母乳以外のDHAを与えなかった場合と比べて、
FSIQスコアがおおよそ
3.45(95% CI:0.38 to 6.53 p値 0.03)
向上したことが示されました。
これはDHA補充がないコントロール群と
300人程度の規模で行われたコホート研究です(1)。
--
なぜ、DHAかというと
脳の脂質のうち30%はDHAで作られていて
神経細胞のつながりに関わる
シナプス形成において重要だからです(2,3)。
実際に30週以下の在胎期間の早期産児の
神経細胞の組織を調べると
DHA濃度が低かったというデータもあります(4)。
特に妊娠の最後の3か月間は
子宮内での胎児のDHAの取り込みが多い時期です。
満期産児が37から40週程度であり、
27週というとその3か月間が失われた状態になります。
そうなると
生まれた後、母乳にもDHAが含まれますが、
脳の発達のためにはそれだけでは足りないため
当然、補充する必要性が出てくるだろう
ということが広く考えられてきました。
しかしながら、
調べるとわかると思いますが
「早産児にDHAを与えても神経発達に利益なし」
「DHAを含む栄養が早産児の呼吸困難を招く」
という記事が出てきます。
上の方はJAMAによる2009年の報告が
ベースとなっています(5)。
これを見ると与える条件は腸に直接与えるもので
本日の主要な内容である
Jacqueline F. Gould(敬称略)らの参考文献(1)に
近いものになりますが、
評価指標がIQではなくMDIとなっています。
これはMental Development Indexで
心理発達指標となっています。
それに向上は見られなかったけど、
女性は向上がみられたとなっています。
同じようにFSIQで評価したもので
効果がなかった報告もありますが(6)、
それは平均在胎期間(30週)となっています。
またコントロール群にも
DHAを1/3程度与えている事もあります。
参考文献(1)ではそれを与えていません。
さらに重要なのが神経発達を見る(MDI)のは
早く生まれた分の年齢を修正して
18カ月程度で比較しています。
FSIQは5歳とか7歳で評価するので、
評価の時期、年齢が大きく異なるということです。
従って、
在胎期間26.8週という
よりシビアな早産で
かつ母乳のみのより少ないDHAの量での
5歳時点のFSIQのデータでは
300人規模の比較で
3.45(95% CI:0.38 to 6.53 p値 0.03)
ポイント程度の差が出たということです。
一方で、
気管支肺異形成症は
600人規模の比較で
参考文献(1)と同様のプログラムN3RO trialで
1.13 (CI95%:1.02–1.25) P値0.02
DHA補充グループで生じやすくなっています。
「DHAを含む栄養が早産児の呼吸困難を招く」
というのはやや誇張されていますが、
DHAを60mg/kg・day補充されたグループでは
1.13倍程度高くなっています。
P値が0.02なので信頼性もやや高いものになっています。
Carmel T Collins(敬称略)らの研究(6)も合わせると
例えば、20mg/kg・dayくらいの満期までの補充で
5歳~7歳時点のFSIQは十分に向上する可能性があります。
この量で、今度は気管支異形成症のリスクはどうなるか?
というのが知りたいとなります。
FSIQのスコアが上がると
お子さんが命を落とすリスクが減る(8)、
生活の質が向上する(9)
社会での生産性も上がる(収入も上がる)(10)
という利点があります。
Jacqueline F. Gould(敬称略)らのデータは
オーストラリア、ニュージーランドのデータなので、
日本で当てはまるかどうかはわかりませんが、
早産の子供が高い医療の質によって
多く助かっているということを考えると
ちゃんと検証しておく必要があるのではないか?
このように思います。
そのお子さんや親御さんの幸せに関わる事です。
現時点で、個人が勝手に補充することは
危険で、当然勧められませんが、
確かなエビデンスのもと
医療従事者の方の管理のもとに行われるのであれば、
それはその家族だけではなく
社会的なメリットにもつながります。

(参考文献)
(1)
Jacqueline F. Gould, Ph.D., Maria Makrides, Ph.D., Robert A. Gibson, Ph.D., Thomas R. Sullivan, Ph.D., Andrew J. McPhee, M.B., B.S., Peter J. Anderson, Ph.D., Karen P. Best, Ph.D., Mary Sharp, M.B., B.S., Jeanie L.Y. Cheong, M.D., Gillian F. Opie, M.B., B.S., Javeed Travadi, D.M., Jana M. Bednarz, G.Dip., Peter G. Davis, M.D., Karen Simmer, M.D., Lex W. Doyle, M.D., and Carmel T. Collins, Ph.D.
Neonatal Docosahexaenoic Acid in Preterm Infants and Intelligence at 5 Years
The New England Journal of Medicine 2022; 387:1579-1588
(2)
Martin RE, Bazan NG. Changing fatty 
acid content of growth cone lipids prior to 
synaptogenesis. J Neurochem 1992; 59: 318-
25.
(3)
Auestad N, Innis SM. Dietary n-3 fatty 
acid restriction during gestation in rats: 
neuronal cell body and growth-cone fatty 
acids.  Am  J  Clin  Nutr  2000; 71: Suppl  1: 
312S-314S.
(4)
 Martinez M. Tissue levels of polyun-
saturated fatty acids during early human 
development. J Pediatr 1992; 120(4): S129-
S138.
(5)
Maria Makrides 1, Robert A Gibson, Andrew J McPhee, Carmel T Collins, Peter G Davis, Lex W Doyle, Karen Simmer, Paul B Colditz, Scott Morris, Lisa G Smithers, Kristyn Willson, Philip Ryan
Neurodevelopmental outcomes of preterm infants fed high-dose docosahexaenoic acid: a randomized controlled trial
JAMA. 2009 Jan 14;301(2):175-82
(6)
Carmel T Collins1,2,3,4, Robert A Gibson1,2,4, Peter J Anderson5,6, Andrew J McPhee2,3,7, Thomas R Sullivan8, Jacqueline F Gould1,4, Philip Ryan8, Lex W Doyle5,6,9, Peter G Davis5,9, Judy E McMichael10,11, Noel P French10,11, Paul B Colditz12, Karen Simmer10,11, Scott A Morris13, Maria Makrides1,2,3,4
Neurodevelopmental outcomes at 7 years’ corrected age in preterm infants who were fed high-dose docosahexaenoic acid to term equivalent: a follow-up of a randomised controlled trial
BMJ Open. 2015 Mar 18;5(3):e007314.
(7)
Carmel T. Collins, Ph.D., Maria Makrides, Ph.D., Andrew J. McPhee, M.B., B.S., Thomas R. Sullivan, B.Ma.&Comp.Sc., Peter G. Davis, M.D., Marta Thio, Ph.D., Karen Simmer, Ph.D., Victor S. Rajadurai, M.D., Javeed Travadi, D.M., Mary J. Berry, Ph.D., Helen G. Liley, M.B., Ch.B., Gillian F. Opie, M.B., B.S., Kenneth Tan, Ph.D., Kei Lui, M.D., Scott A. Morris, Ph.D., Jacqueline Stack, M.B., Ch.B., Michael J. Stark, Ph.D., Mei-Chien Chua, M.Med., Pooja A. Jayagobi, M.Med., James Holberton, M.B., B.S., Srinivas Bolisetty, M.D., Ian R. Callander, M.B., B.S., Deborah L. Harris, Ph.D., and Robert A. Gibson, Ph.D.
Docosahexaenoic Acid and Bronchopulmonary Dysplasia in Preterm Infants
The New England Journal of Medicine 2017; 376:1245-1255
(8)
Jokela M, Batty GD, Deary IJ, Gale CR, 
Kivimäki M. Low childhood IQ and early 
adult  mortality:  the  role  of  explanatory 
factors in the 1958 British Birth Cohort. 
Pediatrics 2009; 124(3): e380-e388.
(9)
Firkowska-Mankiewicz  A.  Adult  ca-
reers: does childhood IQ predict later life 
outcome?  J  Policy  Pract  Intellect  Disabil 
2011; 8: 1-9.
(10)
Grosse  SD,  Matte  TD,  Schwartz  J, 
Jackson  RJ.  Economic  gains  resulting 
from the reduction in children’s exposure 
to  lead  in  the  United  States.  Environ 
Health Perspect 2002; 110: 563-9.


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転移性乳がん細胞の骨芽細胞に対する異常な細胞突起と細胞生物学、治療機会

身体の中で癌細胞、微小環境が成長し、
腫瘍組織を形成した時に、
それが一か所に固まって存在すると
外科における切除や
その他、光による治療など
様々な治療戦略を取ることができると考えられます。
しかし、癌細胞が移動して、つまり転移して、
原発腫瘍から離れた組織で散在するようになると
治療が大幅に難しくなると理解しています。
実際に固形がんで亡くなる人のうち
転移性のがんは66.7%、
つまり3人に2人は転移によって
命を落としていることになります(2)*。
従って、
転移の機序を理解する事は
癌治療を大幅に改善させる上で必須項目です。
--
ある任意の場所に成長した癌細胞は
十分な基底形質を持ち組織として形成しています。
例えば、
上皮組織の一部として、常在性の
腫瘍組織が形成されています。
そこから転移するためには
組織常在型の表現型から
移動性の高い表現型へ改変する必要があります。
それが、
「上皮間葉転換」と呼ばれます。
癌細胞が間葉様となると基底の形質の多くを失い、
(但し、一部は残る)、
アスペクト比の大きな点対称性から大きく逸脱した
形状になります(3)。
いわば、細長くなることで、
間質や血管壁などを巧みにすり抜ける形質を獲得し、
循環器を通して、臓器走化性をもって
その特定の臓器の組織に転移します。
しかしながら、
少なくとも乳がんのケースにおいて
癌細胞の集合体の組織が表現型改変を生じ、
転移性を獲得する際には、
上述したような基底様、
つまり、細胞接着性を完全に失うことなく
集合体として移動することがあります(3)。
("Collective migraiton")。
これは癌細胞がEカドヘリンと呼ばれる
接着性の表面リガンドを残していることに関係します(4)。
おそらく、
原発腫瘍などで組織常在型の癌細胞は
このような接着性の表面リガンドの分布に
大きな偏りがないと考えられますが、
転移性を獲得し、アスペクト比が大きく
形状の柔軟性の高い間葉様の癌細胞は
上述したような
カドヘリン、インテグリンのような
吸着性のある表面リガンドや
下述するようなギャップ接合に関わる
表面リガンドを
局在化させているのではないか?
と推定しました。
その局在化している部分は
転移性癌細胞の突起部の頂点ではないか?
それによって、
Aaron M. Muscarella(敬称略)らが
提唱している"migration-by-tethering"(1)、
つまり、細長い突起部が足のように
組織に結合し、その足で歩くように
癌細胞が移動していくイメージです。
従って、例えば、
腫瘍組織の微小環境である
癌関連線維芽細胞(CAFs)が
転移性癌細胞の移動を誘発しています(4)。
この時に、癌関連繊維芽細胞では
その癌細胞の突起部(足)の着地点として
Nカドヘリンが発現されています(4)。
その時に
癌細胞は細胞突起を作りますが、
Aaron M. Muscarella(敬称略)らは
乳がん細胞が骨へ転移する際に
骨芽細胞に対して、
「異常に高いアスペクト比(長い足)」の突起、
言い換えれば、
神経細胞のような
「樹状枝構造(dendritic spine-like structure)」
を作り、乳がん細胞が
骨へ転移するために骨芽細胞に結合する
ことを示しています。
(参考文献(1) Fig.2参照)
では、なぜ、このような事が起こるのか?
血管周囲では基本的に
循環している播種性癌細胞(DTCs)は
機能が眠っている(Dormancy)と言われています(5,6)。
しかし、骨形成ニッチでは
増殖や初期のコロニー形成を促す
とされています(7-9)。
このきっかけとなるのがカドヘリンなどの
接着性の表面リガントです(7)。
おそらく、一般的に
間葉性の癌細胞は基底形質が下がっているので
カドヘリンを集める必要があると考えています。
その時にどこに集まるか?
というとおそらく細胞突起部です。
骨に対しては異常なアスペクト比で
細胞突起が形成する事が
乳がんが骨へ転移しやすいきっかけとなる機序ではないか?
このように考えました。
そうすると
そのような突起を形成するために
細胞膜を動かすのはどういった機序によるのか?
という疑問が萌芽します。
今のところ確かな証拠はありませんが、
1つ関心があるのが、細胞外小胞です。
神経細胞のスパイン形成が一つヒントになると思いますが、
その発展の制御が
エクソソームのような小さな
細胞外小胞によって行われている
という報告もあります(10)。
また、
細胞突起から細胞外小胞の放出が
行われるという証拠についても示されています(11)。
アスペクト比は異なりますが、
骨芽細胞と乳がん細胞の結合の中で
乳がん細胞は非常に長い樹状突起を形成している
一方で、
骨芽細胞も突出しています。
従って、両者の
突起由来の細胞外小胞の交換はあるかもしれません。
その情報交換を元に、
乳がん細胞は特異的な突起を形成している
可能性があります。

//治療に向けた考察//ーー
もし、突起が播種性癌細胞、間葉様癌細胞の
移動性の一つの重要な機序となっているとしたら、
その突起のカドヘリンのような吸着リガンドを
抑制する、アンタゴナイズする薬剤が
転移を抑制する上で重要かもしれません。
その時に一つのアイデアとして
細胞外小胞、合成ナノ粒子、ジェルなど
薬剤を送達できる媒体において、
表面リガンドを
カドヘリンなど吸着性リガンドに対して
抑制性を持つもので装飾し、
それで特異的輸送を実現し、
同時にナノ粒子内に抗癌性のある薬剤を送達させ
癌細胞や周辺の腫瘍組織を死滅、無機能化させます。
それによって並列的な治療を行うことができます。
カドヘリンというのは
一般的に広く分布している
吸着型の表面リガンドなので、
転移性、播種性の癌細胞の突起部に特徴的に見られる
構造がもしあれば、そこに大きな治療機会が与えられます。
しかしながら、
本当に転移性の癌細胞が
突起を足のように移動に使っているかは
その仮説の元、検証が必要です。
一方で、
転移性乳がん細胞においては骨芽細胞に対して
異常な細胞突起を形成していることは
少なくとも示されています(1)。
--
あるいは突起形成を抑えるような薬剤も
対象となります。
そのためには上述した細胞外小胞の機能も含めて
どの様な機序で突起形成が生じているか?
ということを掌握する必要があります。

(参考文献)
(1)
Aaron M. Muscarella, Wei Dai, Patrick G. Mitchell, Weijie Zhang, Hai Wang, Luyu Jia, Fabio Stossi, Michael A. Mancini, Wah Chiu & Xiang H.-F. Zhang
Unique cellular protrusions mediate breast cancer cell migration by tethering to osteogenic cells
npj Breast Cancer volume 6, Article number: 42 (2020) 
(2)
Hanna Dillekås, Michael S. Rogers, and Oddbjørn Straume
Are 90% of deaths from cancer caused by metastases?
Cancer Med. 2019 Sep; 8(12): 5574–5576.
(3)
Cheung, K. J., Gabrielson, E., Werb, Z. & Ewald, A. J. Collective invasion in breast
cancer requires a conserved basal epithelial program. Cell. https://doi.org/
10.1016/j.cell.2013.11.029 (2013).
(4)
Labernadie, A. et al. A mechanically active heterotypic E-cadherin/N-cadherin
adhesion enables fi broblasts to drive cancer cell invasion. Nat. Cell Biol. https://
doi.org/10.1038/ncb3478 (2017).
(5)
Ghajar, C. M. et al. The perivascular niche regulates breast tumour dormancy. Nat.
Cell Biol. https://doi.org/10.1038/ncb2767 (2013).
(6)
Price, T. T. et al. Dormant breast cancer micrometastases reside in speci fi c bone
marrow niches that regulate their transit to and from bone. Sci. Transl. Med. 8,
340ra73 (2016).
(7)
Wang, H. et al. The osteogenic niche promotes early-stage bone colonization of
disseminated breast cancer cells. Cancer Cell. 27, 193 – 210 (2015).
(8)
Wang, H. et al. The osteogenic niche is a calcium reservoir of bone micro-
metastases and confers unexpected therapeutic vulnerability. Cancer Cell 34,
1 – 17 (2018).
(9)
Zheng, H. et al. Therapeutic antibody targeting tumor- and osteoblastic niche-
derived jagged1 sensitizes bone metastasis to chemotherapy. Cancer Cell 32,
731 – 747.e6 (2017).
(10)
Longbo Zhang, Tiffany V. Lin, Qianying Yuan, Remy Sadoul, TuKiet T. Lam and Angélique Bordey
Small Extracellular Vesicles Control Dendritic Spine Development through Regulation of HDAC2 Signaling
Journal of Neuroscience 28 April 2021, 41 (17) 3799-3807;
(11)
Gisela D’Angelo, Graça Raposo, Tamako Nishimura & Shiro Suetsugu
Protrusion-derived vesicles: new subtype of EVs?
Nature Reviews Molecular Cell Biology (2022)

2022年10月27日木曜日 0 コメント

細胞突起の細胞生物学とそれ由来の細胞外小胞、派生的考察

筆者は細胞の運動の様子を
自分で自由な視野、タイミングで
顕微鏡で観たことがないので、
今まで学習により形成された先入観で
判断を誤ることがあります。
例えば、
細胞のミトコンドリアは複雑性を避けるため
1つしか通常は描かれませんが、
実際には多く存在し、
ミトコンドリア同士が融合する
非常に複雑な動性を持っています(13)。
そのような認識は当時は少なくともありませんでした。
それは細胞にも当てはまり、
免疫細胞が異常細胞を攻撃する際には
非常に可動性に富んだ膜変形を起こしている
様子が動画で公開されます。
固定的なイメージで
例えば、薬学などにおいて適用しようとすると
判断を間違える事があると考えられますが、
その可塑的、動的な振る舞いを理解し
逆に利用する視点も生まれます。
Gisela D’Angelo, Graça Raposo, Tamako Nishimura & Shiro Suetsugu
(敬称略)がコメントを示した(1)
細胞突出と細胞外小胞の情報に関しては
筆者の完全な想定外の情報です。
そこには細胞外小胞の複雑性、扱いにくさも
包含されていますが、
派生的な考察で示したように
新たな視点につながるものです。
--
Gisela D’Angelo(敬称略)らが示した
細胞突起由来の細胞外小胞の形成メカニズム(1)において
視覚的な情報に基づく理解の元、文形成を行いました。
従って、付加的な調査を行っています。
また、上述したように
細胞種特異的な薬物送達の実現のため
細胞突起を逆に利用する事ができないか?
その派生的考察を行っています。
その融合的な内容を読者の方と情報共有したいと思います。

細胞の形状は可動性に富み、可塑的であり
突起(protrusions)を形成することがあります。
その際には細胞膜を大きく動かす必要がありますが、
細胞膜の突起は
〇糸状仮足(filopodia)
〇微絨毛(microvilli)
〇繊毛(cillia)
これらのような種類があるとされています。
このような突起部は
細胞外小胞の形成や放出サイトとなることが
多いとされています(2)。
細胞外小胞を放出させる現象は
細胞突起の細胞間コミュニケーションにおいて
付加的な機能を与えると考えられています(1)。
--
突起を形成するためには特に頂点の部分において
曲率を大きく上げる必要があります。
またその形状を力で支持する必要があります。
そのため糸状偽足、微絨毛は
細胞骨格でその形状が支えられています。
形が変わるわけですから
細胞骨格であるアクチン、ミオシンなどを
再組織化させる必要があります。
また曲性を得る細胞膜の脂質材料の再形成があります。
前述したように突起部の高い曲率を得るため
特異的なたんぱく質が働きます。
それが
〇Inverse Bin–Amphiphysin–Rvs (I-BAR) domain–containing proteins
というタンパク質です。
このI-BARファミリーには
IRSp53, IRTKS, MIMがあります。
このI-BARドメインは細胞膜2重層の細胞質側、内側に
集まって結合し、細胞骨格であるアクチンフィラメントを
引き付けます(3)。
それによって突出部が形成されます。
そのI-BARドメインがどれくらいの量集まるかによって
突起の形が変わっていきます。
あまりに多く集まってしまうと
「風船のように」膨らんでしまいます(4)。
その密度を制御する機構があるはずであり、
それが細胞質の細胞質側の膜構造の一部である
フォスフォイノシチド(PI(4,5)P2)です(3)。
このフォスフォイノシチドが
突起を生む場所に集まって、
膜に曲性を与えるI-BARドメインを引き付けます。
これらのタンパク質は
細胞外小胞を分泌させる駆動力になることが
近年わかっています(5,6)。
上述したI-BARドメインであるIRTKSは
微繊毛の切断にも関わっており、
そこから細胞外小胞を放出させる機序に関わっています(1)。
この微絨毛由来の細胞外小胞は
プロミニン(Prominin, CD133)の膜貫通タンパク質に
依存して生合成されます。
このプロミニン1は微繊毛の部分に集まります(7)。
この微繊毛の膜構成の中で
脂質ラフトが膜先端に集まり、
その脂質ラフトに貫通したプロミニン1は
そのまま細胞外小胞として細胞外に放出されます。
その時にはプロミニン1や脂質ラフトは
当然、そのまま放出された小胞に引き継がれる
ことになります(7)。
このプロミニン1は糸状仮足の形成にも
actin-branching factor Arp2/3 complexと
相互作用する事に寄って関わることがあります(8)。
微繊毛や糸状仮足は細胞の表面に
森のように形成されている
グリカン集合体であるグリコカリックスとも
相互作用すると言われています。
これも細胞外小胞の放出に関わっています(2)。
--
細胞外小胞放出のための突起の切断には
3つの機械的な力が関わっているとされています。
-
①The endosomal sorting complex required for transport (ESCRT)
これはATP依存的な様式で突起を切断します。
ウィルス性の突起からウィルスが放出される機序は
ESCRT依存的な様式で生じます。
これは細胞外小胞と類似していると言われています。
-
②アクトミオシン収縮性(actomyosin contractility)
細胞骨格であるアクチン、ミオシン、アクチニンがあり
それらが相互作用することによって
電気的な力で細胞骨格を収縮させます(9)。
がん細胞では、この収縮性に関わる
細胞外小胞の放出は
The small GTPase ADP-ribosylation factor 6。
これによって部分的に制御されていると言われています(2)。
腸細胞の微繊毛からの細胞外小胞の放出は
ミオシンがきっかけとなっていて
突起部にあたる頂端膜に対する直接的な力を生み出します(2)。
-
③外力
周辺の細胞の流れによるせん断応力は
突起から細胞外小胞を放出させることに貢献します。
微繊毛が風でなびくようなイメージです。
その際に力が加わり、それがきっかけとなり
細胞外小胞が放出されると理解しています。
その際には摩擦力がせん断に関わっています。
血中や細胞外マトリックスなどによる
圧力も挙げられていますが(5)、
これらの力による細胞外小胞の放出に関しても
さらなる検証が必要であるとされています。
--
細胞外小胞はエンドソームからの放出や
膜から直接萌芽して放出する場合、
あるいはアポトーシスしたときに放出される場合
などが想定されており、
細胞外小胞の直径などで主に分類されていますが、
このような細胞突起に関わる細胞外小胞の
放出に関しては、
サイズがエクソソームと重複する可能性も
示唆されています(1)。
上述したように、脂質ラフトを多く膜に含んだ
プロミニン1を含む突起由来の細胞外小胞は
エンドソーム由来の細胞外小胞の形質と
大きく異なる可能性があります。
それが分類する際のノイズとなる可能性があります
生成過程においても
①のATP依存的な様式のESCRT駆動による
細胞外小胞の放出過程は
突出部、エンドソーム両方で生じる可能性があり、
サイズだけではなく生成過程の重複も生じます。
エクソソームのバイオマーカーとして
共通的に使われる
テトラスパニンCD9, CD63, CD81は
エンドソームだけではなく
細胞突起部にも含まれることが想定されてます(10)。
実際にテトラスパニンは
細胞膜の曲性と関係している事を示唆する
報告もあります(11)。
従って、Gisela D’Angelo(敬称略)らが指摘するように
曲率を大きく変える必要がある
突起部にはフォスフォイノシチドやI-BARドメインの他に
テトラスパニンが含まれれている可能性もあります。
これらの事を考慮すると
細胞外小胞の術語体系(nomenclature)は
より細分化が必要であると考えられます。

//派生的考察//ーー
このような細胞突起は細胞のコミュニケーションに
関わります。
細胞の周りにはグリコカリックスなどによる
バリアが多少なりともあり、
それが受容体の認識感度、親和性に関わっている
可能性があります。
言い換えれば、
グリコカリックスによって
部分的に低下している可能性もあります。
一方で
細胞突起の場所は突出しているため
特に先端部近くにある膜貫通タンパク質や
表面リガンド、グリカンなどは
外部からの認識性が「受け細胞として」
上がっている可能性があります。
細胞間コミュニケーションに関わる機序である
ということも論点の根拠となっています。
上述した内容では「放出細胞として」
細胞突起について
Gisela D’Angelo(敬称略)らの
最新のコメントを参照し、情報共有しました。
しかし、この派生的考察では
薬学の発展の為に「受け細胞として」の
細胞突起について考えています。
プロミニン1のような突起部、
あるいは細胞膜の「曲率の高い部分」に集まる
膜貫通タンパク質の中で
細胞種特異的な構造、結合部位を見つける事が出来たら
「凸形状」となっているので、
送達の特異性が上がる可能性があります。
例えば、
乳がんでは特徴的な細胞突起となっている
という報告もあります(12)。
細胞突起について
疾患も含めた様々な細胞について調べる事で
上述したような有効な標的結合部位を見出すことができたら
細胞種特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)の
実現性を一段高める知見となる可能性があります。
細胞突起は恒常的ではなく
可塑的で、タイミング、頻度、場所などがあるはずなので
それを適切に掌握する事も大切です。
本当に受容体が形成されている土台の膜の曲性が
その親和性に影響を与えるかどうかは
その仮説の元、検証が必要です。

(参考文献)
(1)
Gisela D’Angelo, Graça Raposo, Tamako Nishimura & Shiro Suetsugu
Protrusion-derived vesicles: new subtype of EVs?
Nature Reviews Molecular Cell Biology (2022)
(2)
van Niel, G. et al. Challenges and directions in studying cell-cell communication by 
extracellular vesicles. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 23, 369–382 (2022).
(3)
Hongxia Zhao, Anette Pykäläinen, Pekka Lappalainen
I-BAR domain proteins: linking actin and plasma membrane dynamics
Current Opinion in Cell Biology Volume 23, Issue 1, February 2011, Pages 14-21
(4)
Christina Chatz, Gary L. Westbrook
Revisiting I-BAR Proteins at Central Synapses
Front. Neural Circuits, 16 December 2021
(5)
Nishimura, T. et al. Filopodium-derived vesicles produced by MIM enhance the migration 
of recipient cells. Dev. Cell 56, 842–859.e8 (2021).
(6)
de Poret, A. et al. Extracellular vesicles containing the I-BAR protein IRSp53 are released 
from the cell plasma membrane in an Arp2/3 dependent manner. Biol. Cell https://doi.
org/10.1111/boc.202100095 (2022).
(7)
Kristina Thamm,Deimantė Šimaitė,Jana Karbanová,Vicente Bermúdez,Doreen Reichert,Anne Morgenstern,Martin Bornhäuser,Wieland B. Huttner,Michaela Wilsch-Bräuninger,Denis Corbeil
Prominin-1 (CD133) modulates the architecture and dynamics of microvilli
Traffic vol.20 issue.1 p.39-60 (2019)
(8)
Thamm, K. et al. Prominin-1 (CD133) modulates the architecture and dynamics of 
microvilli. Traffic  20, 39–60 (2019).
(9)
James Komianos, Garegin A Papoian
Stochastic Ratcheting on a Funneled Energy Landscape Is Necessary for Highly Efficient Contractility of Actomyosin Force Dipoles
May 2017Physical Review X 8(2)
(10)
Rafijul Bari Qiusha Guoa Bing Xia Yanhui H.Zhang Eldon E.Giesert Shoshana Levy Jie J.Zheng Xin A.Zhang
Tetraspanins regulate the protrusive activities of cell membrane
Biochemical and Biophysical Research Communications Volume 415, Issue 4, 2 December 2011, Pages 619-626
(11)
Rie Umeda, Yuhkoh Satouh, Mizuki Takemoto, Yoshiko Nakada-Nakura, Kehong Liu, Takeshi Yokoyama, Mikako Shirouzu, So Iwata, Norimichi Nomura, Ken Sato, Masahito Ikawa, Tomohiro Nishizawa & Osamu Nureki 
Structural insights into tetraspanin CD9 function
Nature Communications volume 11, Article number: 1606 (2020) 
(12)
Aaron M. Muscarella, Wei Dai, Patrick G. Mitchell, Weijie Zhang, Hai Wang, Luyu Jia, Fabio Stossi, Michael A. Mancini, Wah Chiu & Xiang H.-F. Zhang
Unique cellular protrusions mediate breast cancer cell migration by tethering to osteogenic cells
npj Breast Cancer volume 6, Article number: 42 (2020)
(13)
Benedikt Westermann
Mitochondrial fusion and fission in cell life and death
Nature Reviews Molecular Cell Biology volume 11, pages872–884 (2010)


2022年10月26日水曜日 0 コメント

コロナ禍で経験した若者の心の問題をどう捉え、対処するか?

新型コロナウィルスの世界的蔓延が始まって
もうそろそろ3年になります。
1,2年前に比べれば状況は落ち着いてきましたが、
まだ、完全には脱出できていない状況です。
感染症は罹患した事による身体の問題は
もちろんありますが、
感染対策をする事による精神的、心のダメージもあります。
特に心が発達時期にある若い人にとっては
コロナ禍で心を安定させて、幸福に生活する
難しさを感じている人も多いと推察します。
それは、もちろん若者だけに限りません。
アメリカの未成年に対する調査では
新型コロナウィルスのパンデミックの前後で
不安を訴えた人は6.4%から20.5%
うつ症状に関しては4.9%から25.2%
に上昇したとなっています(参考文献(1) Fig.1)
日本でも国立成育医療研究センターによる調査では
2020年11月~12月に実施した調査では
小学生の15%、中学生の24%、高校生の30%に
中程度以上のうつ症状があったとされています。
--
このように心に問題が生じる一つのヒントは
類人猿に見られる「毛づくろい」にあるのではないか?
と考えました。
猿が仲間同士で毛づくろいしている様子を
動物園などで見かけた人も多いと思います。
その理由は毛の細菌やノミを取るのではなく、
不安をやわらげ、リラックスさせるためであると
いわれています。
これは友好関係に関係がないとされています。
このように「体温を感じて触れ合う事」は
全てではないにしろ
多くの人にとって欠かせないことではないか?
という事も考えられます。
特に友人や恋人など自分に近しい、親密な人との
人間関係を非常に重要にし、それを形成する時期に
社会的距離(ソーシャルディスタンス)が必要になったことが
学生さんの心の問題に影響が出た可能性があります。
日本の調査において
小学生よりも高校生に多いという点で
そういった事を考えています。
実際に未成年に関わらず、大人でも
パートナーと毛づくろいを多くする人は
傷からの回復も早く、長く生き、
子供を多く生み、その子供たちの健康状態もいい
とされています(2)。
肩を組みあって、盛り上がって、
何かスポーツやイベントごとに励むという事も重要だし、
時には抱きしめながら涙を流すことも重要です。
涙は「水を表すさんずいに戻る」と書きますが、
悲しい時、辛い時に涙を流す事に寄って
心のうみが洗い流され、リセットする効果がある
と考えられます。
そういった感情的な交換の経験も思春期には
とても大事になると思います。
従って、
上の調査で大学生まで範囲を広げても同じように
心に問題を抱えている人は多くいると思います。
上述した好ましい社会的な結束は
類人猿では幸福ホルモンと呼ばれる
エンドルフィン依存的に強められるといわれています(3-8)。
実際に毛づくろいはエンドルフィンを高める
効果があると言われています(9,10)。
人の場合は上述したように
ハグ(抱きしめる)とか、なでるという行為が
毛づくろいの一つになります(11,12)。
今はソーシャルネットワークなどで
歌ったり、踊ったりすることが流行っていますが、
距離が離れている中において
そのような活動で共有するということは
毛づくろいで得られるような幸福ホルモンが
放出することが期待されると言われています(13-16)。
あとは笑う事、笑顔の共有も挙げられています(17,18)。
エンドルフィンということで言えば、
運動で高まるとも言われています(2)。
--
Shetal I. Shah(敬称略)らも言われていますが(1)
子供や若い人において
アンケートなどの基準でうつ症状と診断されるような
心に問題に抱えている場合において、
適切な医療機関へのアクセスに課題があるという事です。
これはアメリカではそうですが、
日本でもそうかもしれません。
それについての情報は日本では得られませんでしたので
確かな事は言えませんが、
心の問題は風邪などのように体温で数値化される
わけではないのでわかりにくいです。
従って、
そのまま我慢してしまうケースがあるということです。
また、WHOも子供、青年の健康の向上の中で
「親の同意なし」に心のケアのサービスが受けられる
仕組みを整えるべきであると言われています(19)。
若い人の心境を察すると、
「親には知られたくない。」という
学生さんもいると思います。
親に必ずしも知らせる必要がなければ
自発的なアクセスに繋がる可能性があります。
但し、
アメリカにおいては医療従事者の数が足りていない
と言われています。
日本でもそれは当てはまるかもしれません。
コロナ禍で対象となる人が増えたのであれば、
なおさらその傾向は当てはまります。
精神的なケアは
薬物療法なのか、
カウンセリングなのか、
行動療法なのか、
それとも何か良い環境を提供する事なのか?
上述したような情報をわかりやすく提供する事なのか?
いくつもの方向性があると思います。
その人にあった治療、処置をするためには
ある程度、見極めの為の時間がかかるので
その人的資源の限界もあります。
そういったことを総合的に考えると
みんなで助け合って、考えて、乗り切っていく
という考え方のベクトルが生まれます。
コロナ禍が軽くなって、
昨今、明るい兆しが見えてきている中で
学生さんの中でうつ症状を乗り越えて
今は元気に過ごしている人もいると思います。
そうした場合、
自分が苦しかった時の記憶は残っているはずですから
その苦しかった経験を活かして、
今、苦しんでいる人を救済するという活動も
提供する側、受ける側両方にメリットがある
可能性があります。
うつ症状のあった自分の過去を否定的に考える
ケースも多くあると思いますが、
その経験を他の人の救済に生かすことができれば、
その過去は肯定的なものに変わります。
それは若い人だけに限らず、
大人であっても同じだといえます。
辛い経験があっても、残された人生があります。
その人生の中で幸せを得るためには
辛い経験を消すのではなく、
辛い経験を他の人を助ける事で生かす
という考え方が一つ有効です。
それは私にも当てはまりますし、
それぞれのやり方があると思います。
但し、
薬物療法が一番有効な場合があるので
精神科の病院にいって適切な処方を受ける事で
一番、効果的に回復することもあります。
しかし、一方で
どこで、だれがその判断をするか?
という難しい問題もあります。
Shetal I. Shah(敬称略)らは
行動保健士(Behavioral health specialists)との
電話での相談によって病院へのアクセス性を
高めた実績があると紹介されていますが(1)、
日本でも病院へ行くまでの
ワンステップとなる人の存在が
特に若い人にとっては必要ではないかと思います。
いずれにしても調査によれば
高校生の場合は3割が経験していることで
人数が多いので、
十把一絡げにこうするのがよい
というone-size-fits-allの答えはなさそうです。
少なくとも年齢、性別に関わらず
現場を良く知っている人が
解決のための会議、議論、話し合いに
参加する必要があると考えられます。
また、相応の立場にある人が
この調査の数字をどのように受け取るか?
といった見方もあります。

(参考文献)
(1)
Shetal I. Shah On behalf of the Pediatric Public Policy Council
Legislative remedies to mitigate the national emergency in pediatric mental health
Pediatric Research (2022)
(2)
Danilo Bzdok & Robin I. M. Dunbar
Social isolation and the brain in the pandemic era
Nature Human Behaviour volume 6, pages1333–1343 (2022)
(3)
Depue, R. A. & Morrone-Strupinsky, J. V. A neurobehavioral  
model of affiliative bonding: implications for conceptualizing  
a human trait of affiliation. Behav. Brain Sci. 28, 313–350 (2005).  
Discussion 350–395.
(4)
Dunbar, R. I. The social role of touch in humans and primates: 
behavioural function and neurobiological mechanisms. Neurosci. 
Biobehav. Rev. 34, 260–268 (2010).
(5)
Inagaki, T. K., Ray, L. A., Irwin, M. R., Way, B. M. & Eisenberger, N. I. 
Opioids and social bonding: naltrexone reduces feelings of social 
connection. Soc. Cogn. Affect. Neurosci. 11, 728–735 (2016).
(6)
Machin, A. J. & Dunbar, R. I. The brain opioid theory of social 
attachment: a review of the evidence. Behaviour 148,  
985–1025 (2011).
(7)
Nummenmaa, L. et al. Adult attachment style is associated with 
cerebral μ‐opioid receptor availability in humans. Hum. Brain 
Mapp. 36, 3621–3628 (2015).
(8)
Pearce, E., Wlodarski, R., Machin, A. & Dunbar, R. I. The influence 
of genetic variation on social disposition, romantic relationships 
and social networks: a replication study. Adapt. Hum. Behav. 
Physiol. 4, 400–422 (2018).
(9)
Fabre-Nys, C., Meller, R. E. & Keverne, E. B. Opiate antagonists 
stimulate affiliative behaviour in monkeys. Pharmacol. Biochem. 
Behav. 16, 653–659 (1982).
(10)
Keverne, E. B., Martensz, N. D. & Tuite, B. Beta-endorphin 
concentrations in cerebrospinal fluid of monkeys are influenced 
by grooming relationships. Psychoneuroendocrinology 14,  
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(11)
Suvilehto, J. T., Glerean, E., Dunbar, R. I., Hari, R. & Nummenmaa, 
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bonds between humans. Proc. Natl Acad. Sci. USA 112,  
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(12)
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(13)
Pearce, E., Launay, J. & Dunbar, R. I. The ice-breaker effect: singing 
mediates fast social bonding. R. Soc. Open Sci. 2, 150221 (2015).
(14)
Pearce, E., Launay, J., MacCarron, P. & Dunbar, R. I. Tuning in to 
others: exploring relational and collective bonding in singing and 
non-singing groups over time. Psychol. Music 45, 496–512 (2017).
(15)
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Singing and social bonding: changes in connectivity and pain 
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152–158 (2016).
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(19)
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小児がんの薬剤開発の概要

小児がんの治療の為の薬剤開発においては
大人の癌よりも遺伝子変異が一般的に
少ないと言われていますが(1)、
その遺伝子を標的とする薬剤が
存在しない場合があると言われています。
薬剤開発が難しい理由は、
小児がんは複数の遺伝子変異によって
生まれたタンパク質が融合して
1つの構造体となっていることです。
これは腫瘍形成の駆動要因となりますが、
一方で、薬剤が作用できる
酵素のポケットが欠けているため、
分子標的薬剤の開発を難しくしています。
--
このような「Undruggable」な
融合タンパク質に対しては
タンパク質そのものを分解することで
そのたんぱく質の機能を消失させよう
という薬剤開発指針があります。
これは、細胞が元々もつ
タンパク質分解の機構をまねる、
あるいは乗っ取ることで
狙いのタンパク質を分解させます。
このような戦略で開発された
タンパク質分解薬剤は
急性前骨髄球性白血病(APL)や
多発性骨髄腫などで適用されています(1)。
--
もう一つの戦略としては
原因となる遺伝子をノックアウト、ノックダウン
することで
異常な癌関連タンパク質の生成そのものを
抑えるというものです。
このために
CRISPR-Cas9や
short hairpin RNA screensが
使われます。

//考察//ーー
薬理作用させる物質の標的が特異的であり、
さらに薬剤の作用機序が特異的であれば、
オフターゲットが生じにくいために
許容できる副作用で薬効を期待することができます。
上述したような
タンパク質分解の薬剤の分解機序が
広く一般的なものであれば、
他の細胞のタンパク質のバランスを崩してしまう
原因となってしまいます。
特に標的化せず、遊離した状態で
薬剤を送達させる場合には
利用するタンパク質分解経路が
どれくらい一般性があり、
逆にいえば
どれくらい特異性があるかという検証は必要です。
遺伝子改変技術を含めて
一般的に有利に作用すると考えられる事は、
患児の病変部位にどうやって
特異的に薬剤を送達させるか?ということです。
これがある程度、一般的に確立すれば、
タンパク質分解の薬剤や
CRISPR-Cas9などの遺伝子改変技術を
組み込む際の障壁が大きく下がることになります。
利用できるタンパク質分解の経路の
選択肢が広がることにもつながる可能性があります。
もう一つの可能性である
遺伝子改変技術の適用の一つの壁になっているのは
小児がんに限らず、
特定の遺伝子改変させたい細胞(その中の細胞核)に
どのように特異的に遺伝子改変物質を送達させるか?
という難しさであると理解しています。
小児がんは冒頭でも触れた様に
大人よりも少ない遺伝子変異で異常が
生じている事が多いため、
その遺伝子変異に合わせた治療を行うことの
メリットは大きい可能性があります。
細胞種特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)は
細胞種への特異的送達を
現在提案されている様々な輸送媒体において
表面リガンドの構造を任意に選択する事で
実現させようというものです。
仮に実現されたときには
小児がんのお子さんへの負担が
顕著に小さくなる可能性もあります。
Steven G. DuBois(敬称略)らが総括(1)の中で
紹介したタンパク質分解薬剤や
遺伝子改変技術は
小児がんの治療に有望であり
細胞種特異的輸送系統は
その潜在性を高めるものであると考えられます。

(参考文献)
(1)
Steven G. DuBois, Laura B. Corson, Kimberly Stegmaier, Katherine A. Janeway
Ushering in the next generation of precision trials for pediatric cancer
Science 363 , 1175 – 1181 (2019)


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マウスのグリコームアトラスとその応用

細胞の表面の構造は非常に複雑です。
Ton J. Rabelink(敬称略)らが示すように(2)
膜表面に「海藻」のような枝状の構造が形成され
それが横方向にもつながる事によって
「森のような」構造体を形成しています。
この構造はオリゴ糖からなり、
グリカンと呼ばれ、
森のような全体的な構造をグリコカリックス
と呼びます(1,2)。
従って、
少なくとも細胞の表面の様々な受容体、リガンドは
全て暴露された状態ではなく、
少なくとも一部はグリカンに覆われた形になっている
と想定できます。
細胞表面の構造体は細胞外からの外的因子と関連します。
従って、グ
リカンが結合した糖たんぱく質は
細胞接着、受容体仲介信号、免疫認識
病原体細胞感染など細胞外因子との相互作用に
密接に関わります(3)。
特にグリカンの集合体であるグリカリックスは
レクチンと相互作用(結合)する事が知られています。
このレクチンは免疫細胞に多く発現されています。
免疫細胞はグリコカリックスの型によって
特異性を持ち、その密度(豊富さ)と
それぞれの型に対するレクチン受容体の
結合親和性によって識別強度を変化させます。
言い換えれば、
ある閾値を超えると免疫細胞はその他の細胞と
相互作用するようになります(4-6)。
このようなグリコカリックスのパターン特異性は
細胞から放出されるエクソソームでも確認されています。
特に癌のケースでは臓器走化性に
関連すると想定されています(7)。
--
Michiru Otaki(敬称略)らは
今まで遺伝子的テンプレートや構造の複雑性から
N-グリカンのN-グリコミックの地図帳を作成する事は
難しいとされていましたが、
Solid‑phase glycoblotting platformという方法で
早く、簡単に、高いスループットで
それを実現する事を可能にしました(1)。
16個体のマウスにおいて
身体全身の臓器、血液、血液由来のエクソソームにおいて
どのタイプのN-グリカンが多いかについて
包括的に調べています(1)。
104種類のグリカンを確認し、
それぞれの臓器、血液、エクソソームで
どのタイプがどれくらいの量で含まれているか
マッピングしています(Ref.(1) Figure.4)。
特定の部位にしか見られないグリカンや
共通性の高いグリカンがあります。
1つの部位に一種類のグリカンが
1対1で対応しているわけではなく、
他の部位と重複するし、
1つの部位に複数のグリカンがあります。
しかし、
全体的な割合が高次元で構成されているので
このデータを使って機械学習で特定する場合には
信頼性が高いものになっています(74.5-83.8%)。
今回は健康なマウスによって調べられましたが、
機械学習なども合わせて評価すれば
病気の診断にも使える可能性があります。
あるいは治療の為の標的として
使える可能性も想定されています。

//考察//ーー
治療の為の標的として考える場合には
このようなグリコフォームが少なくとも全体で見れば
細胞種特異的であることを想定します。
しかしながら、
豊富に含まれていて、かつ
細胞種特異的な(その細胞種にしかない)グリカンが
存在する事はMichiru Otaki(敬称略)らの結果からは
大きな期待はできません。
標的性を考える前段階として
手順としては難しいかもしれないですが、
グリカンがどのようにレクチンなどの
受容体と結合しているか?
どういった部分を結合部位として認識しているか?
そのデータをある程度の規模で見たいというのがあります。
そうした結果が、
治療のための標的の戦略、指針につながる
可能性があると考えられます。
最先端のグリカンが必ずしも暴露していない事や
様々な向きでそれが形成されていることが
森のような構造体であるグリコカリックスで
想定されるからです。
従って、結合の様子を
ある程度の規模で統計的に知りたいというのがあります。
一方で
グリカンに結合性を示すレクチンは
免疫細胞に多く発現されているという報告がありますが、
免疫細胞由来の細胞外小胞はどうか?
という視点があります。
もし、免疫細胞由来の細胞外小胞にも
同様にレクチンが発現されていれば、
グリカン依存的な標的治療が
細胞外小胞を送達媒体としてできる可能性があります。
また、
病気のバイオマーカーとしてグリコフォームを
利用する事は標的治療にも応用することができます。
例えば、
癌由来の特異的なグリコフォームを調べて
健康状態との偏差から、特異性を見出します。
それは診断のためのバイオマーカーにもなりますが、
標的治療の為の大切な情報になります。
従って、
バイオマーカーへの可能性を見出すことは
同時に標的治療のそれを追究する事にもつながります。

(参考文献)
(1)
Michiru Otaki, Nozomi Hirane, Yayoi Natsume-Kitatani, Mari Nogami Itoh, Masanori Shindo, Yoichi Kurebayashi & Shin-Ichiro Nishimura 
Mouse tissue glycome atlas 2022 highlights inter-organ variation in major N-glycan profiles
Scientific Reports volume 12, Article number: 17804 (2022) 
(2)
Ton J. Rabelink & Dick de Zeeuw
The glycocalyx—linking albuminuria with renal and cardiovascular disease
Nature Reviews Nephrology volume 11, pages667–676 (2015)
(3)
Varki, A. Biological roles of glycans. Glycobiology 27, 3–49 (2017).
(4)
Garcia-Vallejo, J. J. & van Kooyk, Y. The physiological role of DC-SIGN: A tale of mice and men. Trends Immunol. 34, 482–486 
(2013).
(5)
Davies, L. C., Jenkins, S. J., Allen, J. E. & Taylor, P. R. Tissue-resident macrophages. Nat. Immunol. 14, 986–995 (2013).
(6)
Macauley, M. S., Crocker, P. R. & Paulson, J. C. Siglec-mediated regulation of immune cell function in disease. Nat. Rev. Immunol. 
14, 653–666 (2014).
(7)
Koide, R. et al. Antiadhesive nanosome elicits role of glycocalyx of tumor cell-derived exosomes in the organotropic cancer 
metastasis. Biomaterials 280, 121314 (2022).

2022年10月25日火曜日 0 コメント

小児がんの精密臨床試験の概要

小児がんは大人の癌に比べて、
全てではないものの
大人の癌では見られない希少な遺伝子変異が
見られることがあります。
このような遺伝子変異に合わせて
治療を行う事を「Precision oncology」と呼びます。
2つの報告により
小児がんの共通性の高い遺伝子的な特徴の
包括的なマップが示されています(2,3)。
例えば、
共通的に見られ、悪性度の高い
治療の難しい変異を持つ癌については
Steven G. DuBois(敬称略)らがTable.1に示しています(1)。
遺伝子変異によって生じた
細胞の異常に関わるたんぱく質の抑える
働きを持つ分子標的薬が開発されています。
しかし、少なくとも一部の遺伝子変異に関わる
タンパク質の抑制薬剤は存在していません。
遺伝子変異の中には
一部、大人のがんと共通のものがあり
臨床的な証拠があるものがありますが、
全体の5%から10%程度であるとされています。
大人のがんと小児がんとの違いを考えると
既に実績のある抗がん剤が
小児がんに大人と同様に適しているかという
疑問があり、整合しなければ、
身体に多くのダメージを与える可能性もあるので
小児がんの特徴にあった
「Precision clinical trial」が必要である
と考えられます。
小児がんは異種性があるうえに
高齢になって罹患する癌に比べて、
人数も集める事が難しいため、
臨床試験を効果的に行うためには
いくつかの工夫が必要です。
Steven G. DuBois(敬称略)らはBox.1に
小児がんの臨床試験に適用できる
いくつかのプログラムデザインを整理されています。
その一部を紹介します。
-----
〇3+3 design
3人のコホートに参加する
フェーズⅠ臨床試験のための
共通のルールベースデザインと
次の3人の薬剤用量の増減は
初めに参加した患者さんで観測された
毒性に基づいて決定される。
-
〇Basket trials
多くの癌タイプを持つ患者さんに対して
バイオマーカーを調べます。
そのバイオマーカーに合わせた
分子標的治療をサブプロトコルに分けて
試験を実施します。
-
〇Bayesian model-based trial designs
逐次出てくるデータに基づいて
臨床試験因子を改変していきます。
-
〇Continual reassessment method:
薬剤用量と許容できない毒性の確立の
数学モデルを逐次組み込みながら、
次の患者さんに対して
毒性が一定以下に下がるような
用量を定めていく治験プログラム。
-
〇Novel-plus-novel combinations:
2つの新規薬剤の組み合わせを
従来の薬剤と1つの新規薬剤と比較する。
-
〇Pediatric Research Equity Act:
大人のために開発された薬剤の
小児用薬剤の開発を委任するために
FDAに根源を与える法整備。
-
〇Sefety run-in
治験を大人数の患者さんにオープンにする
前に毒性を評価するために
小さなグループで
以前に治療したことない療法で治療する。
それをフェーズ2、3の初期要素として
組み込む。
-
〇Umbrella trial
〇特定の癌種
〇バイオマーカー検査
〇バイオマーカーにあった分子療法
これらを合わせ、患者さんを
細かく分類する(Subprotocol)。
--
これらをまとめて考えると
小児がんの治験は精密な合わせ込みが必要なので
サブプロトコルが必要であるということです。
例えば、
臨床に参加する人数が100人だとしても
その100人が10グループに分類されるとすると
平均10人の結果で判断していくことになります。
フェーズⅠ、Ⅱでは
薬剤の効果を確認する事に加えて
重要視されるのは毒性の評価です。
許容できない副作用を評価して、
それが合格した上で効果がでるかどうかを
判断する事になると思います。
また、治験のプログラム進行を固定的
計画通りにするのではなく、
状況に応じて、プログラムを柔軟に改善していく
ということが盛り込まれるデザインもあります。
それはベイズモデルです。
遺伝子的な変異は1つではないケースが
多いと考えられるので、
分子標的薬剤を2つ組み合わせる治験も考えます。
その時には
分子標的薬剤1種類と従来の薬剤と
分子標的薬剤2種類とを比較するプログラムも
上述したように考えられます。

//提案//ーー
このような治験が可能かどうかはわかりませんが、
上記にない視点として、
再発限定の治験プログラムというのは考えられるかもしれません。
治療履歴と遺伝子検査の中で、
2段構えの治験によって
より確実な治療を目指すという考え方です。
小児がんの一部の患児は
再発する難治性であると言われています。
初発だけではなく、
再発に対する治験も考慮の範囲に入るか?
という視点があります。

(参考文献)
(1)
Steven G. DuBois, Laura B. Corson, Kimberly Stegmaier, Katherine A. Janeway
Ushering in the next generation of precision trials for pediatric cancer
Science 363 , 1175 – 1181 (2019)
(2)
Susanne N. Gröbner, Barbara C. Worst, Joachim Weischenfeldt, Ivo Buchhalter, Kortine Kleinheinz, Vasilisa A. Rudneva, Pascal D. Johann, Gnana Prakash Balasubramanian, Maia Segura-Wang, Sebastian Brabetz, Sebastian Bender, Barbara Hutter, Dominik Sturm, Elke Pfaff, Daniel Hübschmann, Gideon Zipprich, Michael Heinold, Jürgen Eils, Christian Lawerenz, Serap Erkek, Sander Lambo, Sebastian Waszak, Claudia Blattmann, Arndt Borkhardt, Michaela Kuhlen, Angelika Eggert, Simone Fulda, Manfred Gessler, Jenny Wegert, Roland Kappler, Daniel Baumhoer, Stefan Burdach, Renate Kirschner-Schwabe, Udo Kontny, Andreas E. Kulozik, Dietmar Lohmann, Simone Hettmer, Cornelia Eckert, Stefan Bielack, Michaela Nathrath, Charlotte Niemeyer, Günther H. Richter, Johannes Schulte, Reiner Siebert, Frank Westermann, Jan J. Molenaar, Gilles Vassal, Hendrik Witt, ICGC PedBrain-Seq Project, ICGC MMML-Seq Project, Birgit Burkhardt, Christian P. Kratz, Olaf Witt, Cornelis M. van Tilburg, Christof M. Kramm, Gudrun Fleischhack, Uta Dirksen, Stefan Rutkowski, Michael Frühwald, Katja von Hoff, Stephan Wolf, Thomas Klingebiel, Ewa Koscielniak, Pablo Landgraf, Jan Koster, Adam C. Resnick, Jinghui Zhang, Yanling Liu, Xin Zhou, Angela J. Waanders, Danny A. Zwijnenburg, Pichai Raman, Benedikt Brors, Ursula D. Weber, Paul A. Northcott, Kristian W. Pajtler, Marcel Kool, Rosario M. Piro, Jan O. Korbel, Matthias Schlesner, Roland Eils, David T. W. Jones, Peter Lichter, Lukas Chavez, Marc Zapatka & Stefan M. Pfister 
The landscape of genomic alterations across childhood cancers
Nature volume 555, pages321–327 (2018)
(3)
Xiaotu Ma, Yu Liu, Yanling Liu, Ludmil B. Alexandrov, Michael N. Edmonson, Charles Gawad, Xin Zhou, Yongjin Li, Michael C. Rusch, John Easton, Robert Huether, Veronica Gonzalez-Pena, Mark R. Wilkinson, Leandro C. Hermida, Sean Davis, Edgar Sioson, Stanley Pounds, Xueyuan Cao, Rhonda E. Ries, Zhaoming Wang, Xiang Chen, Li Dong, Sharon J. Diskin, Malcolm A. Smith, Jaime M. Guidry Auvil, Paul S. Meltzer, Ching C. Lau, Elizabeth J. Perlman, John M. Maris, Soheil Meshinchi, Stephen P. Hunger, Daniela S. Gerhard & Jinghui Zhang
Pan-cancer genome and transcriptome analyses of 1,699 paediatric leukaemias and solid tumours
Nature volume 555, pages371–376 (2018)

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小児がんサバイバーとPTSDのコホート分析とサバイバーシップ

新型コロナウィルスの後遺症で顕在化したように
特定の疾患に罹って、状態が落ち着き、
急性期を抜けて、退院が可能になったとしても
症状が完全には抜けなくて
定期的に診察を含めた治療を受ける必要がある場合があります。
重い疾患の場合には、
現在の医療では完治が難しく、
若い頃に罹患したのであれば、
その後、何十年もその病気と付き合っていく必要があります。
そのような急性期を抜けて、
慢性期の患者さんの治療、生活を含めて
サポートしていこうというのが
「サバイバーシップ」です。
このサバイバーシップは
がんに罹患した人に対しては
他の疾患に比べて進んでいると理解しています。
その中でがんサバイバーシップの指針は
--
がんの診断を受けた人々がその後の生活で抱える
身体的、心理的、社会的な課題を
「社会全体が協力して」乗り越えていく
という概念です。
言い換えれば、課題が
身体的、心理的、社会的な側面があるため
様々な方面からサポートしていく必要がある
ということです。
--
身体的というのは
罹患時、治療したい際に負ったダメージを管理していく
ことが一つだと考えられます。
社会的というのは
同じように病を持つ人との交流であったり、
小児がんであれば、
治療薬の普及を推進している団体との
交流もあるかもしれません。
このような積極的な活動は
心理的にも良い意味で波及する可能性があります。
そのような人との関係性だけではなく、
就労を通じた収入、経済的な面もあります。
他の障がいも含めて
包摂的、インクルーシブな社会形成もあります。
誰しも、その病気になりたくてなったわけではないですから、
社会の中で生かせる個性というのを
様々な支援者と共に探していくという事は
経済的な面でも大切になると思います。
-----
この新型コロナウィルスのデルタ株の流行時に
軽傷ですが、罹患してしまった
高校生の日本女性がいました。
その女性はバレーボールをしていましたが、
症状が完全に抜けず、重い後遺症に罹ってしまいました。
結局、上手で才能のあるバレーボールを諦めて
家でも授業が受けられる通信制の高校に通うことになりました。
その時にお世話になった神奈川県川崎市の大学病院の
後遺症外来の先生だけではなく、終わった後、
看護師さんがいつも話をしながらケアしてくれました。
手紙をもらう事もあったそうです。
その女性は良かったことに1年で後遺症が
ほとんどなくなり、また日常生活を取り戻しました。
その時に親切にしてもらったこともあり
人の話を聞くような
医療カウンセラーの仕事に就きたいと思ったそうです。
このような事は他の人でもあると思います。
つまり、病気に罹ったからこそわかる感覚です。
小児がんに罹患してしまったら、
あるいは
若いうちに精神疾患に罹ってしまったら、
逆に同じような病気に罹った人に対して
相談があった時の対応は実感があるだけに
変わったものになると思います。
その様な事があるので、
運悪く病気に罹っても、
社会で活躍できる場はあると思います。
-----
また、そのように社会の中に
自分の居場所があることで心理的な充実も
生まれてくると思います。
上述した心理的というのは
身体的、社会的の一つの土台となるものです。
実際に小児がんの治療が終わった後の
0.5年から9.5年の追跡調査で
おおよそ68%の人が積極的なライフスタイルの
改善を行っているといわれています(2)。
この中には
サプリメントや食事の改変、
(適度な)運動なども含まれます。
このような食と運動の好ましい介入は
その人の身体を強くするものですが、
心理的に健康でないと継続的な実施が難しいものです。
従って、
新型コロナウィルスの後遺症外来で
継続的に行われている様に
患者さんの心理的なサポートを行っていく事が
後遺症のある疾患に罹患してしまった場合においては
必要になると考えられます。
医療、薬学が発展して、
様々な疾患が今よりも治せるようになったら
同時に後遺症のケアについても考える必要性が
今までよりも多く出てくると思います。
--
小児がんのサバイバーは
診断から治療まで大きなストレスに直面することになります。
〇治療に対する嫌悪感
〇痛みを伴う治療((抗がん剤の副作用など)
〇不確かな予後
〇助かるかどうかの不安
〇見た目の変化
これらなどが挙げられています(3,4)。
小児は体と心の成長期であるため
その時期にがんに罹患すると
急性期、慢性期にかかる長期的なストレス
による心理的な影響や
身体や心(感情)の発達にも影響を与える可能性があります(5)。
実際に癌ではない兄弟に比べて、
心的外傷後ストレス障がい(PTSD)に発展するリスクが
高まり、治療後の数年間で20%になる
という統計もあります(6,7)。
それは物理的な治療も関係しています。
4歳以下の若い時期に放射線治療を受けると
治療に関連するPTSDのリスクが
高まるという報告もあります(8)。
--
Donghao Lu(敬称略)ら医療研究グループは
PDSDに関する臨床的な特徴の一覧を示しています(1)。
その他の研究では
小児がん治療後において
女性、未婚、社会経済的地位が低い事が
PTSDに罹りやすい要因となっているとされています(8,9)。
一方で
Donghao Lu(敬称略)らは
1970年から1999年の間に
アメリカとカナダ、31か所で行われた
Childhood Cancer Survivor Study (CCSS)で
3984人の小児がんサバイバーに対しての
PTSDのコホート分析(10)と
1962年から2012年の間に
St.Jude Children's Research Hospitalで行われた
St. Jude Lifetime Cohort Study (SJLIFE)での
1467人の小児がんサバイバーに対しての
PTSDのコホート分析(11)を
それぞれ紹介しています(1)。
(インタビューは30歳±8歳程度)
それらを俯瞰的に評価すると
確かに今までの傾向通り女性がやや高い
割合となっています(17.9 vs 15.7 / 12.4 vs 9.8%)。
他の癌のタイプ、化学療法、放射線療法に関しては
両者のコホート分析の結果が一致せず、
結論付けるのが難しい結果となっています。
それよりも
教育(中高卒、大学、大学院)になるにつれて
PTSDに罹患している割合が減っています。
これは両コホート共に一致した傾向になっています。
就業しているかどうかも重要です。
それと関係しますが、年収も関連します。
年間2万ドルを下回ると
平均よりもPTSDの割合が増えます。
最も注目に値すると考えられるのが
結婚の関係です。
単身か結婚かというのは
両コホートで異なる結果になっていますが、
パートナーと死別、離婚、別居の人は
単身、結婚よりもPTSDの割合が高くなっています。
運動も関係があります。
活発に身体活動している方が
PTSDの割合が少なくなっています。
--
この結果から考察してみます。
PTSDは
死の危険に直面した後、
その体験の記憶が自分の意志とは関係なく
フラッシュバックのように思い出されたり、
悪夢に見たりすることが続き、
不安や緊張が高まったり、辛さのあまり
現実感がなくなったりする状態といわれています。
このPTSDの発症がいつからかに依りますが、
おそらく小児がんの治療後、
PTSDに罹患してしまうと、
学業、就業、運動において
少なくとも多少の障がいはあると思います。
そうした中で、
割合として傾向が現れていると考えることもできます。
より重要なのは
結婚相手と死別、離婚、別居した場合で
顕著に高くなっていることです。
PTSDに罹った状態とPTSDに事象の後生じた
場合では大きくとらえ方が変わるのですが、
もし、死別、離婚、別居などの後
PTSDに罹っているケースがあるとするならば、
最愛であったり、身近で心の支えになってくれた人を
失った事が発症や病気を悪化させている
原因になっている可能性があります。
あるいは、病気の理解が十分ではなく、
上手く関係を築けなかったことも関係しているかもしれません。
この点に関しては
結婚前後でどうだったのか?
事象が発生した後、PTSDの重症度は変わっているのか?
そうしたデータを見る事で
よりこの問題が明らかになると思います。
--
一方、
Donghao Lu(敬称略)らは
ゲノムワイド関連解析(GWAS)で
小児がんサバイバーの中でPTSDに関連が深い
2つ遺伝子を抽出しています。
それについて簡潔に触れます。
-
Locus ECHS1 rs34713356 ECHS OR 1.57 P=1.36e-8
この遺伝子は
ミトコンドリア脂肪酸β酸化に関与し、
多くの代謝経路に関わります。
この遺伝子が乱されることで
精神運動性に関わるリー脳症や
他の精神疾患とリンクすると言われています(12-14)。
このようなミトコンドリアの不全は
異常な恐怖学習や脳の結合の活性化
ステロイド産生、炎症に関わるかもしれません(15)。
-
Locus 6q24.3-q25.1 rs9390543 SASH1 OR 0.75 P=3.56e-6
これはPTSDと向炎症性状態と免疫不均衡に
関わっている可能性があります(16)。

このような関連遺伝子の統計的な分析は
小児がんサバイバーのPTSDの治療、予防に
つながるかもしれません。

//考察//ーー
小児がんの治療において、
治療の痛みであったり、
症例が十分でない事による不確定性であったり、
治療、もしくは治療後に生じうる見た目の変化であったり
様々な課題があります。
小児がんは遺伝子的に異種性があり(16)、
それに合わせた個別の治療において
カバーできるかどうかの課題はありますが
分子標的の薬剤に加えて
標的化技術が向上してくれば、
1つフェーズが変わってくると考えられます。
細胞外小胞、合成ナノ粒子、ウィルスベクター、
ジェル、細胞などの輸送媒体で
脳を含めた人への送達が安全かつ特異的に
できるようになると
治療戦略の幅も変わってくると考えられます。
標的化と病態に合わせた薬剤の両輪が
回るようになると、
患児(お子さん)の身体の負担も変わってくると思います。
その中で、治療中、治療後に生じる
心的外傷後ストレス障がい(PTSD)などを含めた
様々な心の病(精神疾患)、
身体的な健康状態、社会的な能力も
改善、向上する可能性があります。

(参考文献)
(1)
Donghao Lu, Yadav Sapkota, Unnur A. Valdimarsdóttir, Karestan C. Koenen, Nan Li, Wendy M. Leisenring, Todd Gibson, Carmen L. Wilson, Leslie L. Robison, Melissa M. Hudson, Gregory T. Armstrong, Kevin R. Krull, Yutaka Yasui, Smita Bhatia & Christopher J. Recklitis 
Genome-wide association study of posttraumatic stress disorder among childhood cancer survivors: results from the Childhood Cancer Survivor Study and the St. Jude Lifetime Cohort
Translational Psychiatry volume 12, Article number: 342 (2022) 
(2)
J Karlik, Y Bao, B Cheng, S Lees, D Ndao, E Ladas & K Kelly 
P04.40. Lifestyle therapy use in pediatric cancer survivors
BMC Complementary and Alternative Medicine volume 12, Article number: P310 (2012)
(3)
Jo Bush NG, Linda M. Psychosocial nursing care along the cancer continuum. 3rd
ed. Pittsburgh, PA: Oncology Nursing Society; 2018.
(4)
Stark DP, House A. Anxiety in cancer patients. Br J Cancer. 2000;83:1261 – 7.
(5)
Brinkman TM, Recklitis CJ, Michel G, Grootenhuis MA, Klosky JL. Psychological
symptoms, social outcomes, socioeconomic attainment, and health behaviors
among survivors of childhood cancer: current state of the literature. J Clin Oncol.
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(6)
Michel G, François C, Harju E, Dehler S, Roser K. The long-term impact of cancer:
evaluating psychological distress in adolescent and young adult cancer survivors
in Switzerland. Psychooncology. 2019;28:577 – 85.
(7)
Zeltzer LK, Recklitis C, Buchbinder D, Zebrack B, Casillas J, Tsao JC, et al. Psy-
chological status in childhood cancer survivors: a report from the Childhood
Cancer Survivor Study. J Clin Oncol. 2009;27:2396 – 404.
(8)
Stuber ML, Meeske KA, Krull KR, Leisenring W, Stratton K, Kazak AE, et al. Pre-
valence and predictors of posttraumatic stress disorder in adult survivors of
childhood cancer. Pediatrics. 2010;125:e1124 – 34.
(9)
Allen J, Willard VW, Klosky JL, Li C, Srivastava DK, Robison LL, et al. Posttraumatic
stress-related psychological functioning in adult survivors of childhood cancer. J
Cancer Surviv. 2018;12:216 – 23.
(10)
Robison LL, Armstrong GT, Boice JD, Chow EJ, Davies SM, Donaldson SS, et al. The
Childhood Cancer Survivor Study: a National Cancer Institute-supported resource
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(11)
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Science. 2019 Mar 15; 363(6432): 1170–1175.

2022年10月16日日曜日 0 コメント

胎児性アルコール・スペクトラム障害に対する幹細胞療法と細胞外小胞による治療の可能性

妊娠中の母親の飲酒は
お腹の中の赤ちゃん(胎児)、
生まれた後のお子さん(乳児)に対して
悪影響を及ぼす可能性があり、避けるべきである
と言われています。
例えば、
低体重、顔の形態異常、脳障害などを
引き起こす可能性があります。
これは
胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)
と言われています。
現在、治療法はなく、唯一の対策は予防である
とされています(2)。
従って、
妊娠中はパートナーの理解も必要になると思います。
中枢神経系に異常があると
行動、認知、精神(心)、社会(人との関係)、
これらにおいて問題が生じる可能性があります(3,4)。
このような機能に関わる部分は
大脳皮質、海馬、扁桃体などが挙げられます。
その神経系で神経伝達物質の興奮と抑制を統制する
GABA性の機能が低減し、
神経伝達物質の制御が上手く働かなくなります。
これは、統合失調症、自閉症とも重なります(5-7)。
--
実際にT Shirasaka(敬称略)らの研究において
マウスのケースで
妊娠マウスをエタノール暴露させ、
脳の機能を見てみると、
上述した大脳皮質、海馬、扁桃体の領域で
予想通りGABA性神経細胞と
後シナプス肥厚(postsynaptic density)が
減少している事が示されました。
それに伴い
記憶、社会性、認知性などの機能が低下している事が
確認されています(1)。
--
上述したように根本的な治療法はありませんが、
将来の治療法の選択の一つとして
幹細胞療法(Stem cell therapy)があります。
この幹細胞療法は動物モデルで
パーキンソン、ハンチントン、アルツハイマーなどに
おいても研究されています。
その期待される作用機序は
細胞の交換と細胞の復元です。
実際にT Shirasaka(敬称略)らの研究において
FASDでマウスが出産された後、
脳の組織が成熟した時点から(at 45 days)
神経系の幹細胞を静脈注射によって注入する事で
治療しなかった群と比べて、
GABA性神経細胞と後シナプス肥厚の
減少症が抑えられ、
それに伴い記憶、社会性、認知性などの機能が
少なくとも一部回復したことが示されました(1)。
--
このような幹細胞療法は細胞療法の一つですが、
それに類似する治療法として
細胞外小胞を利用した細胞フリー療法があります。
幹細胞療法は組織を修復、回復したり、再生したりする
上で有望な治療法ですが、
癌化の恐れ、拒絶反応(高い免疫原性)などの懸念があります。
脳への局所注入の場合は出血の懸念もあります(8)。
一方、
細胞外小胞を用いた療法では
幹細胞療法よりも免疫原性や癌化が生じにくい
可能性があります。
なぜなら、機能が限定されるからです。
細胞自身はミトコンドリアを持ち
代謝機能を持つのでそれ自体が増殖機能を持ちますが、
細胞外小胞はそれがありません。
従って、
miRNAなどの内容物によって
癌化する可能性はありますが、
原理的には
細胞外小胞自身による癌化は
増殖能を持つ細胞に比べて
生じにくいのではないかと推定しています。
一方で、
幹細胞が持つ細胞の交換や復元の機能の一部は
失われてしまうかもしれません。
しかし、
神経系を含む間葉系幹細胞由来のエクソソームは
創傷治癒や組織再生の能力を持つという
研究もあります(9-12)。
従って、
組織再生能力を持つ可能性があるので、
FASDに対する幹細胞治療を
細胞フリーな
幹細胞由来の細胞外小胞による治療に
置き換えられる可能性があります。
間葉系幹細胞は
〇骨髄
〇神経
〇母乳
〇皮膚
〇羊水
〇臍帯血
〇胎盤組織
〇脂肪組織
〇歯髄
〇子宮内膜
〇滑膜
〇心臓幹細胞
これらから取得することができます。
(参考文献(9) Figure 2より)
またiPS細胞技術も幹細胞を得るために
利用することができます。
従って、
これらの間葉系幹細胞からの
細胞外小胞を選択する事ができます。
ストレートに考えると
脳疾患系であれば、
神経系の間葉系幹細胞由来の細胞外小胞が
神経系の治療には適しているかもしれません。
なぜなら、形質の類似性の高さが
標的性を高める結果になる可能性があるからです。
--
今回、幹細胞療法と幹細胞由来の細胞外小胞による
治療を並列させたのは、
細胞外小胞はドナー細胞の形質を引き継ぐので
すでに多く研究されている
幹細胞療法の研究結果が重要である
と考えているからです。
幹細胞療法によって
FASDのマウスのケースで
脳組織、機能両方で少なくとも部分的な回復が
見られたことは、
幹細胞由来の細胞外小胞の治療効果にも
一定の期待を与えます。
上述したように
細胞外小胞は癌化や免疫原性のリスクが
小さい可能性があるので
安全性の面では優れている可能性があります。
実際に
T Shirasaka(敬称略)の研究は
マウスに幹細胞を投与してから3か月間
臓器移植者の為の免疫抑制剤
Cyclosporineを投与しています。
これが必要なくなる可能性があります。
また、脳への走化性を高めるために
アテロコラーゲンと複合体化しています。
これは免疫原性を抑える働きもありますが、
細胞外小胞では標的化のエンジニアリングを合わせれば
これも必要なくなる可能性があります。
血液脳関門の通過に関しては
細胞外小胞が優れているかどうかの
強い証拠はありませんが、
試験管でトランスサイトーシスのための
取り込みが確認されています。
(参考文献(13) Fig.2)
--
実際に妊娠時のアルコール暴露において
脳神経系に影響が出た場合の生理機序は
下記、いくつかのモデルが挙げられています。
〇GABA活性化による神経幹細胞の減少(14,15)
〇介在ニューロンの運動性の異常(14)
〇神経細胞分化の停止(16)
〇脳由来の神経栄養因子変化による成熟(17)
これらは
パルブアルブミン
GAD67 mRNA
これらの発現を制御すると考えられています(18)。
上述したいくつかのモデルのうち
幹細胞療法であれば、
減少した神経幹細胞をそのまま補充する
ことができるかもしれないし、
GAD67 mRNAであれば、
細胞外小胞によって治療できる可能性があります。
従って、どのモデルが主要な要因になっているかによって
細胞治療と細胞フリー治療の適性が
変わる可能性があるかもしれません。

//まとめ//ーー
T Shirasaka(敬称略)らのマウスのモデルの
胎児性アルコール・スペクトラム障害
に対する幹細胞傍療法において
組織学的、機能的療法において効果がみられました。
実際にラベリングした幹細胞は
静脈注射から数か月後、
脳に生着していることが確認されています(1)。
このような幹細胞の結果は
その幹細胞の形質を引き継いでいる
幹細胞由来の細胞外小胞でも
一部得られる可能性はあるかもしれません。
しかし、直接的な細胞の生着など
原理的に難しい結果もありますが、
遺伝子調節など重複する機能もあるかもしれません。
また、標的性、免疫原性、癌化などにおいては
細胞外小胞の方が優れている可能性もあります。
幹細胞療法と、
その幹細胞を使った細胞外小胞での治療を
セットで考えていく事は
今後、選択肢や実現可能性を高める上で
重要になってくると考えられます。
幹細胞由来の細胞外小胞による治療は
特に間葉系幹細胞において多く研究されていて、
基礎研究レベルでは一定の成果が出ている
と認識しているので、
幹細胞治療と比較する形で研究を進めていく事は
一定の価値があるのではないかと考えます。

(参考文献)
(1)
T Shirasaka, E Hashimoto, W Ukai, T Yoshinaga, T Ishii, M Tateno & T Saito 
Stem cell therapy: social recognition recovery in a FASD model
Translational Psychiatry volume 2, pagee188 (2012)
(2)
e-ヘルスネット
胎児性アルコール・スペクトラム障害
(3)
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(4)
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(5)
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(6)
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Mitchener A et al. Autism as a disorder of neural information processing: directions for
research and targets for therapy. Mol Psychiatry 2004; 9: 646–663.
(8)
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stem cell research to clinical applications in Parkinson’s disease. J Med Ethics 2007; 33:
169–173.
(9)
Mangesh D Hade, Caitlin N Suire, Zucai Suo 
Mesenchymal Stem Cell-Derived Exosomes: Applications in Regenerative Medicine
Cells. 2021 Aug 1;10(8):1959
(10)
Kucharzewski, M.; Rojczyk, E.; Wilemska-Kucharzewska, K.; Wilk, R.; Hudecki, J.; Los, M.J. Novel trends in application of stem
cells in skin wound healing. Eur. J. Pharmacol. 2019, 843, 307–315.
(11)
Bakhtyar, N.; Jeschke, M.G.; Mainville, L.; Herer, E.; Amini-Nik, S. Acellular Gelatinous Material of Human Umbilical Cord
Enhances Wound Healing: A Candidate Remedy for Deficient Wound Healing. Front. Physiol. 2017, 8, 200
(12)
Singla, D.K. Stem cells and exosomes in cardiac repair. Curr. Opin. Pharmacol. 2016, 27, 19–23
(13)
Héctor M. Ramos-Zaldívar, Iva Polakovicova, Edison Salas-Huenuleo, Alejandro H. Corvalán, Marcelo J. Kogan, Claudia P. Yefi & Marcelo E. Andia 
Extracellular vesicles through the blood–brain barrier: a review
(14)
Alcantara S, Pozas E, Ibanez CF, Soriano E. BDNF-modulated spatial organization of
Cajal-Retzius and GABAergic neurons in the marginal zone plays a role in the development
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(15)
Liu X, Wang Q, Haydar TF, Bordey A, Nonsynaptic GABA. signaling in postnatal
subventricular zone controls proliferation of GFAP-expressing progenitors. Nat Neurosci
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(16)
Tateno M, Ukai W, Yamamoto M, Hashimoto E, Ikeda H, Saito T. The effect of ethanol on
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(17)
Singh AK, Gupta S, Jiang Y, Younus M, Ramzan M. In vitro neurogenesis from neural
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2022年10月15日土曜日 0 コメント

Correction: リガンドとタンパク質結合親和性の局所的計算と物理

物質の運動を考えるときに
その運動の総エネルギーが最小となるような
軌跡を取るという最小作用の原理というのがあります。
エネルギーがより低い方向に系が落ち着く
という法則があります。
しかし、実際の世界では
熱、光などからエネルギーをもらっていたり
緩和のための時間が十分ではなく
平衡状態ではないため、
必ずしも今ある状態が最小かどうかはわかりません。
その間の所で準平衡状態で落ち着いている可能性もあります。
その様に考えると現在の状態を
見積もる際には非常に複雑な計算が必要になる事も
考えられますが、
状態Aと状態Bの相対的な比較において
エネルギーの観点、
より厳密に言えば「エネルギーの差」の観点で考える事は
非常に重要です。
状態Aと状態Bの周辺環境が比較的近い状態にあれば、
摂動の要因となる熱、光、栄養、酵素(触媒)などの条件が
近い状態になるため、それらの比較においては
計算を複雑化させる摂動要因をキャンセルする事ができる
可能性があります。
従って、以下に示すように物質間の結合において
計算する領域を主に結合に関わる残基付近の構造領域に絞り、
結合の有無に関するエネルギー系の差を計算することは
複雑な要素をキャンセルさせる(低次元化)させる事に貢献するかもしれません。
高次元になる計算で、余剰項が無視できないほど大きくなる計算においては、
余剰項ができるだけ近い条件の2つの状態の比較によって
その引き算でキャンセルさせる、小さくする構想は低次元化、計算コストを下げる
1つの重要な戦略になる可能性があります。
--
細胞種特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)。
これにおいては
細胞外小胞や合成ナノ粒子表面に
糖たんぱく質などの装飾因子を形成させ、
その装飾因子は
病変部位の細胞の表面リガンドだけに
特異的に高い親和性を持つ構造からなります。
従って、
タンパク質-リガンドの結合親和性、結合力を
計算、実験、両方で見積もる、分析する事は
非常にその要素技術の開発において重要になります。
その時に
一般的に結合力を計算で求める際には
冒頭で述べた様に
結合前後のエネルギーの差を見積もります。
結合前の系のエネルギーが高く、
結合後のそれが低くなり、
その差が大きくなれば、最小作用の法則から
タンパク質はそのリガンドに引き付けられ
高い結合力を有することになります。
その方が系として安定だからです。
エネルギー差が多きければ、
結合への駆動力も高くなります。
このようなエネルギーの計算は
冒頭で述べたように
体内であれば、熱、栄養、圧力など
様々なエネルギー的な摂動(perturbation)があります。
従って、エネルギーの摂動や
熱を考慮する必要があります(2-6)。
しかし、このように系を広げていくと
非常に計算コストがかかるために現実的ではありません。
人工知能、深層学習を用いたとしても
教師データありの方法では、
利用できるデータが限られている場合には
やはり効果的ではないとされています(7)。
--
そこでIkki Yasuda(敬称略)らは
計算コストが低い形で
分子動力学シミュレーションを
人工知能を使った機械学習と合わせて
実現しています(1)。
おそらく最も重要なところは
予め計算する領域を狭域に絞った所にある
と理解しています。
もう1つは、教師データがないということです。
領域を絞るため、教師データがないため、
その領域の探索には人の力がある程度必要ですが、
タンパク質とリガンドの結合親和性は
おそらく結合に関わる残基を中心とした
結合部近隣の「分子の配置」が重要になります。
そこで、Ikki Yasuda(敬称略)らは
ワッサースタイン計量というモデルを利用しています。
これは距離空間の中の確率分布を
要素の移動の中で最小のコストとなるように
多次元で求めるモデルです。
従って、
タンパク質やリガンドの構造における
詳細な分子の配座を求めることができます。
タンパク質やリガンドは
高分子であり、構造は動的です。
オープン配座やクローズ配座など
顕著に構造を変える場合もあれば、
もっとマイナーな、2次的な構造変化もあると考えられます。
そのような構造を解析した結果、
短時間の運動において
構造揺らぎがあることを示しています。
つまり状態Aと状態Bを行ったり来たりするという
ゆらぎです(状態A⇔状態B)。
分子の運動というのは
熱、光によって格子振動するといった振動がありますが、
巨視的な構造においても
そのような振動が起こりうるということです。
おそらくその原因は
エネルギー空間で考えた時に
そのエネルギーの極小値が存在する、
つまり、いくつものエネルギーポケットがある
からではないか?と考えました。
イメージとしては4次関数のような感じです。
それがもっと高次にある感じです。
その複数の安定状態を行き来することで
結果として構造が揺らぐということではないか?
と仮に理解しています。
その時にエネルギー空間の山を乗り越えるエネルギーは
熱、圧力などの摂動によるかもしれません。
量子力学的なトンネリング現象も
考慮の範囲内となります。
--
リガンドとタンパク質の結合力を見積もる上で
それらの構造は固定ではなく、
周期的に揺らいでいて、
その揺らぎ、動的機序も含めて
その結合力が決まるということです。
--
創薬においては
基本的に標的となる遺伝子やたんぱく質に対して
物質を結合させて、機能を弱めたり、高めたりします、
その礎は、「結合すること」です。
従って、
予め計算によって2つの物質の結合力を
低計算コストで見積もることができる可能性がある事は
広く創薬に生かすことができるはずです。
Ikki Yasuda(敬称略)はAI創薬への応用もあげています。
薬そのものへの応用や
標的性を持った薬剤送達媒体への応用も可能であり、
それらを人工知能によって行う事ができる
可能性があります。
領域と時間を絞ることで計算コストを下げられる
可能性があります。

(参考文献)
(1)
Ikki Yasuda, Katsuhiro Endo, Eiji Yamamoto, Yoshinori Hirano & Kenji Yasuoka 
Differences in ligand-induced protein dynamics extracted from an unsupervised deep learning approach correlate with protein–ligand binding affinities
Communications Biology volume 5, Article number: 481 (2022) 
(2)
Wang, L. et al. Accurate and reliable prediction of relative ligand binding
potency in prospective drug discovery by way of a modern free-energy
calculation protocol and force field. J. Am. Chem. Soc. 137, 2695–2703 (2015).
(3)
Aldeghi, M., Heifetz, A., Bodkin, M. J., Knapp, S. & Biggin, P. C. Accurate
calculation of the absolute free energy of binding for drug molecules. Chem.
Sci. 7, 207–218 (2016).
(4)
Song, L. F., Lee, T.-S., Zhu, C., York, D. M. & Merz Jr, K. M. Using amber18
for relative free energy calculations. J. Chem. Inf. Model. 59, 3128–3135 (2019).
(5)
He, X. et al. Fast, accurate, and reliable protocols for routine calculations of
protein–ligand binding affinities in drug design projects using amber gpu-ti
with ff14sb/gaff. ACS Omega 5, 4611–4619 (2020).
(6)
Gapsys, V. et al. Large scale relative protein ligand binding affinities using
non-equilibrium alchemy. Chem. Sci. 11, 1140–1152 (2020).
(7)
Shi, Q., Chen, W., Huang, S., Wang, Y. & Xue, Z. Deep learning for mining
protein data. Briefings Bioinform. 22, 194–218 (2021).


2022年10月14日金曜日 0 コメント

脳転移性癌細胞由来の細胞外小胞内miRNAによる血液脳関門破壊と治療機会

miRNAというのはノンコーディングRNAで
今までの歴史ではあまり重要視されてきませんでした。
身体のなかのごみ、廃棄物のような
存在であるとも考えられてきたようです。
細胞外小胞も同様です。
そのごみ袋のような存在です。
しかし、エクソソームを初め、
細胞間の重要なコミュニケーション、
生体内のネットワークに関わっている事が
示されたことから、積極的に研究が行われています。
本日、メインに参照した
Naoomi Tominaga(敬称略)らの研究も
転移性を獲得した癌細胞由来の細胞外小胞内の
miRNAが転移において重要な役割を果たしている
可能性が高いという事が合理的に示されています(1)。
その内容の一部を参照し、
治療を含め、独自の視点を持って構成させました。
その内容を読者の方と情報共有したいと思います。

//要約//ーー
乳がんの患者さんが命を落とす主要因は脳への転移です。
その際、原発腫瘍である乳房にできた癌細胞は
上皮間葉転換などを通して移動性を高め、
血液脳関門(BBB)を通過して脳へ転移します。
しかしながら、
血液脳関門を通して脳へ転移する過程における
分子的な機序ははっきりとはわかっていません。
Naoomi Tominaga(敬称略)らは
タンパク質やmicroRNAs(miRNAs)の輸送を通した
細胞間のコミュニケーション媒体である
癌細胞由来の細胞外小胞は
血液脳関門の組織破壊を誘発する事を示しました(1)。
細胞外小胞が主に輸送するmiRNAsのうち
miR-181cはこの血液脳関門の破壊を促進します。
それはPDPK1の抑制を通したアクチンの
異常な局在化によって生じます。
PDPK1のmiR-181cによる劣化は
リン酸化したコフィリンの抑制と
アクチンダイナミクスにおける
活性化されたコフィリン誘発の改変を導きます。
また、脳の転移がん細胞由来の細胞外小胞の
全身への注入により
乳がん細胞株の脳への転移や
脳への効率的な取り込みが生体内で確認されました。

//内容//ーー
乳がんの転移先としては
リンパ節、皮膚、骨、肺、肝臓、脳への転移が
比較的多くみられるとされています。
がんの死因のうち転移で亡くなる方は
全体のおおよそ90%という見積もりもあり、
転移の機序を理解し
その予防や治療を改善していく事は
がんによって命を落とす人を減らすことに
大きく貢献すると考えられます。
特に、転移がみられる状態では
全ての癌を外科的に取り除いていく事は
おそらく難しいと考えられるので、
分子レベルの微細性を持つ
内科的な処置の重要性が高まってくると考えられます。
標的治療によってどれくらい
選択的に複数の臓器や組織にある
あるいは周辺に播種した
腫瘍組織を小さくし、消滅させることができるか
といった挑戦的な課題があります。
進行性が高ければ、治療と進行のせめぎあいになるので
患者さんへの負担を考えると、
より効率的な治療が求められます。
ーー
上述した転移先のうち脳への転移は
とりわけ予後不良と関連があるとされています(1)。
通常、脳の組織内に循環器を通して進入する場合には
血液脳関門(BBB)を超える必要があります。
脳に転移がみられる場合には
この血液脳関門が組織学的に破壊されている
事が指摘されています(2)。
この血液脳関門が破壊されると
通常脳内に入らない物質を含めて流入することになり
脳内で生じる事のない組織が出来上がる
事も考えられます。
はっきりとした機序は上述したように明かではありませんが、
癌組織は、癌細胞だけで構成されるわけではなく
癌関連繊維芽細胞、癌幹細胞、
癌関連細胞外マトリックス、癌関連免疫細胞など
多くの構成要素が微小環境を形成します。
これらを脳内に形成するためには
血液脳関門が破壊されていて、リーキーになることが
1つの必要条件である可能性もあります。
従って、
血液脳関門がどのような機序で
破壊されるかを理解する事は
脳への転移を理解する上で重要な要素です。
上述したように
Naoomi Tominaga(敬称略)らは
細胞外小胞に含まれるmiR-181cが
血液脳関門の構成要素である
脳血管内皮細胞の骨格であるアクチンの
異常な局在化を導き、
それによって血液脳関門が破壊されたことを
示しています(1)。
miR-181cは脳へ転移性を持つ細胞から放出される
細胞外小胞で高まっている事が示されましたが、
重要なことに
それらの細胞内では高まっていない事が
示されました。
つまり、転移性癌細胞では
細胞外小胞を細胞質内で生成し、
「細胞外小胞内に物質を搭載する際に」
より多くのmiR-181cが含まれたということです。
言い換えると
細胞内で多くのmiR-181cがあれば、
自然なソート機序でも平均的にmiR-181cが
多く搭載すると考えられますが、
そうではなく、
何らかの特異的な機序によって
miR-181cが細胞内小胞に
癌細胞内でより多く搭載されるということです。
さらに
miR-181cは組織の連結に関わるたんぱく質の
発現量に影響を与えるわけではありません。
そうではなく、
それらの空間的な密度分布に影響を与えます。
異常な局在化を示す事に寄って
組織の連結にバラツキが生じ、
あるいはバランスが崩れ、
少なくとも所々、リーキーに(漏れやすく)
なっていると考えられます。
--
miRNAはmRNAに作用する事で
タンパク質の翻訳の制御に関わっているとされていますが、
それによって影響を受ける遺伝子が
PDPK1です。
この遺伝子が抑制されます。
このPDPK1はアクチンや細胞連結に関わるタンパク質の
の局在化、位置調整に関わっている
遺伝子であるため、
これが抑制されることで
上述した異常な局在化を導いているということです。
--
上述した参考文献(1)の要約でも記載されているように
脳の転移に関わる細胞の細胞外小胞を
全身にいれると、
乳がんの脳への転移が促進され
脳への効率的な取り込みが確認されました。
具体的にどのような機序で
乳がん細胞の脳への転移が促されたのか?
細胞外小胞の効率的な脳への輸送、走化性は
どのような機序によって生じるのか?
このような考察が重要です。
転移においては
細胞外小胞が発現しているインテグリンの型によって
その行き先の傾向が出るという報告もあります(3)。
例えば、脳であれば
β3のインテグリンが脳への走化性を持つ
というデータがあります(3)。
これだけではない可能性がありますが、
このβ3は膠芽細胞種の小さな血管に
発現されているという報告もあります(4)。
従って、この点から一定の合理性を得る事ができます。
一方で
脳の転移に関わる細胞は具体的に何か?
例えば、
乳がんから上皮様の細胞から間葉系の細胞に変わることで
高い移動性を得た細胞のうち、
脳へ転移性を持つ細胞なのか?
少なくとも脳へ転移性を持つ癌細胞と異なり、
乳がん細胞由来の細胞外小胞ははmiR-181cを
多く含まないという重要な結果があります。
この事は
転移性の形質を十分に獲得し後に生じる
miR-181cの細胞外小胞への効率的搭載が重要である
ということを示唆します。
もし、そうであれば、
転移性のためのバイオマーカーは
実際に転移形質を獲得してからでないと
得られない事を示しています。
--
脳へ転移性を持つ癌細胞から放出される
細胞外小胞がmiR-181cを多く含むという事が
アクチンや組織連結のタンパク質の
位置調整を狂わせるという現象は
脳の血管だけに起こる事なのか?
という疑問もあります。
全身の血管に対して、内皮組織を破壊することには
つながらないのか?
その様な視点もあります。
但し、毛細血管を含めた
全身の血管の合計の内壁の表面積と
脳血管の血液脳関門に当たる表面積の比と
(圧倒的に全身が大きい)
細胞外小胞が持つ走化性を合わせて考えると、
全身の血管への影響は小さい
ということは考えられるかもしれません。
ただし、
このmiR-181cは乳がんとは異なる他の癌。
肝細胞がん、基底細胞がん。
これらの悪性度に関連すると報告されています(5,6)。
従って、血管壁を破壊する機序というのは
がんの悪性度と関連があるかもしれません。
その時に乳がんと同様に
細胞外小胞が関連しているのであれば、
その細胞外小胞のインテグリンなどの表面リガンド
の違いによって転移先は異なるということです。
脳の転移だけではない、悪性度の増加であれば、
血管壁をリーキーにさせることは
血液脳関門だけではなく、
転移を促進する一般的な要因である
と考える事も出来ます。
--
血液脳関門の破壊は
脳卒中、トラウマ、アルツハイマー病でも生じるので、
同じような組織の連結性、運動性に関わる
タンパク質の形成位置制御の欠失によって
生じているかというのは検討項目になります。
また、
脳への転移がこれらの脳疾患を誘発する
原因にもなるかもしれません。

//治療//ーー
治療としては、脳への転移性を獲得した癌細胞の
細胞外小胞の分泌を抑えることが一つの方法です。
また、
細胞内で効率的にmiR-181cを
細胞外小胞の前駆体に搭載する機序があるはずなので
それを掴んで、その機能を停止させる治療も考えられます。
あるいは、
脳への転移性を獲得した癌細胞由来の
細胞外小胞の脳への走化性を
失わせる手法も考えられます。
具体的にはインテグリンβ3をアンタゴナイズ、
蓋することで、脳への走化性を失わせ、
その影響を全身性へ薄めるということです。
それ以外の細胞外小胞の表面リガンドがあれば
同じような手法が考えられます。
一方で、
miR-181c inhibitorを
脳への転移性を獲得した癌細胞由来の細胞外小胞
転移性の癌細胞
転移性を獲得した乳癌細胞。
これらに送る事も考えられます。
別の機序で
組織修復を促す機序を持つ物質を
血液脳関門に特異的に送る事も考えられます。
--
薬剤送達に関わる事に関しては
すでに身体の自然な機序で
脳へ転移性を持つ癌細胞や
そこから放出される細胞外小胞は
血液脳関門への走化性を有している可能性があるので
その設計から指針を得て
リスクを減らしながら、最大限生かすことで
血液脳関門への特異的輸送が可能になる
という事も考えられます。
特異的薬剤送達手法が確立すれば、
すでに成長してしまった
乳がん原発腫瘍の脳腫瘍の治療に対しても
いくつかの治療選択が与えられます。

(参考文献)
(1)
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2022年10月13日木曜日 0 コメント

細胞外小胞のバイオマーカー(主にRNAs)としての可能性と派生的効果

細胞外小胞の内容物の中で
おそらく最も関連性が高いものとして
研究されているのがmicroRNAs(miRNAs)です。
元々、ノンコーディングRNAは核酸として
重要視されてきませんでしたが、
転写、翻訳に関わるmRNAに作用する事で
翻訳の制御に関わるとされています。
従って、遺伝子の一つのスイッチ、つまみとも言えます。
このmiRNAsによって翻訳される特定のたんぱく質の量が
変わってきますから、
細胞内に存在するタンパク質の種類と量も
変わってくることが推定されます。
それが細胞の形質異常につながり、
病気の発症の元となっている可能性もあります。
細胞外小胞は細胞内で作られるので
細胞内の特定の物質を内腔に含みながら、
細胞外へ放出されます。
従って、細胞内に存在する
miRNAsやタンパク質などを含んでいます。
その増減が異常であるため
細胞外小胞内の該当するmiRNAsとタンパク質が
バイオマーカーとなります。
その細胞外小胞の一部は体液の流れに乗って
全身を循環します。
従って、採血によって特定できる可能性もあります。
一方で、
このようなmiRNAsやタンパク質は
通常の遊離した状態で血液などから
採取する事も可能ですが、
細胞外小胞に覆われて、その内腔に含むことで
それぞれの分解酵素から守られる事が想定されるので
より大元の細胞内にあった状態を
反映したナイーブな構造のそれらを検出する事が
できると期待されます。
miRNAsとタンパク質両方の異常が分かれば、
そのつながりを調べるきっかけになると思います。
そこに相関がない可能性もありますが、
相関があれば、新しい病理の発見につながる可能性があります。
細胞外小胞が元の細胞の情報を引き継いでいる
と考えると、バイオマーカーを特定した時
同時に存在しているタンパク質や
その他の物質を調べる事で
バイオマーカーとしての信頼性が上がるだけではなく
今述べた様に、
病理の新たな理解につながる可能性もあります。
ただし、
細胞外小胞は細胞よりも100倍程度小さい
100nm程度で、かつ異種性も高く、
区分け、分離、不純物の除去などが難しいため
上述したことを精度よく、低コストで
実現する事は依然として難しいとされています。
--
本日はNobuyoshi Kosaka(敬称略)らが総括した
癌治療におけるバイオマーカーとしての
細胞外小胞の利用性について
RNAs、未来への展望に関するところを参照し、
上述したことを含めて
いくつかの観点で考察、まとめを加えました。
その内容を読者の方と情報共有したいと思います。

//細胞外小胞関連RNAs//ーー
タンパク質に加えて、細胞外小胞内のRNAsは
バイオマーカーとして魅力的な標的分子です。
そのRNAは
〇microRNA(miRNA)
〇mRNA
〇long noncording RNAs(lncRNAs)
〇small RNAs other than miRNAs
これらなどを含みます。
これらは細胞間を細胞外小胞を送達媒体として
移動して、受け細胞でタンパク質翻訳の制御など
細胞内における重要な生理機序などを発揮します。

従って、このようなRNAsを積極的に
医療に応用することが考えられます。
例えば、
mRNAはワクチンに利用されていますし、
miRNAは病変部位の細胞で通常状態から
大きく増減して、その量が標準的な値から
逸脱しているので、それを正すことが
1つの治療機会になる可能性があります。
--
胚幹細胞(ES細胞)から放出された細胞外小胞の
mRNAは造血前駆細胞に輸送され
特異的な機能を示しました(2)。
人、ネズミの肥満細胞株から放出される
miRNAsは2007年に確認されました(3)。
これらのパイオニアとなる研究は
細胞外小胞の未来へ光明を示しました。
細胞外小胞内のmiRNAsの機能は
標的細胞内で証明され、
そこで効果的に遺伝子をサイレンスさせます(4-6)。
細胞外小胞関連のmRNAsとmiRNAsの発見以来
多くの研究者が細胞外小胞のRNAsの機能を確認し、
様々な生理学、病理学において
新手の生物機序を示しました。
それは新たな体液性の制御因子によって仲介されます。
これらの発展に加えて、
細胞外小胞関連のRNAsはバイオマーカーとして
役目を果たすかもしれません。
なぜなら、その内容物は
分泌細胞の形質に依存するからです。
さらに、人の体液のいずれでも見つけることができます(7-9)。
乳がん細胞株の脳への転移は
脳へ転移した癌細胞由来の細胞外小胞の
前進への投与によって促されました。
これらの細胞外小胞は
生体内で脳へ効率的に取り込まれました。
この事は
細胞外小胞による脳への転移の新手の機序を示します。
これは血液脳関門の破壊を誘発します(10)。

転移性を持つ脳の癌細胞由来の細胞外小胞は
転移を促すので、
そのまま薬物送達媒体として利用する事ができませんが、
この脳へ走化性を持つ細胞外小胞において
特に表面リガンド、膜構成、形状、大きさなどの
特性を調べる事で、
どうやったら脳へ有効に届けられるか?
このヒントが得られる可能性があります。
--
脳へ転移する乳がん細胞株由来の
細胞外小胞内にはmiR-181cが含まれ、
それがアクチンの異常な局在化を通して
血液脳関門の組織破壊を促進します。
このmiR-181cは脳への転移がみられる
乳がんの患者さんの血清で見つかっています。
脳への転移がん細胞からの循環細胞外小胞は
血液脳関門の破壊があり、リークがみられるからです。
脳へ転移がみられる乳がん患者さんお
血清から集められた細胞外小胞のmiR-181cレベルは
脳へ転移がみられないがんの患者さんと比べて
顕著に高い事が認められました。
この事からmiR-181cは脳への転移と
関連していることが示唆されます。
--
食道扁平上皮がん(ESCC)の診断のための
細胞外小胞のmiRNAsの潜在性が提案されています。
ESCCを持つ患者さんの血清内の細胞外小胞の
miR-21のレベルは全身性の炎症がない
良性の腫瘍を持つ患者さんの血清に比べて
多いことが示されています。
さらに
腫瘍組織の進行と悪性度は
このmiRNAレベルと正の相関があります(11)。
加えて、血清中のmiR-1246レベルは
ESCCの診断のために使われます。
その感度は71.3%で特異性は73.9%でした。
これは腫瘍、リンパ節、転移ステージによる
生存率を下げるための強い独立的なリスク因子と
なるかもしれません(12)。
ECSSの患者さんの血清でmiR-1246レベルは
上昇していますが、
miR-1246の亢進はESCC生検標本で確認されませんでした。
これは、必ずしもこのmiR-1246が
癌細胞からの発現に関連しない事を示唆しています。

腫瘍組織は癌細胞だけではなく
癌幹細胞、細胞外マトリックス、癌関連線維芽細胞
改変された血管の内皮組織、改変された免疫細胞など
様々な構成要素からなります。
血清の細胞外小胞のmiRNAは
これらの情報を拾う可能性があるため、
癌細胞そのものの信号ではない可能性も考えられます。
しかし、miR-1246に関して
調べる限り癌微小環境との関連性についての
証拠はありません。
--
miR-1246は癌の進行度、悪性度を予測するための
診断ポテンシャルを持つバイオマーカーである
という事が前立腺がんで期待されています(13)。
この研究の中で
進行性の前立腺がんからの細胞外小胞の
血清miRNAsをプロファイルするために
信号増幅のいらない定量方法として
nCounter技術が提案されています。
この技術を使った調査では
miR-1246は血清だけではなく、
前立腺がんの臨床で得た組織、細胞株で
減少していることが示されました。
miR-1246は癌のバイオマーカーとして
有望であることが示唆されます。
--
RNAシーケンスは将来の臨床の使用のための
ゲームチェンジャーになる可能性が高いです。
新たに多発性骨髄腫(MM)と診断された
156人の患者さんのコホート研究から
MMの細胞外小胞関連miRNAsの予後の予測について
スモールRNAシーケンシング分析によって
調べられました(14)。
血清サンプルからの細胞外小胞の
let-7bとmiR-18aは
無憎悪生存率(PFS)と全生存(OS)両方において
顕著な関連性がありました。

これらのmiRNAsにおいて
細胞外小胞を使ったmiRNAsやmiRNA inhibitorの
送達によって、外因的に、人為的に
制御することができたら、
臨床結果が変わることがあるか?
miRNAsは遺伝子の翻訳に関わる核酸なので
癌細胞内のタンパク質の状態が変わった時に
どのようにその癌細胞の全体的な形質に影響を与えるか?
それが一つの観点となります。
いずれにしても
バイオマーカーとして効果的なmiRNAsを
見つける事は、細胞外小胞や合成ナノ粒子を使った
miRNAsを使った標的治療に生かすことが
できる可能性が高いです。
--
このような循環エクソソームmiRNAsの発見は
臨床結果の悪いMMを診断する事を改善します。
さらに
細胞外小胞関連のmiRNAsは
classical Hodgkin's lymphoma(cHL)の
代謝性疾患に影響を与えます。
cHLの患者さんの血漿から
標準化されたサイズに応じたクロマトグラフィーで
細胞外小胞を分離します。
スモールRNAシーケンス分析によって
細胞外小胞内のRNAの種類を包括的に分析し、
健康な人と比較します(15)。
それによるとcHLの患者さんでは
miR24-3p, miR127-3p, miR21-5p, miR155-5p
let7a-5p。
これらが多くなっている事が示されました。
これらは治療、フォローアップ、再発などに応じて
合理的に増減しました。
従って、cHLについて
これらのmiRNAsレベルをモニターする事は
患者さんの状態を管理する上での
1つの手段となりうると考えられます。
--
miRNAだけではなく
細胞外小胞内のmRNAsは受け細胞の
タンパク質を生成させるための機能的な分子
だけではなく、
癌検知の為の診断ツールになります。
卵巣がんにおいて細胞外小胞は
転移における新手の機序が明らかになっています(16)。
中皮細胞中の卵巣がん誘発のアポトーシスからの
細胞外小胞のMMP1 mRNAは
卵巣がん細胞の腹膜への転移を導きます。
それは腹水によって輸送されます。
初期ステージでもこのmRNAはリスク因子になる
といわれています。
--
他のノンコードRNAs、例えばlncRNAsは
癌細胞からの細胞外小胞内に多く存在しています。
これはバイオマーカーになることもあります。
HCC細胞由来の細胞外小胞は
ucRNA(ultraconserved RNA)を含みます。
これは200bases以上ゲノムシーケンスを含む
lncRNAsの一つのグループです。
100%(構造が?)保持されています
人やマウスのゲノムで確認されています(17)。
このucRNAsはHCC細胞間で送達され、
細胞機能を改変します。
細胞間コミュニケーションだけではなく
病気の検出の為のバイオマーカーとして
生物学的に重要であると指摘されています。
細胞外小胞のmiR-21とHOTAIRの発現は
咽頭扁平上皮がん(LSCC)の患者さんで
顕著に高まっている事が示されました。
声帯にポリープがある人と比較された結果です。
これらの上昇は
advanced T classifications (T3/T4)で見られ
臨床ステージに関わらず確認されました。
リンパ節の転移がある患者さんでも
miR-21とHOTAIRの上昇が
リンパ節に転移がない患者さんに比べて
程度が高くなっていました(18)。
胃がんにおいては
血清のlong noncoding RNA HOTTIPが
120人程度の規模で健康な人と比較され、
胃がんの患者さんで高まっていることが
示されました(19)。
この発現レベルは
組織浸潤レベルはTNMステージと顕著な相関があります。
細胞外小胞のlncRNA HOTTIPは
胃がんの診断、予後診断のバイオマーカーとして
潜在性を有しています。
--
他のmiRNA以外のスモールノンコードRNAsが
癌のバイオマーカーとして利用できるかどうか
調べられています。
慢性リンパ性白血病(CLL)由来の細胞外小胞の
RNAシーケンス、プロテオーム分析が行われました。
その結果
CLL患者さんの血漿からの細胞外小胞の
noncoding Y RNA hY4は健康な人よりも
豊富に含まれていることが示されました(20)。
このRNAは単球を免疫抑制表現型に改変し、
免疫チェックポイントであるPD-L1の発現を促進します。
これは、TLR7依存的な様式で
単球の表現型の免疫抑制への偏りを示します。
細胞外小胞内のRNAsは体液内で安定です。
なぜなら、RNA分解酵素に抵抗性を持つからです。

RNA分解酵素の細胞外小胞の内腔内に存在し
プラズマ膜の存在によってRNA分解酵素に
直接的に暴露しないことで構造が守られやすいと
考えられます。
従って、より正確にRNAをバイオマーカーとして
利用する事を考えたときには
構造が保持されている
細胞外小胞内のそれを分析対象にする方が
よいかもしれないということです。
--
このアドバンテージは
〇再現性
〇貯蔵
〇感受性
これらにおいて発揮されます。
qPCRやマイクロアレイRNAシーケンスが
RNAを検出するために利用できます。
これらの技術の利用可能性を考慮にいれると
細胞外小胞内の核酸は
癌の診断のためのバイオマーカーとして
理想的であると考えられます。
癌特異的なmiRNAsは
被膜タンパク質中の
他の癌特異的な分子を利用する事によって
検出することができます。
その結果、高い特異性を持つ癌バイオマーカーの
検出を可能にします。

表面リガンド、タンパク質、核酸など
細胞外小胞に含まれる物質を効率的に活用し、
バイオマーカーとして多重解析することで
その信頼性が向上すると考えられます。

//将来の展望//ーー
細胞外小胞は多数の生体分子を複雑に含みます。
例えば、
スモールRNA, ロングノンコーディングRNA,
ノンコーディングRNA、タンパク質、
DNA、脂質などです。
それらの少なくとも一部は
診断において利用できる情報です。
迅速かつオンチップでのRNA内容物の分析によって
血液から採取した癌特異的な細胞外小胞内の
特異的なRNAの増加が検出されてきました。
それらは
"immuno-magnetic EV RNA analysis"
このように呼ばれます(21)。
DNA、多糖、脂質、代謝生成物のような
生体分子はこの記事では議論していません。
これらの物質も
癌の診断のためのバイオマーカーとして
利用できる可能性があります。
細胞外小胞をバイオマーカーとして利用する
前提として、細胞外小胞の捕獲があります。
そのための新しいプラットフォームの開発が
非常に重要です。
--
癌のバイオマーカーのための最良の標的分子を
決定する事は容易ではありません。
Glypican-1は膵臓がんの検出の為の
バイオマーカーです(22)。
しかしながら、
細胞外小胞のmiRNAをバイオマーカーとして
利用することによってこのGPC-1よりも
膵管腺がん(慢性膵炎との区別を含む)の
診断精度が高かったと報告されています(23)。
一方で
この優位性を持つ結果が正しいかどうかの
判断をすることは早計であるとされています。
なぜなら、
細胞外小胞の研究における
様々な乗り越えるべき課題があるからです。
コスト、スループット、再現性、標準化
規模性など
様々な問題があります。
--
細胞外小胞を捕獲するために
ExoScreen, nPLEX, EV arrayといった
様々な方法があります。
癌バイオマーカーとしての
細胞外小胞の研究は活発に行われてきましたが、
その研究の基礎は完全には明確にされていません。
細胞外小胞がどのように病理に影響を与えているかの
詳細はまだ十分には理解されていません。
さらに
細胞内で細胞外小胞の内容物をソートする機序、
細胞内から細胞外への分泌機序
細胞外から細胞内への取り込み機序などは
部分的な理解や推定に基づいたモデルは立てられている
ものの理解は十分ではありません。
サブ細胞レベルでの解像度における
生体内の動的機序を可視化してトレースする事が
根本的に難しいことも関連していると考えられます。
しかし、
これらの知見は細胞外小胞の重要性を
理解する上で非常に重要です。
ノックアウトマウスなどを用いて
より巨視的に理解するという方法も考えられます。
もう一つの重要な問題は
細胞外小胞を分離する方法に関してです。
超高速遠心分離機や
コラム、ポリマーベースの方法が
これまで利用されています。
それぞれの方法の長所、短所を理解する事が大切です。
例えば、
anti-CD9 antibody-coupledの
高密度で細孔を含むモノリシックシリカマイクロチップが
開発されています。
このコラムでは肺がんの患者さんにおいて
46血清サンプルから細胞外小胞を分離しています。
続いて、肺がん関連抗原である
CD91を検出するために
質量スペクトラムクロマトグラフィーを利用しています(24)。
複雑ではない分離方法の開発が待たれます。
また、再現性の確保のために
標準サンプルを準備する事も大切かもしれません。
miR-16が標準サンプルとして
使われることがあります(25,26)。
--
細胞外小胞をバイオマーカーとして利用する
研究は増えつつのあるので、
今後、さらに癌を含む様々な疾患において
より効果的なバイオマーカーが
特定される可能性は高いです。
より感受性、特異性が上がることが想定されます。
次の5年間で
細胞外小胞を使ったバイオマーカーによる
癌の診断の臨床試験が行われる可能性もあります。
それを行うコストが下がり、
またより方法もシンプルになりつつあります。
しかし、依然として
細胞外小胞を標的とした癌の診断には
課題が残っています(27-29)。

細胞外小胞をバイオマーカーとして利用する場合
ある程度、詳細がわかっていなくても
結果からヒューリスティック(発見的問題解決)な
アプローチで行うことができます。
すなわち、健康な人と比較する
コホート研究で、RNAシーケンスデータを比較し
統計的有意差があるRNAを抽出し
カットオフを設ける事で
癌などの特定の疾患の診断の
感受性や特異性を数字で示すことができます。
しかし、
実際にその特定のRNAが
身体の中でどのような病理においての
重要性を持っているかはこの結果から明らかになる
ものではありません。
バイオマーカーから特定された物質が
どの様な生理機序を持ってるかを
調べる事は重要です。
特定の疾患とのつながりを調べる事で
単に生理学の科学的価値が得られるだけではなく
治療に応用する事ができるからです。
従って、
細胞外小胞のバイオマーカーの利用
特定された物質の生理機序の研究
細胞外小胞を使った治療。
これらは全て有機的につながっていて、
バイオマーカーの研究、開発、応用を進める事は
その有機的なネットワークの原点となる
可能性があります。
このような派生的なつながりを考えると
細胞外小胞を使ったバイオマーカーの開発の
価値は一段上昇します。

//まとめ//ーー
Nobuyoshi Kosaka(敬称略)からなる
医療研究グループの細胞外小胞を使った
癌診断のためのバイオマーカーの総括について
参照しました(1)。
その対象はタンパク質とRNAに絞られています。
細胞外小胞はうまく利用できれば、
非常に精度の高い診断をすることができる可能性があります。
それが実現される事によって
複数の物質が精緻な様式で特定されるので
そこを出発点として研究することで
生理学、病理学の理解に伴う科学的価値が生じます。
これが実現すると、
今度は治療への応用が期待できます。
細胞外小胞は複雑で、
それを総括的に分析する事は様々なコストを伴う事が
想定されますが、
シミュレーションや人工知能などをうまく組み込むことで
それらのコストを抑える事ができる可能性があります。
また、遺伝子学などですでに進んでいる様に
データのシェアなども重要になる可能性があります。
そういう観点で考えると
再現性のための標準化サンプルなどを定める事は
1つ運用の上で重要になる可能性があります。

(参考文献)
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