//背景//ーー
Clustered regularly interspaced short palindromin repeat
(CRISPR)-associated protein (Cas9)は
培養環境において人の細胞の遺伝子編集を効率的に
行うことができます。
そのことは人の病気を治療するための潜在性を与えます(2,3)。
しかしながら、
試験管と異なり、生体内で
CRISPR-Cas9を輸送しようする事は
病因となっている組織、細胞への標的性が必要になります。
--
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は
X染色体上のジストロフィン遺伝子変異によって
引き起こされる重篤な筋肉劣化疾患です(4)。
主に男児にみられ、症状は幼児期から現れます。
骨格筋細胞や心筋細胞内での
ジストロフィンタンパク質の欠如は
筋肉安定性を損ね、筋肉摩耗の結果となります(5)。
CRISPR-Cas9は
〇iPS細胞(6)、
〇生体内動物DMDモデル(7-10)。
これらのエクソンスキッピングにおいて
効果的なツール、方法であると報告されています。
--
アデノウィルスは生体内での遺伝子輸送に対する
第一候補でCRISPR-Cas9システムを輸送する事による
ジストロフィンタンパク質の治療に利用されます(7-10)。
しかしながら、
いくつかの制限があります
〇ウィルスゲノムDNA輸送容量の低さ(<5kb)(11)
〇アデノウィルスカプシドに対する中和抗体の影響(12,13)
〇Cas9タンパク質に対する免疫原性(14)
〇長期的な遺伝子導入の効果(数年)(15)
〇オフターゲット遺伝子変異生成(16-18)。
従って、
これらの制限要因を克服する新たな
CRISPR-Cas9輸送システムが望まれています。
--
標的性gRNAとCasタンパク質複合体を直接輸送する
CRISPR-Cas9のリボ核タンパク質輸送は
DNAへ輸送する事において
いくつかの利点があります(19)。
〇オンターゲット性が高まる
〇望ましくないオフターゲット効果を減らせる
〇リボ核酸タンパク質は急速に分解される(20)ので
遺伝子編集のタイミングを制御しやすい。
つまり、一時的な編集が可能で、
長期にわたる望ましくない遺伝子編集が生じにくい。
これらがあります。
しかし、
このリボ核酸タンパク質を
遺伝子導入が難しい(hard-to-transduce)組織、細胞まで
輸送するためには、効果的に収納できる
適切な輸送系統が必要になります。
また、内容物を守り、標的化された輸送媒体である
必要もあります。
--
細胞外小胞はウィルス核酸ゲノムを含んでいません。
この事はタンパク質やRNA輸送に生かすことができます。
すでに臨床試験が行われています(21)。
レトロウィルス、Gagからのポリタンパク質は
細胞から生じた細胞外小胞の中の
積載物の理想的な候補です。
--
すでに細胞外小胞を輸送媒体とした
CRISPR-Cas9 RNP輸送方式は報告されています。
〇Cas9P LV(22)28
〇NanoBlades(23)29 systems that fuse SpCas9 with retroviral Gag
〇VEsiCas30 system that passively incorporates SpCas9,
〇Gesicle31 system that uses dimerization based incorporation of SpCas9,
これらです。
しかし、筋組織への生体内の輸送は明らかではありません。
さらに
SpCas9とGagの直接的な融合は
プロテアーゼ仲介へき開を通じて
Cas9をGagから引き離すために
Gag-Polの補充が必要になります。
このことはパッケージされるSpCas9分子の数を減らします。
Polの中でプロテアーゼを導入する事は
標的タンパク質内の暗号サイトで
プロテアーゼ仲介の劣化のリスクを向上させます。
それによって機能的タンパク質の輸送効率が下がります。
従って、
Cas9タンパク質とsgRNAのための
活発な封入駆動システムが必要になります。
これはGagとCas9タンパク質の直接的な融合に関与しません。
--
Peter Gee(敬称略)らは一体化された細胞外小胞輸送系統
NanoMEDIC
(nanomembrane-derived extracellular vesicles for
the delivery of macromolecular cargo)。
これを開発しました。
NanoMEDICは
〇T細胞
〇単球
〇iPS細胞
〇iPS由来皮質ニューロン
〇筋原細胞
これらのような様々な人の細胞の
効果的な遺伝子導入が可能であると確かめられています。
NanoMEDICは
DMD患者さんのiPS細胞の
splicing acceptor (SA)、donor sites(SD)。
これらを同時に標的化することもできます。
--
Peter Gee(敬称略)ら医療研究グループは
細胞外小胞を輸送キャリアとして
CRISPR-Cas9を一体的な様式で
標的細胞へ輸送し、
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療の
基礎的研究を行っています(1)。
その背景、結果の概要、
細胞外小胞を観点とした考察について
読者の方と情報共有したいと思います。
//結果概要(1)//ーー
Producer cells(HEK293T細胞)からの
細胞膜の萌芽によって生じた
細胞外小胞を利用。
その萌芽する過程で、SpCas9、sgRNAを引き付けて
細胞外小胞内に収納すると理解しています。
--
N-terminal fused FRB-SpCas9を細胞外小胞に
導入する能力を評価。
〇VSV-G-FKBP12
〇LM-FKBP12-Gag
〇LM-FKBP-EGFP
(評価結果は??)
--
FRB N-terminal fused SpCas9が
最も高い細胞外小胞封入効率、輸送効率、
標的細胞での放出効率を実現しています。
--
sgRNAを細胞外小胞萌芽位置に局在化させるために
レンチウイルス構成物質を利用しました。
〇The Tat activation response element (TAR) in the 5'LTR promoter region
〇An extended Psi(Ψ+) packaging signal that binds specifkcally with nucleocapsid of Gag
Tatタンパク質陽性条件では
Fig.2(ii)に示される5'LTR-Psi-RGRでは
sgRNAの収納効率が高く
遺伝子編集効率が上の2つのリンカーがないFig.2(i)
U6-sgRNAに比べて3倍になっています。
--
SgRNAとAP21967は相乗的にCas9を引き付けました。
AP21967;Rapamycin analog。FRBとの結合親和性が高い。
--
DMDのエクソンスキッピングの効率は
sgRNA-DMD1, sgRNA-DMD23
SA, SDサイト標的
これが最も高いとされています(Fig.3c)。
--
50%を超える高indel頻度がSA, SDサイトで
それぞれ得ららたとされています。
--
DMDの治療の標的となるエクソン45スキップは
DMD1, DMD23陽性で高い頻度で得られています(Fig.4c)。
この条件でジストロフィンタンパク質の発現がみられています。
※iPS細胞で確認。
--
NanoMEDICのオフターゲット効果は
DNAプラスミドに比べて顕著に低い。
ほとんど確認されませんでした(Fig.5d)。
--
マウスによる発光による確認で
タンパク質輸送、寿命の効果は一時的(1-2日)
程度でした(Fig.6a)。
また、肝臓、他の臓器などへのリークも
見られていません。
--
マウスにおいて
エクソンスキッピング持続効果は
少なくとも160日間ありました(Fig.6d)。
//細胞外小胞の観点での考察//ーー
Peter Gee(敬称略)らがFig.1aに示す
細胞外小胞へのCRISPR-Cas9システムの導入は
NanoMEDICと呼ばれます。
これがどのような機序で出来るか?
少なくとも筆者において
明示できる知識、経験レベルにありませんが、
示された図、文章からは
細胞膜からの「直接の」萌芽(budding)であると
解釈しました。
この機序で出来る細胞外小胞は
マイクロベシクルと呼ばれ、
エクソソームよりも大きく、
おそらく大きさにもばらつきがあると考えられます。
径が大きいので、CRISPR-Cas9のシステムを一体化して
収納する事が可能になったのかもしれません。
しかしながら、
文章中にはエクソソームの記載があり、
そのマーカーであるテトラスパニン(CD63, CD81)が
細胞外小胞に豊富に発現されていたとあります
そうであるとするならば、
Fig.1aの図よりももう少し複雑な機序で
細胞外小胞が放出されていることになります。
この点について関心があります。
Fig.1aに示されるように
放出される細胞外小胞の表面タンパク質は
遺伝子によってコントロールすることができます。
ここを制御する事によって
遺伝子治療で必須となる特異的輸送が可能になる
可能性もあります。
人の場合、身体の厚みもある事から
患部への直接投与が難しい場合もあります。
従って、輸送キャリアの細胞種特異的輸送系統(※)の
利用はその場合必要になります。
(※)Cell-type-specific delivery system。
但し、今回、Peter Gee(敬称略)らのマウスでの
患部投与(?)の結果において
肝臓や他の臓器へのリークは見られなかったとされています。
これは一つ重要な結果です。
--
またNanoMEDICのように
細胞内での細胞外小胞の形成過程において
結合親和性による引き寄せを利用して
薬理機能のある物質を自発的に封入する技術は
CRISPR-Cas9以外でも利用できる可能性があります。
(参考文献)
(1)
F, Mandy S. Y. Lung, Yuya Okuzaki, Noriko Sasakawa, Takahiro Iguchi, Yukimasa Makita, Hiroyuki Hozumi, Yasutomo Miura, Lucy F. Yang, Mio Iwasaki, Xiou H. Wang, Matthew A. Waller, Nanako Shirai, Yasuko O. Abe, Yoko Fujita, Kei Watanabe, Akihiro Kagita, Kumiko A. Iwabuchi, Masahiko Yasuda, Huaigeng Xu, Takeshi Noda, Jun Komano, Hidetoshi Sakurai, Naoto Inukai & Akitsu Hotta
Extracellular nanovesicles for packaging of CRISPR-Cas9 protein and sgRNA to induce therapeutic exon skipping
Nature Communications volume 11, Article number: 1334 (2020)
(2)
Jinek, M. et al. A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in
adaptive bacterial immunity. Science 337, 816–821 (2012).
(3)
Knott, G. J. & Doudna, J. A. CRISPR-Cas guides the future of genetic
engineering. Science 361, 866–869 (2018).
(4)
Guiraud, S. et al. The pathogenesis and therapy of muscular dystrophies. Annu
Rev. Genomics Hum. Genet. 16, 281–308 (2015).
(5)
Klingler, W., Jurkat-Rott, K., Lehmann-Horn, F. & Schleip, R. The role
of fibrosis in Duchenne muscular dystrophy. Acta Myol. 31, 184–195
(2012).
(6)
Li, H. L. et al. Precise correction of the dystrophin gene in duchenne muscular
dystrophy patient induced pluripotent stem cells by TALEN and CRISPR-
Cas9. Stem Cell Rep. 4, 143–154 (2015).
(7)
Long, C. et al. Postnatal genome editing partially restores dystrophin
expression in a mouse model of muscular dystrophy. Science 351, 400–403
(2016).
(8)
Nelson, C. E. et al. In vivo genome editing improves muscle function in a
mouse model of Duchenne muscular dystrophy. Science 351, 403–407 (2016).
(9)
Tabebordbar, M. et al. In vivo gene editing in dystrophic mouse muscle and
muscle stem cells. Science 351, 407–411 (2016).
(10)
Amoasii, L. et al. Gene editing restores dystrophin expression in a canine
model of Duchenne muscular dystrophy. Science 362, 86–91 (2018).
(11)
Wu, Z., Yang, H. & Colosi, P. Effect of genome size on AAV vector packaging.
Mol. Ther. 18, 80–86 (2010).
(12)
Rapti, K. et al. Neutralizing antibodies against AAV serotypes 1, 2, 6, and 9 in
sera of commonly used animal models. Mol. Ther. 20, 73–83 (2012).
(13)
Louis Jeune, V., Joergensen, J. A., Hajjar, R. J. & Weber, T. Pre-existing anti-
adeno-associated virus antibodies as a challenge in AAV gene therapy. Hum.
Gene Ther. Methods 24, 59–67 (2013).
(14)
Simhadri, V. L. et al. Prevalence of pre-existing antibodies to CRISPR-
associated nuclease Cas9 in the USA population. Mol. Ther. Methods Clin.
Dev. 10, 105–112 (2018).
(15)
Buchlis, G. et al. Factor IX expression in skeletal muscle of a severe hemophilia
B patient 10 years after AAV-mediated gene transfer. Blood 119, 3038–3041
(2012).
(16)
Cradick, T. J., Fine, E. J., Antico, C. J. & Bao, G. CRISPR/Cas9 systems
targeting -globin and CCR5 genes have substantial off-target activity. Nucleic
Acids Res. 41, 9584–9592 (2013).
(17)
Fu, Y. et al. High-frequency off-target mutagenesis induced by CRISPR-Cas
nucleases in human cells. Nat. Biotechnol. 31, 822–826 (2013).
(18)
Hsu, P. D. et al. DNA targeting specificity of RNA-guided Cas9 nucleases. Nat.
Biotechnol. 31, 827–832 (2013).
(19)
Xu, H. et al. Targeted disruption of HLA genes via CRISPR-Cas9 generates
iPSCs with enhanced immune compatibility. Cell Stem Cell 24, 566–578.e7
(2019).
(20)
Kim, S., Kim, D., Cho, S. W., Kim, J. & Kim, J.-S. Highly efficient RNA-guided
genome editing in human cells via delivery of purified Cas9
ribonucleoproteins. Genome Res. 24, 1012–1019 (2014).
(21)
Fuenmayor, J., Gòdia, F. & Cervera, L. Production of virus-like particles for
vaccines. Nat. Biotechnol. 39, 174–180 (2017).
登録:
コメントの投稿 (Atom)

0 コメント:
コメントを投稿