2022年8月23日火曜日

Author correction: SARS-CoV-2:ワクチンにより変異を続けるウィルスにどう対抗するか?

新型コロナウィルスは世界中で感染が広がり
多くの人が体内に保有している状態なので
無数に存在する新型コロナウィルスの変異の機会を
十分に与えてしまいます。
なぜなら、確率が低くても
一定割合はRNAの複製の際にコピーミスを起こし、
変異するからです。
そこから生き残った新型コロナウィルスは
感染性が高いものになっていしまいます。
これは自然選択に依ります。
幸いにも今流行しているオミクロン株の亜型は
新型コロナワクチンの普及なども関係しますが、
重症化リスクが低い状態になっています。
しかし、免疫が弱った人や
高齢者の方の一部が重症化してしまい、
その方の健康を脅かすだけではなく
医療リソースに悪影響を与えてしまいます。
一方で、
オミクロン対応のワクチン開発も進んでいますが、
現在の変異の周期、スピードに追い付いていきません。
ブースター接種で効果が高まる
という事は報告されています(2-4)。
但し、今の日本のケースで言うと
ワクチン接種率が高い状態にあっても、
感染者数を抑える事は難しい状況です。
問題はその感染者の絶対数よりも
重症化している人が一定割合いるということです。
上述したようにその方だけではなく
医療リソースにも大きく負荷をかけています。
従って、熱中症治療や小児医療などにも影響を与えています。
--
このような背景で考えると
より広範な株、系統に効果のある
ユニバーサル性の高いワクチンを開発する必要もあります。
Kei Sato(敬称略)は、
まだ感染性を高める変異サイトは残っているので
今後、さらに感染力の高い変異系統、株が生じる可能性は
かなり高いと述べています。
従って、定期的に生じると考えられる感染の波を弱くし、
新型コロナウィルスの世界的流行を収束させるためには
事前に高い免疫を獲得できる
「ユニバーサル性の高い」ワクチンが不可欠です。
1つとしては構造ベースの考え方が必要です。
同じ呼吸器系に作用するインフルエンザでも
変異が起こりにくドメインがあるので
新型コロナウィルスでも
生みだされた抗体がそういったドメインに作用し
かつ、ウィルスの増殖経路を抑える事ができれば、
状況は変わってくる可能性があります。
--
Xiangang Huang, Edo Kon, Xuexiang Han(敬称略)
からなる医療研究グループは
今後、高い確率で生じると考えられる変異に対して
ナノ技術ベースの戦略を
様々な観点で提示し、展望を示しています(1)。
すでにRNAの増殖を抑える薬に関しては、
変異サイトの多いオミクロン株に対しても
一定の有効性を見いだせています。
従って、今、世界で本当に必要なのは
仮に今後、変異したとしても
発症を事前に予防したり、
発症しても重症化しないような
上述した広範に効果のあるワクチン開発です。
従って、
現状で知られている新手のワクチンについての情報
引用されている論文内容、付加的な調査、考察について
読者の方と情報共有したいと思います。

//キメラ性Sタンパクワクチン//ーー
SAR-CoV-1、SAR-CoV-2、系統樹の中のRsSHC014 RBDなどを
ナノ粒子のRNA情報の中に混在させることによって
生みだされるたんぱく質のキメラ性を発揮させます。
David R. Martinez(敬称略)が示す
Fig.1Bの左列の下段の
SARS-CoV-2 wildtype furin knockoutが一番効果があります。
このfurinと呼ばれる酵素は
新型コロナウィルスが細胞侵入する際に必要な
S1サブユニットとS2サブユニットを切り離す際に
必要な物質なので、
この機能をあらかじめノックアウトすることによって
比較的変異に強い抗体が生み出されています。
例えば、逃避変異があるβ株などです。
また中和抗体価の絶対値が低いものの、
β株の減少幅がやや低いものとして
HKU3-1 NTD/SARS-CoV RBD/SARS-CoV-2 S2
のキメラRNA(翻訳:Sタンパク質)があります。
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しかし、一つ疑問があります。
furinをノックアウトしたmRNAから生み出された
タンパク質は確かにfurinの機能は失わえている
と考えられますが、
それを濾胞性T細胞やB細胞が抗原認識して
プラズマ細胞などを介して、抗体に反映するとき
その抗体の構造はどのように変化するのか?
少し見方を変えれば、
その抗体は変異を遂げる新型コロナウィルスの
Sタンパク質のどのエピトープを認識するのか?
生みだされた抗体はFurinに作用するのか?
ということです。

//環状RNAワクチン//ーー
Liang Qu(敬称略)らが示しているワクチンは
線状ではなく、環状mRNAからなるワクチンです(6)。
このメリットは「安定性が高い」ということです。
哺乳類細胞の中で通常の2.5倍の半減期を示した
という報告もあります(7)。
従って、ワクチンの効き目が長くなる
ということが期待できます。
例えば、数か月で効き目が落ちるということが
半年以上ということになるかもしれません。
但し、効き始めが遅かったり
ピークの効き目が下がるかもしれません。
その点については参考文献(6)では調べられていませんが、
ワクチンの効き目が長くなるかもしれない
というのは利点であると考えられます。

//RBDワクチン//ーー
Alexandra C. Walls(敬称略)らが示している
RBDナノ粒子ワクチンは抗体発現効率が良いとされています。
実際にマウスにSARS-CoV-2を投与した場合と比べると
ナノ粒子/ウィルス量としては1/5にもかかわらず
10倍の抗体価があったとされています(9)。
その理由はいくつか考えられます。
-
①RBD以外の余計な構造がないために
抗原認識の精度が上がった。
-
②樹状細胞などによるタンパク質生成を介さずに
血中にそのまま投与するため
抗原認識の効率が上がった。
-
③ナノ粒子に固定されているために
RBDの露出が安定的である。
-
その他の事として
ナノ粒子に装飾できるRBDドメインの数を制御することができます。
また、ナノ粒子の電荷などの条件を考えると
抗原認識する細胞を引き付ける事ができるかもしれません。
それによって抗原認識能力が高まり、
投与量や抗体価を上げる事ができる可能性があります。
実際に抗原認識効率という点においては
Linling He(敬称略)らが示している様に
RBDドメインを露出させて、
T細胞の結合部位のクラスターを形成することで
生みだされる抗体の効率が向上しています(10)。
-
RBDワクチンは抗体価が元々高いので、
その絶対値を大きく下げることなく、
タンパク質のRBDを多価(multi-valency)にできます。
そうすればオミクロン株を含めて交差性の高いワクチンを
生み出すことができる可能性があります。

//考察//ーー
現状の新型コロナウィルスにおいては
ワクチンではなく細胞内のウィルスRNA経路に作用する
薬剤については、変異株の影響が少ないので、
治療体制、制度が整って、
熱が出て、陽性が判明した時点で
すぐに薬を飲むことができたら
おそらく重症化する人はさらに減ると考えられます。
これが一つの対処法だと思います。
--
今後もおそらく生じる変異株に対する
ワクチンの効果を上げるということになれば、
いくつかの考え方があります。
①抗体価を上げる
②抗体の持続期間を上げる
基本的に中和能/抗体価の比が一定であれば
抗体価が上がれば、中和能もそれに比例して上がります。
持続期間も長くなれば、
接種してからしばらく経っても
ウィルス感染のリスクが低下したままになります。
しかし、逃避変異で中和能が1/10、1/100になると
抗体価やその持続期間だけで対処するのは難しくなります。
そうすると
変異が入っても、
RBDとの結合力が高い、つまり中和能が高い
ユニバーサルなワクチンの必要性出てきます。
そうした背景の中で、
〇RBDの中で変異の確率が低い遺伝的に安定なサイトに
 結合する抗体か
〇多くのRBDに結合する抗体
という見方がでてきます。
もう1つは
Ryota Maeda(敬称略)らがFig.6cに示しているように
「Sタンパク質の窪みにはまるような」構造をもつ(11)
抗体を見つけることです。
このような窪みにはまる構造だと
仮に結合力が弱まっても、比較的強い安定性を保つ事が
できる可能性があります。
Ryota Maeda(敬称略)らはアルパカなどが保有している
重鎖の小さなナノボディーで見つけましたが
ひょっとすると人が生み出す多様な抗体の中で
「窪みにはまるような」条件のある抗体があるかもしれません。
但し、見つかったとしても
その抗体を抗原認識する前のRNAやタンパク質情報に変換して、身体の自然な機序で精製して生み出すのは難しいかもしれません。
逆問題になります。この逆問題を解決するための考えられる方法は、窪みに整合してはまるような構造を持つ抗体Aが仮にわかったとしたら、その抗体Aの数とRNAやタンパク質情報の関係性を今度は調べていきます。例えば、タンパク質A、B、Cがあるとして、その中でタンパク質Cだけ抗体Aが明らかに多ければ、そこから抗体Aを生み出すための抗原認識前のタンパク質の構造の特徴が洗い出せるかもしれません。これは比べる数が多くないと難しいかもしれないし、機械学習などが必要かもしれません。
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基本的に抗体の産生に関わる
濾胞性CD4+T細胞、B細胞、プラズマ細胞など
これら免疫細胞を何らかの形で改変することは
リスクが大きすぎて難しいのではないかと考えています。
例えば、
「人からアルパカのナノボディーを生み出すことができるか?」
といった問いなどが挙げられます。
そうすると、
今、自然な形で人から生み出されている
非常に多様な抗体の中で
偶然になるかもしれないですが、
変異に強い構造を持った抗体があるかもしれません。
自然な免疫系の働きを無理に変えないとすれば、
そのアプローチしか現時点では思いつきません。
--
他にも視点としては
非常に半減期の長い抗ウィルス薬を開発する
という事も頭にはありますが、
それなら罹患してから速やかに
抗ウィルス薬を投与したほうが、
ずっと筋が良いように思えます。
--
変異に強いワクチンとなると
〇抗体産生効率が高い
〇抗体持続期間が長い
〇抗体の中和能が高い
これら3つが満たされていているということに
基本的にはなると思います。
変異に強いというのは
構造ベースで考えると
RBDを含むSタンパク質の形状(包絡線)とより多く重なる
ような構造を持つ抗体があるか?
ということになります。
その中で特に窪みに入り込む(11)というのは
重要な要素かもしれません。

(参考文献)
(1)
Xiangang Huang, Edo Kon, Xuexiang Han, Xingcai Zhang, Na Kong, Michael J. Mitchell, Dan Peer & Wei Tao 
Nanotechnology-based strategies against SARS-CoV-2 variants
Nature Nanotechnology (2022)
(2)
Nemet, I. et al. Third BNT162b2 vaccination neutralization of SARS-CoV-2 
Omicron infection. N. Engl. J. Med. 386, 492–494 (2021).  
(3)
Pajon, R. et al. SARS-CoV-2 Omicron variant neutralization after 
mRNA-1273 booster vaccination. N. Engl. J. Med. 386, 1088–1091 (2022).
(4)
Wu, M. et al. Three-dose vaccination elicits neutralising antibodies against 
Omicron. Lancet 399, 715–717 (2022).
(5)
David R. Martinez et al.
Chimeric spike mRNA vaccines protect against Sarbecovirus challenge in mice
Science 373 , 991 – 998 (2021)
(6)
Liang Qu et al.
Circular RNA vaccines against SARS-CoV-2 and emerging variants
Cell 185, 1728–1744, May 12, 2022
(7)
Enuka, Y et al.
Circular RNAs are long-lived and display only minimal early alterations in response to a growth factor. 
Nucleic Acids Res. 44, 1370–1383.
(8)
Alexandra C. Walls et al.
Elicitation of broadly protective sarbecovirus immunity by receptor-binding domain nanoparticle vaccines
Cell 184, 5432–5447, October 14, 2021
(9)
Kenneth H. Dinnon III, et al.
A mouse-adapted model of SARS-CoV-2 to test COVID-19 countermeasures
Nature volume 586, pages560–566 (2020)
(10)
Linling He et al.
Single-component, self-assembling, protein nanoparticles presenting the receptor binding domain and stabilized spike as SARS-CoV-2 vaccine candidates
Sci. Adv. 2021; 7 : eabf1591 19 March 2021
(11)
Ryota Maeda et al.
A panel of nanobodies recognizing conserved hidden clefts of all SARS-CoV-2 spike variants including Omicron
Communications Biology volume 5, Article number: 669 (2022)

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