人の思考には必ず何らかのバイアスがある
と言われています。
その短絡経路によって、
何らかの情報、概念が見えなくなっています。
それを独力で埋める事は
仮にどんなに努力して知識を高めていっても不可能です。
従って、その空白をより小さくするためには
集団的な知能が重要になると考えられます。
教科書、科学論文などの書物を読んだり、
直接人と議論、話をすることもそうです。
そういった情報をまとめてシャアすることもそうです。
時には自分の分野と関連性の小さい
異分野の情報をとったり、
その専門家と話する事も有効です。
そうした中で先入観によって見えていなかったことが
見える事があります。
時には本日の記事のように
一時的な勘違いによって気づきがあることがあります。
--
本日はEdit I. Buzas(敬称略)の
獲得免疫と細胞外小胞の総括部分について
内容の一部を参照しています(1)。
そこから独自の視点、記述を加えています。
また、直接的なつながりはないものの
派生的に生まれた
細胞外小胞と細胞膜融合について調べ、
記述しています。
それがどういう意味を持つかについても
考察しています。
その内容を日本、世界の読者の方と
情報共有したいと思います。
//リンパ球分化//ーー
細胞外小胞はT細胞分化において重要な役割を持っています。
それは胸腺の上皮細胞から放出される
胸腺由来の細胞外小胞が主に関わります。
胸腺上皮細胞由来の細胞外小胞は
組織限定的な抗原を胸腺の樹状細胞まで
抗原提示の為に輸送します。
このような様式で
細胞外小胞は自己抗原の為の特異性を持つ
T細胞の中枢性免疫寛容に貢献します(2)。
つまり、自己に反応するリンパ球を排除する
負の選択が行われます。
加えて、
胸腺上皮細胞由来の細胞外小胞は
単一陽性(CD4+, CD8+)のT細胞の成熟にも関わります。
それは成熟自身や胸腺退出に関わるたんぱく質を
輸送することによって生じます。
そのたんぱく質とは
〇Sphingosine-1-phosphatase lyase 1 (SGPL1)
〇Rho GDP- dissociation inhibitor 1 (GDIR1)
〇Dedicator of cytokinesis protein 2 (DOCK2)
〇p21 protein- activated kinase 2 (PAK2)
これらです(3)。
--
B細胞においては
未成熟プリマリー骨髄性B細胞は
CD24+血漿膜由来細胞外小胞を放出します。
それはCD24の抗体の誘発によって生じます。
CD24の細胞外小胞を介した交換は
B細胞種の間で記録されます(4)。
このCD24はB細胞分化や骨髄での選択性において
重要な役割を担っています。
従って、このCD24をB細胞間で輸送する
細胞外小胞はB細胞の分化に潜在的に影響を与えます。
近年、
anti-IgM,
架橋結合された第一、第二の抗体で
マウスのB細胞において
B細胞受容体、CD24を刺激する事で
細胞外小胞の産生を促します。
それが、
他の受けB細胞に対して、
機能的なB細胞受容体、CD24を輸送します(5)。
この輸送は、受け側のB細胞が
付加的なB細胞受容体を受け取る事によって
新手の抗原を刺激する事を可能にします。
それがCD24媒体のアポトーシスに対する
感受性を持つ細胞を生み出します。
この細胞外小胞仲介のB細胞受容体輸送の効果は
B細胞分化の間
あるいは活性化の間において
時間と空間、
両方において局在性を与えるかもしれません。
なぜなら、テストされた細胞群の中の
B細胞少数群(5-20%)は
この機序によって
新しいB細胞受容体を手に入れたからです。
//抗原提示//ーー
細胞外小胞の抗原提示能力は
細胞外小胞が獲得免疫系において
重要な役割を持つかもしれない事を示す
第一マイルストーンの発見です。
--
もし、pMHCを輸送する細胞外小胞を
樹状細胞表面に取り付ける事が出来たら
抗原提示の効果は上昇します(6)。
このケースでは
樹状細胞取り付けがないエクソソームより
それがあって抗原提示能力が上がっている
エクソソームが100倍少なくても
同程度のT細胞活性化が達成されます。
↓
(考察1)
この事は、細胞外小胞を体内に投与するときに
特にドナー細胞が免疫細胞である場合には
免疫機能を異常に高めてしまわないか
注意が必要です。
少なくとも細胞外小胞を体内に
薬剤(キャリア)として投与する場合には
その細胞外小胞のドナー細胞の管理はもちろんの事
細胞外小胞の表面に発現されている
受容体、表面リガンドの種類を分析、管理する事は
安全に運用する上で不可欠な可能性は高いです。
--
'cross-dressed'
つまり、交差的な装飾因子を持つ
樹状細胞は免疫系の信号やT細胞の活性化に対して
多くの数の細胞外小胞関連のpMHCsを集中化させます。
細胞外小胞による直接的、2次的、間接的な
抗原提示機序に加えて、
ナイーブで影響を受けていない抗原と同様に
pMHCを輸送する輸送媒体は
間接的な抗原提示のための
抗原提示細胞による効果的な取り込みプロセスに
関わりうるとされています(7)。
--
近年、細胞外小胞による
交差性のある受容体発現、抗原提示(Cross-presentation)
は注目を浴びています。
CD8+T細胞へのMHCクラスⅠ複合体上の
外因性抗原の交差性提示は
ウィルス感染や腫瘍組織に対する免疫機能において
重要な役割を担っています。
ワクチン接種や免疫寛容性誘発に対する
免疫反応においても同様です。
pMHCクラスⅠを輸送する細胞外小胞によって
刺激された樹状細胞は
ナイーブCD8+T細胞を発生させました(8)。
細胞外小胞の樹状細胞ドナーと受け樹状細胞の間の
継続的な輸送は癌特異的なCD8+T細胞の
交差発生(cross-priming)に関与します(9)。
このケースでは
癌抗原を輸送する拡散樹状細胞は
癌微小環境に固着し、
近隣のリンパ節に移動します。
このリンパ節の中で
拡散された樹状細胞はpMHCクラスⅠを輸送する
細胞外小胞を放出します。
これらは免疫シナプス
(抗原提示とリンパ球の接合界面形成)。
これを実現し、
リンパ節常在樹状細胞に輸送されます。
つまり、キラーT細胞を誘発する
pMHCクラスⅠ抗原提示樹状細胞が
免疫シナプス様に癌組織近傍リンパ節に常在している
樹状細胞を抗原提示させるということである
と理解しています。
この機序はCD8+T細胞への抗原提示の為の
リンパ節常在樹状細胞への
主要な生理経路であるとされています。
ナイーブCD8+T細胞への交差性抗原提示の為の
樹状細胞への抗原輸送における
形質細胞様樹状細胞由来の細胞外小胞の関与が
近年のデータで示されています(10)。
形質細胞様樹状細胞由来の細胞外小胞は
交差性装飾(Cross-dressing)類似性プロセスや
細胞外小胞の取り込みのプロセスを通して
樹状細胞による抗原提示を可能にしています。
これは間接的抗原提示プロセスを示します。
--
興味深い新手の発見は
中程度サイズの血小板由来の細胞外小胞
(マクロベシクル)が
抗原提示の完全な機能ユニットとしての
機能を持ちうるということです。
それはpMHCクラスⅠ複合体や
共刺激性分子(CD40L, CD40, OX40L)を
表面装飾物質として輸送するだけではなく
抗原提示の為のペプチド生成を可能にする
20Sプロテアソームを含みます。
実験の条件では
血小板由来の細胞外小胞のプロテアソームは
外因性抗原をプロセスし、
MHCクラスⅠ分子上のペプチドを積載します。
それによって、それを認識する
抗原特異的なCD8+T細胞の増殖に繋がります(11)。
細胞外小胞表面関連性酵素が
抗原の細胞外プロセスにおいて役割を持つか
どうかはまだわかっていません。
表面関連酵素とは例えば
マトリックスメタロプロテアーゼです(12)。
//細胞外小胞と細胞膜の膜融合とその可能性//ーー
細胞外小胞は表面リガンドによる「結合」や
装飾物質、内容物を輸送する役目もありますが、
表面リガンドそのものを
細胞膜に輸送する機序もあるかもしれません。
Edit I. Buzas(敬称略)の記述から
最終的には筆者の勘違いでしたが、
上述した重要な視点が生まれました。
実際に細胞外小胞の表面リガンドが
受け細胞の細胞膜に引き継がれることを暗示する
機序についての報告があります(13)。
Ilaria Prada, Jacopo Meldolesi(敬称略)が
Figure,2に示すように(13)、
細胞外小胞と細胞膜が「膜融合」すれば、
細胞外小胞の受容体や表面リガンドは
細胞膜表面に受け継がれる可能性が高いです。
なぜなら、細胞外小胞のエンベロープ膜が
そのまま受け細胞の細胞膜に残ると考えられるからです。
細胞膜に残れば、エンベロープ膜上にある
表面リガンド、受容体も残ると考えるのが自然です。
--
細胞外小胞が細胞に取り込まれるときには
エンドソームを介して取り込まれるなど
エンドサイトーシスの機序はいくつか考えられますが、
細胞膜との融合を促すリガンドがある
とされています。
それが
〇クラスⅠタンパク質。
〇syncytin-1
〇syncytin-2
これらです。
これらは細胞膜融合プロセスに関わる事が
知られています(14,15)。
これは栄養芽層由来のエクソソームで
発現されていることが知られています(15)。
他の細胞外小胞でも見つかるかもしれません(13)。
これがFigure.2に示すように
細胞膜上の
the receptors Major Facilitator Superfamily Domain 2a (MFSD2a)。
これと結合することで
細胞外小胞と細胞膜の膜融合が実現する可能性があります。
このMFSD2aは血液脳関門の内皮細胞に発現されているとありますが、
全体的な視野としては、
細胞の融合プロセスに関わる受容体を理解します。
その受容体の片側を細胞外小胞に
人工的に装飾させる事によって
あるいは
それがすでにある細胞外小胞を選ぶことによって
細胞外小胞との膜融合が可能になるかもしれません。
このように
細胞外小胞を膜融合しやすくするように
エンジニアリングする事も出来ると思います。
--
これをすることによってどのような可能性が生まれるか?
例えば、
標的にしやすい表面タンパク質を
病変部位の細胞に装飾できるかもしれません。
あるいは、
すでに標的細胞に発現されている表面タンパク質のうち
その密度を増やしたいときに利用できます。
これによって、
細胞種特異的輸送系統
(Cell-type-specific delivery system)。
これの実現性が高まります。
上述したように標的細胞と膜融合しやすいように
エンジニアリングした細胞外小胞に
標的性を上げるための任意の表面タンパク質を装飾し、
それによって標的細胞の表面タンパク質を
標的化しやすいように好ましい形に変え、
その後、薬理機能の強い細胞外小胞やナノ粒子を投与します。
--
例えば、
CD19は急性リンパ性白血病において
ターゲットとなる受容体です。
B細胞に発現するCD19受容体の量を増やすため
CD19を同様に表面に持つ、
細胞外小胞を投与します。
この細胞外小胞がB細胞と膜融合するようにします。
そうすれば、
CAR-T治療の感受性が高まる可能性があります。
--
但し、細胞表面の表面リガンドが変わる(変わりやすい)事が
どんな副作用、悪影響があるかわかりません。
細胞外小胞は臓器間の長距離のネットワークにも関わっていますが、
細胞種特有の表面リガンドの恒常性を守るために
自然な機序として
表面リガンドの種類があまり劇的に動かないような機序が
あるかもしれません。
そうすると上述した医療工学の
デメリットの方が大きくなる可能性もあります。
そうした中で、
オフターゲットが起きたときにはどうか?
そういう負の側面も考える必要があります。
--
そうであっても
細胞外小胞が自身が持つ表面リガンド、受容体を
受け細胞膜に表現させることができるか?
それが、膜融合を通じて起こるか?
そういったことを基礎実験的に確かめる事は
細胞外小胞、ナノ粒子を用いた
細胞種特異的輸送系統や
その他の標的治療において
重要な医療的意義を持つと考えます。
//追記//ーー
勘の良い方は、この記事の欠陥に気付いたと思います。
結局、初めの細胞外小胞の投与の時点で十分に標的化してなければ
メリットは生かせないので、それならシンプルに
1回目の投与での質の良い標的化を考えたほうが筋がいい
と考えるかもしれません。
しかし、癌の化学療法などでもいえることですが、
基本的に治療を続ければ続けるほど
薬剤の効き目が良くなるよりも、悪くなるケースのほうが
多いといえるのではないか?と思います。
薬剤耐性が生まれるからです。
それを考慮に入れると、細胞外小胞で治療をするにあたって
標的化に有利な機序を組み込んでおくと
治療するにしたがって、表面タンパク質は標的化に有利な様に
変わっていく可能性があるので、
それによって薬剤耐性の勢力を弱め、持続的な治療に貢献する
可能性があります。
従って、修正するとすれば、
初めから薬理機能のある細胞外小胞による治療を行いながら
細胞膜表面に有利な表面タンパク質を残すような機序を
同時に組み込むことです。
それによって治療するにしたがって
標的性が上がっていくので、
どうしても生じてしまう薬剤耐性に対抗できる可能性があることです。
これはこの記事の欠陥を埋めるものである
と私は考えました。
Author correctionとして追記いたします。
この問題については継続的に考えていきます。
(参考文献)
(1)
Edit I. Buzas
The roles of extracellular vesicles in the immune system
Nature Reviews Immunology (2022)
(2)
Skogberg, G. et al. Human thymic epithelial primary
cells produce exosomes carrying tissue- restricted
antigens. Immunol. Cell Biol. 93, 727–734 (2015).
(3)
Lundberg, V. et al. Thymic exosomes promote the final
maturation of thymocytes. Sci. Rep. 6, 36479 (2016).
(4)
Ayre, D. C. et al. Dynamic regulation of CD24
expression and release of CD24-containing
microvesicles in immature B cells in response
to CD24 engagement. Immunology 146, 217–233
(2015).
(5)
Phan, H. D. et al. CD24 and IgM stimulation of B cells
triggers transfer of functional B cell receptor to B cell
recipients via extracellular vesicles. J. Immunol. 12,
ji2100025 (2021).
(6)
Vincent- Schneider, H. et al. Exosomes bearing
HLA- DR1 molecules need dendritic cells to efficiently
stimulate specific T cells. Int. Immunol. 14, 713–722
(2002).
(7)
Théry, C. et al. Indirect activation of naive CD4 + T cells
by dendritic cell- derived exosomes. Nat. Immunol. 3,
1156–1162 (2002).
(8)
André, F. et al. Exosomes as potent cell-free peptide-
based vaccine. I. Dendritic cell-derived exosomes
transfer functional MHC class I/peptide complexes to
dendritic cells. J. Immunol. 172, 2126–2136 (2004).
(9)
Balan, S. & Bhardwaj, N. Cross- presentation of tumor
antigens is ruled by synaptic transfer of vesicles among
dendritic cell subsets. Cancer Cell 37, 751–753 (2020).
(10)
Fu, C. et al. Plasmacytoid dendritic cells cross- prime
naive CD8 T cells by transferring antigen to conventional
dendritic cells through exosomes. Proc. Natl Acad.
Sci. USA 117, 23730–23741 (2020).
(11)
Marcoux, G. et al. Platelet EVs contain an active
proteasome involved in protein processing for antigen
presentation via MHC- I molecules. Blood 138,
2607–2620 (2021).
(12)
Buzás, E. I., Tóth, E. Á., Sódar, B. W. & Szabó- Taylor, K. É.
Molecular interactions at the surface of extracellular
vesicles. Semin. Immunopathol. 40, 453–464 (2018).
(13)
Ilaria Prada and Jacopo Meldolesi
Binding and Fusion of Extracellular Vesicles to the Plasma Membrane of Their Cell Targets
Int. J. Mol. Sci. 2016, 17, 1296;
(14)
Potgens, A.J.; Drewlo, S.; Kokozidou, M.; Kaufmann, P. Syncytin: The major regulator of trophoblast fusion?
Recent developments and hypotheses on its action. Hum. Reprod. Update 2004, 10, 487–496.
(15)
Tolosa, J.M.; Schjenken, J.E.; Clifton, V.L.; Vargas, A.; Barbeau, B.; Lowry, P.; Maiti, K.; Smith, R.
The endogenous retroviral envelope protein syncytin-1 inhibits LPS/PHA-stimulated cytokine responses in
human blood and is sorted into placental exosomes. Placenta 2012, 33, 933–941.

0 コメント:
コメントを投稿