細胞表面には多種多様な無数の表面(糖)タンパク質があります。
そのたんぱく質は固定されているわけではなく、
動く性質を持っています。
それを裏付けるのは免疫シナプスという現象です。
免疫シナプスを形成するために
T細胞の受容体は結合部位に集まる事ができます。
そして周辺にインテグリン、接着受容体を発現します。
例えば、
これは免疫細胞だけに限らず
癌細胞と免疫細胞の間でも結合シナプスを形成する
可能性があります(15)。
結合シナプスが形成されるのであれば
癌細胞と免疫細胞の物質交換、信号伝達は
非常に活発になります。
癌細胞が持つ免疫チェックポイントを介した
免疫逃避も一つの結合ではなく
多くの結合の並列によって
より強いシナプスを形成している可能性があります。
しかし、これの確かな証拠は見つかっていません。
現時点では仮説です。
ただし、表面受容体が動く、ダイナミックである
という事はおそらく真なので、
それを前提に考えると
普段目にする1種類の受容体-リガンドペアが1つである
細胞結合の図から生まれる先入観を払拭する事に成功します。
但し、異種の接合が同時に実現している
細胞間の図は広く見られ、描かれています。
しかし、その数は想像しているよりも実際は
多い可能性があります。
細胞内のミトコンドリアのようにです。
普段細胞を見ている人ならこうした先入観はないかもしれません。
但し、光学顕微鏡で表面リガンドが見えるわけではありません。
その動きはどういった機序で制御されているのでしょうか?
--
Edit I. Buzas(敬称略)は
免疫システムの中の細胞外小胞の役割について述べています。
その中で本日は冒頭で述べた免疫シナプスに関する
項目の内容の一部を参照し、
独自の調査、考察を加えました。
そして、免疫シナプスの考え方を広範に考え
そこから細胞種特異的輸送系統への応用を視野に入れ
さらに考察を加えました。
その中でAkiko Hashimoto-Tane(敬称略)らの
免疫シナプスの研究は非常に重要な見識を与えました(16)。
その内容を読者の方と情報共有したいと思います。
//免疫シナプス//ーー
細胞外小胞はリンパ球と抗原提示細胞の間の
免疫シナプス機能に関与します。
免疫シナプスに関与する細胞外小胞は
近年免疫シナプスで見つかった
CD8+T細胞由来のSupramolecular attack particles。
これと区別されます(2)。
これはThrombospondin 1 shellによって収納された
非細胞外小胞性の自立性の致死性粒子です。
--
十年以上前、T細胞多胞体由来の細胞外小胞(エクソソーム)
とそれらmiRNA積載物の抗原提示細胞への輸送は
免疫シナプスサイトで生じる事がわかっていました(3)。
それ以降に、抗原誘発性、T細胞膜由来の細胞外小胞分泌が
免疫シナプス中心で観測されました。
それはT細胞受容体を豊富に含む細胞外小胞です。
細胞外小胞内のT細胞受容体のソートや放出は
免疫シナプスの特徴とされています(4,5)。
近年のデータでは
T細胞受容体信号に誘発されたT細胞トランスシナプス性小胞は
構造的に放出される細胞外小胞よりも
免疫エフェクターを多く含むとされています(6)。
例えば、
T細胞受容体, CD40L, RNA結合性タンパク質、miRNAです。
↓
(考察)
免疫シナプスはT細胞受容体が樹状細胞との間で結合すると
その受容体が引き合い集まる性質があります。
100個程度集まることもあります。
それで多数の並列結合が生まれます。
やがてその周りには接着性を高めるインテグリンが囲むようになり
そこで大きな結合性集合体を作ります。
信号伝達が非常に密になっていることから
それを「免疫シナプス」と呼びます(7,16)。
上述したCéspedes, P. F.(敬称略)らの報告(6)。
これと併せて考えると
細胞外小胞をエンジニアリングする上で
非常に重要な示唆が得られます。
免疫シナプス領域内では
T細胞受容体を初め多数の関連する受容体が集まっている
と想定できます。
あるいはそれに引き寄せられるT細胞質内の物質
例えば、miRNA(?)もあるかもしれません。
免疫シナプスに誘導される様式で
細胞外小胞が作られると
その細胞膜には多くの受容体が密集していますから
その細胞膜の情報を引き継ぎ、
結果として
Céspedes, P. F.(敬称略)らの報告(6)で示されたように
放出された小胞の表面リガンドや内容物が
そうではなく構造的に放出された細胞外小胞と
大きく異なるということが生じる
と考える事ができます。
--
T細胞表面の微繊毛はT細胞-抗原提示細胞の
接触界面で見つかります。
これは抗原提示細胞の表面に結合する
構造であると従来は考えられていました。
しかしながら、
微繊毛はT細胞受容体を豊富に含む細胞外小胞
T細胞微繊毛粒子
T cell microvilli particles (TMPs)。
これを形成する事が近年示されました。
これは抗原提示細胞表面に配置されます。
CD4+T細胞由来のT細胞微繊毛粒子は
〇T細胞受容体複合体
〇共刺激性分子(CD2, CD28)
〇サイトカイン(IL-33, IL-4, IL-7, TNF)。
これらを輸送します。
T細胞微繊毛粒子は
免疫性Synaptosome
(シナプスによって生じた物質群)。
これを表現すると提示されています。
それら免疫性Synaptosomeは
物理的に相互作用をするT細胞と樹状細胞の間の
特異的かつ急速な積載物物質輸送を可能にするとされています。
それによって、最小のバイスタンダー効果を持つ
樹状細胞の活性化を制御しています(8)。
--
B細胞はT細胞と抗原提示シナプスを形成する事ができます。
この結合の束であるシナプスを通じて
〇miR-20a-5p
〇miR-25-3p
〇miR-155-3p
これらをT細胞からB細胞へ輸送する事ができます。
輸送媒体はシナプス領域で出来たエクソソームです。
それによって
〇The genes encoding phosphatase and
〇Tensin homologue (PTEN)
〇Bcl-2-interacting mediator of cell death (BIM; also known as BCL-2L11)
これらのB細胞の遺伝子サイレンシングに関与します。
PTEN, BIMはB細胞生物学、胚中心反応に
非常に重要な役割を果たします。
BIMは
〇BCR activation-induced cell cycle entry
〇apoptotic killing of low- affinity BCR- expressing B cells
これらに対して必要とされています(9,10)。
一方で、
PTENは成熟B細胞のIgD B細胞受容体の発現を制御しています。
また、胚中心反応を制御しています(11)。
T細胞からB細胞へのmiRNA含有のエクソソームの
免疫シナプス性輸送は
胚中心形成と抗体産生において重要な役割を果たしています(12)。
T細胞の抗原提示シナプスの形成に加えて、
B細胞は抗原捕獲、プロセスの目的のため
濾胞性樹状細胞とシナプスを形成します。
生体内で
B細胞と濾胞性樹状細胞のシナプスは
pMHCクラス2輸送のエクソソームを含み
濾胞性樹状細胞表面に接着しています。
MHCクラス2分子は濾胞性樹状細胞によって発現されていない
事を考えると、
pMHCクラス2複合体はB細胞から放出された
細胞外小胞によって濾胞性樹状細胞に輸送されたと
仮説を立てることができます。
↓
(考察)
少し見方を変えて言い換えると
細胞外小胞は内容物だけではなく
表面リガンド、受容体そのものを受け細胞に輸送し
受け細胞表面に発現させる機序があるかもしれない
という仮説です。
--
濾胞性樹状細胞関連pMHCクラス2輸送エクソソームは
胚中心でB細胞分化の共刺激のため
抗原特異的T細胞を誘導します(13)。
濾胞性樹状細胞は
Iccosomesとして知られる細胞外小胞を産生します。
それは濾胞性樹状細胞の糸状の突起物のビーズに
よって形成されます。
また抗原-抗体複合体によってコートされます。
この濾胞性樹状細胞由来の細胞外小胞は
B細胞によって取り込まれ、
輸送された抗原は
B細胞による抗原提示のためのプロセスに入ります(14)。
//細胞種特異的輸送系統の観点//ーー
(※)Cell-type-specific delivery system
受容体による束、シナプス形成は
細胞種特異的輸送系統にも生かすことができます。
例えば、
特定の受容体に結合するように
エンジニアリングした細胞外小胞を輸送するときに
「予め」標的細胞側の受容体が集まる事を想定して
密集して標的受容体に対するリガンドを形成しておきます。
そうすると、細胞外小胞の標的性や
内容物の細胞内への輸送効率が上がる可能性があります。
もし、受容体があつまりシナプス形成する条件、機序がわかれば
それを組み込むことによって
細胞種特異的輸送系統の特異性、効果が上がる事が想定されます。
ひょっとすると細胞外小胞表面に形成されている
表面リガンドの分布が密であれば、
それに引き寄せられてシナプス形成する事も考えられるかもしれません。
細胞が表面受容体を動かす機序を持っている可能性は高いですが、
細胞外小胞はないのか?
ない可能性がありますが、未知の部分があります。
序章で述べた様に
細胞の表面にある受容体やリガンドは動性を持っていて
位置を変える事ができるし、
エンドソームや小胞の形成によって
発現量、密度を変える事も出来る可能性があります。
また、外的に細胞外小胞を取り込むことによって
新たな受容体、リガンドを形成する事もできるかもしれません。
従って、それぞれの細胞の表面(糖)タンパク質は
非常にダイナミックであると考えることができます。
その中で、前述したように
集まる性質を生かして標的性、取り込み効率を上げる
ことができるかもしれないし、
逆の視点として
減る、離れる性質を生かして、
オフターゲットを抑制する事も出来るかもしれません。
(追記)
受容体-リガンドの結合はよく論理回路でAND, OR, NAND回路などで表現されることがあります。実際に発現の有無で考えるとデジタルの1、0の考え方でいいかもしれないですが、シナプスの考え方で重要なのはONになっている時の信号伝達に段階があるという事です。結合している受容体の数が場合によれば集合になっていて100くらいになっているということです。ここまでいかなくても実際には10程度並列して結合している受容体もあるかもしれません。あるいは2かもしれません。それによって電気回路の可変抵抗のように信号の電流値が連続的、段階的に変わり得るということです。実際に脳のシナプスでもそのように流れる電子の量には連続性があるかもしれません。そのような事が神経細胞以外の細胞同士でも起こっている可能性があるということです。エクソソームと細胞の場合は、エクソソームの径が100nmとすると球の表面積が125664(nm2)になります。細胞は鉄球のように硬くなく、柔らかいので、そのたわみによってある程度の接触面積があるとして、エクソソームの場合は仮に全表面積の1/100程度接触できるとすると1256.64(nm2)になります。仮にリガンドの断面積が100(nm2)という事は高分子なのでないと思うので、1000(nm2)だとするとその時点で1つ程度ということになります。そうすると上で述べたエクソソームで並列に結合できるリガンドは限られるという事になりそうです。たわみが大きく接触できる面積が大きくなると状況はもう少し変わってくると思います。いずれにしても細胞は柔らかくたわむということを考えると、細胞同士、細胞-細胞外小胞、細胞-ナノ粒子の接触は点ではなく、面であり、その面積は頭でイメージしているよりも大きいかもしれません。
(参考文献)
(1)
Edit I. Buzas
The roles of extracellular vesicles in the immune system
Nature Reviews Immunology (2022)
(2)
Bálint, Š. et al. Supramolecular attack particles are
autonomous killing entities released from cytotoxic
T cells. Science 368, 897–901 (2020).
(3)
Mittelbrunn, M. et al. Unidirectional transfer of
microRNA- loaded exosomes from T cells to antigen-
presenting cells. Nat. Commun. 2, 282 (2011).
(4)
Saliba, D. G. et al. Composition and structure of
synaptic ectosomes exporting antigen receptor linked
to functional CD40 ligand from helper T. Elife 8,
e47528 (2019).
(5)
Choudhuri, K. et al. Polarized release of T- cell-receptor-
enriched microvesicles at the immunological synapse.
Nature 507, 118–123 (2014).
(6)
Céspedes, P. F. et al. T- cell trans- synaptic vesicles
are distinct and carry greater effector content than
constitutive extracellular vesicles. Nat. Commun. 13,
3460 (2022).
(7)
理化学研究所
免疫を活性化させるミクロシナプス構造を発見
-外敵を検知したT細胞のミクロの接着力が免疫応答を増強-
(8)
Kim, H. R. et al. T cell microvilli constitute
immunological synaptosomes that carry messages
to antigen- presenting cells. Nat. Commun. 9, 3630
(2018).
(9)
Craxton, A., Draves, K. E. & Clark, E. A. Bim regulates
BCR- induced entry of B cells into the cell cycle. Eur. J.
Immunol. 37, 2715–2722 (2007).
(10)
Fischer, S. F. et al. Proapoptotic BH3-only protein
Bim is essential for developmentally programmed
death of germinal center- derived memory B cells
and antibody- forming cells. Blood 110, 3978–3984
(2007).
(11)
Setz, C. S. et al. Pten controls B- cell responsiveness
and germinal center reaction by regulating the
expression of IgD BCR. EMBO J. 38, e100249
(2019).
(12)
Fernández- Messina, L. et al. Transfer of extracellular
vesicle- microRNA controls germinal center reaction
and antibody production. EMBO Rep. 21, e48925
(2020).
(13)
Denzer, K. et al. Follicular dendritic cells carry MHC
class II- expressing microvesicles at their surface.
J. Immunol. 165, 1259–1265 (2000).
(14)
Tew, J. G. et al. Follicular dendritic cells and
presentation of antigen and costimulatory signals
to B cells. Immunol. Rev. 156, 39–52 (1997).
(15)
Dina Kouhestani, Maria Geis, Saed Alsouri, Thomas G. P. Bumm, Hermann Einsele, Markus Sauer & Gernot Stuhler
Variant signaling topology at the cancer cell–T-cell interface induced by a two-component T-cell engager
Cellular & Molecular Immunology volume 18, pages1568–1570 (2021)
(16)
Akiko Hashimoto-Tane, Machie Sakuma, Hiroshi Ike, Tadashi Yokosuka, Yayoi Kimura, Osamu Ohara, and Takashi Saito
"Micro adhesion rings surrounding TCR microclusters are essential for T cell activation",
Journal of Experimental Medicine 2016 Vol. 213 No. 8 1609–1625,
2022年8月29日月曜日
Cell-type-specific delivery system,
医療工学,
細胞生物学,
備忘録,
免疫学,
薬学
Author correction: 細胞外小胞と免疫シナプスの関係と表面受容体動性と治療展望
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