読者の方々の周りで癌に罹患した方がいる
人もいると思います。
その中で、特に若い人の血液の癌、
白血病は比較的、完治するケースが多いと
感じることはないでしょうか?
白血病は化学療法が効きやすく、
CAR免疫治療などの高い実績もあります。
血液性の癌の奏功が高いのか?
いくつかの要因があると思っています。
その理由は
Robert Noble(敬称略)らがFig.2に示す事に
一部、集約すると思っています(1)。
癌細胞が独立していて、
遺伝子の多様性が低く、
進化しても自然選択でほぼ完全に入れ替わる
可能性があるということです(1)。
新型コロナウィルスが
デルタ株からオミクロン株に置き換わるようにです。
もう1つは血液性の癌なので
薬剤の輸送経路が癌細胞流路と重複しやすく、
比較的有効に薬剤が輸送されるという事だと思います。
まだ、理由があるかもしれないですが、
これらの条件は大きいと思っています。
では、なぜ、
組織常在型の固形癌は治療が難しいのでしょうか?
それはRobert Noble(敬称略)らがFig.2に示す
遺伝子多様性にあると思っています。
その一つの原因は、
癌が「粘膜に覆われている」からではないでしょうか?
つまり、細胞間の遺伝子の交換
(Horizontal transfer)が生じ、
遺伝子の多様性が生まれやすい可能性がある
ということです。
従って、表現型が多様なので、
一様に効果を出すことが難しいという事です。
--
本日、Brief communicationとして
更新しようと考えたのは、
この粘膜を菌膜(Biofilm)と捉えて、
菌膜と抗菌剤耐性とその対策について考える事で
そこから固形癌治療のヒントが得られないか?
ということが頭に浮かんだからです。
--
Divakar Sharma(敬称略)らは
抗菌耐性と菌膜について総括されています(2)。
その菌膜は
非結晶性の細胞外重合体マトリックスである
と定義されています(3)。
つまり、粘膜なので固体ではなく流動性があるということです。
この菌膜は
〇(上述した)遺伝子変異
〇低い細胞浸透性
〇薬剤流出力
〇薬剤改変酵素
〇薬剤中和タンパク質
これらを含むとされています(4-13)。
Robert Noble(敬称略)らによると
粘膜で覆われている癌種は
〇大腸がん
〇乳がん
〇肺がん
これらであるとされています(1)。
従って、これらの癌種を治療するときには
「粘膜が薬剤耐性を与えている」
「粘膜が薬剤輸送をブロックしている」
ということを考慮する必要があるかもしれません。
菌膜と同じような特徴があるかもしれないからです。
さらに遺伝子的な多様性も高いので
癌細胞自体の治療も難しいです。
従って、
抗菌耐性に関与する菌膜に対しては
菌膜を分解するいくつかの物質を利用する
ということになっています(2)。
--
ただし、上述した遺伝子的な特徴や
菌膜と粘膜のつながりについては
実際に人のケースで確認したデータではないので
実態はもっと複雑かもしれません。
一方で、傾向としては当てはまるかもしれません。
//細胞種特異的輸送系統の観点(*)//ーー
(※)Cell-type-specific delivery system
粘膜に覆われた癌種では
細胞表面にある特異的な受容体が十分に暴露していないため
薬剤の輸送効率が高くなりにくいという事は考えられます。
粘膜を分解する酵素を
細胞外小胞やナノ粒子表面に複合体として形成する
あるいは、
粘膜に浸透しやすい機序を掴む必要があるかもしれません。
また、同じ癌種でも
粘膜質が強い腫瘍とそうではない腫瘍がある可能性もあります。
その中で粘膜質が強い腫瘍は
より治療が難しいということが考えられます。
粘膜による遺伝子多様性への影響や
粘膜による薬剤耐性が
本当に菌膜と同じように当てはまるか?
その仮説確認、分析も
細胞種特異的輸送系統を実現させる経路の中で
付加的に必要になる可能性があります。
(参考文献)
(1)
Robert Noble, Dominik Burri, Cécile Le Sueur, Jeanne Lemant, Yannick Viossat, Jakob Nikolas Kather & Niko Beerenwinkel
Spatial structure governs the mode of tumour evolution
Nature Ecology & Evolution volume 6, pages207–217 (2022)
(2)
Divakar Sharma, Lama Misba & Asad U. Khan
Antibiotics versus biofilm: an emerging battleground in microbial communities
Antimicrobial Resistance & Infection Control volume 8, Article number: 76 (2019)
(3)
Hoiby N, Ciofu O, Johansen HK, Song ZJ, Moser C, Jensen PØ, Molin S,
Givskov M, Tolker-Nielsen T, Bjarnsholt T. The clinical impact of bacterial
biofilms. Int J Oral Sci. 2011;3:55.
(4)
Beauclerk AAD, Cundliffe E. Site of action of two ribosomal RNA methylases
responsible for resistance to aminoglycoside. J Mol Biol. 1987;193:661 – 71.
(5)
Kumar B, Sharma D, Sharma P, Katoch VM, Venkatesan K, Bisht D. Proteomic
analysis of Mycobacterium tuberculosis isolates resistant to kanamycin and
amikacin. J Proteome. 2013;94:68 – 77.
(6)
Lata M, Sharma D, Deo N, Tiwari PK, Bisht D, Venkatesan K. Proteomic
analysis of ofloxacin-mono resistant Mycobacterium tuberculosis isolates. J
Proteome. 2015;127:114 – 21.
(7)
Magnet S, Courvalin P, Lambert T. Resistance modulation cell division type
efflux pump involved in aminoglycoside resistance in Acinetobacter
baumannii BM4454. Antimicrob Agents Chemother. 2001;45:3375 – 80.
(8)
Magnet S, Smith TA, Zheng R, Nordmann P, Blanchard JS. Aminoglycosides
resistance resulting from tight drug binding to an altered aminoglycosides
acetyl transferase. Antomicrob Agents Chemother. 2003;47:1577 – 83.
(9)
Nikaido H. Molecular basis of bacterial outer membrane permeability
revisited. Microbiol Mol Biol Rev. 2003;67:593 – 656.
(10)
Sharma D, Kumar B, Lata M, Joshi B, Venkatesan K, Shukla S, et al.
Comparative proteomic analysis of aminoglycosides resistant and
susceptible Mycobacterium tuberculosis clinical isolates for exploring
potential drug targets. PLoS One. 2015;10(10):e0139414.
(11)
Sharma D, Lata M, Singh R, Deo N, Venkatesan K, Bisht D. Cytosolic
proteome profiling of aminoglycosides resistant Mycobacterium tuberculosis
clinical isolates using MALDI-TOF/MS. Front Microbiol. 2016;7:1816.
(12)
Walsh C. Molecular mechanisms that confer antibacterial drug resistance.
Nature. 2000;406:775 – 81.
(13)
Welch KT, Virga KG, Whittemore NA, Ozen C, Wright E, Brown CL, et al.
Discovery of non-carbohydrate inhibitors of aminoglycoside-modifying
enzymes. Bioorg Med Chem. 2005;13:6252 – 363.
2022年8月24日水曜日
Cell-type-specific delivery system,
遺伝学/遺伝子治療,
癌・腫瘍学,
微生物学,
薬学
粘膜を含む癌種の治療を菌膜抗菌耐性の観点で考える
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