2021年6月13日日曜日

子供の片頭痛の分類と遺伝的病因

頭痛、倦怠感、吐き気、強い眠気、意欲低下など
多くの人が少なくとも1度は、程度、期間には差があれ
経験したことがある身近な症状に関しては、
経過観察するしかない部分があります。
市販されている薬や処方された薬で軽くなることはありますが、
そうではない場合もあります。
原因がはっきりせず、慢性化した場合には
不安感が助長されることがあります。
このような日常的に感じる症状は
発達期にある子供にも生じうることです。
子供の場合は自分で病院に行くことはできませんから
親が判断する事になります。
しかし、症状が医学的にみて
治療が必要な深刻な状況であっても
見逃されるケースはあるかもしれません。
また、医療(医学、薬学、治療など)が改善すれば、
現状より高いレベルの生活の質を提供する事ができる可能性もあります。

こういった子供が抱える身近で難しい症状の中に
片頭痛があります。
Ishaq Abu-Arafeh & Amy A. Gelfand(敬称略)
イギリス、アメリカの医療研究グループが
その歴史的な発展について総括されています(1)。
それによれば国際的に頭痛として分類が決められたのは
(The International Classification of Headache Disorders) 
1988年とされています(2-4)。
従って、今から30年前の事です。
それから2004年と2018年に段階的に改変が加えられました(2-4)。
従って、病気の分類としては
現在、2018年に改訂されたものに従うことになります。

当初は、子供の片頭痛としては
Benign paroxysmal vertigo (BPV) 
Alternating hemiplegia of childhood (AHC)
これらであり、
嘔吐や腹痛など頭の症状とは異なる腹部の症状については
片頭痛の病因との関連性が認められていたものの
上記分類には加えられていませんでした。
また、病気の特徴、原因については不明であるとされていました(4)。
これから月日が経ち、
2018年には腹部の症状も
子供の片頭痛として含められるようになりました。
現在の分類としてはRef.(1) Box.1となっています。
//(*)ICHD-3による分類(Ref.(1) See Box1)//-------------
・前兆がない片頭痛
・前兆がある片頭痛
  典型的な前兆、脳幹の前兆、片側まひの片頭痛、網膜片頭痛
・慢性的な片頭痛
・片頭痛の合併症
  Status migrainosus(長期間、激しい頭痛)
  梗塞のない持続的な前兆
  梗塞性片頭痛
  てんかん発作を伴う
・片頭痛が疑われるケース(Probable migraine)
  (程度としては軽いもの?関連性がより不明瞭なもの?)
・片頭痛と関連する一時的な症状
  再発性胃腸症状(嘔吐、痛み)
  良性発作性めまい
  良性発作性斜頸
------------------

//片頭痛の遺伝子的な病因//-------------------
片頭痛は基本的には多くの遺伝子が関わっているとされています。
それは、個人差(異種性:heterogeneity)と
症状までに関わる多様な遺伝子の作用とがあると考えられます。
メタ分析によれば、
44種類の独立なsingle- nucleotide polymorphisms(SNPs) 
が片頭痛のリスクに関わっているとされています(5)。
その中の38の遺伝子座が関連し、これはX染色体に当たります(1)。
これらの遺伝子座は
血管系、血管内皮系にも存在する平滑筋細胞、
特に胃腸に関連する血管系に多く存在するといわれています。
従って、
片頭痛の症状として胃腸に関わるものが出現するのは
遺伝子的に論理根拠があると考える事ができます。
また血管系に流れる免疫細胞も関連が疑われます。
例えば、免疫細胞が放出するサイトカインが
片頭痛の痛みの信号と関連がある事が示唆されています(6)。
もし、子供の片頭痛にも当てはまるとするならば、
血液検査によるサイトカインの分析、
あるいはサイトカインを抑える薬剤の投与で
「下流側の生理経路」で痛みを抑える事ができるかもしれません。
また、上流側のアプローチとしては
上述したような関連する遺伝子座に働きかける事が考えられます。
ただし、遺伝子に働きかける場合には
十分な基礎実験、治験と長期的なリスク評価が必要になります。

なおFamilial hemiplegic migraine(FHM)に関しては
タイプごとに以下の遺伝子が関連していることが示唆されています(1)。
Type-1:CACVA1A(7)
Type-2:ATP1A(8,9)
Type-3:SCN1A(10)
Type-4:Unknown
-----------------------

//細胞特異的輸送系統の観点//-----------------
血管系の細胞の遺伝子に変異が生じていたり、
痛みの原因として血中のサイトカインが関係している可能性があります。
細胞外で装飾因子を任意に設計するCAR-T, CAR-NK細胞治療は
基本的に血液系の癌治療で成功をおさめめています。
このことは、細胞特異的輸送系統で
「今までの経験に基づくと」血液系に異常がある疾患に対する
効果が見込める可能性があることを示しています。
もし、片頭痛の原因が血管系にも多くあるとするならば、
より改善された治療法として細胞特異的輸送系統を適用できる
可能性を模索する事ができます。
---------------

(Reference)
(1)
Ishaq Abu-Arafeh & Amy A. Gelfand 
The childhood migraine syndrome
Nature Reviews Neurology (2021)

Author information
Affiliations
Paediatric Neurosciences Unit, Royal Hospital for Children, Glasgow, UK
Ishaq Abu-Arafeh
Neurology and Pediatrics, University of California San Francisco, San Francisco, CA, USA
Amy A. Gelfand

(2)
Headache Classification Committee of the International Headache Society (HIS). The international classification of headache disorders, 3rd edition. Cephalalgia 38, 1–211 (2018).
(3)
Headache Classification Committee of the International Headache Society. Classification and diagnostic criteria for headache disorders, cranial neuralgias and facial pain. Cephalalgia. 8 (Suppl. 7), 9–96 (1988).
(4)
Headache Classification Committee of the International Headache Society. The international classification of headache disorders, 2nd edition. Cephalalgia. 24, 8–160 (2004).
(5)
Gormley, P. et al. 
Meta-analysis of 375,000 individuals identifies 38 susceptibility loci for migraine. 
Nat. Genet. 48, 856–866 (2016).
(6)
P P Bruno 1, F Carpino, G Carpino, A Zicari
An overview on immune system and migraine
Eur Rev Med Pharmacol Sci. Jul-Aug 2007;11(4):245-8.
(7)
Ophoff, R. A. et al. 
Familial hemiplegic migraine and episodic ataxia type-2 are caused by mutations in the Ca2+ channel gene CACNL1A4. 
Cell 87, 543–552 (1996).
(8)
Costa, C. et al. 
A novel ATP1A2 gene mutation in familial hemiplegic migraine and epilepsy. 
Cephalalgia. 34, 68–72 (2014).
(9)
Coppola, G., Pastorino, G. M. G., Vetri, L., D’Onofrio, F. & Operto, F. F. 
Familial hemiplegic migraine with ATP1A4 mutation: clinical spectrum and carbamazepine efficacy. 
Brain Sci. 18, 372 (2020).
(10)
Castro, M. J. et al. 
First mutation in the voltage- gated Nav1.1 subunit gene SCN1A with co- occurring familial hemiplegic migraine and epilepsy. 
Cephalalgia. 29, 308–313 (2009).


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