2022年11月11日金曜日

mRNA治療の施錠を解くための背景と課題

新型コロナウィルス感染症に対する
脂質合成ナノ粒子によるmRNAワクチンの大きな成功は
今後、その形式を使ったmRNA治療(2)の発展性の余地を大きく与えます。
mRNA治療の初期の臨床試験は
心不全のためのVEGF mRNAや
先天性の肝臓疾患に対するCRISPR-Cas9などが含まれます。
しかしながら、
課題はまだまだ多く残されています。
この課題を乗り越えるために
mRNA積載物を最適化したり、
組織に対して走化性を持つ脂質ナノ粒子を設計したり
経皮的な送達システムを生体内で考案したりされています。
これらの課題解決案を懸命に取り込んでいくことは
生物学的な標的性を持ったmRNA治療の約束(promise)を
解き放つものです(1)。
その応用性はワクチンや他の免疫刺激性の媒体としての
利用を超える広範なものになる可能性を秘めています。
この記事では
Eduarde Rohner, Ran Yang, Kylie S. Foo, Alexander Goedel & Kenneth R. Chien
(敬称略)の総括の中の
mRNA治療をより広範な治療に応用する上での
課題を含めた背景について参照しました。
それに追記を加え、
読者の方と情報共有したいと思います。

COVD-19 mRNAワクチンの急速なデザインと発展は
SARS-CoV-2に対する免疫獲得のための
新しい生命工学プラットフォームを構築しました。
これらの方式は
微生物学的な病原体、癌などの治療に対しても
応用が可能です(3-6)。
新型コロナウィルス感染症のパンデミックは
公衆衛生において危機的な状況をもたらしたので
歴史上ない迅速な臨床試験承認を経て
世界中に普及しました。
結果として数十億人の免疫獲得を可能にしました。
--
mRNA治療を癌治療など他の治療に応用させようとした場合には
新型コロナウィルス感染症に対するmRNAワクチンと比べて
付加的な課題があるとされています。
mRNAによる免疫獲得は抗原を通じて
細胞性、抗体仲介の免疫により雪崩式に強化されていくので
比較的少ない量で済むと言われています。
それと比較して
mRNA治療は治療の閾値に達するために
1000倍レベルの高用量が必要であるとされています。
これは標的細胞に効率的に取り込まれる
重要性を示唆するものです。
新型コロナウィルスでも副反応があったことから
1000倍の濃度に仮にすると
もっと重篤なそれが生じてしまう可能性があります。
従って、
標的性を高める事は
従来の薬剤に対する優位性、差別化を図るために
必須の生命工学(Biotechnology)であるといっても
過言ではないかもしれません。
しかしながら、
各組織、臓器へ標的性を高める事は容易ではありません。
一般的にナノ粒子はアポリポタンパク質などを
コロナとして取り込み
それに結合親和性のある肝臓に蓄積される傾向があります。
従って、癌などの病変部位を含めた組織や
特定の臓器に向性を持たせる事には課題があります。
もう一つの主要な障壁は
反復的な投与が必要なことです。
新型コロナウィルスのワクチン接種は
少ない用量の上に少なくとも2週間以上の間隔が
開けられました。それも2回までです。
従って、反復投与による過剰な免疫惹起が懸念されます。
このような課題を乗り越えるために
技術開発が現在進行形で進んでいます(7-11)。

//考察//ーー
上述した情報から受け取った
想定される一番のボトルネックは
投与されるナノ粒子の量と頻度が
治療目的とする場合には
新型コロナワクチンよりも顕著に高い
ということです。
用量を基準にすると1000倍ともいわれています。
従って、
合成ナノ粒子を含めて
様々な輸送媒体がありますが、
新型コロナウィルスワクチンでも
免疫惹起がみられ、
その原因は脂質ナノ粒子であるということも
否定はできないので、
そうであった場合には
ナノ粒子の免疫原性を顕著に低くする
必要性が出てくるのではないか?
と考えられます。
あるいは上述したように
標的化技術を含めて
病変部位、特定の臓器に対しての
走化性を顕著に高めることです。
一方で、
ワクチンでは健康な人に投与されますが、
治療では疾患に罹患した人なので
そのメリットとデメリットの天秤の基準が
そもそも違うという事も認識する必要があります。
つまり
新型コロナウィルスワクチンを超える
副作用があったとしても
それで難しい疾患が改善するならば
メリットが顕著に上回るという考え方です。

(参考文献)
(1)
Eduarde Rohner, Ran Yang, Kylie S. Foo, Alexander Goedel & Kenneth R. Chien
Unlocking the promise of mRNA therapeutics
Nature Biotechnology volume 40, pages1586–1600 (2022)
(2)
Xiangang Huang, Na Kong, Xingcai Zhang, Yihai Cao, Robert Langer & Wei Tao 
The landscape of mRNA nanomedicine
Nature Medicine (2022)
(3)
Baden, L. R. et al. Efficacy and safety of the mRNA-1273 
SARS-CoV-2 caccine. N. Engl. J. Med. 384, 403–416 (2021).
(4)
Dong, Y. et al. Poly(glycoamidoamine) brushes formulated 
nanomaterials for systemic siRNA and mRNA delivery in vivo. 
Nano Lett. 16, 842–848 (2016).
(5)
Polack, F. P. et al. Safety and efficacy of the BNT162b2 mRNA 
Covid-19 vaccine. N. Engl. J. Med. 383, 2603–2615 (2020).
(6)
Barbier, A. J., Jiang, A. Y., Zhang, P., Wooster, R. & Anderson, D. G. 
The clinical progress of mRNA vaccines and immunotherapies. 
Nat. Biotechnol. 40, 840–854 (2022).
(7)
Apgar, J. F. et al. Quantitative systems pharmacology model of 
hUGT1A1-modRNA encoding for the UGT1A1 enzyme to treat 
Crigler–Najjar syndrome type 1. CPT Pharmacometics Syst. 
Pharmacol. 7, 404–412 (2018).
(8)
Connolly, B., Isaacs, C., Cheng, L., Asrani, K. H. &  
Subramanian, R. R. SERPINA1 mRNA as a treatment for alpha-1 
antitrypsin deficiency. J. Nucleic Acids 2018, 8247935 (2018).
(9)
Rybakova, Y. et al. mRNA delivery for therapeutic anti-HER2 
antibody expression in vivo. Mol. Ther. 27, 1415–1423 (2019).
(10)
Krienke, C. et al. A noninflammatory mRNA vaccine for treatment 
of experimental autoimmune encephalomyelitis. Science 371, 
145–153 (2021).
(11)
Gillmore, J. D. et al. CRISPR–Cas9 in vivo gene editing for 
transthyretin amyloidosis. N. Engl. J. Med. 385, 493–502  
(2021).


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